財団記録・情報保安管理局より通達
SCP-1488-JPは異常性を喪失し、Neutralizedクラスに再分類されました。
当報告書には異常性喪失以前によるSCP-1488-JPの影響としてSCP-1488-JP-1が挿入されています。これはSCP-1488-JPが異常性を保持していた明確な証拠になる事、閲覧者に対して異常性の理解を容易にする狙いがある事から、意図的に消去せず残存させています。
許可なく当報告書を編集した場合、クリアランスレベルの降格を含む懲戒処分が下される可能性があります。十分に注意してください。
— RAISA管理官、██ ██
アイテム番号: SCP-1488-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-1488-JPに関係する全ての情報を秘匿し、財団外部に流出しないよう努めてください。また、SCP-1488-JPの親族や友人といった関係者に対してはカバーストーリー「交通事故」を流布すると同時に選択型Aクラス記憶処理を散布し、SCP-1488-JPの想起が困難になるよう制御してください。
SCP-1488-JPが所有する銀行口座は一般人からのアクセスのみ規制してください。異常性が喪失する可能性がある為、財団関係者からのアクセスは機能させ続けています。
説明: SCP-1488-JPは崎原 美咲と呼称される女性です。SCP-1488-JPに関する情報を電子媒体に記録すると、崎原 美咲の実子である崎原 颯太の画像(SCP-1488-JP-1)が不定期に挿入されます。SCP-1488-JP-1の内容自体には異常な点は見受けられず、ごく一般的な画像の様に見えます。また、SCP-1488-JP-1として挿入される画像は一定ではなく、現在まで11種類のバリエーションが確認されています。なお、崎原 颯太は当報告書執筆時点で既に死亡している事に留意してください。
SCP-1488-JP-1を閲覧すると、閲覧者の銀行口座から1度の閲覧につき2000円分の金銭を失い、SCP-1488-JPが所有する銀行口座へ自動的に振り込まれます。口座を所有していない又は口座に入金されている金額が2000円未満である場合は、閲覧者が所有する2000円分に相当するであろう実物資産が消失し、SCP-1488-JPの口座に金銭へ変換された状態で振り込まれます。この異常性は挿入されたSCP-1488-JP-1のみに発生し、SCP-1488-JP-1の複製や加工を施した物には発生しません。
SCP-1488-JPの異常性は2038/11/7に発現しました。SCP-1488-JP-1が挿入される情報は発現以前に記述した物も対象に含まれた為、個人情報を取り扱う役所やSNSでの投稿を中心に大量のSCP-1488-JP-1が挿入され、一時的な混乱を招きました。財団はSCP-1488-JPの口座へ送金した名義から被害者を特定した後、カバーストーリー「情報管理プログラムのバグ」「詐欺防止キャンペーンの一環」を同時展開し、加えて補助的にAクラス記憶処理を活用する事で事態を収束させました。SCP-1488-JPが異常性を発現した切っ掛けとして、同日にSCP-1488-JPの夫である崎原 ██が火葬された事が関係すると推測されていますが、それを裏付ける物的証拠は存在しません。
以下は、SCP-1488-JPに対する初期インタビュー記録の一部抜粋です。
日付: 2038/11/8
対象: SCP-1488-JP
インタビュアー: 楠野研究員
<記録開始>
[省略]
インタビュアー: では、この異常性は貴方が制御できるものではないのですね?
対象: そうなのよ。私もね、突然こんな事になっちゃったもんだから混乱しちゃって。だってね、ほらどこの誰かも分からない見ず知らずの人にもウチの子の写真を見られるワケじゃない?それはちょっと、なんというか……あまり良い気分ではないじゃない?
インタビュアー: 確かに。ご主人の御葬儀でもバタバタしていた所でしょうし、大変だったでしょう。
対象: そうそう!夫が死んじゃってからね、これからどうしようかと悩んでる時にこれだもの。ホント参っちゃうわ。あぁでも色んな人から寄付を頂けるってのはありがたいわぁ。
インタビュアー: 現時点でも結構な額になってるそうですね。
対象: まぁ、ね。何かと老後が心配だったから大助かり。もしかしたら、ウチの子が1人になった私を助ける為に一役買ってくれたのかもねぇ。
インタビュアー: お子さんというのはこの、画像の子ですよね。
対象: そうよ、可愛いでしょう?でも、うん。ウチの子ね、颯太って言うんだけど、こんなに可愛いのに心臓の病気を患ってて2歳で死んじゃったの。
インタビュアー: 亡くなったんですか?
対象: そうなの、写真じゃこんなに笑顔なのにね。だからもしかしたら、この子が私に、恩返し?償い?……感謝して?ちょっと言葉が難しいけど、なんていうか、助けてくれてるのかなって。
インタビュアー: 優しいお子さんだったのですね。
対象: えぇ、とっても。貴方は結婚されてるのかしら?
インタビュアー: いえ、私はまだ……、仕事も忙しいですし。
対象: 子供はいいわよぉ。お金は沢山かかるけど、その分めちゃくちゃに可愛いんだから!私は失敗しちゃったけど、貴方は私の分まで幸せになって欲しいの。だって、こんな老いぼれの話をちゃんと聞いてくれたんだから!貴方みたいな素敵な人は絶対に、ぜったいに幸せになるべきだと思うわ。
インタビュアー: 素敵な人……ですか。お世辞でも嬉しいです。
対象: いやいや、お世辞じゃないわよぉ。
インタビュアー: あ、ありがとうございます。
[省略]
<記録終了>
崎原 颯太は2036/1/15に東京都新宿区新宿駅前で死亡しています。死因は非異常性の凍死であり、その死とSCP-1488-JPの異常性には互いに一切の関係がありません。また、崎原 颯太とSCP-1488-JPは2032年から実質的な絶縁状態であった事が事後調査によって判明しています。
SCP-1488-JPに対して上記の事実と初期インタビューでの発言内容の矛盾を指摘しましたが、SCP-1488-JPはそれを強く否定し「崎原 颯太は心臓病によって幼少期に死亡した」といった旨の主張を繰り返しました。自白剤の投与によってSCP-1488-JPが崎原 颯太に関する事実を自認している事は確認されましたが、SCP-1488-JPが頑なに虚偽の内容を主張し続ける理由については依然不明なままです。
追記: 2049/7/29、SCP-1488-JPの異常性が突如として喪失し、新たなSCP-1488-JP-1の発生が確認されなくなりました。SCP-1488-JPのオブジェクトクラスはNeutralizedクラスに再分類され、現在、異常性が喪失した原因について調査しています。また、異常性の喪失時にSCP-1488-JPが所有する口座へのSCP-1488-JP-1を起因とした振込額の総合計が、2000万円丁度であった事は特筆すべき点です。