インタビュー対象: SCP-1489-JP-B
インタビュアー: ████博士、SCP-1489-JP-A(D-4001)
付記: 記録はSCP-1489-JP-AによってSCP-1489-JP-Bが出現する段階から行われた。記録装置は実験室内からでは視認不可能な場所に設置された。異常性の対象となる機器類はデスクトップ型のコンピューター、キーボード、マウス、モニターである。
<再生開始>
████博士: ではSCP-1489-JP-A、実験室に入室して下さい。
[SCP-1489-JP-Aが扉をあけて室内に入る]
SCP-1489-JP-A: D-4001の次はそれかよ、ころころ他人の名前を弄りやがって。で、何すりゃいいんだ。
████博士: こちらを見てください。
[████博士は机上のコンピューターを指し示す]
SCP-1489-JP-A: [数秒の沈黙]これがどうかしたか?
████博士: しばし待って[コンピューターがひとりでに揺れる]おっと、早速ですね。
SCP-1489-JP-A: な、なんだ?
[揺れが収まり、筐体を通り抜ける様にして4体のSCP-1489-JP-Bが出現する。体長は15cm程。続いてキーボード、マウス、モニターでも同様の現象が発生し、計██体の様々な体長のSCP-1489-JP-Bが出現した]
SCP-1489-JP-A: うわっ、なんだコイツら。
[出現したSCP-1489-JP-Bは周囲を見回していたが、やがてSCP-1489-JP-Aの存在に気付くと全員がそちらに向き直る]
SCP-1489-JP-B: ヒト、発見。
SCP-1489-JP-B: 妖精さんに気付いたヒト、発見。
SCP-1489-JP-A: しゃ、喋った。
████博士: こんにちは。もしあるのなら、貴方方の名前を教えて下さいませんか?
[SCP-1489-JP-Bは████博士の発言に対して反応を見せない]
████博士: SCP-1489-JP-A。SCP-1489-JP-B、つまりこの小人に名前を尋ねて下さい。
SCP-1489-JP-A: え?ああ、えーと、お前ら名前なんていうんだ。
SCP-1489-JP-B: 無い。
SCP-1489-JP-B: 妖精さんに名は無い。
SCP-1489-JP-B: 与えてはならない。
████博士: ふむ、SCP-1489-JP-A、恐らく彼らは貴方の言葉にしか反応しません。これから幾つか指示を出しますので、その通りに話しかけて下さい。
[以降、本記録において████博士が指示する発言は省略する。また、この時████博士がコンピューターの筐体内を確認した所、内部に存在するはずのパーツ類が欠けた状態である事が確認された]
SCP-1489-JP-A: お、おう。えーと?妖精ってのは本当なのか?
SCP-1489-JP-B: [強調した口調で]妖精さん。妖精さんは妖精さんなので嘘を吐かない。
SCP-1489-JP-B: 正しい事は疑われない。
SCP-1489-JP-B: 疑われない事は正しい。
SCP-1489-JP-A: よく、分かんねえや。で、次はー、お前ら、どうやってコンピューターん中にやってきたんだ?
SCP-1489-JP-B: 妖精さんは妖精さんなのでずっとここに居る。
SCP-1489-JP-B: ここに居て妖精さんをやっている。
SCP-1489-JP-A: もうちょっと噛み砕いて言ってくれよ。
SCP-1489-JP-B: 妖精さんは箱の中で頑張る。
SCP-1489-JP-B: 妖精さんが頑張っているので箱は働く。
SCP-1489-JP-A: うーん、じゃあよ、どんな風に働いてんのか見せてくれよ。
SCP-1489-JP-B: こう。
[SCP-1489-JP-Bが相互に手を繋ぎ合う]
SCP-1489-JP-B: 気付いたヒト、妖精さんに触れて。
SCP-1489-JP-A: [整列した小型のSCP-1489-JP-Bを指差して笑う]お前ら、それキーボードのつもりか?押せばいいのかこうやって。
[SCP-1489-JP-Aが整列するSCP-1489-JP-Bの1体を指で押すと、手を掲げた大型のSCP-1489-JP-Bの頭上の空間に、「s」の文字が現れる]
SCP-1489-JP-A: え?マジかよ、すげー。博士、色々試してみていいか?
████博士: [数秒、沈黙]そうですね、自由に試してみて下さい。
[SCP-1489-JP-AがSCP-1489-JP-Bをタイピングしていくが、数行ほど文章を入力した時点で突如入力を受け付けなくなる]
SCP-1489-JP-A: あれ?[SCP-1489-JP-B集団を見回す]あっ、お前、よそ見してちゃダメだろ。
[キーボードを構成しているSCP-1489-JP-Bに触れている大型のSCP-1489-JP-Bを小突く]
SCP-1489-JP-B: [数秒、無言]つい。
SCP-1489-JP-B: 妖精さん、妖精さんの仕事を忘れてはいけない。
SCP-1489-JP-B: ごめん。
SCP-1489-JP-A: 適当に打ってるだけだぞ、そんな夢中になる程面白かったのか?
SCP-1489-JP-B: 妖精さんは妖精さんなので、気付いたヒトが気付かない限り箱の中。
SCP-1489-JP-B: 妖精さんなので、妖精さんが頑張る箱の外は全て妖精さんの知らない世界。
SCP-1489-JP-A: お、おう。なんか不憫な奴だな、俺が言うのもなんだけど。
████博士: さて、SCP-1489-JP-A、今日の所は実験を終了しましょう。
SCP-1489-JP-A: えー、結構面白い奴らなのに。えーっと、お前ら、そろそろお別れらしいんだが、お前らはコンピューターん中に戻らなくていいのか?
SCP-1489-JP-B: お別れ?
SCP-1489-JP-B: お終い。
SCP-1489-JP-B: もう会えない?
SCP-1489-JP-A: どうなんだ博士?
████博士: まだ日を分けて実験は続けるつもりなので、再会の予定はあると言えるでしょう。
SCP-1489-JP-A: じゃあ、おいお前ら、また会えるってよ。お別れは、今日の所はって事だ。
SCP-1489-JP-B: 分かった。
SCP-1489-JP-B: 今日の所は、妖精さん帰る。
SCP-1489-JP-A: おう、じゃーなー。
[SCP-1489-JP-Bらは筐体へと向かい、出現時と同様透過する様に筐体内に姿を消す]
<再生終了>
終了報告書: 実験後のコンピューター類はSCP-1489-JP-Aの顔を写した複数の画像が保存されていた事と、「p」のキーと「c」のキーの入出力が逆になっている事を除けば正常に機能しました。後日同様の材料を用いて行われた実験では、SCP-1489-JP-BらはSCP-1489-JP-Aに対してほぼ初対面の様に振る舞いました。恐らく、記憶は然程持続しないのでしょう。