アイテム番号: SCP-1496-JP
オブジェクトクラス: Euclid Safe
特別収容プロトコル: SCP-1496-JPはサイト-81██にある収容チャンバーに収容してください。SCP-1496-JPと同寸法かつ全面を青く塗ったキャンバスを2つ用意し、それらとSCP-1496-JPの長辺を合わせ、三角柱の形で収容してください。この際、SCP-1496-JPの絵画部分は三角柱の内側になるように配置してください。三角柱の内部には監視カメラを取り付け、SCP-1496-JPの動向を24時間体制で監視するようにしてください。監視カメラにはSCP-1496-JPを照らすことのできるLEDライトを設置し、常に点灯させるようにしてください。SCP-1496-JP-aが他の絵画へ進入した場合は、その絵画を青系統の色で塗りつぶしてください。収容外のSCP-1496-JPが発見された場合は全て青系統の色で塗りつぶしてください。
説明: SCP-1496-JPは、寸法120.3×53.8cmの日本画です。絹本1に彩色がされたものであり、現在は黒色の額縁に収められています。SCP-1496-JPの中心には炎の柱が描写されており、その炎を囲むように8匹のガ(以下、SCP-1496-JP-a)に似た生物が描写されています。SCP-1496-JPは防火耐性がありますが、その他の衝撃に対する耐性はありません。
SCP-1496-JP-aは、SCP-1496-JP内に描かれている異常性を持った生物の総称です。SCP-1496-JP-aは外見上ガと似た生物とみられていますが、現在まで如何なる種のガであるかは判明していません。SCP-1496-JP-aは、SCP-1496-JPの中で生物のガと類似した動きをしており、SCP-1496-JPの中心に描かれた炎の周辺を無作為に飛び回っています。SCP-1496-JP-aは時折、中心の炎に飛び込み自身の体に着火する様子が見られます。この動作にも作為的なものはなく、炎に接近した結果自然に着火しているものとみられています。SCP-1496-JP-aは、着火後5分ほど燃焼し、その後焼失します。焼失後、SCP-1496-JP-aはそれぞれ所定の位置に複製されます。
SCP-1496-JP-aはSCP-1496-JPの長辺からSCP-1496-JP外へ脱出し、 SCP-1496-JPの同一平面上あるいはSCP-1496-JPの長辺と接触している絵画に進入することができます。SCP-1496-JPと他の絵画の間に距離がある場合は、その間の空間を経由して他の絵画に到着します。間の空間を移動している際、SCP-1496-JP-aは描写されず、外部から接触することもできません。SCP-1496-JPが進入できる絵画に大きさや種類等の制限はなく、複製プリント、ポスター、製品パッケージ等に侵入することも可能です。SCP-1496-JP-aがSCP-1496-JP外や他の絵画の中で活動できる時間は最大で約10時間です。一定時間が経過すると、SCP-1496-JP-aはSCP-1496-JP外から消失し、SCP-1496-JP内に複製されます。
着火した状態のSCP-1496-JP-aがSCP-1496-JP外へ出た場合、SCP-1496-JP-aは耐燃焼性を獲得し、着火した状態のままSCP-1496-JP外を飛び回ることが可能になります。この状態で他の絵画に進入したSCP-1496-JP-aは、絵画内の植物、建造物などに止まることで、それらに火を着けることができます。絵画内がある程度延焼すると絵画自体が延焼を始めます。SCP-1496-JP-aが絵画内の池や湖などに止まった場合は直ちに鎮火します。絵画が焼失あるいはSCP-1496-JP-a自体が鎮火した場合、SCP-1496-JP-aは消失し、元のSCP-1496-JP内に複製されます。
発見経緯: SCP-1496-JPは、2019/4/10に資産家で好事家としても有名な坂井██氏宅から発見されました。当日、坂井氏より『絵画の中が火事になり燃えた』という通報を受け、財団職員が坂井氏宅へ急行しました。現場に到着したエージェントがSCP-1496-JPを発見し、回収に至りました。以下はその際に坂井氏へ行われたインタビューです。
対象: 坂井氏
インタビュアー: エージェント・千堂
<録音開始>
[重要度が低いため割愛]エージェント・千堂: この絵はどちらで手に入れたのですか。
坂井氏: これはねえ、█████という画家から買ったんだよ。
エージェント・千堂: そうなんですね。画家ということは、この絵を描いたのは█████さんでしょうか。
坂井氏: ああ、そうだよ。若いのに良い絵を描くんだよ。さっきの絵を見てもわかるだろう?
エージェント・千堂: ええ、そうですね。
坂井氏: うんうん良いだろう、良いだろう。あの子はねえ、躍動感のある良い絵を描くんだよ。初めて見たときに一目で惚れ込んでしまってね。
エージェント・千堂: そうだったのですね。█████さんは、初めて会った時から動く絵を描いていたんですか。
坂井氏: いや、そんなことはなかったよ。まあ、今にも動き出しそうだとは思っていたけどね。
エージェント・千堂: では、動く絵を描くようになった経緯など分かれば教えて頂いても良いですか。
坂井氏: 構わないよ。さっきも言った通り私はあの子の絵がとても気に入ってね。だから、あの子が絵に専念できるように色々と援助させてもらっていたんだ。というのも、数年前に60年連れ添った家内が亡くなってしまって。それからというもの、何だか今までやってきた趣味やらなんやらがひどくつまらないものに見えてしまってね。あとはお迎えが来るのを待つだけかなと思ってたんだよ。そんな中あの子と、公園だったかな、そこでたまたま会ってね。若い子にしては珍しくイーゼルを持ち出して絵を描いていたから気になってね。声をかけて絵を見せてもらったんだよ。そしたらもう、今にも動き出しそうな凄い絵でねえ。いやあ、あんなに躍動感のある絵は見たことが無かった。
[目をつぶり、10秒沈黙]
坂井氏: 生きていて良かったと久しぶりに感じてね。生きる気力と言えばいいのかな、それが湧いてきたんだよ。その時、私の老い先短い人生はこの子のために使ってあげようと…
[3秒沈黙後、エージェント・千堂を見ながら]
坂井氏: ああ、すまない。まったく関係ない話になっているね。
エージェント・千堂: 大丈夫ですよ。続けてください。
坂井氏: すまないねえ。それでな、作品ができた時には初めに見せることを一応の条件にして、あの子の援助をするようになったんだよ。そうしたら、あの子は毎日のように新作を描いて持ってきてくれるんだよ。どれも躍動感があっていい絵なんだ。私は金銭的な援助も兼ねて、それを買い取ってやろうとするんだけど、毎回あの子は『お金はまだ受け取れません!本当に動いたと思わせるくらいの絵が描けた時にいただきたいんです!まだまだです!』なんて元気に言ってくるんだよ。なかなか真面目な子だろう。
エージェント・千堂: そうですね。
坂井氏: うんうん、それでな。何ヶ月か経ったある日、ものすごい勢いで私の家に飛び込んできてな。すぐに見てほしいと私をアトリエまで引っ張っていって。そして、見せてくれたのがこの絵だったんだよ。いやあ、いつ動いてもおかしくないねなんて言ってたけど、まさか本当に動くとはねえ。さすがに驚いたよ。絵のタッチも相まって非常に幻想的な雰囲気だったよ。ただ、それ以上にあの子の誇らしげな顔や、ここまでの境地に辿り着いたたいう事実がただただ嬉しかったなあ。
[坂井氏は7秒間黙って目をつぶる]
坂井氏: ああ、すまないね。それでな、どうやって描いたのか聞いてみたんだよ。ただあの子も『よく分からない。ただ頑張って描いていただけ。』なんて言ってたかなあ。不思議なこともあるものだねえ。その時に、私は『これはここまで努力を続けた君に、神様がくれたプレゼントだろう。私にも少しおすそ分けしてくれないか。』と言ってこれを購入したんだよ。いやあ年甲斐もなく寒い台詞を言ったものですよ。
エージェント・千堂: いや、█████さんもそのように言われて嬉しかったのではないでしょうか。
坂井氏: そうだといいねえ。それでな、その後しばらく経ってからかな。自分の作品を多くの人に見てもらいたい、といって旅に出て行ったよ。絵葉書みたいなものはよく送ってくれるけど、こちらからはなかなか連絡が取れなくてね。あの子は絵のことになると周りが見えなくなるから色々心配なんだけどね。
エージェント・千堂: わかりました、ありがとうございます。最後に、このような形で美術品が燃えてしまった訳ですが、それについては。
坂井氏: あれは私が悪いんだよ。あの日、あの子の絵の隣に、最近買った別の絵を飾っちゃったんだよ。いつもは周りに絵の無い特等席に飾られていたから、面白くなかったんじゃないかなあ。あの子は真面目すぎるところがあるから、嫉妬されちゃったのかもねえ。まあ、熱意ゆえの失敗を私は咎めたりはしないよ。ただ、次の作品はタダでもらうとしようかねえ。[笑い声]
<録音終了>
このインタビューから、SCP-1496-JPを作成したのは█████氏(以下、SCP-1496-JP-A)であることが判明しました。また、SCP-1496-JP-AはSCP-1496-JPの売買あるいは頒布を行っている可能性があります。これを受け、収容チームはSCP-1496-JPの回収およびSCP-1496-JP-Aの捜索を開始しました。
補遺1: 2019/4/12にブラジル・リオデジャネイロにて、SCP-1496-JPを所持する人物・C█████氏を発見および接触に成功しました。C█████氏は、2018年5月から10月までの間、SCP-1496-JP-Aに部屋を貸していたことがわかっています。以下は、C█████氏へ行ったインタビューの記録です。C█████氏へは「SCP-1496-JP-Aが行方不明になっているため捜査をしている」という前提でインタビューを行っています。
対象: C█████氏
インタビュアー: エージェント・千堂
<録音開始>
[重要度が低いため割愛]エージェント・千堂: █████さん2の捜索のため、詳しい話を聞きたいのですがよろしいでしょうか?
C█████氏: ああ分かった、何を話せば良い?
エージェント・千堂: 昨年、█████さんがブラジルからどちらへ出発したかご存知ですか?
C█████氏: すまない、そこは聞いていないんだ。ただ芸術が盛んな国に行ったんじゃないかな。
エージェント・千堂: そのように思うのは。
C█████氏: ああ、あいつはとんだ芸術バカだったからな。ここに来たその日から毎日、あそこの美術館3と博物館4に行って何時間も帰ってこないくらいにはね。んで、帰ってきたら部屋に籠って絵を描いて、たまに出てきたと思ったらニコニコしながらできあがった絵を見せに来る。食事中も笑いながら楽しそうに絵の話をしてくる。芸術と相思相愛みたいな楽しいやつだったよ。
エージェント・千堂: そのようですね。
C█████氏: だから、あいつが行くとしたら芸術が盛んなところ、フランス、スペイン、オランダ…その辺りじゃないかな。
エージェント・千堂: 貴重な情報をありがとうございます。ちなみに先程の絵は█████さんから購入されたものですか?
C█████氏: いや、あれはあいつから貰ったんだ。ってか、なんでそんなことを聞くんだ?事件に関係あるのか?
エージェント・千堂: 絵を狙った誘拐の可能性もありますので念の為。
C█████氏: ああ、まあそうか。あれはあいつがここを出る前に俺にくれたんだよ。毎日あいつの芸術トークに付き合ってやったし、部屋も貸していたからそのお礼のつもりだったのかもな。
エージェント・千堂: わかりました、ありがとうございます。ちなみにこの絵画を他に知っている方はいらっしゃるんですか?
C█████氏: いない。普段は地下の書斎に飾ってあるから見られたこともないよ。
エージェント・千堂: 口外されなかったんですね。
C█████氏: あれを貰う時、あいつから「これは本当に芸術を理解した信頼できる人にお渡ししています。なので、他の方には言わないでください。」と言われたんだ。だから俺は言ってない。
エージェント・千堂: 分かりました、ひとまず今回の調査は以上になります。ご協力ありがとうございました。
C█████氏: ああ。[5秒沈黙]ちなみに一つ聞いてもらってもいいか?
エージェント・千堂: 大丈夫ですよ。
C█████氏: 悪いな。あいつのことだけど、早く見つけてやってくれ。でないと何かしでかすかもしれない。
[C█████氏は5秒沈黙する]
C█████氏: さっきあいつがリオを出ていったって話したよな。その出ていった理由、恐らくだけど、そこの博物館が焼けちまったからだと思ってる。知ってるだろ?去年の9月にあった火災5。あいつは毎日のようにあそこに通っていたし、あれだけ芸術を愛しているやつだからショックもデカかったみたいで。火事があって数日は部屋に引き篭もってた。そんで部屋から出てきたと思ったら、あいつはここを出国すると言ってきた。「ビザも切れるし、同じ場所にとどまっていたら新しいものは作れないから。」なんて強がっていたけど、本当はここにいるのが死ぬほどつらかったんだと思ってる。あの博物館の作品を自分の子供のように愛おしんでいたからな。それだけでふさぎ込むやつだ。行方不明と聞いて何だか心配でしょうがない。あいつが変な気を起こさないうちに何とか探し出してほしい。
<録音終了>
このインタビューの後、C█████氏に記憶処理を行い、SCP-1496-JPと同じ構図の絵画と交換した上でSCP-1496-JPを回収しました。このインタビューを基に、SCP-1496-JPを売買した範囲は先述の3国であるという目測を立て調査を開始しました。また、財団はブラジル国立博物館の火災とSCP-1496-JPとの関連性について調査を開始しました。
補遺2: 2019/4/15(現地時刻・CEST6)にフランス・パリのノートルダム大聖堂で発生した火災について調査中、新たなSCP-1496-JPが発見されました。
当時フランスでは、当事案が発生する前より教会を狙った破壊行為や盗難が相次いでいました。これらの事案は政府の方針に反対する組織あるいは関連する要注意団体が起こしているという可能性が示唆されており、現在も深刻な問題となっています。このような背景と、火災発生地が世界的に著名で影響力の大きい建造物であることを受け、当事案は、先述の反政府組織あるいは要注意団体による示威行為の可能性があるとみられていました。そのため財団は消火作業や近隣の交通整備と並行して、周辺地域の調査および情報収集を行っていました。
その調査の中で、現場付近に住むF█████氏宅にて新たなSCP-1496-JPを発見し、回収の上収容に至りました。新たに発見されたSCP-1496-JPの所有者であったF█████氏にインタビューを行ったところ、坂井氏同様SCP-1496-JP-AよりSCP-1496-JPを購入したこと、C█████氏同様、口止めをされていたため、誰にも口外していないことが判明しています。
SCP-1496-JPの発見されたF█████氏宅は、火災の火元と近いこと、SCP-1496-JP-aが製品パッケージやポスター等に進入できる性質があることから、SCP-1496-JP-aが監視の目を逃れ、当事案を発生させることが十分に可能であるとされました。
先日のブラジル国立博物館の火災現場付近でもSCP-1496-JPが発見されたことから、SCP-1496-JPはブラジル国立博物館およびノートルダム大聖堂の火災に関与している可能性があるとされました。
SCP-1496-JP-AがSCP-1496-JPの頒布を大規模に行った場合、その異常性による美術作品への被害が増加し、各地の文化が破壊される懸念が生じています。以上のことから、SCP-1496-JPの回収およびSCP-1496-JP-Aの捜索が最優先事項とされました。
2019/4/21追記: SCP-1496-JP-Aが発見されました。詳細は補遺3を参照してください。
補遺3: 2019/4/20にSCP-1496-JP-Aが発見されました。発見場所は山形県の██山にある山小屋です。当日、麓の住人から「山から火の手が上がっている」と通報を受け、地元の消防団に潜入していた財団のエージェントが山小屋へ急行しました。消火作業の後、エージェントが山小屋へ潜入したところ、SCP-1496-JPおよび焼死体が発見されました。SCP-1496-JPにはガソリンが染みこんでいましたが、燃焼の跡はみられませんでした。ただし、SCP-1496-JPは発見時、焼死体に抱きつかれるような形になっていたため、焼死体から発生した煤や血液による汚れが付着していました。また、SCP-1496-JPには火災の間強く抱かれていたとみられ、その形跡として爪が食い込んだ跡が残り、額縁は内側に向かって歪んでいました。
また、現場からは耐火性の金庫が見つかっており、金庫内にはSCP-1496-JP-Aの名が入った日記帳と手書きの作品リストが発見されました。
以下、回収された日記から抜粋した文章になります。
2017/8/22
坂井さんは本当に良い方です
本来は私の方がお礼を言わなければいけないのに、絵を見るたびにいつもありがとうと言ってくれる
もっと頑張って描かないと
それこそ動き出しそうなくらい迫力のある絵を描いてお見せしたい
2017/12/14
描けない
描けない
無理つらい
今描いているの以外全部破った
2017/12/15
朝起きてぼーっとしながら絵を描いてたら
急に絵が動いてくれた!
私の理想だったものが目の前にある!すごい!
何となくふわふわ動いてるし夢かな
夢でも良い夢かも
明日も動いてたら坂井さんにお見せしよう
2017/12/16
始めて誰かに絵を買っていただきました
私の最高傑作
坂井さんも喜んでくれたみたいで良かった
この前の日記が恥ずかしすぎて消したい
誰も見ないものだから消さないけど
それにしてもあの絵は不思議、もう一回書こうと思っても描けない
夢じゃないよなー、なんでだろう
2018/9/2
近くで火事があったみたい
C█████くんが様子を見に行ってくれた
今私はC█████くんに言われて、部屋にいる
今日は絶対出るなと言われたけど、なんであんなに強い口調だったんだろう
外は危ないのかな
2018/9/3
博物館が燃えたって
[以下、乱雑に塗りつぶされており、判読不可]
2018/9/8
ここ数日何もやる気が起きないけど、ずっとこうしてられないし絵を描いた
自然と手が動いて、気が付いたらあの子7が出てきてくれた
びっくりした
不思議でしょうがなかったけど、何故か安心した
もう会えないと思ってたから
また来てくれてありがとう
2019/4/14
久しぶりの日本だー
フランスと街並みが全然違うね面白い
それにしてもちょっと時差ボケがひどい
久しぶりに坂井さんに会いに行きたいけど
この時差ボケが治ってから…
今日はおやすみなさい
2019/4/16
パリのノートルダムが燃えた
信じられない
この前リオの博物館燃えたばっかりじゃん
何で?
ショックが大きい…
2019/4/17
ショックから立ち直れてないけどぼーっと描いていたら
またあの子が出てきてくれた
彼らはいつもふよふよと漂っている、何も考えてなさそう
なんだか落ち着いてきた気がする
また助けられたな
いつも私を助けてくれてありがとう
2019/4/18
違うと言って欲しい
あの子の隣にキャンバスを置いて、絵を描いてたら
普段そんなことしない 汚れてしまうから
でも、あれを見ていないと何も描けなさそうだったから、そばにいて欲しくて
そうしたら火の付いた蛾がキャンバスに入ってきて絵の中の家が燃えて
慌ててキャンバスに青の絵の具を塗ったら消えて
嫌な予感がして絵の横に別の絵を置いたら
蛾はやっぱりキャンバスに飛んで、絵の中を燃やし、燃えた
いや、これは夢。今日はもう落ち着いて寝よう、明日になれば変わるはず
2019/4/19
良く考えたらリオの火災も私がいた時
偶然じゃない気がする
もういやだ
2019/4/20
あなたは悪くない
悪いのは私だから
もう耐えられない
ごめんね
いままでありがとう
でも最後も私と一緒にいて
これ以降の記述は存在しません。
筆跡鑑定の結果、SCP-1496-JPの作品リストと日記の筆跡が一致したため、この日記はSCP-1496-JP-Aのものであるとみられています。また、焼死体の歯型を照合した結果、この焼死体はSCP-1496-JP-Aであるとされました。現場に残った証拠や当日の状況を鑑みた結果、SCP-1496-JP-Aの死因は自殺であるとされています。
先述の日記に記載された内容をもとに実験を行った結果、SCP-1496-JPの大まかな性質が判明することとなりました。現在も長期実験が進行中です。先述の作品リストには作品名と作品の売却あるいは贈与先が記載されていました。この記述をもとに、残りのSCP-1496-JP計2点と非異常性の絵画計409点の回収が完了しました。これに伴い、オブジェクトクラスがSafeに変更されました。なお、SCP-1496-JP-Aが販売したとみられる非異常性の絵画は、調査を行った後購入者へ全て返却しました。
補遺4: 財団の調査の結果、ブラジル国立博物館およびノートルダム大聖堂で発生した火災の原因は、SCP-1496-JPではないことが判明しました。
2019/5/18に提出された『SCP-1496-JPの長期観察における中間報告』によると、SCP-1496-JP-aはほとんどの時間、SCP-1496-JP中心部に描かれた炎の周囲を飛び続けており、SCP-1496-JP外へ出た時間は平均して1日20分ほどであったとされています。この理由は現在も調査中ですが、SCP-1496-JP-aが一般的なガと同様に「走光性」を持つためではないかと考えられています。また同報告によると、SCP-1496-JP-aの飛行距離は平均0.9mで、最大でも3.1mでした。そのため、他の芸術作品がSCP-1496-JPに近接していない限り、SCP-1496-JP-aが他の芸術作品に進入する可能性は極めて低く、事件当時の状況を鑑みても、SCP-1496-JPが博物館および大聖堂の火災に関与した可能性はないとされました。
出火原因は、火元の損傷が激しかったこともあり現在も明らかになっていませんが、工事用エレベーターの電気回路のショート、禁煙区域での喫煙、あるいは煙草の不始末といった人為的なミスによるものである可能性が高いと考えられています。