アイテム番号: SCP-1503-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1503-JPは、標準的な低脅威度物品保管用収容房に2機の非物質変異無効装置(nPDN)を取り付け収容します。また、非実体存在補足のために新たに有効な手段が提言された場合、サイト管理者の許可の下、導入されます。
SCP-1503-JPの異常性発現の記録のため、SCP-1503-JP収容室内は7台の監視カメラ、カント計数機によって常に監視、記録されます。その際、空間内またはヒューム値に特異な変化が現れた場合、対現実改変者用装備を着用し収容室内部の調査を行ってください。
説明: SCP-1503-JPは、画家の菊池██氏により手掛けられた油絵の肖像画です。F15号の規格のキャンパスの中心に、基本状態としてワンピースを着た30代ほどに見える女性が正面を向いており、背景には赤、紫、桃色ののチューリップの花畑と青空が描かれています。
SCP-1503-JPの絵は不定期に変化し、また元の絵へと戻ります。周期などの変化の規則は判明していませんが、双極的な変化が見られるため何かしらの要因があるものと思われます。
変化時期 |
変化 |
2002/06/08~2002/06/12 |
ワンピースの色、装飾の変化 |
2002/08/11~2002/08/16 |
麦わら帽子が書き足された。背景は向日葵の花畑に変化 |
2002/10/14~2002/11/1 |
女性がカーディガンを羽織る。背景は紅葉の山道に変化 |
2002/11/13 |
全面が水中のような質感になり、背景が深い青へと変化した。女性は変化無し |
2002/12/20~2003/01/12 |
女性がコートを着用。背景はイルミネーションに飾られた雪景色の街並みに変化 |
2003/01/13 |
前段階の変化から直接変化した。全面が炎に覆われたような絵に変化。女性はコートを着用した姿のままであるが変化無し |
2003/01/17~2003/02/12 |
背景が渡月橋と類似した橋の架けられた川場の風景へと変化。女性は変化無し |
2003/02/13 |
前段階の変化から直接変化した。背景が荒野へと変化。女性の首に縄のようなものが括られ上部に先が伸びていたが女性に特に変化無し。 |
2003/02/14~2003/03/12 |
背景が電車の車内の風景に変化。車窓には海の風景が広がっている。女性は変化無し |
2003/03/13~2003/05/17 |
前段階の変化から直接変化した。背景が所々に汚れがみられる木製の壁に変化。女性の証言から菊池██氏のアトリエであると思われる。女性は変化無し |
2003/05/18~ |
詳細は追記を参照 |
また、SCP-1503-JPに描かれている女性は自我を有しており、女性を起点として未知の方法を用いた視覚、聴覚、嗅覚を持ち、発声によるコミュニケーションを行うことができます。この特性よりインタビューを行ったところ、SCP-1503-JPが菊池██氏の妻の菊池██女史の30代のころの姿の肖像画であり、断片的ではありながら菊池██女史の記憶、及び自身が製作されていた時の記憶を有していることが判明しています。
対象: SCP-1503-JP
インタビュアー: 田嶋研究員
付記:SCP-1503-JPの収容後初めて行われたインタビュー。この時点では変化の特異性について判明していませんでした。
<録音開始, 2002/07/02>
田嶋研究員:初めまして、貴女のインタビューを担当します、田嶋です。では貴女のことについていくつか質問をさせていただきます。
SCP-1503-JP:ええ、いいですよ。でもその前にいいでしょうか?どうして私はこの部屋に移されたんですか?確かに前の美術館の倉庫よりはマシだけれど。
田嶋研究員:我々は貴女のような特殊な物を保護する活動を行っていまして、貴女も展示されて騒ぎになる前に同様に保護させていただきました。
SCP-1503-JP:そういうことですか。あの馬鹿息子が「全部美術館に寄付」だなんて言い出さなければこんなことには。[溜息]
田嶋研究員:やはり貴女は菊池██先生の奥様の肖像画、ということでよろしいでしょうか?
SCP-1503-JP:はい、そうですよ。結婚した頃の写真から描いたみたいだけど、わかるんですね。
田嶋研究員:貴女を保護した後、失礼ながら菊池先生のアトリエを調査させていただきましたので。[3秒沈黙] では、貴女は今どのくらい記憶をもっていますか?
SCP-1503-JP:そうですねぇ、とりあえず一回死んだのは覚えてます。[5秒沈黙] その前は大まかにぼんやりとしか思い出せなくて。あの人が私を描きだしてからだったら覚えてるんですけど。
田嶋研究員:ありがとうございます。では、貴女が描かれた時のことについて話していただけますか?
SCP-1503-JP:気づいた時にはムスッとした顔して私を描いてるあの人を見ていました。でも最初はこんな風に喋れたりはできなくて精々目で追うのが関の山で。次第にそれも楽になって、次は音が聞こえるようになってきて[3秒沈黙]でも喋れるようになった頃にはもうあの人は亡くなってました。
田嶋研究員:[10秒沈黙]ありがとうございます。では本日のインタビューはこれで終了です。
<録音終了, 2002/07/02>
終了報告書: 確定的ではありませんがSCP-1503-JPの自我や五感を有する特異性の発現は外部的要因のない偶発的なものであると推測されます。また、SCP-1503-JPの有する記憶についても生前の記憶をどこまで有しているのかについて更なる調査が必要であると思われます。
補遺: SCP-1503-JPの変化の特異性についてインタビューでの証言より、不明な非実体存在の関与が示唆されました。このインタビューを受け、SCP-1503-JP収容室においてヒューム値の計測による非実体存在の補足、及び捕獲を目的としたnPDNの設置が特別収容プロトコルに施行されました。しかし、現在までに背景の変化時に生じるヒューム時の瞬間的な上昇以外の変化は観測されていません。
対象: SCP-1503-JP
インタビュアー: 田嶋研究員
<録音開始, 2003/01/22>
田嶋研究員:お久しぶりです。では、今回は貴女の身に起きている現象についてお聞かせ願えますか?
SCP-1503-JP:現象というと、この絵が描き換えられてることについて、でしょうか?
田嶋研究員:以前のインタビューの際に我々が貴女を保護する以前からそのような現象が発生していることは伺いましたが詳細についてはまだ十分ではありませんので。
SCP-1503-JP:わかりました。と言っても信じてもらえないとは思いますが。以前、見えない何かがいるって話はしましたよね?
田嶋研究員:はい、以前のインタビューで言われてましたね。その見えない何かがあの塗り替えを行っているということでしょうか?
SCP-1503-JP:えぇ、いつも気が付いたら変わってしまっているんですけど、そのとき必ず誰かに見られているような感覚がして。でも嫌な感じのものじゃなかったんです。[3秒沈黙]でもこの間のは違って。
田嶋研究員:水中のような絵に変化した日のことですね。確かに以前の記録と比べかなり異質なものでした。どのような違いを感じたのかお聞かせ願えますか?
SCP-1503-JP:最初、絵がまた変わって周りが変わった時、私、とても驚いてしまったんです。いつもとはずいぶん違う変わり方ですし、何より水の中だったので溺れてしまうと思って。[5秒沈黙]でも特に問題ないことに気づいてから落ち着いて、また何かが回りにいるんじゃないかって探そうとしました。そしたら見ている、って感覚は確かにあったんです。いつもとは違って、とても怒っているような感じで。でも今まで来ていたものとあの日見ていたものは違うと思うんです。たぶん、間違いなく。ごめんなさい、具体的じゃなくて。
田嶋研究員:お答え頂きありがとうございます。我々としましてはまだその存在を観測すらできていない状態です。ですので今回の情報を踏まえ、再調査をさせていただきたいと思います。では、今回のインタビューはこれで終了です。
<録音終了, 2003/01/22>
終了報告書: SCP-1503-JPの証言通りであるならば、SCP-1503-JPの特異性は自我を有していることのみであり、変化に関しては不明な非実体存在の影響によるものであるということになります。現状、SCP-1503-JPの証言は確たる証拠とはなりえません。ですが、わずかでも可能性がある以上、非実体存在の確保、収容の取り組みは行う必要性があると判断します。
補遺2: SCP-1503-JPの変化が過去に類を見ない形で長期間固定されました。それに際し、インタビューが行われ変化についての証言が得られました。しかし、インタビュー実施日の深夜、収容室内にてSCP-1503-JPを起点とすると思われる異常事態が発生しました。詳しくは各記録を参照してください。
対象: SCP-1503-JP
インタビュアー: 田嶋研究員
<録音開始, 2003/05/17>
田嶋研究員:では、今回は貴女の背景の変化についてお聞かせ願えますか?
SCP-1503-JP:はい、今私が見ているこの風景、この部屋とても懐かしく感じて…。まず間違いなくここはあの人のアトリエだと思うんです。でも、怖いんです。ずっと睨んできてる。
田嶋研究員:睨んできてる、というのは以前の見えない何かですか?
SCP-1503-JP:そうなんです。でもこの風景に変えたのは、最初からいた人じゃなくて背景を水中に変えたりした方なんです。だからこの背景にした意図が読めなくて。[3秒沈黙]
田嶋研究員:なるほど。何か些細なことでも構いませんので心当たりはないでしょうか?
SCP-1503-JP:わからないです。私は今まであの今も私を睨んでいる何かは私を殺したいんだろう、と思ってましたから。なんでこの風景に変えたのか。[沈黙]
田嶋研究員:ふむ[4秒沈黙]では、この背景について詳しくお聞かせ願えますか?
SCP-1503-JP:たぶんですけど、この風景、かなり昔のアトリエだと思うんです。それこそあの写真を撮った時ぐらいの。なのでとても懐かしい気持ちというか、あの頃が思い出されてしまって。
田嶋研究員:記憶が戻ったのですか?
SCP-1503-JP:いえ、戻ったというか映像を見ているような、風景がぽつぽつと現れる感じです。締まりのないプロポーズ、指輪を買うお金がないからって代わりに貰ったチューリップの花束、あの人が賞を取った日。みんな、この部屋でしたから。でも、この部屋に居ると少し悲しくもなります。あの人に完成して貰いたかった。
田嶋研究員:完成とは何のことでしょうか?
SCP-1503-JP:私、というかこの絵です。私はまだ仕上げまで終わってないみたいなんです。
田嶋研究員:そうなんですか?以前調べさせていただいた際に工程的な点も調べたのですがそのような点は見られませんでしたが。
SCP-1503-JP:あの人が最期の日に言ってたんです。「仕上げは明日だ」って。なので詳しくはわからないけれど、私は出来上がってないんだと思うんです。
<録音終了, 2003/05/17>
2003/05/18午前12時から1時にかけて、SCP-1503-JP収容室内壁面に乱雑に塗布された多量の油彩絵具が出現し続けました。監視カメラの映像記録を確認したところ、SCP-1503-JPの前面部を起点として油彩絵具が出現していることが確認されました。油彩絵具の出現が終了する直前の映像記録は音声ノイズがひと際激しく、後に0.001秒単位のコマ送りで確認したところ、その内一コマにSCP-1503-JPの前に立つ人型のもやのような存在とうつぶせに倒れる人型存在が確認されました。
異常発生後、SCP-1503-JPを別の収容室へ移送し、調査を行ったところ微細な変化が見られました。
2003/05/18~ |
女性の左手薬指に指輪が書き足された。背景は初期状態のままである |
この変化により書き足された指輪が、SCP-1503-JP収容時に調査された菊池██氏アトリエにおいて、モデルであった写真とともに保管されていた指輪と酷似している点について関連性を調査しています。
追記:SCP-1503-JPは、事件記録1503-JP以降一切の変化及び発言がありません。現状、SCP-1503-JPの自我の有無が確認できず、異常性が消失したのかどうかが判明しないためSafeクラスオブジェクトとして割り振られていますが今後、長期的な内部ヒューム値の経過観測を行った後、変化が見られなければサイト管理者の決定に基づいてNeutralizedオブジェクトとして再収容されます。
ページリビジョン: 3, 最終更新: 10 Jan 2021 16:58