アイテム番号: SCP-1513-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 事象-1513-JPは、ISTL1を基準とした東側(東日本)にのみ発生するため、財団による精力的な活動はこの地域に対して行われます。
ISTLに沿った形で設置されていた周波数変換所群は、オブジェクトの確認後財団の管理下となりました。各周波数変換所は便宜上サイト-81KI群として扱われており、これらサイトの設備は依然「周波数変換所」として偽装されています。
機動部隊つ-5("電灯処分業者")は事象-1513-JPの発生確認を任務としており、事象の確認次第、機動部隊つ-5は配備され、SCP-1513-JP-1の処理とSCP-1513-JP-2の回収を行います。SCP-1513-JP-2は、記憶処理ののちに解放されます。
説明: SCP-1513-JPは日本国内の電線路のうち、東日本に位置するものに対しての呼称です。SCP-1513-JPが送電した電流を使用し点灯された照明のうち、事象-1513-JPと指定されている現象が不定な地点で、不定期に発生します。
東日本のみに事象-1513-JPが発生する理由として、当該地域の商用電源周波数が50Hzであるためと現在断定されています。商用電源周波数が60Hzである西日本では事象-1513-JPの発生は確認されておらず、前述の施設で周波数の変換が行われていたため、発生地域が東日本のみに抑えられていたと推測されています。この特性は現在収容プロトコルに利用されており、日本国における周波数の60Hzへの統合は財団により現在計画中です。
事象の対象となる照明は、いくつかの例外はあるものの、民家内2に取り付けられたものが多い傾向にあります。事象-1513-JPの発生した照明はSCP-1513-JP-1と指定され、SCP-1513-JP-1を視認した人物はSCP-1513-JP-2と指定されます。
SCP-1513-JP-1は、SCP-1513-JP-2の精神に対し特定の影響を及ぼす異常性を持っています。SCP-1513-JP-2は視認以降、ドイツ民主共和国に対して愛国感情を抱くようになり、またそれと並行して反日感情を抱くようになります。SCP-1513-JP-2が日常生活においてこれらの思想を示すことは少ないですが、自身の匿名性が保たれている場合、あるいは周辺に自身と同じ思想を持つ人物のみが存在する場合、SCP-1513-JP-2はこれらの思想を示すことが確認されています。視認によりSCP-1513-JP-2が得た思想は、必要に応じた記憶処理剤により消去できます。SCP-1513-JP-1の異常性はSCP-1513-JP-1に電力が供給されなくなった時点で消失します。
2003/██/██、日本の匿名掲示板での親独感情と反日感情を記述した投稿が急激に増加したことで、SCP-1513-JP関連のアノマリーは財団の興味を引きました。その後、匿名掲示板へ投稿した利用者の殆どが東日本在住であることが判明したことから商用電源周波数の関連が疑われ、利用者が投稿を行った端末付近の照明が精神影響性を持っていることが確認されたこと、および後に行われた実験の結果、SCP-1513-JPの特性が判明しました。
現在SCP-1513-JPはKeterクラスに分類されていますが、これはSCP-1513-JP関連オブジェクトの収容が困難であるためであり、オブジェクト群による民間人への重大な被害はこれまでのところ確認されていません。
補遺1: 西日本と東日本の商用電源周波数が、それぞれ60Hzと50Hzとで異なっている理由として、明治時代に関東において交流送電への転換が行われた際、ドイツ国より50Hz仕様のAEG製発電機が導入されたことであると判明しています。日本に導入されたこの発電機が何らかの異常性を持っていた可能性があるとして、財団はその発電機の行方を捜索しています。 補遺2を参照してください。
補遺2: AEG製発電機の導入から現在までの間、小規模なものも含め親独・反日団体が存在しなかったかの調査が実施されましたが、それら団体が多数存在したのは1959年から1989年までの間であり、この事実から異常性の原因が導入されたAEG製発電機では無いことが判明しました。発電機の捜索は中断され、配置された人員は別の部門へ再配備されました。
この調査の実施中、それら団体の総数が1961年から徐々に減少していることが判明しました。ですが団体構成員の身元特定が困難であることと、調査結果から得られる利益が少ないことから調査は実施されず、減少の原因は未特定のままとなりました。
補遺3: 2018/05/19、日本国山梨県富士河口湖町・鳴沢村に存在する青木ヶ原樹海において、パトロールを行なっていた地元自治体の職員が、成人およそ3名分に相当する量の人骨を発見しました。その後の警察の調査の際に、発見地点の地下から約1██名分に相当する量の人骨が発見され、この事実は情報を入手した財団により隠蔽され、遺体は全て近隣の財団施設へ移送されました。
その後の調査の結果を踏まえ、これら人骨の身元は1961年~1989年までの間に行方不明になっていた人物の殆どであると推測されました。死因は未特定であり、財団はこれら人物が前述の親独・反日団体の所属であると推測しています。財団による精力的な調査が現在計画されています。
補遺4: 財団ドイツ支部で実施されていた、東ドイツ国家保安省第25局3関連文書の研究中、以下の文書が発見されました。この文書はSCP-1513-JPに関連した内容となっており、文書の内容から第25局がアノマリーの制作に関わったことが判明しました。
文書 01#: 補遺1513-JP-1-01
ベルリン、1957年10月07日
国家安全保障省
第25局
私から、25局の目的に関するある提案があります。
我々25局の目的は、アノマリーを使用した諜報行為やサボタージュなどの国の利益になる工作です。生身の人間がそれをするよりも、アノマリーを使用すればより効率的に、より効果的に、そして犠牲者を最小限に抑えることができます。
ですが、たとえアノマリーを使用したとしても、目的達成のための犠牲は生まれてしまいます。また残念なことに、アノマリーの暴走による本来は生まれる筈の無かった犠牲が発生することさえあります。これら犠牲は組織に対する重大な損害となり得、また士気の低下も起こり得ます。
そこで私は、1つある提案をします──それは他国の人間を任務に用いるというものです。
我々の所有するアノマリーを使えば、事実の隠蔽はある程度なら行えます。そして利用された他国の人間の数がその「ある程度」であれば、私のこの試みは25局の存在同様に公になることはありません。
私の提案の実施をご検討いただければ幸いです。返信をお待ちしております。
文書 01#: 補遺1513-JP-1-02
ベルリン、1957年10月10日
国家安全保障省
第25局
承認する。この提案は「プロジェクト・フライムート」として実施し、提案者のフークバルト・フライムートをプロジェクト指導者とする。
ただしプロジェクトは穏便に行うように。また、使用する他国民の人数は事実の隠蔽でカバーできる範囲内にすること。
署名:コンスタンティン・マーダー将校
文書 01#: 補遺1513-JP-1-03
ベルリン、1959年03月02日
国家安全保障省
第25局
お久しぶりです、将校。プロジェクト・フライムートの進捗報告を致します。
先日、私はアノマリーの制作に成功しました。これは50Hzの送電線により運ばれた電力を使用した電灯──電灯にした理由は、先進国の都心・近郊部であればどの民家にもそれが存在するからです──を、別のアノマリーへと改変するものです。アノマリーへ変化した電灯を視認した人間は、東ドイツへの愛国心の強い人間となり、それと同時にその人間の母国への誠意を失います。
そして私は、プロジェクト・フライムートの実施国として日本を選択しました。西ドイツより入手した情報によれば、日本はAEG製発電機の導入によりフォッサマグナの西辺より東と西で周波数が異なっているとのことであり、導入がなされた東側は、東ドイツと同じ50Hzです。標準周波数として50Hzを採用している国家は、他にも中華人民共和国などがありましたが、国家面積が狭く、人口が多く、そして送電網が充実しているという点で、中華人民共和国などの国家ではなく日本を採用致しました。
後日、プロジェクト・フライムートを東日本にて実施致します。報告があれば追ってメッセージを送信します。
文書 01#: 補遺1513-JP-1-04
ベルリン、1959年03月03日
国家安全保障省
第25局
了解した。
署名:コンスタンティン・マーダー将校
文書 01#: 補遺1513-JP-1-05
東京、1959年05月07日
国家安全保障省
第25局
お久しぶりです、将校。プロジェクト・フライムートの進捗報告を致します。
東日本での25局エージェントの増産には、今のところ成功を維持しています。決して表に出すことはありませんが、彼らは東ドイツへの深い誠意を内面に秘めています。そして既に私は、彼らが形成した親独・反日団体との接触に成功しています──我々の指示さえあれば、彼らはいつでも行動を起こすことが出来るでしょう。
既にいくつかの人員は、東ドイツへ渡航済みです。私としては、数週間後にそれら人員と25局職員とを合流させる予定です。またそれ以外の人員の渡航も現在計画しており、基礎戦術学の継承も試みております。
我々側が任務を遂行する準備は、常に出来ています。未達成の任務があれば是非私にご一報ください。
文書 01#: 補遺1513-JP-1-064
ベルリン、1961年05月16日
国家安全保障省
第25局
こんにちは、将校。ご多忙中お手数をおかけしますが、プロジェクト・フライムートに関するある提案を私から致します。
現時点で、東日本におけるエージェントの増産進捗自体には異常は見られていません。ですが増産された人員、そして形成された団体の数は目を瞑っておけるものではなくなってきており、またプロジェクト・フライムートの主導者であるフークバルト・フライムートの権力も、団体増加に正比例するように拡大しています。
調査資料にもある通り、日本において超常組織が存在していない訳"ではありません"――JOICLや東弊重工、更には財団や世界オカルト連合などの危険性の高い組織も存在しています。彼らの情報網であれば、プロジェクト・フライムートの存在はそれほど時間が経たないうちに認知されるでしょう。そしてそれは、同時に第25局の存在の判明を意味します。
私は、プロジェクト・フライムートの凍結、およびその主導者であるフークバルト・フライムートの抹殺を提言します。彼は最早、我々の同志ではなく、我々の前に立ちはだかる障壁となっています。情報漏洩の可能性だけでなく、その軍事力から謀反した場合の被害も甚大なものとなるでしょう。
「戦勝こそ美徳」とする人間は、最早この東ドイツには不要と考えます。
文書 01#: 補遺1513-JP-1-07
ベルリン、1961年05月17日
国家安全保障省
第25局
承認する。フークバルト・フライムートの抹殺のため、専用の人員を配備する。
署名:コンスタンティン・マーダー将校
文書 01#: 補遺1513-JP-1-08
ベルリン、1961年05月18日
国家安全保障省
第25局
将校の快い承諾に感謝申し上げます。配備された人員は、すぐさま日本に向けて渡航させます。
また追加で提案なのですが、フライムートが過去接触していた団体構成員の抹殺も提言します。東ドイツへの忠誠心は我々側にも必要ではあるものの、盲信は返って逆効果となり、またその勢力およびフライムートへの忠誠から、フライムート殺害後の反乱が予測されます。
そのため私は、団体構成員殺害のための人員を追加で日本へ渡航させることを希望します。殺害についてですが、これは前述の団体の察知を防ぐため、定期的に、長い時間をかけて行うべきでしょう。殺害手段や遺体遺棄の場所については追って提案します。
文書 01#: 補遺1513-JP-1-09
ベルリン、1961年05月20日
国家安全保障省
第25局
承認する。団体構成員抹殺のため、専用の人員を配備し、作戦は穏便に行うものとする。
署名:コンスタンティン・マーダー将校