SCP-1516-JP
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収容前のSCP-1516-JPの子実体

アイテム番号: SCP-1516-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1516-JPのサンプルはサイト-8103の標準バイオハザード物質収容室に収容されます。収容室内部は-10℃以下に保ち、胞子体から第2変形体までのサンプル及び子実体の各部位のサンプルは、それぞれレベル3冷凍ユニットに冷凍状態で保管してください。職員は収容室に入室する際にはクラスC防護服を着用し、退室時にはクラスC低温処理と20日間の隔離を受けなければなりません。キャリアーとなった職員が発見された場合は手順・ハムレットを実施してください。その他の点に関してはレベル3バイオハザード物質取り扱い手順に準じます。

新たなSCP-1516-JPの発生に備え、NPO団体に偽装した調査チームによる巡回調査と、偵察衛星"牡丹"による地上の監視が実施されています。SCP-1516-JPが発見された場合は周辺地域の閉鎖、及び機動部隊ひ-8("江戸の華")による該当地域の高熱処理とキャリアーの回収が行われます。

説明: SCP-1516-JPは人為的に生み出されたと考えられている異常な生物です。遺伝子操作の痕跡が見られることから、日本生類創研との関連性が疑われていますが詳細は不明です。ゲノム解析の結果から、SCP-1516-JPのゲノムはモジホコリ(Physarum polycephalum)のゲノムに677個の他の生物の遺伝子を導入したものであること、及び該当遺伝子のうち494個は以下の生物に由来する遺伝子であることが判明しています。

・ソメイヨシノ(Cerasus × yedoensis (Matsum.) A.V.Vassil. ‘Somei-yoshino’)
・ハナホウキタケ(Ramaria formosa)
・オオミスジコウガイビル(Bipalium nobile)
・センモウヒラムシ(Trichoplax adhaerens)
・フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)
・炭疽菌(Bacillus anthracis)
・ピュロロブス属(Pyrolobus)の一種
・通性好アルカリ菌の一種

残る183個の遺伝子の由来は現在も不明です。

SCP-1516-JPは変形菌と部分的に似た生活史を送る性別を有さない生物であり、形態と生態を段階的に変えながら成長します。各段階ごとの詳細は以下の通りです。 

名称 発芽からの時間(h) 形態 生態
胞子体 0 胞子。体色は透明な桜色。直径約8μm。 最初の形態であり、土壌、水中、生物(以下キャリアー)の体内のいずれかの環境下で微量の水分を吸収することにより発芽し、アメーバ体を放出します。
アメーバ体 0.1~3 アメーバに酷似。体色は透明な桜色。体長約16μm~32μm、体高約10nm~15nm。 不定形の単細胞生物であり、食作用によって他の微生物や血球成分を捕食して成長します。
接合体 3~7 平板動物目(Tricoplaciformes)の特徴とアメーバの特徴を併せ持つ。体色は半透明な桜色。体長約150μm~2mm、体高約10nm~約1μm。 複数のアメーバ体が接合することで群体を形成します。各アメーバ体は融合を初め、やがて個別の機能を持つ細胞へと変化します。
変形体 7~14  
三岐腸目(Polycladida)的の特徴と平板動物目の特徴を併せ持つ。体色は桜色に桃色の斑、ソメイヨシノの花弁が集積した状態に酷似する。体長約2mm~30cm、体高約1μm~約1mm。
接合体の変態が完了した形態であり、半不定形の疑似的な多細胞生物です。1つの群体を1個体として見た場合背と腹の区別を有し、背側表面は繊毛上皮細胞から、腹側表面は繊毛上皮細胞と腺細胞からなります。器官は有していません。高い移動能力を持ち平面、垂直面を問わずに、体表の繊毛を用いて自身の体長の約970倍の距離を1時間で移動することが可能です。陸上での行動が可能であり、野外では未知の方法により補足した動物に、生物の体内では臓器に取り付き、腺細胞から分泌する極めて強力な消化酵素を含む消化液で取り付いた部分から融解させ、それを全身で飲作用により取り込み養分とします。ほぼ全てのキャリアーがこの段階に至って初めて自身の体内のSCP-1516-JPの存在に気付きます。
第2変形体 14~48 変形体と同様。体長約30cm~400cm、体高約1mm~100mm。 一定以上に成長した変形体を脅威度の違いから便宜上第2変形体と呼称します。この段階に成長するまでの過程でキャリアーは臓器損壊に起因する死因により死亡し、SCP-1516-JPは死亡したキャリアーの体表を食い破り体外へ脱出します。第3変形体は成長の為の養分を得るために、人間を含めた大型動物に対しても積極的に襲い掛かります。約300~400cmの大きさに達した第3変形体は子実体への変形を開始します。
子実体 48~ 固着性の独立栄養生物。桜色は茶褐色。体高約15m、直径約30~100cm。 SCP-1516-JPの最終形態であり、それまでの形態と異なり植物的な特徴を有し、地中の根状の構造体から養分を含んだ水を吸収することで生命活動を維持します。体表の"幹"と"枝"に相当する部分は、繊毛上皮細胞が変化した表皮細胞からなっており、軽火器による攻撃を無効化するほどの硬度を持ちます。年間を通してソメイヨシノの花弁に酷似した外見の胞子嚢の形成と無性生殖による胞子の形成、散布を行います。

SCP-1516-JPは脳を持たないにも関わらず疑似的知性1を有しており、学習や最短経路の算出、脅威対象の特徴の記憶及び判別、状況の判断などを行うことが可能です。SCP-1516-JPの疑似的知性は成長に従って高度になるものであり、第2変形体に至ってはごく下等な知的生命体であるかのように行動します。

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SCP-1516-JPの第2変形体

SCP-1516-JPの胞子から変形体までは風・水・キャリアーの移動などのあらゆる要因によって拡散することが可能であり、地上・土壌中・水中・生物の体内のいずれの環境下においても生存・増殖することが可能です。またSCP-1516-JPは薬物・強酸・強塩基・放射線・乾燥・飢餓に対する強力な耐性に加え、休眠状態になることでさらに耐性を高める能力を有しており、加えてプラナリア2と同様の再生能力も有するため、完全に死滅させるためには297℃以上の高温か-21℃以下の低温による処理に代表される手段を用いなければなりません。外科的処置によりキャリアーの体内からSCP-1516-JPを除去することは可能ですが、成功する確率はSCP-1516-JPの性質上限りなく低いため、キャリアーに対して取り得る手段は一部の例外的な状況を除き終了措置のみです。

SCP-1516-JPの大規模な発生は生物群集に壊滅的なダメージを与え、発生地域の生態系を崩壊させると考えられており、またSCP-1516-JPは生態系が壊滅した地域においては養分の不足などから生存することが出来ないとも考えられています。仮に都心でSCP-1516-JPが発生した場合何も対策を講じなければ、発生から███日の時点で日本の生態系は壊滅し、███日の時点で日本の陸地からSCP-1516-JPを含む生物の97%以上が消滅することがコンピューターモデルを用いた実験により証明されています。


付記: ███山の調査の結果、山中から██村役場職員、畠 ██の遺留品と見られる文書が回収されました。畠 ██は生前"██村むらおこし協議会"に所属していたことが確認されています。以下は回収された文書の一部です。
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