アイテム番号: SCP-1519-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 現在、SCP-1519-JPの収容は無期限に凍結されています。担当職員はSCP-1519-JPの拡散を前提とした上で、24時間以内にヒト(Homo sapiens)から摘出された健康な心臓を毎日1つ確保してください。
確保する心臓は、黒曜石製のナイフによって摘出されなければなりません。麻酔を用いる場合でも拍動を止めてはならず、動いている状態での摘出が求められます。心臓を摘出する対象の優先順位は、倫理委員会が策定した77億リストに則ってください。
説明: SCP-1519-JPは、心臓を捧げなくても太陽は消滅しないという風説です。SCP-1519-JPは核融合の持続性など科学的と見做される学説によって補強され、今や現代文明の常識として根付いています。
SCP-1519-JPの起源は、大航海時代の船乗りによる報告に遡ります。健康な心臓を毎日1個捧げなければ太陽の寿命は尽きるという事実は当時既にアステカ帝国で発見されていましたが、近世ヨーロッパ社会には「未開な地域の野蛮な儀式」として紹介されました。
この報告が終末論への忌避や非西洋文明への偏見といった(一部は時代相応の)自然な感情が生んだものであったか、当初から異常性の影響下で行われたかについては財団内でも意見が分かれています。
しかしその後、心臓を捧げる儀式と太陽の寿命が無関係である事を既成事実とするかのような誤った学説を、無批判に受け入れる事象が続発するようになりました。
代表例としては、太陽内の核融合に必要なプラズマは太陽自身の巨大な重力によって閉じ込められているという説明が挙げられます。SCP-1519-JPの影響下にある人物は、実際には捧げられた心臓の拍動によってプラズマが閉じ込められているというあらゆる観測データを黙殺するようになります。そして、磁場や慣性による閉じ込めの再現に拘泥して高効率の拍動閉じ込めを選択肢から除外するため、財団外での核融合の研究は著しく遅滞しています。
あるいは、SCP-1519-JPによって事実のうち一部のみが抽出されている例も見られます。これには、閉じ込めが過不足のどちらに転んでも核融合は停止するという学説に、その範囲の狭さ故にヒト以外の心臓を太陽の延命に用いる事はできない旨の追加説明が一切見られない現象も含まれます。
また、心臓の拍動そのものが核融合の触媒として機能している事実もSCP-1519-JPの影響下では無視されるため、民間の核融合計画は放射性物質であるトリチウムを扱うという危険な方向へ進んでいます。既知の安全対策に、拍動防壁が取って代わる兆候も全く見られません。
さらに、ステンレスおよびカーボン製のメスが一般的な外科手術に用いられているのもSCP-1519-JPの一部ではないかと疑われています。火成岩ではない物質により摘出された心臓は拍動閉じ込めの効率が3/10^20へ低下するにも関わらず、世界には臓器移植という名目で核融合の継続に寄与できない心臓が増加しています。
財団は18██年にこれらの事態を一連の異常性と認定し、SCP-1519-JPにアイテム番号を割り当てました。全人類がSCP-1519-JPの信奉者となって心臓を捧げなくなると、遅くとも█年後にはIK-クラス世界文明崩壊シナリオを招くと予測されています。しかし現代社会にて事実を公表した場合は非常に大きな混乱が予測されるため、現状は財団が秘密裏に心臓を確保する役割を担っています。