SCP-1529-JP
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SCP-1529-JP-1

アイテム番号: SCP-1529-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1529-JP-1及びSCP-1529-JP-2区域への一般人の立ち入りを禁止し、SCP-1529-JPの監視を続けてください。

説明: SCP-1529-JPは南緯43.097度、西経38.227度の海面から不定期に人型霊的実体が出現、高速で射出される現象です。 SCP-1529-JPは札幌市██区内に存在する6階建てのビル(SCP-1529-JP-1)の屋上部分に存在するクラスA・レベルⅡ人型霊的実体です。SCP-1529-JP-1は廃墟化しており、住民、従業員等は存在しません。SCP-1529-JPは日本語による発話能力を有しており、会話によるコミュニケーションが可能です。SCP-1529-JPは自身のことを高花 楓1と述べており、活性化時もSCP-1529-JP-1の屋上から離れる様子は確認されていません。

通常時、SCP-1529-JPは非活性化しており、SCP-1529-JP-1上には視認できません。SCP-1529-JPはSCP-1529-JP-1の屋上に人間(以下、対象者と呼称)が現れたときに活性化します。活性時、SCP-1529-JPは対象者の近くに出現し会話を試みます。この時肉眼によってSCP-1529-JPは成年女性の姿で視認可能です。会話の結果、対象者が屋上から去るとSCP-1529-JPは非活性化し消失します。

会話後に対象者が自殺の意思を見せた場合、SCP-1529-JPは対象者の背を押すしぐさを行い、対象者は落下します。落下による衝撃で通常、対象者は頸椎骨折、頭部挫傷による脳、脊椎損傷、内臓破裂等の要因で死亡します。

対象者の死亡後、対象者由来のものと思われる霊素が対象者の肉体から遊離し人型霊的実体に変化します。実体(以下、対象者思念体と呼称)はそのまま重力加速度で加速しながら鉛直方向に落下を続けます。ここで特筆するべき点は、対象者思念体は地球内核中心を突破後もその加速度を保ったまま直進を続けることです。加速を続けた対象者思念体はおよそ27分後に南緯43.097度、西経38.227度地点の海面(SCP-1529-JP-2)から地表を脱出します。2地表脱出後も対象者思念体は加速を続け、最終的に天頂方向に向かって大気圏から脱出します。現在最も地球から遠ざかっている対象者思念体は地球から7.72光年先、アンドロメダ銀河方向に向かって飛翔している事が確認されています。

SCP-1529-JP-2は20██/██/██にブラジル沖の海上を航行していたSCPS インディストラクタブルが海中から高速で射出される霊的実体を観測したことで確認されました。その後、SCP-1529-JP-1及びSCP-1529-JPが発見され、因果関係が確認されたことでアイテム番号の再分類及び特別収容プロトコルが改訂されました。

以下がSCP-1529-JPへの尋問の映像記録です。

尋問記録:

インタビュアー: 篠崎研究員

[SCP-1529-JPが篠崎研究員の背後から出現。記録を開始。]

SCP-1529-JP: こんにちは。貴方も死ににいらっしゃったの?

篠崎研究員: いや、そういうわけじゃなくて、話を少し聞きたいんだ。

SCP-1529-JP: (少し嬉しそうな様子になる)そう。それはいいわ。死にたがらない人とお話しするのは久しぶりだもの。それで?何からお話しすれば?

篠崎研究員: あの幽霊を空に打ち上げているのは君の仕業なのかい?

SCP-1529-JP: そうよ。でもそれって悪い事なのかしら。あの人たちに持ち掛けたのは私だけど皆喜んで落ちて、飛んでいったわよ。

篠崎研究員: いや、善悪は置いておこう。それよりも聞きたい。何のために君はこんなことをする?

SCP-1529-JP: 何のために……って言われたら彼らのためかしら。解放してあげたかったのよ。

篠崎研究員: 解放?

SCP-1529-JP: 私は、望まない親の元で、望まない幼少と望まない青春を過ごし、望まない就職をして望まない生に幕を下ろしたわ。最高に不幸な人生だった。そんな中、私にとって最後の幸せは何だったかわかる?

篠崎研究員: (少し考えてから)いや、残念ながら。

SCP-1529-JP: 飛び降りた直後の浮遊感。私の何もかもを縛り付けて抑圧していた重力もしがらみも束縛も全部剥がれて、私は生まれて初めて全てのものから自由になれたのよ。それはそれは気持ちがよかったわ。

篠崎研究員: でも、それは。

SCP-1529-JP: そう。それはたったの数秒。落下には必ず終わりがくる。加速して、加速して、加速して。衝撃が来て、殻が割れたわ。気が付いたらまたここにいて。そうして浮かびながら自分の肉が運び出されるのを見下ろして気づいたの。ああ、どこにも行けなかった、天国にも地獄にも私の居場所は無かった。私は死んでも、それでも縛られ続けるんだ、って。

篠崎研究員: それじゃあ他の人を霊体にして飛ばす理由は?

SCP-1529-JP: 私が死んでからここは『自殺の名所』と噂されるようになって、色んな人が死にに来たわ。続く死者は噂をさらに確かなものにしていって、今ではここに来る人は自殺志望者だけ。皆私みたいに人生に疲れ切って、絶望と失望の内に死んでいったわ。だから彼らの束縛を解いて、浮遊を続けさせてあげようって思ったの。たとえそれが落下の延長であっても。たとえそれが到底飛行と呼べるものではなかったとしても。

篠崎研究員: 君は彼らを止めようとは思わなかったのかい?

SCP-1529-JP: もちろん死なないほうがいいに決まってるわ。でも死んだ私が今更「死ぬな」だなんて恥ずかしいこと言えないわ。ここに来る人たちは今までさんざん苦しんできたから、しばしのバカンスを楽しむ権利はあるんじゃないかしら。

篠崎研究員: 彼らはどこに行きつくのかね。

SCP-1529-JP: さあ。南十字サザンクロスを超えて、天の川を渡り、星々の果てまで飛び続けるんじゃないかしら。

篠崎研究員: 君は飛ばないのかい?

SCP-1529-JP: 私は他の人の背中をやさしく押すだけ。ほら、私はもう死んじゃってるから、背中を押してはもらえないのよ。

篠崎研究員: ここにはもう自殺者が来ることはないだろう。君の役目は終わったんだ。だから、君はもうどうしようもなく独りぼっちになってしまった。

SCP-1529-JP: それでいいのよ、私は。最期の「飛びたい」という願いも叶わず未練となって、その未練が私を縛っている。つまり、もう行き止まり。飛べるようになったら私は結局消えてしまうでしょうね。だから私は順番を後ろに、後ろに追いやってここに残り続けたの。

篠崎研究員: それでもいいのかい?自分を孤独とは、仲間が欲しいとは思わないのかい?

SCP-1529-JP: ……遥か彼方に飛び立っていった、最期まで孤独だった彼らのことを誰か一人はこのちっぽけな惑星でずっと覚えててあげないと。それに、もし彼らが帰ってくるときに灯台が消えていたら困るでしょう?

篠崎研究員: ……さて、彼らは帰って来るのかね。

SCP-1529-JP: さあ、それは誰にもわからないわ。でも、星を見ながら土産話を待ち続けるのもロマンがあって悪くないじゃない?

[記録終了]

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