SCP-1543-JP
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アイテム番号: SCP-1543-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1543-JPの発生が確認された場合、周囲のエージェントは対象となった人物を迅速に補足してください。補足後は呼びかけ等を行い現象を速やかに終了させてください。現象終了後は周囲の映像機器を適切なカバーストーリーを用い押収、あるいは破壊し、対象者及び目撃者へ簡易記憶処理を行ってください。

説明: SCP-1543-JPは不定な周期で不特定な人物(以下、対象者)に発生する異常現象の総称です。

対象者に人種・性別・職業・門地・思想等、社会的・生物学的な基準は確認されません。同様にSCP-1543-JPの発生場所に地域的な偏りは確認されません。

これまで確認された中でSCP-1543-JPが発生する条件は以下の通りです。

  • 夏の日中(おおよそ午前10時から午後4時までの間)
  • 対象者が太陽の方向へ向かい歩行している
  • 対象者の前方に明確に歩行を阻害する障害物、地形が存在しない
  • 対象者の前方に第三者が存在しない

条件を満たしSCP-1543-JPが発生した対象者は前方へ向かい歩くことに段階的な高揚感を覚えます。これは軽微なものであり、第三者からの呼びかけ等で停止することが可能です。この結果、多くの場合対象者の足取り、立ち振る舞いは他者から見て堂々としたものになることが確認されます。

SCP-1543-JPの発生と同時に対象者の影は後方へ異常な伸長を見せ続けます。この伸長現象に伴い影がおおよそ対象者の身長の2倍を超えた時点で、影から多様な実体群が出現し、対象者を先頭とした行進を行います。実体の多くはヒトと似た体躯を持ちますが、巨大な節足動物、哺乳類等ヒト以外の生物と似た体躯を持つ実体及び、西洋伝承におけるドラゴン、日本伝承における鬼など空想上の生物、工業機械や乗用車など生物以外の実体も確認されます。実体群は全身を塗りつぶしたような黒色の体色を持ち、目撃者からは"影のようである"と表現されます。

SCP-1543-JPの発生から時間が継続し、影が伸びるほどに実体群の数は増加します。数の増加とともに、実体群は行動を変化させます。以下はその大まかな工程表です。

1543-JP行動変化表

発生数 行動 注記
1~5 対象者の背後を歩行する
6~10 対象者の背後を歩行しつつ、実体同士で会話のような仕草を見せる。実際に発話は確認できず 踊りのような仕草を見せるものも確認される
11~30 実体の周囲に楽器を模したと思われる影が出現。それらを用い、演奏のような仕草を見せる。また、対象者以外の周囲の物品、人物に会話などの干渉を開始する。発音は不明瞭 明確な踊りが発生。ただし、行進に支障をもたらすものではない。また、実体群は地面を踏み鳴らすように行動する
31~100 大規模な行進が開始される。周囲への干渉は過激になり、巨大な実体による脚部での踏み潰しを主にした攻撃が行われることもある 一部実体の下に楽器と推測される影が出現、音声は確認されないものの演奏するような仕草を見せる。また、実体の口元が変化。"笑顔を見せている"と表現される
101~ インシデント記録1543-JPを参照

SCP-1543-JPは対象者の前方に明確に歩行を阻害する障害物、地形、あるいは第三者が出現する、もしくは対象者がSCP-1543-JP発生以降、背後を振り向くことで即座に消滅します。この特性によりSCP-1543-JPは現在に至るまで大規模な収容違反に陥ったことはありません。しかし、各地の伝承に類似した記述が散見されることから、SCP-1543-JPの起源は文明以前に遡ることが可能であるといった仮説も提唱されています。また、近年の撮影機器発達の影響により、その潜在的脅威度は増加しているとされ、研究が進められています。

インシデント記録1543-JP: 20██/██/██、サイト-81██内において██博士を対象としたSCP-1543-JPが発生しました。これに対しSCP-1543-JPに対する研究を行う目的で、██博士を屋外収容エリアへ誘導、内部で行進を続けることによりSCP-1543-JPの変化を観察しました。以下はその記録です。

映像記録1543-JP

日時: 20██/██/██


《00:00:05》 ██博士の影が身長の2倍を超え、実体が出現

《00:38:52》 実体の総数が100を超える。多くがヒト型である一方、これ以前には確認されない特異な体躯の実体が若干出現。これらと収容されているオブジェクトの関係性を██研究員が指摘。██博士は非常に興奮した様子を見せる

《00:44:08》 実体の総数は132。巨大な実体によるエリアへの攻撃が増加。他実体もエリア内の物品を踏みつけることによって破壊している。ここで監視担当者が実験終了を指示。██博士は前進を行い続け、方向を転換。エリアを遮断する防壁の方向へ向かう。担当者の呼びかけには答えず

《00:46:11》 防壁に向かい██博士が歩き続ける。巨大な実体が踏み潰すことにより防壁を破壊。実体群から明瞭な笑い声が発生。のちの声紋照合により、これらの音声には複数名の職員の声が確認される。鎮圧部隊の緊急出動要請が受理される

《00:47:51》 機動部隊の到着、非殺傷武器で攻撃を開始。実体もそれに対抗し██名の機動隊員が負傷。██博士に対する非殺傷性攻撃の結果、██博士が背後を振り向きながら昏倒。これにより実体群は消滅。周囲の安全調査を行った後、非常事態宣言を停止

当インシデント時、負傷した機動隊員は実体の消滅と同時に負傷が回復したことが確認されています。

以下は██博士に対するインタビューです。

聴取ログ1543-JP-01 - 日付 20██/██/██

担当者: 高研究員

対象: ██博士

«再生開始»

(事実確認の為省略)

高研究員: やはりというべきですが、インシデント時の記憶ははっきりしないと?

██博士: ああ、連絡で110を超えた、といったあたりまでは覚えているんだが、そのあとのことはほとんど覚えていない。ただ、ひたすらに胸の中に喜びが満ちていたことと、未だにあれらが話しかけてきたことは思い出せる

高研究員: 話しかけてきた、と。これまでの事例では発生した実体の発言を理解したことはありませんでしたが、やはり数の問題でしょうか

██博士: だろうと思うが、これ以上の実験及び研究は避けるべきだろうね

高研究員: ではどのようなことを話しかけてきたのでしょうか

██博士: 踏み潰せと、ただそれだけを伝えてきた

高研究員: なるほど、暴力や攻撃を示唆するということでしょうか

██博士: [数秒沈黙]いや、おそらく違う。君はあの実体の映像を確認したね。何かに気が付かなかったか? たとえば、あの影が何者かであるとは

高研究員: いえ、個体の判別は

██博士: 私は最後に振り向いたときに見た。██博士や、エージェント・██、SCP-███-JP-1を

高研究員: それは…、ならば、それらが復讐のために? あるいは何らかの悪意を以て?

██博士: 違うのだと思う。あれらはそれを良しと笑っていた。私の足取りを行進曲で盛り立てていた。先に進め、その先が地獄であろうとそれが人のパレードであると。やむを得ない犠牲などはない、我々を踏み潰し前へ進め、それが人の道行きであるとよろこんでいた。だからあれは悪意ではない、よろこびに包まれた行進なのだと。そう、[数秒沈黙]私は思ってしまった

«再生終了»

インタビュー終了後、██博士は記憶処理を拒否しました。当インシデントを受け、SCP-1543-JPの研究は暫定的に凍結されています。

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