アイテム番号: SCP-1547-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-1547-JPは標準人型実体収容セルに収容します。SCP-1547-JPの非協力的な態度のため、SCP-1547-JPには一切の標準的娯楽を与えません。異常性行使の抑制を目的としてSCP-1547-JPの行動は4台の監視カメラによって24時間監視されます。異常性が行使された場合、引き起こされた事態を収拾するようSCP-1547-JPに求めます。
説明: SCP-1547-JPはサイト-81██所属職員の木戸博士であり、財団で20年のキャリアを持つ日本人女性です。SCP-1547-JPは20年のキャリアの中で、高い忠誠心と職務遂行能力によって財団に貢献してきました。しかし2024/12/10、非異常の感染症に罹患し1週間の欠勤を経た後より態度が豹変し、財団に対して妨害活動を行うようになりました。
当初、SCP-1547-JPの妨害活動はグラスを割る、遅刻するなどの小規模なものに留まっており、体調が回復しきっていないことを起因とするミスと見做されていました。しかし3日後には鍵を紛失する、報告書を紛失するなどのインシデントを起こすようになり、これらの件に関してSCP-1547-JPへの聞き取りが行われている最中に異常性を行使し他のアノマリーにDクラス職員2名を死傷させました。SCP-1547-JPはその場でこの行動について問いただされましたが、関与が自明であるにも関わらずあたかも自分は関与しておらず何も非が無いかのように振舞ったため、即座に警備員に取り押さえられ収容されました。この際にも警備員に危害を加えようと腕を振り払おうとする等の行為があったものの、幸いにも警備員に怪我はありませんでした。
SCP-1547-JPは収容下においても不規則に異常性を行使し様々な妨害活動を行いました、中でも重篤なものとして前項で記載したようなアノマリーを操作することによる収容違反の発生、実験中・プロトコル手順中の人員の殺傷が挙げられます。収容から2日後にはサイト-81██で発生した重篤なインシデントの原因・責任の約98%がSCP-1547-JPでした。偶然にもこの間、他の要因による重篤なインシデント発生数が極端に低下したためサイト-81██運営に影響は出ていません。この2日間の間、財団はSCP-1547-JPを拘束する、脅迫するなどして異常性を行使しないよう誘導を試みましたが成功していません。
聴取ログ: 2024/12/16、SCP-1547-JPの妨害活動はサイト-81██内のみに留まらず、周辺のフロント企業や財団サイトへの妨害活動が開始されました。事態の収拾にあたるためサイト-8181より収容スペシャリスト・竹内が派遣され、SCP-1547-JPへのインタビューに先んじて周辺の人間に聴取を行いました。
記録者: 収容スペシャリスト・竹内(以下、竹内と記載)
対象: 江村研究員(以下、江村と記載)
<抜粋開始>
竹内: それでは江村さん、収容時のSCP-1547-JPの様子を教えて下さい。
江村: はい。SCP-1547-JPは3日間で起こしたミス……特に4件の遅刻について説明を求められている最中でした。
竹内: 調書にも記載がありますね、この4件の遅刻の内訳はどのようなものでしょうか。
江村: 斎藤研究員、河合主任、飯村調理アシスタント、飛崎用務員の出勤時の遅刻です。いずれも悪天候やお子さんの急な発熱などと申告がありましたが、直接の原因がSCP-1547-JPであることは明らかです。
竹内: ふむ。これらの遅刻の原因がSCP-1547-JPにあることは何故分かったのですか?
江村: 自明だからです。
竹内: なるほど。そしてその最中にDクラス殺傷事件が起きたと。
江村: はい、SCP-1547-JPは遅刻について言い訳をしながら堂々とDクラス職員を殺傷しました。アノマリーを操ったんです。彼らは忠実なDクラス職員であることを評価されて安全な作業の担当に移るはずだったのに。
竹内: 具体的に、SCP-1547-JPはどのようにアノマリーを操ったのでしょう? 何か特別な動作がありましたか?
江村: SCP-1547-JPはただ話しているだけでした。
竹内: ただ話しているだけで、アノマリーを操ったと。
江村: そうです。そしてDクラス職員が死んだんです。だからあいつのせいです。Dクラス職員は気まぐれで殺していい存在じゃない、それなのにあいつは殺したんです。
<抜粋終了>
インタビューログ: SCP-1547-JP周辺の人間への聴取ののち、収容スペシャリスト・竹内によってSCP-1547-JPへのインタビューが行われました。
記録者: 収容スペシャリスト・竹内(以下、竹内と記載)
対象: SCP-1547-JP
<抜粋開始>
竹内: 私はサイト-8181より派遣された収容スペシャリストの竹内と申します。何があったのかあなたから説明してください、木戸博士。いえ、SCP-1547-JP。
SCP-1547-JP: ……。
竹内: SCP-1547-JP?
SCP-1547-JP: ……私にも何があったのか分かりません。ですが、私が何らかの異常性を有してしまったのは間違いないでしょう。
竹内: あなたの考えをそのままお聞かせください。
SCP-1547-JP: 私の考えでは、これはミーム的異常、あるいは認識災害による精神影響と考えています。限定的な改変能力という可能性もあります。……このサイトの職員は起こった全ての責任が私にあると考えています。
竹内: 江村さんにも聞きましたが、そのようですね。
SCP-1547-JP: ……他の方はもう私の言葉に聞く耳を持ちません。このままでは破滅的な結果に至ります。新たに異常存在を収容したとして、プロトコルの改善というものが出来なくなる。全て私のせいになるからです。
竹内: そうですね。このままでは全ての物事が停滞します。
SCP-1547-JP: 少なくとも対抗ミームの開発……私の持つ異常性を無視できるような性質のものが必要です。
竹内: ……一旦話を戻しましょう、あなたは自分が異常性を持っていると認識しているんですね?
SCP-1547-JP: はい、それは間違いないでしょう。しかし私にこれをコントロールすることは不可能です。
[約8秒間の沈黙]
SCP-1547-JP: ……ええっと、ともかく。竹内さんには至急この事態の詳細を持ち帰って頂き、対策チームを組織して頂きたいです。
竹内: ……何と言いますか。
SCP-1547-JP: はい。
竹内: あなたは異常性があるんですよね?
SCP-1547-JP: ええと、はい。先程も言ったようにそれは間違いないです。
竹内: でも自分にはどうにも出来ないと。そして自分のせいではないと。
SCP-1547-JP: ちょっと待ってください竹内さん、私が異常性をコントロール出来ていないのは事実です。だから私のせいではないということではあるんですが。
竹内: [SCP-1547-JPの言葉を遮る]つまり自分の責任ではないと言うんですね? アノマリーを開放して職員が死んだり怪我したりしてるのも自分のせいじゃないと。
SCP-1547-JP: 私は異常存在を開放したりしていません! 私は何もしてないんです、他の人がそう勝手に思い込んでしまう精神影響なんですよ! 私は悪くないんです! 私のせいじゃないんです!
[約5秒間の沈黙]
竹内: がっかりですね、あなたは本当に反省をしていないようです。
SCP-1547-JP: 違うんです。竹内さん。待ってください。
竹内: 結局あなたは自分のしたことを認めず、他人が不当に自分を責めているかのように主張している。あなたが原因で問題が起こっているのにも関わらずなぜ自分で対処しないのですか?
SCP-1547-JP: ですからそれは私のせいではないんです!
竹内: 言い訳はもうやめてください! イライラする。私が表情に出さないから、私があなたの話を信じて聞いているとでも思っていたんですか? 私がこんな田舎のサイトまで来たのはこのためだったんですかね? いいですか、あなたがやったことの責任はあなたが取らなければいけないんです。それなのにあなたは有害なミームを配布して責任を逃れることを考えていた、信じられません。全くもって。
[SCP-1547-JPが嗚咽する]
竹内: 泣けば許されると思っているんですか!?
[竹内が憤慨し、右手を机に叩きつける。これに反応しSCP-1547-JPが怯える]
[その様子を見た江村研究員と警備員が入室する]
江村: 竹内さん!
竹内: 江村さん、彼女は本当にダメですね。
江村: そうなんですよ、分かるでしょう? こいつは本当にダメなんです、なんでもかんでも人のせいにして、自分が悪いってことを理解出来ないんですよ。すぐに自分を正当化する言葉を出してくるんです。
警備員: 腹が立つのは分かりますが気を付けてください。私は殺されそうになりました、油断しないでください。
SCP-1547-JP: [嗚咽]お願いです、対抗ミームの開発と摂取をしてください、このままでは大変なことになります。
江村: だから何回も言ってるでしょう、お前がやったことはお前が責任を取るんだよ!
竹内: 本当にその通りです、こいつの為に他の職員が命をかけて対処に当たる必要など全くありません。自分で対処してください。
SCP-1547-JP: ですから。
竹内: [SCP-1547-JPの言葉を遮る]ですからじゃないんですよ。言い訳は不要です。あなたが起こした問題を解決してください。あなたの責任をあなたが負うのは当然のことです。
[以降、同様の問答が繰り返される。約4時間後、SCP-1547-JPはようやく自身の非を認め自身で対処することを確約した]
<抜粋終了>
事故記録: 2024/12/17、収容室内でSCP-1547-JPが自殺死体で発見されました。死因は噛み切った舌による窒息死です。収容室は4台のカメラで監視されていましたが異常な動きは記録されておらず、監視者に阻止されないために動作を最小限にして実行されたものと考えられています。この行動は財団の理念である「異常存在の保護」を失敗させることが目的であったと考えられています。忌々しいことにベッドのシーツにはSCP-1547-JPの血液で言い逃れを目的とした弁明が書き連ねてありました。中には「死ぬことで解決する」等と書かれており、死ねば許されるとでも思っているらしいことが察せられ、読んだ人間は怒りを禁じ得ませんでした。SCP-1547-JPの保護に失敗したのはSCP-1547-JPの責任であるため、当然誰も処罰されませんでした。
SCP-1547-JPが死亡したためSCP-1547-JPは自身の起こした収容違反等のインシデントに対処することが出来なくなり、財団職員がその後始末をすることになりました。この事故以降、SCP-1547-JPの妨害活動は発生していませんが、単なるミスや事故によるインシデント発生数が増加したため、インシデント総数は変化していません。
また、SCP-1547-JPは死亡したものの、SCP-1547-JPが妨害活動を再び行う可能性は否定できないためNeutralizedクラスやNagiクラスへのオブジェクトクラスの変更は保留されています。