SCP-1559
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ロンドン、カナリー・ワーフの█████通りで観察された、内容が英語で記されているSCP-1559実例。

アイテム番号: SCP-1559

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1559実例は発見され次第、本来の場所から除去され、サイト-77に隔離されます。現時点で既知のSCP-1559実例は全てサイト-77の高度保安収容チャンバーに収容されています。

SCP-1559との直接的な接触を必要とする者は、事前にその影響に対する保護ミーム接種を受けます。既にSCP-1559の影響を受けている職員は、オブジェクトの精神影響を排除するためのクラスA記憶処理を受けます。

説明: SCP-1559は様々な言語で“まだ僅かに鳥の声を聴く者がいる”という内容を表示するポスター群です。各SCP-1559実例に使用される言語は、製作者1の母語やSCP-1559が出現する場所の主要言語によって異なります。

SCP-1559は1997年、1人の環境保護活動家が後日SCP-1559-1個体と特定された人物ら数名を伴ない、SCP-1559実例のプラカードを持って、アメリカ合衆国フロリダ州のKFCレストランに押しかけた際に発見されました。合計144枚のSCP-1559実例がロンドン、ニューヨーク、上海、香港、シンガポール、マドリード、パリなどの数多くの都市で見つかっています。出現は主に繁華街やビジネス街で発生しており、現在得られている情報は、鳥類の死亡率が高い地域ほどSCP-1559が掲示されやすいことを示唆しています。稀な事例では、SCP-1559実例は何処かに掲示される代わりに、SCP-1559-1個体によって持ち運ばれる場合もあります。

SCP-1559の異常性は人間がSCP-1559実例を5秒以上視認すると活性化し、その時点から対象者はSCP-1559-1個体に変化します。アイテムの異常性が発現すると、SCP-1559-1個体は鳥の鳴き声に非常に敏感になり、また鳴き声の意味を理解する能力を獲得します。一定期間が経過すると、SCP-1559-1個体は以下5種類の症状を時系列順に示すようになります。

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雄のケツァール。

  • 鳥への特別な愛情を示す。
  • 鳥を神格と見做す信念を発展させる。
  • 労力に関係なく鳥を保護し、また鳥に巣作りの場所、食事、水を提供しようとする。
  • 鳥類を食べることを極度に忌避するようになる。
  • 日常生活で鳥を模倣し始める。

同時に、SCP-1559-1個体は自動的にSCP-1559実例の作成方法に関する知識を獲得します。これらの人物は追加のSCP-1559実例を作成し、前述した適格な場所に掲示しようと試みます。SCP-1559-1個体は鳥類の言語を他者が理解できるように翻訳することはありますが、例外なくSCP-1559実例の製作プロセスを説明・実演することを拒絶するか、そのようなことは不可能だと主張します。

補遺 I: インタビュー記録 (1559-20120614A)

SCP-1559の性質をより詳しく調査するため、D-19289 (男性、41歳) は母語で記されたSCP-1559実例を無防備な状態で30秒間見るように指示されました。D-19289は問題なくSCP-1559-1個体に変化したことが確認されました。彼はその後、メキシコ国ユカタン州にある森林の小屋で監視下の生活を送り、聞こえてくる鳥の鳴き声に含まれる情報を記録するように指示されました。D-19289へのインタビューは30日ごとに実施されました。

日付:2012年4月14日

回答者: D-19289

質問者: アルブーゾフ博士、サイト-77所属 レベル2研究員

<記録開始>

アルブーゾフ博士: おはようございます。今日の調子はどうですか?

D-19289: 今までになく好調だよ。

アルブーゾフ博士: おや。幸せなのは良いことですね。軽く説明していただけますか?

D-19289: ここで聞こえる鳥の歌は心地良くて、すごく落ち着くんだ。近頃は沢山の鳥が外でデートしたいと騒いでる。ほら、もう春だからさ。穏やかな夜を一緒に過ごそうって愛する番いを歌で誘うのを聞くのはなかなか楽しい。

アルブーゾフ博士: そうですか、何よりです。しかし、彼らが番いを呼んでいると何故分かったのでしょう? あなたは鳴き声の内容を理解できるのですか?

D-19289: ああ、例の… 変なポスターを見た後から、かな。

アルブーゾフ博士: 鳥たちからどんな事を聞いたか教えていただけますか?

D-19289: 勿論、喜んで話すさ! そうだな、まず春は繁殖期だから、大勢の鳥が番いを探してるだろ。それ以外だと… 大体は“どの地域に美味い果物が生るか”とか“どの樹に太いイモムシがいるか”とかそういう… 食べ物探しばっかりだな。でもまぁ他にもある、例えば…

アルブーゾフ博士: 例えば?

D-19289: 時々、野生動物に怯えて助けを呼ぼうとしたり、敵を怖がらせて追い払おうとしてる鳥がいる。かなり嘴の小さい鳥の中には、近くの町に住む人間が家の中で喧嘩してたとか、そういう噂話をする連中もいるな。もう1つ目立つのは — 聞くのは好きだが内容がよく分からないんだ — 詩みたいなやつだ。

アルブーゾフ博士: 詩?

D-19289: そうなんだ。ここの鳥たちの多くは詩を暗唱する。内容はあらかた同じで、そういう物語調の詩らしい。特にあの背中の羽が緑で、腹が赤くて、尻尾の長い小鳥。あれは特にこの詩を歌うのを好んでいるね。他の鳥たちもよく歌うんだが、私はあの緑の小鳥が歌う詩が一番好みだ。

アルブーゾフ博士: どんな詩なのか教えていただけますか?

D-19289: いいとも。紙に書き留めてある。探してみるよ…

第二の太陽の子供たちは

消える炎と共に失われ

彼らの世界は地の底に葬られた

ただ空だけがまだ彼らを腕に抱く


第二の太陽の使者たちは

大地の上に舞い上がる

彼らの光輝を多くの者たちが忘れてしまった

彼らの歌を聴く者はごく僅か


第二の太陽の末裔は

時の流れの中を彷徨う

王国が灰の中から生まれ変わることを望む

彼らの願いは決して捨て去られていない


彼らの最後の執念はまだ循環している

彼らの最後の末裔はまだ考えている

まだ僅かに鳥の声を聴く者がいるだろうかと

アルブーゾフ博士: あなたはこの詩をどう思います?

D-19289: さっきも言ったように、何について歌ってるのかはいまいち分からないが、ちょっとした物悲しさを感じるね。何と言うのか、こう… 失われた文明? それに、緑の小鳥たちの歌は本当に素敵だと思う。

アルブーゾフ博士: 成程、分かりました。あなたにはもうしばらくこちらに滞在していただきますので、宜しくお願いします。

D-19289: 最高だね!

<記録終了>

日付:2012年5月14日

回答者: D-19289

質問者: アルブーゾフ博士、サイト-77所属 レベル2研究員

<記録開始>

アルブーゾフ博士: お久しぶりです。

D-19289: どうして私に外の鳥たちを助けさせてくれない?

アルブーゾフ博士: すみません、何ですって?

D-19289: 鳥たちのために食べ物や水を探したり、巣を作ったり、天敵から遠ざけたりとかだよ。

アルブーゾフ博士: あなたはまだ財団のDクラスです。外出は認められません。

D-19289: 外に出せと言ってるんだ。お前らのような下等な人間が定めた規則なんて何の意味もない。

アルブーゾフ博士: どういう意味ですか?

D-19289: いいか、鳥に仕えるのは私たちの義務だ。地球はかつて鳥たちの王国だった。私たちはただの王位簒奪者に過ぎない。鳥がこの世界の支配者であるべきなんだ。

アルブーゾフ博士: 何の話をしているのか — 例の詩のことですか?

D-19289: あれはただの詩じゃない、かつて地球上で起きた事実だ。

アルブーゾフ博士: ええと、私が知る限り、そんな事は一度も起きていませんが。

D-19289: 鳥の文明は私たち人間よりも遥かに神聖だ。私たちの文明は汚れていて、醜くて、卑劣な行いから成立した。私たちは償いをすべきなんだよ。彼らに世界を返すべきだ。全て鳥たちが教えてくれた。彼らの滅亡した輝かしい文明について語ってくれた。彼らは第二の太陽の子らだ。

アルブーゾフ博士: 鳥類は実際にはかなり遅れて現れた生物種なのですよ。少なくとも、我々が把握している限り、鳥の知性は文明を築けるレベルには程遠い。

D-19289: 人間は地球を手酷く扱ってきた。人類の卑劣な言動を言い訳しようとするな。

<記録終了>

インタビューは中断されました。翌月を通して、D-19289の監督を担当する職員は、D-19289が小屋の外にいる鳥を“救助する”と称して強引に部屋から出ようと試み、また職員に“鳥を食べたことがあるか”と質問して、肯定した職員を罵倒し暴力を振るったと繰り返し訴えました。更に、D-19289は大量の“自然に抜け落ちた”鳥の羽を職員に要求し続け、日常生活においては鳥の羽で作った衣服や装身具を着用するようになりました。

日付:2012年6月14日

回答者: D-19289

質問者: アルブーゾフ博士、サイト-77所属 レベル2研究員

<記録開始>

アルブーゾフ博士: 何故そんな服装をしているのですか?

D-19289: もっと高貴な生物に近付くためだ。 kyow.

アルブーゾフ博士: では、未だに鳥は人間より高貴だと主張するのですね。

D-19289: それは事実なんだ、先生。 kyow. 私のように賢い人間は大勢いる。 kyow.

アルブーゾフ博士: それもまた鳥たちから聞いたのですか?

D-19289: ああ。あの緑の小鳥たちは、鳥類の歴史を語り伝えるのは常に自分たちの氏族の役目だと言った。 kyow.

アルブーゾフ博士: 成程。それで、彼らはどんな話をしたのですか? 是非とも知りたいですね。

D-19289: ここの原住民たちは - 鳥たちを神々だと考えて、彼らに仕え、尽くすようになった。まさに私たちがすべき事だ。 kyow. 分かるか?

アルブーゾフ博士: えー… 原住民とは、つまりアステカ族とマヤ族ですか?

D-19289: その通りだ。忌々しいコンキスタドールが全てを破滅させた。 kyow. それ以来、鳥の信者たちは姿を消して、小鳥たちは入植者が来る前ほど幸福に歌うことはできなくなった。もう誰も鳥の歌を聴こうとはしなくなったからな。 kyow.

アルブーゾフ博士: しかし、アステカ族とマヤ族の子孫はまだ生きているでしょう?

D-19289: これは信仰の問題なんだ、先生、信仰だよ。鳥を信じ、かつて人類が鳥類に対して犯した罪を知る者は、今ではほとんどいない。 kyow.

アルブーゾフ博士: 分かりました… これ以上は質問するべき事も無いでしょう。あなたの任務は今日で完了です。何か他に言いたい事や質問などありますか?

D-19289: お前は鳥を食べるか?

<記録終了>

実験後、D-19289にはクラスA記憶処理が施されました。それ以降、D-19289は鳥への執着を示さなくなりました。同様に、彼は鳥類の言語を理解・使用する能力を失いました。

補遺 II: SCP-1559-1-Aへのインタビュー記録 (1559-20170426F)

数年間の調査と尋問の後、財団はSCP-1559の最初の作成者であるSCP-1559-1-Aの身元を、69歳の男性 フアン・アルバラードと特定しました。SCP-1559-1-Aはメキシコ先住民のナワ族であり、かつては猛禽類を研究する動物学者でした。身元を特定された後、SCP-1559-Aは財団の要請に応じ、インタビューを受けることに同意しました。

日付:2017年4月26日

回答者: SCP-1559-1-A

質問者: アルブーゾフ博士、サイト-77所属 レベル2研究員

<記録開始>

アルブーゾフ博士: おはようございます、アルバラードさん、早速ですが本題に入りましょう。これらのポスターについてお聞きしたい。 (SCP-1559の画像を見せる) あなたはこれらのポスターの最初の製作者ですか?

SCP-1559-1-A: ええ… その通りです。

アルブーゾフ博士: 分かりました。あなたに危害を加えるつもりはありません。ただ、どのようにして、そして何故ポスターを作ったかを教えていただきたいのです。

SCP-1559-1-A: すみませんが、実は私にも原理はよく分からないのです。私は製作プロセスを表現できません。細々とした技術的詳細なら開示できなくもありませんが、あなた方は我々の行動を止めるつもりかもしれないので、お断りします。

アルブーゾフ博士: そうですか。ひとまずはあなたの意見を尊重しましょう。この技術は何処かで学んだのですか、それともご自分で発明したものですか?

SCP-1559-1-A: あれの製作に使われる技術自体は、古くから我々の文化の中で継承されてきました。私はそれを少し現代風にしただけです。手作業の描画を印刷機に、内容を簡潔かつ分かりやすい文章に置き換えて、ポスターにする。今や世界は急速に発展しているのですから、こういう物も時代と共に変化すべきだと思います。

アルブーゾフ博士: その、私はまだどうにもピンと来ないのですが、ポスターを作る理由はそもそもあるのですか?

SCP-1559-1-A: 我々の信仰です。

アルブーゾフ博士: 信仰? 鳥類が人類よりも進歩していて、人類は鳥類の文明を盗んだとか、そういう事ですか?

SCP-1559-1-A: 今ではもう鳥を信仰する者、鳥の声を聴く者はごく僅かしかいません、博士。真の意味で賢く、自らの汚名を雪ぐ意思があり、真の知識を受容しようとする人間はごく僅かです。

アルブーゾフ博士: では、昔は大勢いたのですか? アステカ族やマヤ族が鳥を信仰していたという話は聞いています。

SCP-1559-1-A: かつてこの地には鳥を信仰する人々が多くいました。古代の神官たちは偶然にも羽毛ある蛇からの啓示を受け、あれを作り出す技術を体得し、鳥の囀りを聴くことを学びました。おかげで、我々は神々の声をより明瞭に聞き取ることができました。この価値ある知識が失われつつある今こそ、それを存続させるのが私の使命だと思っています。

アルブーゾフ博士: うーん、まだよく分かりませんね。我々が知る限りでは、確かにあのポスターは人々に鳥を信仰させています。しかし、それとケツァルコアトルにどんな関係があるのでしょう。

SCP-1559-1-A: 鳥たちは幾度も繰り返し1つのバラードを歌っています。全ての鳥があのバラードを歌えますが、ケツァールが歌う時こそ最も素晴らしい。このバラードは羽毛ある蛇の啓示について述べています — だからこそ、ケツァールは羽毛ある蛇の化身だと考えられていたのですよ。

アルブーゾフ博士: バラード? あの“まだ僅かに鳥の声を聴く者がいる”で終わる詩ですか?

SCP-1559-1-A: はい。この詩は、人類は必ずしも手に入れた全ての物に値する種族ではなく、鳥たちの世界が混沌としている間に、我々の先祖が地球を盗み取ったのだと伝えています。

アルブーゾフ博士: 失礼します、アルバラードさん、あなたの信念に文句を付けるつもりはありません。しかし、鳥類を研究する動物学者であった以上、あなたは鳥が地球を支配したことは一度も無いとご存じのはずです。

SCP-1559-1-A: 鳥は支配していませんが、彼らの先祖はしていました。これは私の戯言ではなく、科学で証明されています。

アルブーゾフ博士: 先祖? あの、それはつまり恐竜ということでしょうか — 確かに恐竜は鳥の先祖だと見做されていますが —

SCP-1559-1-A: いいですか。アステカ神話において、第2の太陽であった羽毛ある蛇は、第3世代の地球の住民を創造するために地に降り立ったとされています。そして第3世代の住民たちは火の雨で滅ぼされています。我々はまだ地球の歴史を研究する途上ですが、鳥たちは既に全てを語り伝えています。十分な声明だと思いませんか?

アルブーゾフ博士: 詳しく説明していただけますか?

SCP-1559-1-A: あなたも、伝説の羽毛ある蛇神と同様に、恐竜の中には羽毛を持つ種がいたのをご存知でしょう。結局のところ、羽毛ある蛇の子孫はそれに似た容姿のはずでしょう? そして6500万年前、このユカタン半島に落下した隕石は火の雨を降らせました。全ては鳥たちの詩で、そして我々の古代から伝わる神聖な信念において描写されています。これで十分ではありませんか?

アルブーゾフ博士: ですが — その、何故ポスターを作るのですか? あなたが仰ることとポスターの間には論理的な繋がりが見出せません。私には理解できない。この話は我々とどう関係があるのですか?

SCP-1559-1-A: 6500万年もの間、恐竜の末裔は過去の栄光を忘れていません。彼らは常に、かつて自分たちのものだった地球を再び支配したいと願っています。一方で、我々には償うべき過去があります。神々に奉仕するのと同じように、鳥たちに奉仕すべきです。世界を彼らに返すべきです。

SCP-1559-1-A: ポスターがあれば、それを人々に伝えられます。哺乳類は彼らの世界を盗んだ。鳥たちは高望みをしてはいませんよ。

<記録終了>

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