アイテム番号: SCP-1563-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1563-JPに特段の収容手順は必要ありません。SCP-1563-JPが発見されることは、21世紀時点の一般社会の技術的成長を鑑み不可能であると判断されています。
説明: SCP-1563-JPは波長が█zm1~██zmの電磁波です。SCP-1563-JPは380~780nmの範囲に存在するヒトの可視スペクトルよりも非常に小さい波長を持つにもかかわらず、ヒトの視覚によって感知することができます。
電磁波の基礎知識(簡略版)
電磁波は光子を媒質とする、波動の一種です。波長(光子が振動する一周期あたりに進む距離)によって電磁波の性質は大きく異なります。電磁波の性質を表す代表的な式を以下に示します。
Eはエネルギー、hは定数、cは光速、λは波長を示します。以下の性質は上記の式と同値になります。
- 電磁波のエネルギーは波長に反比例する。
- 波長の短い電磁波は、エネルギーが高い。
一般に、ヒトが感知できるエネルギーの電磁波を可視光、通信に用いられる電磁波を電波と呼びます。電磁波は化学発光、電磁誘導、核分裂、核融合、燃焼といった様々な化学的、物理的な要因から生まれます。
可視光、電波に用いられる波長より短い波長の電磁波は、X(エックス)線、γ(ガンマ)線と呼ばれます。X線、γ線はエネルギーが高く、物体を構成する原子、分子の電離作用を起こす場合があります。これらの高エネルギーな電磁波は放射線に包摂されます。放射線は種類、及び取り扱い方によっては人体に有害になる場合が存在します。γ線はX線よりエネルギーが高く、SCP-1563-JPは数式上その延長に存在します。
SCP-1563-JPの持つ異常な特性として、非常に高エネルギーな電磁波であるにもかかわらずその他のγ線に多く見られる対生成の現象が起きにくく、比較的長い距離を減衰せず進みます。また、SCP-1563-JPが人体に触れても電離作用は発生しません。ヒトの目がSCP-1563-JPを感知するメカニズムは不明であり、研究が進められています。SCP-1563-JPを照射したDクラス被験者によると、SCP-1563-JPは目に「銀色のもや」がかかっているように見えると報告されました。また、通常のγ線に見られる放射線曝露の健康被害は確認されていません。
SCP-1563-JPの発見により更新されたヒトの可視光スペクトル
SCP-1563-JPは、財団の物理学部門素粒子物理学課の破壊耐性アノマリー用非破壊検査装置の研究中に、財団製の粒子加速器の内部から偶発的に発見されました。報告書執筆時点で、SCP-1563-JPの観測、検知の手法は確立されているものの、SCP-1563-JPのみの安定した生成方法は存在しません。
SCP-1563-JPの安定した人工的な生成方法は確立されていないものの、宇宙空間においては複数の要因により自然発生している可能性が宇宙物理学部門によって提言されています。有力視されているSCP-1563-JPの自然発生源として、「γ線バースト」現象が挙げられています。γ線バースト現象とは銀河系外の宇宙にて大規模な爆発が発生することによりγ線が放射される現象であり、遠方の宇宙で発生するため発生源、発生機構ともに正確な分析がされておらず、SCP-1563-JPを含む可能性が十分に存在します。
γ線バーストの発生源としては、以下が挙げられます。
ただし、SCP-1563-JPの減衰耐性を以てしてもγ線バーストによるSCP-1563-JPがヒトの認知可能な強度のまま地球に到達することは難しいと研究チームは予測しています。
上記を総括して、SCP-1563-JPの性質、ヒトに対するリスク、適切な収容方法等、多くの研究すべき領域が存在すると結論付けられました。報告書執筆時点において複数の財団内の研究チームがSCP-1563-JPの由来、ヒトがSCP-1563-JPを感知できるメカニズムと理由の解明、SCP-1563-JPの応用技術の検討を行っています。以下に、各研究チーム代表の報告書更新時点での研究展望、提言を記述します。
天体物理学課所属 岩成 ██博士
SCP-1563-JPの自然発生源としてγ線バーストが挙げられるが、本研究チームは一旦その推量を正しいとみなして、SCP-1563-JPのはたらきを考察している。SCP-1563-JPの正体としては、より高エネルギーのγ線が生成した、"γ線に近しい未知の粒子線"の可能性を私は提言する。この仮説を置くことによってγ線との性質の違いは説明できる上、この未知の粒子線から更に短波長のγ線の存在を導き出せれば、超弦理論に迫る物理的な粒子世界の拡張に繋がると考えられる。いずれにせよ、SCP-1563-JPのさらなるサンプルデータが必要である。
自然人類学課所属 三好 ██博士
SCP-1563-JPがなぜヒトに見えるのか、本研究チームは視神経の分析からその秘密を探求している。本来であればSCP-1563-JPのような放射線は目の中にある錐体細胞を破壊しながら透過するわけだが、破壊しないだけではなく、あまつさえ錐体に吸収されていると考えられる。多少目的論的にはなるが、SCP-1563-JPを認識できるようになることがヒトの欲する機能の1つに存在すると考えて、考察を進めている。現時点においては、SCP-1563-JPは視覚情報処理における有害ミームフィルタ機能であることを私は提言する。
我々は光を視覚情報として脳で処理しているが、これはミームも例外ではない。しかしながら、ミーム耐性を持つ者と持たない者の身体的、脳機能的差異はまだ判明していないのである。視神経に新たに追加されたこのSCP-1563-JPの受容機能という定数が、さらなる解明につながると期待できる。
宇宙化学部門所属 安宅 ██博士
地球上SCP-1563-JPをヒトが感知できるのに対し、地球上はおろか銀河系にはSCP-1563-JPが限りなく少ないのは直感に反する。本研究チームはSCP-1563-JPの起源に何かしらの人為的操作があることを検証することを化学的に考察している。未だ推論の域を出ないものの、私はSCP-1563-JPの存在意義として生物の宇宙起源の名残であると提言する。
「岩石パンスペルミア仮説」という仮説が存在する。概説すると生命の起源は隕石や彗星の中にある内部ハビタブルゾーンの中の炭化水素を始めとする生命起源物質が惑星に衝突することにある、という仮説である。SCP-1563-JPのような高エネルギーの電磁波の存在が銀河系外で確認されれば、SCP-1563-JPに対する感知能力は我々がタンパク質だった頃から引き継いでいる性質の表出であると、仮説の確度を押し上げるのに貢献するだろう。
宇宙生物学課所属 十河 ██博士
SCP-1563-JPの数ある異常性のうちの一番のミソは減衰耐性でも電離作用の弱さでもなく、「ヒトが感知できる」ことである。本研究チームはSCP-1563-JPが地球外のなんらかの知的生命と我々を繋げるものであることを考察している。今最も尤もらしい仮説を提言すると、SCP-1563-JPはヒトの寄生生物による内部干渉の産物である。
宇宙において、人間のスケールに合わせて存在するものはとてつもなく少ない。砂粒のような星が人間を糸状にできるほどの重力を持つことや、全臓器を一瞬で溶かすような大気の惑星などは珍しくない。本来、SCP-1563-JPは文字通り天文学的なエネルギーの電磁波であり、ヒトが観測できるものでもなければ扱えるものでもない。地球を由来としないのに地球にいるヒトに合わせたはたらきを齎すのであれば、逆説的にSCP-1563-JP自身がヒトに何かを合わせたいという意図を推論できる。スケールの違う生物にはたらきを催すものといえば、寄生虫である。ハリガネムシがカマキリを水場に寄せる為に、カマキリを水平偏光、すなわち水場の出す光に誘引させることは有名である。寄生虫というのはあくまで分かりやすい語彙で示したに過ぎないが、我々はSCP-1563-JPという光を感知し、それに興味を持つことが宇宙スケールの"何か"の人体操作であることも、この例を踏まえればあながち乱暴な仮説ではないだろう。
20██/██/██、SCP-1563-JPの観測機器を搭載した外宇宙観測用衛星がサイト-81██より打ち上げられました。自然発生するSCP-1563-JPの観測が期待されています。
追記: 20██/██/██、γ線バーストに伴うSCP-1563-JPの高出力放射が確認されました。放射源となったとみられている天体は未発見のパルサーであり、赤緯██°、赤経██時██分██秒付近で数年以内に生成されたものと見られています。衛星より送信されたSCP-1563-JPのサンプルデータの分析が行われています。上記の観測結果から示されるものとして、SCP-1563-JPが地球に届く事象はγ線バーストのなかで"より稀に起こりうる"事象であることも判明しました。
SCP-1563-JPの放射が確認されたパルサー



