記録文書-158-41AZ
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SCP-158-JP内容の部分的な抜粋です。判読不能な点は現在暗記者の証言によって補完が進行しているため、今後修正される可能性がある点に留意してください。
SCP-158-JPの性質が再発現した際は、下記の記述が一致しているかどうかを優先して調査してください。あらゆる記述は無記名であり、ページ数の表記は後の研究によって付け足されたものであること、日付は元々各ページの隅に殴り書きされていたものを編集して下記の書式としたものである事に注意してください。

 
 

ページ:1

日付: 18██年██月██日

何故私がこうしようと思ったのか、実際の所それは分からない。日記をつけるのは初めてでは無かったが、これが恐らく最も長い記録となるだろう。私自身のことを全て記すつもりは無い。歴史の見届け人などという大層な身分でもない。この先、私自身に起きた事だけを記すつもりだ。過去の事は、今や全く無意味だ。

ページ:31

日付: 18██年██月██日

虫を踏み潰すことを恐れる者がどれだけいるのだろう? 命があふれるこの世の中で、何かを奪わずに生きられるものだろうか。しかし、それは間違いなく恐れるべきことなのである。命は命であるというだけで罪なのだ。生きるためには、奪わねばならないからだ。
今朝、予期せぬ心臓の痛みで目が醒めた。病院から、嬉しそうな笑顔を湛えた老婆が家族と思しき婦人に付き添われて出て行くのが見えた。私の心臓がその病院で治る事は無いだろう。
夕方には車にはねられた。視界の隅に、道の真ん中で鞠を抱えた子供が呆然と立っているのが見えた。慣れたものである。引っ越しの準備を済ませねば。

ページ:271

日付: 18██年██月██日

罪は清められなければならないのだろう。誰がそう決めたのだろうか? 恐らく、私だ。苦難も悲しみも感じないが、それはやはり私が異常である証拠なのだろう。
心臓と足が痛む。昼頃、左足の膝から下が切断された。それでどうなったのかは分からない。きっと多くの何かが救われたのだろう。義足を作り、新しい仕事を探さねば。

ページ:1218

日付: 19██年██月██日

限界がどこにあるのかなど私は知らない。だがそんな事を考える余裕などはどこにも無いのだ。無限にある時間が惜しい。
日記を書くのが難しくなるような事が起きた。私を愛してくれる者がいるのを知ってしまったからだ。しかし、彼女の言葉には応えられないだろう。彼女は恐らく、私の全身の傷や障害に憐れみを抱いたのだろう。私は動機の正邪に無関心であるが、しかし彼女は気付いているだろうか、自分が人形を愛している事に。
やはり事務仕事などを始めたのが間違いだった。直ぐにも発たねばならない。右人差し指の骨折が悔やまれる。荷造りがおっくうだ。

ページ:1283

日付:19██年██月██日>

いつも通りの事が起きた、それだけである。彼女の腫瘍は私の頭蓋で購われた。知る者など誰一人としていないし、知らせるつもりも無い。どこまでも私の日常であり、世界の非日常だ。
頭痛が酷い。脳がはみ出てはいないだろうか? 指先が痺れ、ぼんやりと金属のような味が口中に広がる。だが急がねば。彼女に見つかりたくは無い。

ページ:9721

日付: 19██年██月██日

どうやらまた戦争のようだ。実に飽くなきものである。子供は玩具箱をひっくり返す事は知っていても、それを元通りに片付ける術は知らぬだろう。子供同士で後片付けを押し付け合う内に喧嘩になり、いつしか散らばった玩具を誤って踏みつけて壊してしまうだろう。それは、あらゆる子供のための玩具だったというのに・・・
さて、私はそれをたしなめる大人であるのか、それとも散らばった玩具を拾い集める手足の生えた玩具箱であるのか。どちらにせよ、進化した兵器による大いなる災禍は私を滅ぼすに足りるものである事だろう。

ページ:11214

日付: 1945年██月██日

私はまだ生きている。どういうことだろうか? 私にはまだ頭もあれば胴もあり、日記をつけるための右手も左目も残っている。まだ私が必要となる事があるというのだろうか? それとも私は弱まっているということなのだろうか? 確かに、少なくとも彼ら自身は自らの幸運には一切気付いていないように見える。あれだけの事が起きていながら、国家がまだ国家である事がどれほどの事なのか・・・
とにかく、こうなっては致し方無い。私はまだまだ生きねばならない。

ページ:21284

日付: 19██年██月██日

隠者の座臥は縄で縛られ、求めし者の前に引き出される。かつて世の中は私をそっとしておいてくれていた。いや、私に気を留めるゆとりはとても今までには無かったと言った方が正しいか。
厳つい装備をした幾名かが、私の住処に踏み込んだ。私の事をホワイトだかレッドだかと呼んでいただろうか。どうやら私を捕まえようとしたようだ。ひたすらとぼけ、人違いではないか、と言うと数時間後には引き上げていった。この日記が見つからずに済んで良かったと心からそう思った。
彼らが何者であるかは重要ではない。問題なのは、世界は互いに奪い合うだけではなく、互いに災いを押し付け合うだけではなく、ついに自らを守ろうとする努力を始めたということだ。
それは大いなる結実と矛盾を生むだろう。恐らくは、この私のような・・・

ページ:25631

日付: 19██年██月██日

世の中は早い。変化は、それが変化だと気付かないうちに起きている。歴史の転換点を生きる者たちは、自らがその岐路に立っている事に微塵も気付かぬものだ。私[判読不能]が辛い。
手が無くとも日記が書ける[判読不能]になっている。少し字が[判読不能]目をつぶれば上出来だ。

158-41AZ作成者付記: このページから先は判読不能な文字が格段に増え、文字数や語彙が乏しくなり、文字の大きさが不安定になっています。少数の文章が2枚以上のページにまたがって綴られている例が顕著になり、1日=1ページという規律的なペースが乱れています。

ページ:27813

日付: ██年██月██日

年をとったものだろうか。この日記に、私じしんが意味を見出しはじめている。無意味なことである。これを誰かが読んでくれるのではないかと期待し始めている。
のどがいたむ。[判読不能]こえを失うのに、ずいぶん時間がかかったものだ。もっとはやく、私は多くを失っていると思っていた。

ページ:39219

日付: 20██年██月██日

ほんとうに、多くがすくわれたのだろうか? 私に、意味はあったのだろうか? いたみ だけがのこる。私にも、世の中にも。

ページ:40421

日付: 無し

はやく きてくれ たのむ

ページ:41284

日付: [編集済]

いよいよ私の死ぬ時が来た。今なら分かる。これで良かったのだ、と。全てを背負えるだけの魂がまだ私にも残っていて、本当に良かった。私がやるのではない。それは起きる事なのだ。起こしている事ではない。しかし本当に良かった。この場所が、世界の隅であることに感謝しよう。

158-41AZ作成者付記: このページから、文章、文体、文字の形体がページ:25631以前の整ったものへと戻っています。このページの日付は[削除済]による[編集済]が発生した日でした。


 
ページ:41285〜ページ:42649までは判読不能な程の滲んだ文字が書き連ねられていました。暗記者の証言による補完はこの部分から優先して行われています。しかし158-41AZが新たなSCP-158-JPへと変異する可能性を低減する必要があるため、完全な文書記録の作成、または複数の記録の統合は実行されません。
 


ページ:42650

日付: 無し

私の人生は、まさにこの力を得てからのものが全てであっただろう。それを全て書き連ねた日記は、私の映し身と言っても過言では無い。そして結局の所、私はそれを誰かに憶えていて欲しかったのかもしれない。世界の隅にただ居続けた一方(ひとかた)でしかない、私。本当の所は、それを知っていて欲しかったのかもしれない。引き受け続けた私が、誰かにそれを託したかったのかもしれない。
この世の災禍は絶える事が無い。それを人の身が引き受ける事が可能なのだろうか? 全てに、いずれは何かが下されるのであろう。憶えていてくれ。我々を忘れないでくれ。

ページ:42651

日付: [削除済]

私の人生は、まさにこの力を得てからのものが全てであっただろう。それを全て書き連ねた日記は、私の移し身と言っても禍言では無い。そして結局の所、私はそれを誰かに覚えていて欲しかったのかもしれない。世界の隅にただ居続けた人形(ひとかた)でしかない、私。本当の所は、それを知っていて欲しかったのかもしれない。引き受け続けた私が、誰かにそれを託したかったのかもしれない。
この世の裁可は耐える事が無い。それを人のみが引き受ける事が可能なのだろうか? 全てに、いずれは何かが下されるのであろう。憶えていてくれ。我々を忘れないでくれ。

最後まで読んでくれて、ありがとう。さようなら。

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