SCP-1597-JP
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本報告書はオブジェクトの発見に当たって作成された暫定的な報告書です。オブジェクトの確保、収容、及び研究によって大規模な更新が行われる予定です。

アイテム番号: SCP-1597-JP

オブジェクトクラス: Uncontained Pending

特別収容プロトコル: SCP-1597-JP群は未収容ですSCP-1597-JP群は現在初期収容状態にあります。SCP-1597-JP群の異常性を同定する試みが収容チームで進行中です。特別収容プロトコルの正式な策定が予定されています。

説明: SCP-1597-JP群は異常性を持つと考えられる複数の市松人形です。SCP-1597-JP群の持つ異常性については文献のみに依り、財団の研究による正確な異常性の把握は行われていません。現在進行中です。SCP-1597-JP群は発見された施設及び付近に残されていた文献からGoI-5548("五行結社")の保有する呪術的物品であることが示唆されています。SCP-1597-JP群の作成年代は各個体により18~21世紀までばらつきがあります。詳細は以下の発見経緯を参照してください。

発見経緯: SCP-1597-JP群は北海道遠軽町帆士日山の所有者不明の山小屋内にて異常発見部門により発見されました。山小屋内部で発見した資料及び山小屋内で調査員が遭遇した異常現象から、SCP-1597-JPとして登録されました。以下に調査時の映像記録の転写を示します。

調査日: 20██/██/██

調査担当職員: 下田博士(異常発見部門所属)


«記録開始»

下田博士: これで良し。あー今から北海道は遠軽町、帆士日山内の不審な建築物の調査を行う。当建築物は地権者、所有者共に不明で、付近の住民に聞き込みをしたところ有益な情報は得られなかったが、それにもかかわらず最近出入りした痕跡があることから何かしらの異常と関係している可能性があるとみて調査を決定した。

(重要性の低い部分を省略)

下田博士: それでは中に入る。外見としては普通の山小屋、登山者などが利用するものに見えなくもないが

(下田博士が山小屋の扉を開錠する。)

下田博士: 中は暗いな。おーい、誰かいますか? 警察の者です、ここの管理者の方とお話がしたく。いませんかー? (数秒沈黙) いない、か。

下田博士: 窓にも遮光カーテンが架かっているな。電気は、これかな

(下田博士が懐中電灯を点灯する。)

下田博士: そこまで埃っぽくはない、やはり頻繁に使用されていることが考えられる。あー、床は土か、意外と構造としては蔵に似ているのか?

(下田博士が懐中電灯の光を動かし、内部を見る。部屋の壁際には木製の箱が多く並べ置かれており、入口から見て右奥には作業台らしきものがある。)

下田博士: 中にあるものも箱が多いな、何かを保管しているのか?

下田博士: 木箱がたくさん、大体40から50個はあるだろうか。年季が入っているものもあるな。

下田博士: これは、作業台か。

(背後から軽い衝突音が発生。)

下田博士: なんだ? (数秒沈黙)気のせいか。

下田博士: これは、裁縫道具か。えー、作業台の上に裁縫道具を発見。

下田博士: こっちには紙もあるな。書きかけの呪符に見えなくもない。九字紋と五芒星が書いてある。五行結社との関わりが疑われる。

(作業台の右方向から軽い衝突音が発生。)

下田博士: 誰かいるのか!? ん、人形?

(作業台の右端に落下したSCP-1597-JP個体を下田博士が発見。)

下田博士: 市松人形か、ということは、この作業台は人形を作っていたのか。

下田博士: 多分大きさからして木箱の中身も恐らく人形。一応、確認する。

(下田博士は作業台から離れる。)

下田博士: 不気味だな。

(入り口近くの木箱の開封を試みる。)

下田博士: やはり市松人形か。きれいに保管されている。霊力探知機で計測してみる。

下田博士: 特に異常値は示さない。非異常か、もしくは非活性状態にある感じか。

(ビデオカメラのマイクに博士以外の呼吸音が検出される。博士自身は気付いていない。)

下田博士: 一応、写真を撮っておこう。ん? 人形の下にメモを発見。説明書か? こちらも撮影する。

下田博士: どれどれ (数秒沈黙) やはり五行結社か。

下田博士: 要注意団体との関係性を示す証拠を発見。安全を取って、あと数サンプル撮影した後、調査は早めに切り上げることにする。

(ビデオカメラのマイクに不明な足音が検出される。博士自身は気付いていない。)

(開封済みの木箱の隣の木箱の開封を試みる。)

下田博士: こっちは少し意匠が違うな。こちらも写真を撮っておく。

下田博士: うわっ、すごいノイズだ。霊障か。復元できるかなあ。

(複数の女性とみられる笑い声が発生)

下田博士: これ以上はまずいか

(下田博士が山小屋内から退出を試みる)

下田博士: まずいまずい

(扉が自動的に閉まる)

(笑い声が更に発生)

下田博士: クソッ、開かない!

下田博士: おい、おい!

(不明な強い衝突音が発生)

下田博士: (悲鳴)

«記録終了»


追記: 下田博士の悲鳴と共にビデオカメラが停止し、1時間後同僚職員により下田博士が山小屋前で気絶しているところが発見された。下田博士の身体に異常の影響は見られない。

以下に示すのは、記録が停止する直前にビデオカメラが撮影した画像である。画像にはSCP-1597-JP個体が映っていることが確認でき、下田博士が当オブジェクトによって気絶させられたことが推測できる。

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下田博士による撮影記録

資料1597-JP: 以下に示すのは、下田博士が調査中に発見したSCP-1597-JPの特徴を示唆する記述です。SCP-1597-JP個体に添付されており、個体に関する記述が確認できます。部分的に主観的、抽象的な表現が含まれるためSCP-1597-JPの異常性を正確に示すものではないものの、概的な特徴を予測する上で重要な資料であると考えられます。(以下、便宜性のため各SCP-1597-JP個体を発見順でSCP-1597-JP-nにナンバリング)

記述の一部(主にSCP-1597-JP-1,2)は文語体となっていたため、報告書の作成に際して平易な文章に改変しています。

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SCP-1597-JP-1

ナンバリング: SCP-1597-JP-1

外見: 赤の衣装、整えられていない髪、桐塑製、明治時代頃の人形によくみられる表情

記述: この人形は呪われし人形。稚児に捨てられた時に、子を呪い、親を呪い、その家を末代まで呪った。捨てられた場所から稚児の家までおよそ10里をそのすさまじい怨念で走り通し、再び戻ってきた。子は病にかかり夭折し、母親は気が狂い、父親もまた廃人となった。かつて相愛の稚児に裏切られた恨みは今もなお人形の内に籠り続けている。この人形を持つ者はゆめゆめ離すなかれ、捨てるなかれ。-五行結社 占筮博士 大伴

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SCP-1597-JP-2

ナンバリング: SCP-1597-JP-2

特徴: 黄の衣装、石膏製、昭和前期の人形によくみられる表情、現像時に不明の彩度の低下が発生

記述: この人形を決して粗末に扱ってはいけない。嘗てある華族の夫人はこの人形を大変溺愛していたが、家の没落と共に質に入れてしまった。人形に宿される執愛は怨恨と変わり、何度も何度も戻ってきた。夫人は何度も捨てたがそれでも戻り、神社仏閣で祓えどその呪いは解けなかった。最後には人形は夫人を刺し殺した。この人形を持つ者はその魅力に取りつかれるなかれ。髪の長さや表情が変わったように見えても、気付かなかいように振舞え。-五行結社 大允 土御門

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SCP-1597-JP-3

ナンバリング: SCP-1597-JP-3

外見: 赤の衣装、ポリエチレン製、現行の人形に類する表情、現像時に不明の彩度、明度の向上が発生

記述: 当人形は呪力量が非常に高く、扱いには困難を要する。ポリエチレン製であるためか、呪符の複製が充分ではなかったためか、出力が不安定である。保管時は必ず厳重に封印しなければ、所有者を簡単に殺してしまいかねない。しかしながら、この力をうまく使えば結社に仇なす者への呪殺にも有効だろう。この人形は呪いの人形の複製物としては15番目の試作品に当たる。この技術が完成した暁には悪しき呪物の根絶も簡単になると期待できる。-五行結社 陰陽頭 賀茂

作戦記録: 20██/██/██、SCP-1597-JP群の収容作戦が決行されました。結果としてはSCP-1597-JP群の収容に成功したものの、五行結社の元構成員による攻撃によって複数名が負傷しました。作戦時における構成員のSCP-1597-JP群の扱いが当該アノマリーへの重要な特徴を示すものである可能性が高いと考えられるため、以下に作戦の映像記録を添付します。

SCP-1597-JP収容作戦記録

作戦日: 20██/██/██

参加人員: 機動部隊わ-1 エージェント・赤瀬(アルファ、隊長)、エージェント馬場(ブラボー)、エージェント知念(チャーリー)、下田博士(案内役)

作戦内容: 下田博士による潜入調査が五行結社に認知されている可能性が高く、SCP-1597-JP群の保管されている山小屋で当該要注意団体の構成員による抵抗が考えられるため、武装した機動部隊員により収容前の安全確保を行う。安全確保が完了次第SCP-1597-JP群の収容を行う。

作戦結果: 本作戦において山小屋内に保管されていたSCP-1597-JP個体48体を回収(内10体破損状態)。個体全てにおいて五行結社の奇跡術行使とみられる加工の痕跡が確認された。

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賀茂道政

作戦中に機動部隊が撃破した人物の身元を特定したところ、以前から要注意人物として財団が追跡していた元五行結社構成員(除籍済)の賀茂道政であることが判明した。賀茂道政がSCP-1597-JPの異常性の制御、作成の手法について記述された研究資料も山小屋内から発見された。賀茂道政の死体を検査したところ、異常な肩部の筋肉の発達、及び奇跡論的な人体改造の痕跡が見られた。


«記録開始»

下田博士: 見えました。あれが、例の山小屋です。

アルファ: 了解。記録開始。これより、収容作戦を開始する。ブラボー、チャーリー、準備はいいか。

ブラボー: 問題なし。

チャーリー: 問題なし。

アルファ: よし。

(下田博士が震える)

アルファ: 下田博士、どうした? 何か異変が?

下田博士: いや、こういった作戦にはあまり参加しないから。

アルファ: 安心してくれ。我々は呪物に対するスペシャリストだ。

下田博士: でも、あれはただの人形じゃないかもしれない。

アルファ: (ため息)呪いの人形くらいなら祈念弾ですぐ破壊できるから大丈夫だ。これまでも何度かああいうのには対峙したが、歩いてくる人形の脳天に一発かませば終わりだからな。

下田博士: あ、ああ

アルファ: ま、すぐ終わるだろうから離れたところで待機していてくれ。

(下田博士が山小屋から約100m離れた地点に退避する)

アルファ: 改めて、突入。

(アルファ、ブラボー、チャーリーが山小屋内に突入する)

アルファ: 手を挙げろ! 無駄な抵抗はよせ! この山小屋は超法規的措置によって我々が接収する!

ブラボー: 作業台付近に一名発見。投降せよ!

構成員: 随分と遅かったじゃねえか。

ブラボー: 手を挙げろ!

構成員: まあ焦んなって。

ブラボー: そのマーク、五行結社だな。直ちに投降すれば危害は加えない。

チャーリー: 不審な行動を取れば聖なる弾丸で撃つぞ。抵抗はしない方が賢明だ。

構成員: おー怖え怖え(笑う)

ブラボー: 武器を持っているなら直ちに捨てろ。

構成員: 武器? あー武器ねえ。

ブラボー: のろのろするな!

構成員: そうだなあ、せっかく武器が完成したからお前らで実用試験と行こうじゃねえか。

(構成員は作業台上にあるSCP-1597-JPを持つ)

ブラボー: 人形を持ってどうした。遠隔の呪殺は効かないぞ。

構成員: 遠隔? そんなことはしないさ。陰陽師の戦いってもんを見せてやるよ。おら!

(構成員はSCP-1597-JPを投擲する。ブラボーは回避し、SCP-1597-JPは突入した扉から外に出る)

ブラボー: うおっ、あぶねえな

アルファ: どうやら、強がっているが最後の悪あがきだったようだな。捕縛する。

構成員: おいおい、財団の調査はザルか? 呪いの人形の特徴くらい知っとけよ

アルファ: なんだ?

構成員: 呪いの人形ってのは、帰ってくるんだぜ。

(SCP-1597-JPが投擲時の軌道をなぞり、高速で戻ってくる。ブラボーに接触。)

ブラボー: (呻き声)

構成員: 大当たりだ

アルファ: 発砲!

(アルファ、チャーリーが構成員に対し発砲する。)

(構成員は木箱で防御する。)

構成員: 俺と人形のダンスを見せてやるよ。

(構成員が防御に用いた木箱が開き、中から新たなSCP-1597-JPが出現する)

アルファ: 回避!回避行動を取れ!

チャーリー: 了解!

(構成員はチャーリーに向けて人形を投擲する。チャーリーは回避。)

(SCP-1597-JPが山小屋の壁を貫通する)

チャーリー: あの人形、呪力だけでなく包丁まで持ってる!

アルファ: なんなんだこいつは!

構成員: 奇跡術とか呪術とかだけで戦うのは結社じゃ二流だぜ! これからはパワーなんだよ!

(構成員がSCP-1597-JPをチャーリーにめがけさらに投擲する。)

チャーリー: あいつが投げた人形の軌道上に入らないよう気を付けろ!

構成員: おいおい。どこまで節穴なんだよ!

(SCP-1597-JPが弧を描きながら戻る。チャーリーに接触する。)

チャーリー: (呻き声)クソ、かすった!

アルファ: 横スピンか!?

構成員: その通り!

(構成員はアルファに人形の投擲を開始する)

アルファ: ブラボーは退避!チャーリーは体勢を立て直せ! 俺が引き付ける!

(アルファが発砲。発砲しながら祈念手榴弾を構成員に向けて投擲。)

(構成員はSCP-1597-JPを盾に防御している。)

構成員: グレネードか、(判別不能な音声)、(判別不能な音声)!

(SCP-1597-JPの一体の毛髪が急速に成長、手榴弾に巻き付き、威力を相殺する)

アルファ: クソが!

チャーリー: なんでもありかよこの人形!

ブラボー: 煙幕!

(ブラボーが煙幕手榴弾を投擲。煙幕が広がる)

アルファ: 総員退避!

構成員: うざってえが、無駄だ!(判別不能な音声)

(構成員は毛髪を展開した状態で人形を投擲。毛髪によって発生した風により煙幕が晴れる)

構成員: 誰も逃がさねえよ!

(構成員がSCP-1597-JPを取り出し、さらに投擲。アルファ、ブラボー、チャーリーは回避。)

アルファ: 何体いるんだよこいつら!

構成員: はっ、いつまで避け続けられるかな?

チャーリー: クソ、このままじゃジリ貧だ。

(下田博士がアルファのインカムに通信を開始する)

下田博士: [隊長、私に考えがあります。]

アルファ: なんだ!

(構成員がSCP-1597-JPを投擲。バックスピンをかけている。)

ブラボー: 避けきれない!

(ブラボー、アルファにSCP-1597-JPが接触。)

アルファ、ブラボー: (呻き声)

下田博士: [聞くだけで大丈夫です。とりあえず、しばらく距離を取りつつ、人形を避け続けてください。]

アルファ: ブラボー、チャーリー、攻撃はやめて回避に集中! 軌道と回転に注意!

ブラボー: 了解!

チャーリー: 了解!

下田博士: [人形の性質が分かったので、それで反撃を試みます。]

構成員: おらおらどうした!攻撃しなきゃいつかやられるぜえ?

アルファ: 挑発に乗るな!

構成員: 丹精込めて呪力を入れたとっておきの人形達だ、財団の収容チームも手も足も出ねえな!

(構成員は攻撃を続行する。)

下田博士: [呪いの人形は所有者のあいつに対して、常に戻ろうとする異常性があります。呪物由来の異常な力が所有者に向けて働くことで、ブーメランのように使える。]

(構成員は攻撃を続行する。ブラボーに直撃。)

ブラボー: (呻き声)

構成員: いつまで持つかなあ! 俺の強肩によぉ!

下田博士: [しかし、それは呪物の異常性によるものであり、あいつがどうこうできるものではありません。攻撃に使えるのは人形の異常性を利用しているに過ぎない。今のところ、人形の動きにはかなり規則性がある。]

(チャーリーに直撃。)

チャーリー: (呻き声)

下田博士: [攻撃性を高めるため、あいつは高速で人形を投擲しています。強く投げるほど威力が高くなり、戻るまでの時間がかかるようになる。時間差で不意を突きやすくなっているんです。]

アルファ: クソッ、もうだめか

構成員: ちょろまかしやがって! ここまでだ!

(移動中の人形の毛髪が伸び、アルファが拘束される。)

構成員: お前で最後だ!

(アルファに向かって構成員はSCP-1597-JPの投擲を試みる。)

(下田博士が通信をスピーカーモードに切り替える)

下田博士: [そこまでだ。]

構成員: (舌打ち)もう一人いたか。てめえも人形の餌食にしてやる。

下田博士: よく見てみろ。人形をそんなに出してるから、気付いてないんじゃないか?

構成員: なにい!?

(SCP-1597-JPの一体に付けられた祈念手榴弾が張り付けられている。)

下田博士: [投げられた人形は所有者に対して戻る力が常に働いているから、強く投げても離れた場所でいずれ静止する。その瞬間なら安全に触れられる。]

構成員: クソがああ!(叫び声)

下田博士: [強力だが、間合いに難ありだな。]

(手榴弾が爆発する。)

アルファ: 構成員の死亡を確認。下田博士、助かったよ。ありがとう。

(SCP-1597-JP全個体の動作が停止する。SCP-1597-JPの拘束が解かれ、アルファは振り返る。)

アルファ: (3秒沈黙)収容チーム本部に連絡。二名重傷。至急救護班を要請。五行結社の構成員とみられる人物を撃破。(3秒沈黙)安全確保、完了だ。

«記録終了»

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