SCP-1610-JP
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財団記録・情報保安管理局より通達

現在、SCP-1610-JP-Aの精神影響は実質的な不活性状態にあるものの、その異常性が再発した際のリスクを鑑みて当報告書はレベル4以上の職員、及びO5評議会の閲覧が制限されます。該当する職員の閲覧が必要な場合、RAISAによるその正当性の確認の後に閲覧が許可されます。

— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ

アイテム番号: SCP-1610-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1610-JPはGoI-232"英国王立魔法院"と共同で収容されています。SCP-1610-JPはカバーストーリー"生物実験施設"により民間人のアクセスを制限しますが、その異常性の危険性、及び明瞭性の低さから民間人の侵入がされた際には記憶処理などの特別な処置は行われません。GoI-232から提供されるSCP-1610-JP、及びSCP-1610-JP-Aに関する資料はレベル3職員のみ閲覧可能です。

現在、機動部隊ファイ-8("ギャラントフォックス")によりSCP-1610-JP-Aの所在の調査が行われています。レベル4以上の職員、及びO5評議会に対してのSCP-1610-JP-Aに関する情報の開示は制限されます。

説明: SCP-1610-JPはエチオピア北部に存在する異常な設備を有する農場です。SCP-1610-JPの顕著な異常設備として有角目の生物の角の再生を促す装置1や、SCP-1610-JP-Aに対してのみ物理作用する不可視の障壁が挙げられます。

SCP-1610-JP-Aは知的生物に対する限定的な精神影響能力を有する、ウマ(Equus caballus)に似た身体的特徴を有する生物です。SCP-1610-JP-Aの顕著に異常な身体的特徴として頭部の角と背面の翼が挙げられます。SCP-1610-JP-Aは外見上自身の翼を羽ばたかせながら、未知の原理で飛行します。またSCP-1610-JP-Aの角を粉末に加工したものは化学的に汚染された液体を浄化する作用が生まれます。

SCP-1610-JP-Aは通常の生物の生殖器にあたる器官を有しておらず、繁殖することは不可能です。しかしながら、SCP-1610-JP-Aは不死性を有しており、その歴史の中で数度に渡り繁殖2を試みられています。SCP-1610-JP-Aの外見は常に25歳程度に保たれています。

SCP-1610-JP-Aの精神影響は社会的に高い地位についていることを自認している人間(以下、対象と記述)に対して発生します。対象はSCP-1610-JP-Aに関する情報を手に入れた時点で、SCP-1610-JP-Aを神聖な存在として認識しSCP-1610-JP-Aを所有することへの強い欲求を見せます。これにより財団とGoI-232"英国王立魔法院"による情報管理が開始されるまでは宗教、政治的な利用のために様々な団体、個人がSCP-1610-JP-Aの所有を試みていました。

追記: 事案オルクス-1610以降、SCP-1610-JP-Aの精神影響の発生は見られなくなりました。

補遺: 2015/█/██に行われたSCP-3257の実験において確認されたSCP-1610-JP-Aとの関連性が示唆される発言の抜粋です。

調べた範囲ですが、ユニコーンの神聖を掲げていた教皇、または皇帝は存在しないようです。もしユニコーンが私の手に入ったならば。私はそう考えていました。

襲撃を受けた前後、私たちは秘密裏にユニコーンを探そうと計画していました。エチオピアにその存在があるということまでは突き止めました。現代に入ってユニコーンに関する記録はイギリスの国教会の者たちによって抹消されようとしていたようで手に入れるのは大変でした。

問題が起きました。調べた記録の一つにはジャワでマルコ・ポーロが"黒いユニコーン"なるものを発見したとありました。これはサイを勘違いしたものであるらしいのですが、その時に彼はイスラムの教徒にユニコーンの話を伝えたようなのです。

不幸なことにイスラムの教徒の中には信仰の形が違うことにより我々を襲撃する者もいます。あの日、私はイスラムの教徒により襲撃されたのはそのためであると考えていました。しかし、実際は事情が異なるようでした。彼もまたユニコーンを求めていたのです。

これは意外なことでした。やはり、信じる神は同じだったのでしょうか。それともあのユニコーンはただの信仰の虚像だったのでしょうか。

この発言により少なくとも2013年にはSCP-1610-JP-Aの精神影響が残っていることが疑われましたが、後に発見された資料と他に精神影響の発生が確認されていないことによりSCP-3257、及びイスラム過激派█████は歴史上の宗教的権威の行動の模倣をしているだけであるという見方が強まっています。

歴史:

以下は、1078年に書かれたハインリヒ4世によるクレメンス3世への手紙の抜粋です。

越えるべきことは多くあります。しかし、彼の海を越えた地にいる神聖の馬を示せばクリュニー育ちの頭でっかちの教皇も退けられるでしょう。本来、あなたには単に新たなる教皇として君臨していただければ十分だったのですが、我々には今、その馬を手に入れるために海を渡る人々が必要です。

グレゴリウス7世を廃する軍勢にこれを任ずるのはいくらなんでも酷だとは思いませんか?それに時間的余裕を考えても、是非ともあなたのお力で人々を集めていただきたい。この馬の実在を知るのが我々の側だけのことである時間はそう長くないでしょう。これはあの屈辱を晴らすためでもありますが、次のローマの繁栄のためでもあります。

最も重要なことに、あなたは神聖を手にすることを出来るのです。

1077年のカノッサの屈辱の後、ハインリヒ4世はクレメンス3世をグレゴリウス7世の対立教皇として擁立しグレゴリウス7世をローマから追放することを画策しており、そのためにSCP-1610-JP-Aを神聖の象徴として利用しようとしていた3ことが上の文書から推測されます。このことから少なくとも11世紀にはSCP-1610-JP-Aの政治的利用が行われていたと見られます。

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