SCP-1632-JP
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イベント時撮影されたSCP-1632-JP-B内のSCP-1632-JP-A

アイテム番号: SCP-1632-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1632-JPに通じる山道は崩落の危険性があるとして、通行を禁止します。また、SCP-1632-JP周囲100mには高さ3m以上のフェンスを設置し、定期的な観測を行ってください。

説明: SCP-1632-JPは██県██市██山道内の特定箇所で観測される現象です。

SCP-1632-JP該当箇所に人間が侵入した場合、侵入者は白衣を着た女性のクラスⅢ霊的実体(以下、SCP-1632-JP-A)に遭遇することが確認されています。また、SCP-1632-JP-Aの出現と同時に廃病院(以下、SCP-1632-JP-B)の出現も確認されています。これらは撮影機材によっては確認されないため、SCP-1632-JP内部の探索は音声記録、また、侵入者の証言に依存します。

この廃病院はかつて███県において██産婦人科として運営されていましたが、医療事故1により廃業、その後は心霊スポットとして扱われています。██産婦人科の建物跡は現在も███県に存在しており、異常性は確認されていません。また、SCP-1632-JP該当箇所に病院が存在していた事実はありません。

SCP-1632-JP-B内に人間が侵入した場合、SCP-1632-JP-Aは侵入者を案内するようにSCP-1632-JP-B内を移動します。この際、SCP-1632-JP-Aに対する質問には一切の返答がなく、物理的な接触も不可能です。

SCP-1632-JP-Aの案内を無視し、探索を行った場合、即座にSCP-1632-JP-B外へ転移され、それ以降SCP-1632-JP-B内への侵入は不可能になります。また、この状態に陥った人間は、SCP-1632-JP-Bにおける全ての窓に子供の顔が貼りついている、といった証言を行います。

SCP-1632-JP-Aの案内に従い、探索を行ったDクラスの映像記録から以下のイベントが確認されました。このイベントにおいてのみ、SCP-1632-JP-A、SCP-1632-JP-Bの存在が撮影されることが判明しています。

イベント映像記録1632-JP-01 - 日付 20██/██/██

00:00:00: ██高校の制服を着たSCP-1632-JP-AがSCP-1632-JP-Bと思われる駅2のホームに座っている

00:05:41: SCP-1632-JP-Aに30代前半の男性が接触、何らかの会話を行う。男性は酷く取り乱したように見える

00:17:58: SCP-1632-JP-Aと男性が別れ、SCP-1632-JP-Aはホームで文庫本を開く。身体が小刻みに揺れていることが確認されている

01:21:38: 駅構内を電車が通過する際、SCP-1632-JP-Aが線路内に侵入、電車に撥ねられる

イベント終了後、SCP-1632-JP-Aが侵入者を抱きかかえ、侵入者は消失したことが確認される。

この記録を受け、調査したところ、██大学においてこれまでの在籍者にSCP-1632-JP-Aは確認されませんでした。また、SCP-1632-JP-B内の通院記録にも該当する容貌の持ち主は現在確認されていません。

以下は、SCP-1632-JP-B内に侵入したことが確認されている██氏、実験により侵入したD-1922に対するインタビュー記録です。

インタビュー記録1632-JP-01 - 日付 20██/██/██

対象: ██氏

インタビュアー: エージェント・新田 

付記: エージェント・新田はオカルト関係の雑誌記者としてインタビューを行っている。

<録音開始>

(事実確認の為省略)

エージェント・新田: はあ、つまりあそこにはアパートがあったんだ

██氏: はい、かなり年季の入ったアパートでしたね。俺も心霊巡りはしてましたけど、これはヤバいと思いましたよ、明らかに不自然なんですもん

エージェント・新田: それでもそこに入ったんでしょ? で、そこで例の女性に出会った、と

██氏: まあ、そうですね。いや、今考えても生身の女性にしか思えませんでしたよ。だから俺、同じ心霊スポット周りの物好きだと思って、…そういう格好してましたし

エージェント・新田: そういう格好? 心霊スポット巡るのに? ごめんね、俺この界隈入ったばっかりだから

██氏: ああ、えっとですね、そういうとこって廃墟が多いんですよ。だから、安全の為にほとんど山登りみたいな恰好になるんですね。それで相手も登山ブーツに長袖、まあ、そういう格好だったんですよ

エージェント・新田: 成程ね

██氏: そんな場所で一人の女って時点で気づけばよかったんですけど。それで一緒に回ることになったんですよ。下心が無かったとは言いませんけど、ああいう場所ってそういう人がいたりもしますから。女性一人は流石にと

エージェント・新田: それで、巡った先には?

██氏: 中は普通のアパートでしたね。かなり身構えてはいたんですが、こんなもんか、と

エージェント・新田: 成程、変わったところは無かったんだね

██氏: はい。あ、ただ、どの部屋にも薬のパッケージがありましたね。一緒に回ってた人が、その、ピル、避妊薬3だって教えてくれました

エージェント・新田: ほう。で、最後の部屋で

██氏: はい、そうです。最後の部屋を開けたとき、それが見えました。首に紐みたいなものを巻き付けて、絞殺されそうになっているその人の姿が。腹には包丁みたいなのが刺さってて。手を俺に伸ばしてきて、俺、助けようと思ったんですけど、気づいたんです

エージェント・新田: 何を?

██氏: その殺されそうになっている女の人が、俺とさっきまで一緒に回っていた、俺の後ろにいるはずの女と一緒の顔をしてるって。俺、それに気づいたときから記憶が曖昧で、気が付いたら麓のコンビニで震えてました。あの時、気づかずに助けてたら、俺、どうかなってたんだと思います

<録音終了>

インタビュー記録1632-JP-02 - 日付 20██/██/██

対象: D-1922

インタビュアー: 楠木博士

<録音開始>

(事実確認の為省略)

楠木博士: では、改めて君の見た女について話してもらいます

D-1922: 何度もご苦労なことで。そうだな、二十そこらかで黒いスーツのカッコいい姉ちゃんだったよ

楠木博士: では、その女性はどうしていたのですか?

D-1922: 俺があの藪の中に入ったときよ、その姉ちゃんはビルん中から俺を見てたな。で、俺が入ると誰と勘違いしたのかは知らんが、俺を偉い人のところに案内してくれた。会社の名前は██商社、だったかな

楠木博士: それは確認しています

D-1922: そうかい。まあ、俺は学が無いからよ、言ってることはあんまり理解できなかったが、どうやらなんか大きな仕事をしてて、大金が近くにあることは分かった。これはその後の話知ってるから言うのかもしれねえけどな

楠木博士: いえ、そういった感想も必要です。続けてください

D-1922: その時突然だよ、ドアが開かれて目出し帽のごつい奴が入って来た。そいつは銃を突きつけると、俺とその女、あとは社長さんを縛り上げて、現金を奪ったんだ。で、まあ、あとは言いたかねえや。俺も相当の事してきたけどよ、あんな女に乱暴働くのは、な。それが済むと目出し帽はそのまま火ィ点けやがった。女は身をよじってこっちに来たがよ、先生らの指示で俺は窓から飛び出して、ってわけだ。

<録音終了>

このインタビューを受け、██産婦人科の関係者に対し調査を行いましたが、該当する事件、医師は確認されませんでした。

以下はSCP-1632-JPへの侵入記録です。

イベント映像記録1632-JP-06 - 日付 20██/██/██

探査者: D-1927

<記録開始>

D-1927: この藪の中に入ればいいんですね? 虫が多そうですね

██博士: D-1927、私語は慎むように

D-1927: 了解です。もう少し先ですね?

[SCP-1632-JP地点に到達、映像には開けた草原のみが映っている]

██博士: 何が見えますか?

D-1927: 何がって、海ですよ海。こんな山の中に突然

██博士: 海ですか。周囲に人間はいますか?

D-1927: 人間…、あ、浜辺にカップルがいますね。話しかけますか?

██博士: お願いします、適当に理由を付けて話してみてください

[視点が移動するが、撮影箇所は移動せず]

D-1927: こんにちは、地元の方ですか? ええ、旅行者で。で、この近くに泊まれるところが無いかなと、え、██府!? ここ██府なんですか? いや、あはは

[GPS反応は移動せず、SCP-1632-JP地点を指している]

D-1927: へえ、新婚! 赤ちゃんもできているんですか、それは嬉しいですね。え、いいんですか? ちょっと待ってください

[視点が移動するが、撮影箇所は移動せず]

D-1927: 先生、よければ宿まで案内しようか4、ということなんですけれども

██博士: 同行してください。話は続けるように

D-1927: 分かりました

[画面が変化し、森林が映る。付近の植生から日本国外の物と思われる。画面中央には一人の初老女性が映っている]

D-1927: へえ、地元の同級生なんですか。すいません、立ち入ったことまで聞いちゃって

[女性が一本の木に紐を括り始める。外見より妊娠していると推測される]

D-1927: 仲のいいご夫婦ですね

SCP-1632-JP-A: ええ、ホントに。私、幸せです

D-1927: まさしく幸せの絶頂ですね。え、危ない!

[視点が激しくぶれる。女性が木の枝にかけた紐に首を通し、踏み台を蹴り、首吊り自殺を図る]

██博士: どうかしましたか

D-1927: どうかしたって、見、見れば分かるでしょう! 奥さんが、撥ねられて、ああ、ダメです、早く、早く救急車をいや、先生、来てください!

██博士: 落ち着いてください

[女性は痙攣し、沈黙する。死亡したものと推測される]

D-1927: と、とにかく助けないと! え

[死体が揺れ、撮影者の方向を向く。僅かに口元が動き呟くのが確認された]

██博士: D-1927! 逃走を許可します!

[突如、視界全体に女性の顔が出現。何かを呟くのが確認される。後の解析で、この際放たれた言葉は「藪の中」であることが判明]

<記録終了>

この時点をもってD-1927の信号が途絶。D-1927は行方不明として扱われます。

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映像記録1632-JP-01において確認されたSCP-1632-JP-A


SCP-1632-JP該当箇所において19██/██/██、身元不明の女性が遺体となって発見された事が確認されています。女性は全身を損壊した状態で見つかっており、野生動物による捕食が確認されるため、具体的な死因は判明していません。現場にはロープ、ナイフ、ガソリン、外科用のメス、車のタイヤ痕5、睡眠薬などが確認されましたが、いずれも事件の解決には関与していません。

SCP-1632-JPの異常性はこの事件を機に発生していることが確認されており、関係性の調査及び該当女性の素性調査が進められています。

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