
図A.1: SCP-1638-JP
アイテム番号: SCP-1638-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1638-JPはヒト型異常存在標準収容室に収容します。SCP-1638-JPとの接触はハツカネズミへの興味がない職員に限定され、該当職員はマスクを着用してSCP-1638-JP-Aとの口唇部同士での直接的接触を防止してください。
説明: SCP-1638-JPは頭胴長が7.0cm、尾長が6.2cmのハツカネズミ (Mus musculus) です。SCP-1638-JPは身長135cm、年齢10歳程度のヒト (Homo sapiens) 女性の容姿に擬態することが可能です。擬態中に何らかの言語を発したことはなく、会話の試みには成功していません。
SCP-1638-JPは任意のタイミングでハツカネズミとヒトの姿 (“SCP-1638-JP-A”に指定) を切り替えることが可能です。通常はハツカネズミの姿をしていますが、潜在的にハツカネズミに対し好意を持った人間 (以下“対象”と表記) を視界に捉えるとSCP-1638-JP-Aとなります1。また、驚いた際や恐怖を感じた際にはハツカネズミの姿をとり逃走を図ります。
SCP-1638-JP-Aは対象を発見すると、接近して自身の口唇部を対象の口唇部へとあてがおうと試みます。これは対象が拒否したり、他者から妨害されることによって防ぐことが可能です。対象と口唇部同士が接触すると、SCP-1638-JP-Aの体内に胎盤に包まれたSCP-1638-JPの成体が瞬時に発生し、口部から吐き出されます。このときSCP-1638-JPの成体は、通常のハツカネズミの出産数と同様に6匹から7匹吐き出されます。
補遺1: SCP-1638-JPは、██県██市██町にてハツカネズミが大量発生し、それらがヒトの姿へと変化した旨の通報やSNSへの投稿が相次いだことから財団の注目を引き、収容に至りました。緊急収容作戦において、約███匹の個体が確認され、そのうち███個体を殺処分し残る██匹をサンプルとして確保しました。事後処理には大規模な記憶処理と情報操作が必要とされました。
SCP-1638-JPの起源についての調査により、SCP-1638-JPを飼育し繁殖させていた人物が浮上しました。以下は該当人物である猫山雪絵氏へのインタビュー記録です。
インタビュー記録1.1
日付: 2019/01/10
対象: 猫山雪絵氏
インタビュアー: 薮下研究助手
<記録開始>
薮下研究助手: それではインタビューを開始します。
猫山氏: あの子たちをどこにやったの?きっと寂しがってるから早く会ってあげないと。
薮下研究助手: ハツカネズミたちでしたら、こちらで保護していますからご安心ください。それで質問ですが、まずあのネズミたちを発見した経緯を教えてください。
猫山氏: そういうことじゃなくって!(溜め息) 公園でボーっとベンチに座ってたらやってきて、裸だったからどうしたらいいかわかんなくて、頭真っ白になって。
薮下研究助手: その時接吻したのですか?
猫山氏: うん。急にキスされたと思ったら苦しみだして、どうしようとオロオロしてるうちに口から赤い袋みたいなものを吐き出したの。あの子はそれを破って中から満足気にネズミを取り出してたわ。
薮下研究助手: 何故ネズミたちを繁殖させようと思ったのですか?
猫山氏: なんだか面白くなってきちゃって。キスするのが日課みたいになっちゃったのよね。
薮下研究助手: 日課で接吻してた割には増えすぎているように思えますが。
猫山氏: だって最近ネコが異常に増えてきてるし、ネズミがみんな食べられちゃってるからもっと増やさないとと思って!あの子たち、私の前だと人間の姿になってるから親に見つからないように保護するのも難しいし。
薮下研究助手: ちょっと待ってください。ネコが増えている?
猫山氏: 気づかなかった?あの町最近になってネコが異常に増えてきてるの。見ない日はないもの。
薮下研究助手: それは恐らく重要な情報だと思います。ありがとうございます。
<記録終了>
終了報告: 猫山雪絵氏は記憶処理を施した後、解放しました。
補遺2: 再度██町を調査したところ、SCP-1638-JPと同様の性質を持ったイエネコ (Felis silvestris catus) が多く発見され、SCP-1638-JPの同種と判断され収容されました。更なる調査の結果、イエネコ型のSCP-1638-JPを繁殖させていた人物である烏羽義明氏が特定され、拘束後のインタビューでは「ここ最近ネコの天敵であるトビやカラスが増えているし、ネコを保健所に連れていくヒトも増えているからどうにかしないといけなかった」旨の供述しています。烏羽義明氏は記憶処理を施した後、解放しました。
現在日本国内で発生している動植物の大量発生について、同様の現象に起因していないかを調査中です。