SCP-1658-JP
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SCP-1658-JPの内部空間

アイテム番号: SCP-1658-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1658-JPの入場口には常に3名の警備員を配置し、一般人のアクセスを禁止します。SCP-1658-JPの活性化は実験目的にのみに制限され、許可にはレベル2以上の担当職員の許可が必要です。SCP-1658-JP-1へのインタビューには標準知的存在情報プロトコルに従って下さい。

説明: SCP-1658-JPはイギリスのサウサンプトンに位置する古風な劇場です。SCP-1658-JPの内外の構成要素を動かす/取り除くことはできず、これらは完全に固定されているように振る舞います。SCP-1658-JP内の最奥には演劇用の舞台が存在しますが、この舞台とそれに付随する舞台裏の領域には不可視の障壁が存在するため侵入することができません。

SCP-1658-JPは観客席に1名以上の人物が座った際に活性化します。以下は活性中の段階の一覧です。

第1段階: 内部が徐々に薄暗くなり、舞台を照らす光源不明の照明のみが唯一の光となります。外部から持ち込まれた発光体は機能しなくなり活性化が終了するまで使用できません。

第2段階: ピアノのものと思われる音楽が始まります。楽曲は13世紀~19世紀のヨーロッパの著名な音楽家のものが多いですが、幾つかの事例では未知の音楽が演奏されました。音楽は2分の間続けられ終わりに近づくにつれてフェードアウトします。

第3段階: 舞台裏から人型実体(以下、SCP-1658-JP-1)が出現し演劇が開始します。活性化の度に演じられる演劇は変わりますが、常にSCP-1658-JP-1が主役であり、演劇がハッピーエンドで終わるという共通点があります。SCP-1658-JP-1以外の役者や舞台装置は演劇の進行に応じて適切に機能します。役者は全員が等身大の球体関節人形であり、半透明の糸が腕部や脚部についています。動作の際は糸1が上下左右に動くことで役者を動かします。ナレーションは声のトーンの起伏がほとんど存在しない、不明な人物の声で行われます。

第4段階: 演劇が終了しナレーションによる締めくくりの言葉が発された後、役者と舞台装置は舞台裏に移動します。移動によって活性化は終了しますが、SCP-1658-JP-1は数分間舞台にとどまる傾向があります。

SCP-1658-JP-1は10代程度の女性の人型実体であり、両者の背中部分が結合した結合双生児に見えます。身体の外見からはSCP-1658-JP-1はヴィクトリア朝的な黒色のドレスを着用したコーカソイド系の人間ですが、異常な点として頭部が歯車仕掛けの機械に置き換わっていることが挙げられます。この機械は内部機構を覆う部品が存在せず、複数の小型金属装置から成る構造が剥き出しになっています。構造は精密な時計器具のものに似ていますが、完全には解明されておらず、その機能は不明です。機械の下部からは金髪が垂れ下がっており、SCP-1658-JP-1の腰まで到達しています。

インタビュー#1
インタビュアー: チャジョウソウ研究員
インタビュー対象: SCP-1658-JP-1


チャジョウソウ研究員: 素敵な体験をありがとうございます。よい舞台でした。

SCP-1658-JP-1: ありがとう。そうった言葉は励みになりますね。

チャジョウソウ研究員: 少し質問したいのですがいいですか?

SCP-1658-JP-1: 構いません。

チャジョウソウ研究員: 貴女はいつからここにいますか?

SCP-1658-JP-1: この国がまだ帝国だった時から。ヴィクトリア女王が即位する直前。蒸気機関の時代の到来が目の前にあった頃。

チャジョウソウ研究員: 成程。質問を変えますがもう一人の片割れの方は-

SCP-1658-JP-1: 姉をそんな風に呼ぶのはやめていただけませんか。

チャジョウソウ研究員: すいません。……では貴女と貴女の姉は生まれた時からこうだったのでしょうか?

SCP-1658-JP-1: 生まれた時のことは知りませんが、少なくとも最初の記憶から私たちはずっと一緒にいました。

チャジョウソウ研究員: 最初の記憶について教えていただけませんか?

SCP-1658-JP-1: 初めに暗闇がありました。私たちがこれから上がる場所からは知らない人の声がたくさん聞こえています。身体が震えて止まらなかった私を姉は慰めてくれたのです。

チャジョウソウ研究員: それは初めて舞台で演じた時のことですか?

SCP-1658-JP-1: そうです。音楽が終わり、舞台の上に行くと数え切れないほどの目が私たちを見つめていました。歯車が壊れそうなぐらい怖かったのですが、姉がいてくれるから最後まで演じることができました。……その記憶は最も鮮明に覚えています。あの時の私の演技はとても下手なもので、本当に酷いものでした。

チャジョウソウ研究員: ご協力ありがとうございます。今回の質問はこれで終わります。

インタビュー#6
インタビュアー: チャジョウソウ研究員
インタビュー対象: SCP-1658-JP-1


SCP-1658-JP-1: 今日も来てくださったのですね。

チャジョウソウ研究員: ええ、今回もとてもよかったです。……ちなみにですが今日流れていた曲は何という題名ですか?

SCP-1658-JP-1: “銀色の鉄へ”2ですよ。あまり人気は有りませんが、この、くたびれた機械に油を差すような-心地よい音色が私は好きです。

チャジョウソウ研究員: 私も気に入りました。

SCP-1658-JP-1: 貴女ならそう言うと思いましたよ。貴女の好む曲は何となく分かりますから。

チャジョウソウ研究員: 貴女が曲を選んだのですが? 貴女はここで流れる音楽を制御できるということですか?

SCP-1658-JP-1: 端的に言えばそういうことです。音楽だけではありません-ここの出演者も皆、私が選んだ道化達です。舞台の光も闇も私の玩具なのです。

チャジョウソウ研究員: 成程、分かりました。主役である貴女には何らかの権限を所有していると。

SCP-1658-JP-1: それは違います。私は主役ではありません。ここの糸に繋がれた人形と同じ、ただの舞台装置。

チャジョウソウ研究員: ならば主役は誰ですか?

SCP-1658-JP-1: 姉です。巨匠の彫刻のように美しい容姿、古代の岬で見られた清らかな水のような心。全てにおいて私は姉を越えられないのです。

チャジョウソウ研究員: しかしですね。貴女の姉は-

SCP-1658-JP-1: なんですか?

チャジョウソウ研究員: 貴女の姉が演劇で発言したり、動いたりしたところを見たことがありません。

SCP-1658-JP-1: それは……

チャジョウソウ研究員: どうしました?

SCP-1658-JP-1: それは微々たることです。姉は何もしなくともそこにいさえすればいい。真の美しさとは静かなものですよ。彼女が演じるのではなく周りが演じることが美の歯車を回します。なぜ私たちはオルゴールのぜんまいを回すのですか? オルゴールを見るためではなく、それが響かせる音色を感じたいからです。音色は見えませんが確かにそこにあります。

チャジョウソウ研究員: 理解しました。

SCP-1658-JP-1: ……今日はもう終わらせてもらってよろしいですか。

インタビュー#7
インタビュアー: チャジョウソウ研究員
インタビュー対象: SCP-1658-JP-1


チャジョウソウ研究員: こんにちは。先日は-あの、申し訳ありませんでした。以前もですがもう少し言葉を選ぶべきでした。

SCP-1658-JP-1: いいんです、構いません。

チャジョウソウ研究員: では、質問を-

SCP-1658-JP-1: ちょっといいですか。

チャジョウソウ研究員: なんでしょうか。

SCP-1658-JP-1: あれから考えたみたことがあります。

チャジョウソウ研究員: 貴女の姉のことですか?

SCP-1658-JP-1: はい。

チャジョウソウ研究員: 続けてください。

SCP-1658-JP-1: 姉はもう長い間、何も喋らず、何も演じていません。

チャジョウソウ研究員: 貴女はその原因を知っていますか?

SCP-1658-JP-1: ……彼女はとても明るく熱っぽい太陽のような人でした。舞台の照明とは比べようのない光を纏った-そんな人です。ですが……ある時から何も感じ取れなくなったんです。その光が、熱が、存在さえも。

チャジョウソウ研究員: ある時点から貴女の姉が応答しなく-

SCP-1658-JP-1: なぜなのか分かりません。まるで突然全てが消えたようになって、何もかも消えてしまって……。

チャジョウソウ研究員: あの、大丈夫ですか?

SCP-1658-JP-1: どうして行ってしまったの? なぜ私を置いていったの?

[“銀色の鉄へ”が流れ始める。以前のものと違い音に音声の歪みや不協和音が混じっている。]

SCP-1658-JP-1: どこにいるの

チャジョウソウ研究員: 落ち着いて下さ-

SCP-1658-JP-1: 貴女?

チャジョウソウ研究員: [沈黙]

SCP-1658-JP-1: 貴女が姉さんなの?

チャジョウソウ研究員: ……いいえ。

SCP-1658-JP-1: [長い沈黙] そう。

[楽曲の音声の歪みや不協和音が徐々に減ってゆく。]

SCP-1658-JP-1: ……そうですね。すみません、どうかしてました。

チャジョウソウ研究員: 落ち着きましたか?

SCP-1658-JP-1: はい。

[チャゾウソウ研究員とSCP-1658-JP-1は約1分間沈黙する。]

SCP-1658-JP-1: 貴女はこの曲がお好きでしたね。ぜひ、一曲踊りませんか。

チャジョウソウ研究員: 申し訳ないですが、それはできません。

SCP-1658-JP-1: ……そうですか。……ではまたの機会に。

[SCP-1658-JP-1が舞台裏に移動する。]

実験7において見られたSCP-1658-JP-1の挙動から、実験は無期限に延期されています。

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