アイテム番号: SCP-168-KO
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-168-KOが民間社会で発見された場合、速やかに当該実例を確保し、所有者とその親族に記憶処理を施すものとします。SCP-168-KOの効果による負傷者や死亡者が出たならば、まず近隣のサイトへ移送し、そこで治療してから記憶処理を施します。SCP-168-KO実例は収容室の各棚の上に1台ずつ配置されます。SCP-168-KOの追加実験は検討中です。
説明: SCP-168-KOは光興グァンフン電子(GoI-168-KO)が2007年に開発・販売した家庭用電子レンジです。SCP-168-KOの出力は700ワットで、様々な調理法に応じたオプションが用意されています。SCP-168-KOのマグネトロンは、他の電子レンジには見られない特異な製品です。SCP-168-KOの異常性は“炒め物”オプションを選択する時に発現します。オプションを“炒め物”に設定したSCP-168-KOに何らかの物体を投入し、1分以上作動させると、SCP-168-KO内部の物体(SCP-168-KO-1)に異常な特性が付与されます。
SCP-168-KO-1は認識災害効果を誘発し、その接触者/摂食者に影響を及ぼします。影響者はSCP-168-KO-1の材質を認識しません。一例として、ニンジンを“炒め物”オプションのSCP-168-KOに投入した場合、そのSCP-168-KO-1実例は“ニンジン炒め”であると認識されますが、“ニンジンを炒めた料理”とは見做されません。SCP-168-KO-1の成分分析を試みる人物は、それが“100%炒め物”で構成されていると認識します。影響者はSCP-168-KO-1の材質が危険または非食用物であっても食べようと試み、非常に美味であると評価します。一部の摂食者はSCP-168-KO-1への執着を示し、継続的に消費します。
SCP-168-KOは2011年7月13日、京畿道南楊州市の家屋で発見されました。行方不明者届を受けて一帯を捜索していた警察は、長期間空き家だった家屋に立ち入り、SCP-168-KO実例とその横に倒れた遺体を発見しました。現場からは遺体の他にも、周囲に散らばる衣服の断片やゴミと、ごく新しいと思われる足跡が残されていました。遺体は行方不明者の金キム██と特定され、体内から多量の金属、ガラス、プラスチックが摘出されました。SCP-168-KOの内部には冷えたマグカップ炒めが入ったままでした。家屋周辺の監視カメラには、警察の到着前に、黒いフード付きパーカーを着た人物が急ぎ足で建物を出る様子が映っていました。この人物の身元はまだ特定されていません。
SCP-168-KOは幾つかの要注意団体とテロ組織によって使用されていることが判明しています。財団は現在までに26台のSCP-168-KO実例を回収しましたが、数百台が未だ民間社会に流通していると推定されます。
補遺1: SCP-168-KO取扱説明書の抜粋
(前略)
4-3. 炒め物オプション
8種類のオプションの中でも、“炒め物”オプションは最も特別です。炒め物は人々の間でも好き嫌いが大きく分かれる料理なので、我々も一際力を入れました。野菜嫌いのお子様にも最適です。
“炒め物”オプションの調理方法は簡単です。
- 準備した食材をボウルに入れ(紙製・プラスチック製は使えません)、電子レンジに投入します。
- 電子レンジを閉めて、タイマーをご希望の時間にセットします。通常10~15分で十分です。
- タイマーをセットしてから“スタート”を押します。
- タイマーが鳴って電子レンジが止まったら、注意して料理を取り出しましょう。高温になっている場合があるので、オーブンミットやタオルで手を保護することをお勧めします。
“炒め物”オプションを使用すれば、どんな食材を使えばいいのか悩んだり、油がこぼれる危険を冒しながらフライパンを使ったりせずとも、美味しい炒め物を作ることができます。さらに、特殊な電磁波によって、子供たちに健康的で美味しい野菜炒めを楽しんでいただけます。あなたの食卓に“炒め物”オプションで彩を添えましょう。
(後略)
補遺2: D-04028へのインタビュー
質問者: 朴 智勳パク ジフン博士
回答者: D-04028
<記録開始>
朴博士: こんにちは、D-04028。気分はどうですか?
D-04028: まぁまぁだね。でも腹が減ったよ。例の電子レンジで作ってくれた奴、あれは美味かったな。また食わせてもらえないか?
朴博士: 残念ながら無理ですね。あれはあくまで実験に使ったのであって、休憩室で使うような物ではありません。それにあなたは夕食を食べたばかりでしょう?
D-04028: 夕食だぁ? 全部残しちまったよ。食欲が失せた。
朴博士: 体調が悪いのですか?
D-04028: 知らん、食いたくなかったんだ。美味い物が欲しい。腹が減ってたまらない。もう1回ぐらいあの電子レンジを使ってもいいだろ?
朴博士: 勿論ダメです。実験前の注意を聞いていなかったのですか? あれを食べ続けると健康に害が及ぶ可能性があると言われたでしょう。
D-04028: クソ、飢え死にしそうだってのに、マトモな料理1つ食わせてもらえないのかよ。大体、何がそんなに危険なんだ? 俺はちょっとした炒め… うん、そうだよ、炒め物を食べたいと言ってるだけじゃないか。
朴博士: (溜め息) あの時、自分が何を食べたか忘れましたか?
D-04028: えーと、何かの炒め物だったのは覚えてるんだが、具体的に何だったのかは思い出せない。
朴博士: とにかく、それが非常に美味だったのですね?
D-04028: そうとも! 人生で食った料理の中では一番美味かったね。嗚呼、考えただけでよだれが出そうだ。
朴博士: SCP-505-KOから出た人の脚で作ったのに?
D-04028: どういう意味だ? あれは… ああ思い出した。あれは脚炒めだったな。その具材がどうかしたか?
朴博士: 本当に覚えていないのですか?
D-04028: あれはただの脚炒めだぜ、人間の脚なんかで出来てるわけないだろ。メシが不味くなる。
朴博士: (短い沈黙) よく分かりました。
<記録終了>