COGNITOHAZARD WARNING
当該報告書は潜在的にSCP-1682-JPの影響を拡散するベクターとして扱われており、アクセスには研究担当職員らのうち5名以上からの許可が必要です。当該報告書には明確な人為的エラーが存在しますが、異常性の理解を補助する目的で意図的に修正されていません。編集機能はロックされています。
現在、該当報告書は歴史的資料として掲載され、アーカイブされています。財団の最高機密情報に関連した記述が含まれるため、閲覧にはセキュリティクリアランスレベル5/1682-JPが必要です。
- O5-01 -
たすけて
アイテム番号: SCP-1682-JP | LEVEL 5/1682-JP |
オブジェクトクラス: Keter | TOP SECRET |
特別収容プロトコル: SCP-1682-JPおよびSCP-1682-JP-Aについて言及しているインターネット上の情報は全て財団運営のウェブクローラにより保管されたのち即時削除されます。それらの情報を公開した個人あるいは団体は同様にウェブクローラにより特定され、機動部隊エータ-10 ("シー・ノー・イーヴル") あるいはそれに相当する各支部の機動部隊により拘束されます。拘束後、対象者が保有していたSCP-1682-JP-Aを映した映像や画像の複製は削除され、対象者は記憶処理を施されたのち解放されます。また同時並行で、これらの削除を目的に機動部隊ミュー-4 ("デバッガー") は一般人の有するコンピュータのクラッキングを行います。クラッキング後は事後処理としてタイプ-Ψ電子記憶処理エージェントを用いたコンピュータ所有者への記憶処理をしてください。
多目的人工衛星「四黒号」に搭載されているグスタフ/サイディア広域ミームスキャナはSCP-1682-JPが新たに拡散している地域とSCP-1682-JPに影響されている人口の散布状況を特定します。新たに拡散が見られた地域には適宜機動部隊ガンマ-5 ("燻製ニシンの虚偽") あるいはそれに相当する各支部の機動部隊が出動し、SCP-1682-JPの拡散防止と実験的な記憶処理を行います。
機動部隊ユプシロン-4 ("糖衣錠") はSCP-1682-JP対抗ミームの作成と配布に割り当てられます。SCP-1682-JPにより精神健康を損ねている一般人を最重要ターゲットとして対抗ミームを配布してください。
SCP-1682-JP-Aの死体は防腐処理され、サイト-8181の一般収容室内で気密性の高い箱に入れて保管されています。収容室内へのアクセスは研究担当職員ら以外には禁じられています。
その極端な収容の困難さのため、特別対策手順「アポテオシス・プロトコル」の実行が計画されています。詳細は補遺1682-JP.3を参照してください。
2017/07/11注記: SCP-1682-JPは現在進行中のAK-クラス:世界終焉シナリオを引き起こしており、監督評議会により高度収容優先事項であると判断されました。
説明: SCP-1682-JPはイサナギマコモIsanagi Makomo ("SCP-1682-JP-A"に指定) という女性が死亡したという概念です。当報告書執筆時点でSCP-1682-JPを認知している世界人口はおよそ85.2%と見積もられており、この割合は現在も増加していることが確認されています。SCP-1682-JPは記憶処理等の財団が現在有している如何なる技術においても除去することが不可能と考えられています。
SCP-1682-JPを認知した人物 (以下"感染者"と表記) は、SCP-1682-JP-Aが何者であるかを知っているか否かに関係せず、その死について悲壮感や喪失感などのネガティブな感情を抱きます。また、感染者らは積極的に他者へとSCP-1682-JP-Aが死亡したことを伝えようと試みます1。死の概念を理解できていない人物2はSCP-1682-JPの精神影響を発露しませんが、同様に記憶の除去は不可能です。
SCP-1682-JPが原因の負の感情は、気晴らしになる行動をしたり嗜好品を利用したりすることによってある程度軽減することができます。しかしながら、SCP-1682-JPについての記憶の完全な忘却ができないため感染者らは常時負の感情に支配されることになり、精神的な健康を徐々に損ねる傾向にあります。
SCP-1682-JPは異常なミーム的伝染性を有しており、以下の条件が1つ以上満たされたときに「イサナギマコモという女性は死亡している」という概念として伝播します:
- 記録媒体に録音されたSCP-1682-JP-Aの声を聞く。
- 写真や映像等に記録されたSCP-1682-JP-Aの姿を視認する。
- SCP-1682-JP-Aの死体を視認する。爪や体毛のみなどでは異常な伝播は発生しないため、厳密には皮膚組織を視認することがトリガーと考えられる。
- 「Isanagi Makomo (Makomo Isanagi) 」として聴き取れる何者かの発言を聞く。「Isanagi」のみ、あるいは「Makomo」のみでは異常な伝播は発生しない。
- 「Isanagi Makomo (Makomo Isanagi) 」として読むことが可能な文を視認する。これには「日奉菰」という文字列が含まれる。「Isanagi」のみ、あるいは「Makomo」のみでは異常な伝播は発生しない。
上記の条件は実験から判明した伝播条件であり、結果からイサナギマコモは「日奉菰」と書きそのように読むものであると考えられています3。特に「日奉」は財団81管区が収容している複数の人型異常存在が有する稀有な姓と一致しており、それらとの関連性の調査が行われています。
SCP-1682-JP-Aは「あまてる」という名義を用いてインターネット上で活動していたおよそ20代と思われる日本人女性です。財団による広範な調査にもかかわらず、日本国東京都内で活動していたこと、および都内の神社で巫女をしていたこと以外の本名や家族関係等の多くの情報が判明していません。しかしながら、補遺1682-JP.4に示される映像記録より本名は「イサナギマコモ」と読む名前であると推測されています。
補遺1682-JP.1: SCP-1682-JPの拡散 神様 もうゆるしてください
以下はSCP-1682-JPの拡散開始からの大まかなタイムラインです。
SCP-1682-JP拡散タイムライン
1日目 - 2017/07/07
主に日本国内の複数のSNSにおいてSCP-1682-JP-Aの死についての言及が見られた。この時点では平均的な情報拡散速度を見せており、財団運営のウェブクローラなどはこれを異常と見做すことはなかった。
2日目 - 2017/07/08
日本国内のみならず複数の国のSNSや動画配信サイトにおいてSCP-1682-JP-Aの死についての言及がされ、更に各国の幾つかのメディアがこのことについて報道し始めた。
同日午後以降、財団エージェント複数名がSCP-1682-JP-Aの死について不自然な負の感情を経験することや、情報を拡散したいという軽微な欲求が発生したことを報告した。「イサナギマコモという女性が死亡した」という情報および概念は何らかの異常事象であると見做されたため、インターネット上で拡散される異常情報に用いられる通常の情報隠蔽プロトコルの適用が決定した。この時点でこれはSCP-1682-JPに指定された。
3日目 - 2017/07/09
早朝よりSCP-1682-JPに対して通常の情報隠蔽プロトコルや虚偽情報キャンペーンが適用され始めた。また、当時開発が完了したばかりであったタイプ-Ψ電子記憶処理エージェント4の使用が同時並行で行われた。SCP-1682-JPの拡散速度には少々の減速が見られた。
4日目 - 2017/07/10
財団で用いられる通常クラスの記憶処理並びにタイプ-Ψ電子記憶処理エージェントがSCP-1682-JPの異常除去に効果がないことが確認された。また、懸命な情報統制の試みにもかかわらずSCP-1682-JPの拡散速度は更なる加速を見せ、隠蔽が追い付いていない状況にあると報告された。この時点で財団情報統制部門によりSCP-1682-JPの拡散元と考えられるSCP-1682-JP-Aの自殺映像が回収された。SCP-1682-JPは正式にKeterに分類された。
5日目 - 2017/07/11
財団が管理する複数のウェブクローラおよび多目的人工衛星「四黒号」に搭載されているグスタフ/サイディア広域ミームスキャナが収集した情報から、SCP-1682-JPがこの時点で世界人口の約80.2%以上が感染者となっていることが示唆された。また、世界各地においてSCP-1682-JP-Aが死亡した事実から抑鬱状態に陥ったり自殺する人物が複数発生し始めたりしたことや、SCP-1682-JP-Aの死に何らかの意味を見出し小規模の暴動を起こす人物が出現したことが確認された5。これらの事実から、監督評議会の判断でSCP-1682-JPの収容は高度優先事項に指定された。
同日、SCP-1682-JPの伝播条件に関する実験が複数のサイトで行われ、説明項に書かれた条件が判明したほか、心理抵抗度がおよそ63以上である人物、あるいは何らかの確固たる精神的な拠り所を有してる人物はSCP-1682-JPによる精神影響の効果が表れにくいことが確認された。多くの世界人口の心理抵抗度が50を下回っていることに対し、ほぼ全ての財団職員の心理抵抗度は60を上回っているため、職員らがSCP-1682-JPの影響をあまり受けていない理由はこのことにあると考えられた。
監督評議会の指令により、SCP-1682-JPの収容方法確立会議が行われることが決定した。詳細は補遺1682-JP.2を参照のこと。
6日目 - 2017/07/12 以降
SCP-1682-JPに感染した世界人口がおよそ83.1%以降から急速に減速し始めた。これは識字能力のない人口が在住する地域においてSCP-1682-JPの拡散速度が遅いためであると考えられており、識字能力のある人口においてはおよそ98.0%以上が既にSCP-1682-JPの感染者であると推定された。精神影響による自殺者や精神疾患の発症者数、暴動の発生数は依然として増加していた。
補遺1682-JP.2: 収容方法の提案 気づいて 気づいてよ
SCP-1682-JPが世界各地に広く拡散したことを受け、アメリカ合衆国インディアナ州ブルーミントンのサイト-81を中心に緊急の収容方法確立会議が行われました。会議にはビデオ通話が用いられ、セキュリティクリアランスレベル5/1682-JPを付与されている各国の財団サイトの管理者らや複数の財団内部部門構成員らが参加しました。会議は収容方法を考案するのみならず、異常性への理解や各支部間での情報の擦り合わせも目的とされていました。以下はその会議における提案の要約を抜粋し、リストアップしたものです。
提案 #: 1682-JP-001
コードネーム: カゲムシャ
概要: SCP-1682-JP-Aはある組織から命を狙われ現在は身を隠している状況にあり、自殺した人物はSCP-1682-JP-Aを死亡したことにするため用意された別人であったという虚偽情報を流布する。SCP-1682-JPの死に関する情報が異常に拡散されている原因は、SCP-1682-JP-Aが死亡したという事実を広めることで該当組織の気を逸らすためであると説明する。
結論: 却下 - SCP-1682-JP-Aが死亡したという事実を拡散することはその身を秘匿するための対策としては不自然である。また、影響者らが感じるネガティブな感情に対する説明が付かない。
提案 #: 1682-JP-008
コードネーム: エリミネーション
概要: GOC等の複数の要注意団体の協力を仰ぎ、SCP-1682-JPを除去可能な技術の開発を急ぐ。
結論: 却下 - 宗教系の要注意団体は技術開発に明確に向いていないこと、またその他多くの要注意団体は構成員らの心理抵抗度の低さによりSCP-1682-JPの影響を受け混乱状態にあることから、実際に協力を仰ぐことは現実的ではないと考えられる。また、SCP-1682-JPは高度収容優先事項に指定されているため、実行までに半年以上を要すると見積もられるような即効性のない対策は実現できない。
提案 #: 1682-JP-017
コードネーム: アクイタル
概要: [編集済]を全人類に適用し、SCP-1682-JPの精神影響を和らげる。
結論: 保留 - 精神影響の軽減については財団職員らがその効果の証拠となっているが、一方で公衆の死に対する関心が希薄になり殺人等の犯罪の発生率が増加する可能性がある。また、使用される物品が財団の最高機密であることから、可能な限り避けるべき提案と考えられる。
提案 #: 1682-JP-036
コードネーム: アポテオシス
概要: 世界規模の記憶処理を実行した後、SCP-1682-JP-Aを神格化した宗教を広める。
結論: 保留 - SCP-1682-JPの影響が軽減される条件の1つに心理抵抗度の高さがあり、もう一方で確固たる精神的な拠り所を有している人物は心理抵抗度の高低に関係なく精神影響を受けにくい傾向にあることも判明している。相応のカバーストーリーとともにSCP-1682-JP-Aを神格化した宗教を広めることにより、SCP-1682-JPの精神影響による混乱の収束とSCP-1682-JPという概念が異常であるという事実の隠蔽が期待できる。しかしながら記憶処理の規模が莫大であり、実行するのは困難と考えられる。
保留となった提案は監督評議会へと提出され、最終的な判断として提案1682-JP-036が採用されました。当案に基づき公衆虚偽情報部門と81管区民俗文化部門が共同で特別対策手順案を作成しました。
補遺1682-JP.3: 痛い痛い 熱い熱い熱い熱い たすけて だれか
アポテオシス・プロトコル
LEVEL 5/1682-JP CLASSIFIED
前記: アポテオシス・プロトコルは財団公衆虚偽情報部門と財団81管区民俗文化部門を中心に作成されたものです。
概要: SCP-1682-JPの収容を目的として化合物ENUI-56の全世界への大量散布を行ったのち、カバーストーリー「日本発祥の宗教"日奉教"」をヨーロッパ地域および無宗教人口の多いアジア地域をターゲットとして流布し、機動部隊ガンマ-5 ("燻製ニシンの虚偽") の主導の下で大規模な記憶改竄処理および歴史改竄処理を行います。このカバーストーリーはSCP-1682-JP-Aが神格化され信仰対象として扱われることに主眼が置かれています。
当プロトコルが実行されるまでに、公衆に残存するSCP-1682-JP-Aに関する情報の駆逐を行う必要があります。これらは各国の財団支部の機動部隊とウェブクローラの総動員によって行われます。SCP-1682-JP-Aに関する情報の駆逐に目途が立った時点で監督評議会の全会一致の指令により当プロトコルの実行が宣言されます。
化合物ENUI-5の大量散布方法は監督評議会以外には開示されません。
目的: 記憶処理や対抗ミームなどによるSCP-1682-JPの除去には現状成功していないため、アポテオシス・プロトコルはあくまでもSCP-1682-JPの除去ではなく、公衆のSCP-1682-JPに対する考え方を変化させることによる精神影響効果の軽減が目的です。このプロトコルの実行により、SCP-1682-JPは公衆において正常な概念として捉えられるようになります。
付録: 以下はカバーストーリーに用いられる宗教「日奉教」についての要約です。全文を閲覧したい場合は公衆虚偽情報部門あるいは81管区民俗文化部門に問い合わせてください。
日奉教:「日奉眞菰イサナギノマコモ」を信仰する日本発祥の宗教です。古くから口伝によってのみ伝えられてきたという特徴があり、日奉教に関する文献は殆ど発見されていません。それにもかかわらず、現在はヨーロッパ、東アジア、東南アジアを中心に世界で3番目に信者が多い宗教となっています。日奉教に属する祭祀施設は後述する理由により存在していません。宗教的配慮から歴史書等の文献に日奉教に関する事項は基本的に書かれていませんが、世界的に常識としてその存在が知られています。
信仰対象である日奉眞菰は死後神格化された人神であり、基となった人物は生没年未詳 (恐らくは14世紀後半に誕生) の日本人女性「日奉菰」です。日奉菰は当時発生した未曾有の天災 (一説には火山の噴火) が日本全国に影響を及ぼした際、敢えて自害することで人々の心に普遍的に寄り添うことを可能とし、人々に生存するための勇気と希望を与えたと伝えられています。そのため、日奉教は常に心の中に日奉眞菰が生きていて人々を励ましていると考えることにより心の安寧を得ようとする宗教となっています。
しかしながら、日奉眞菰は祟り神としての性質も持ち合わせています。日奉菰は自害する前に自身の所有物や家屋などの全てを焼却したと伝えられており、理由は不明ですが、自身について詳細に言及した書物や絵巻物などを作成した人物に苦痛を齎すと言われています。この逸話があるため、当時より多くの人々は彼女の祟りを恐れ日奉教について口伝によって伝えてきました。しかしながら、幾つかの発見された歴史的資料からその名前に当てられた漢字などが判明している事実もあり、必ずしもその限りではなかったようです。現代においても多くの信者はこの逸話を信じ、日奉眞菰に関する情報を書き記すなどの祟りに触れるような行動はしていません。
歴史: 日奉教は15世紀半ばには既に日本各地に広まっていました。背景には大名同士の領地争いがあり、その中で有力な大名達が領地内の日奉教信者を優遇する政策をとったことが知られています。その後、地理的にも近い朝鮮や中国などへと拡大しました。現在でも中国は日奉教信者が最も多い国として知られています。
日奉教が海外、特にヨーロッパへと広く伝えられたのは16世紀、大航海時代の頃でした。当時ポルトガルやスペインと日本との貿易が行われた際に、日奉教を布教する目的で複数の日本人が海外へと渡ったため、現在に至るまで世界各地に日奉教を信じる人口が散布しています。特にヨーロッパには日奉教を信じる人物が多く存在します。
ヨーロッパ地域で日奉教が拡散した背景には当時のキリスト教世界における聖職者の世俗化や堕落を批判する風潮があります。当時、既存のカトリック権力の宗教的腐敗に疑問を抱く人々が多く居たことが知られており、日奉教はそのような人物らの間に新たな形の宗教として広まりました。
また、日奉教信者は東南アジア地域にも多く存在します。これは16世紀ごろに行われた朱印船貿易によって日奉教が伝わったためです。当時複数の宗教のるつぼとなっていた東南アジアにおいても、そのわかりやすい考え方が支持され、信者数を増やしていったと考えられています。その後、日奉教は東南アジアへのヨーロッパ諸国の進出を通じ、各地へと広まっていきました。
補遺1682-JP.4: 映像ログ どうして書くの 消してよ お願いだから
2017/07/10、SCP-1682-JPがインターネット上で拡散された原因と考えられている動画ファイルが回収されました。内容はSCP-1682-JP-Aが自身について語ったのちに自殺するというものです。付録として、以下にその映像ログの転写を掲載します。
前記: 当映像ログは2017/07/07にSCP-1682-JP-AがYouTube上でリアルタイム配信を行った際の映像の転写です。SCP-1682-JP-Aは「あまてる」名義で活動しており、当時のチャンネル登録者数はおよそ11000人であったことが記録されています。この配信を行う前日にSCP-1682-JP-Aは投稿済みであった全ての動画を削除しています。これらの動画のうち幾つかは一般人が保存や録画をしていたため部分的に発見されています。
当配信のタイトルは「【あまてる】別れの挨拶」でした。どこにも慈悲はないの?
[ログ開始]
(SCP-1682-JP-Aはスマートフォンを用いて公園内に設置されたベンチに座りながら配信を開始する。この公園は既に東京都八王子市の[編集済]にあることが特定されている。SCP-1682-JP-Aは落ち着いた様子に見える)
SCP-1682-JP-A: どうもこんにちは。あまてるです。以前から告知してた通り、昨日の夜全部の動画を削除させていただきました。
打ち明けると、実は前からこうやって配信者をしていくのに息苦しさを感じてました。私がTwitterやってないのは皆さん知ってますね。でもたまに覗いたりしてたんですよ。驚きました? それで、あの、本当に嬉しいこともいっぱいあったんです。私の動画や配信を好きって言ってくれる人がいて、ニコニコしてたんです。
でも、時代は移り変わることを知りました。私の悪口を書く人、動画が昔より面白くないという人、何だか私が変わってしまったようだって言う人。いっぱいいました。再生数も伸びなくなって、動画にも低評価が目立つようになりました。私は今に追いつけなかったんです。今まで通り、自分の好きなものを作ってみんなに楽しんでもらえればそれでよかったのに。私から見たら変わったのは私じゃなくて、あなたたちなんですよ。私は何も変わってない。
(間)
それでも頑張って動画を作りました。低評価が増えました。登録者が減りました。悪口が増えました。低評価はまだいいですよ。それは私の落ち度でもあるし。でも、悪口は?
気づきました。みんな「あまてる」というコンテンツしか見てなくて、私自身のことなんてちっとも見てない。
(間)
動画を消したのは自分の動画を見るのも嫌になってきたからなんです。もはや私にとって、過去は何の意味も持たなくなりました。動画を作ってきたことすら後悔してるんですよ。そうなった原因は何か?
(間)
わかりませんか。あなたたちです。
(SCP-1682-JP-Aがペットボトル飲料を飲む)
視聴者の方全員がそうだって言いたいわけではないんです。極一部、極一部の私をただのコンテンツとしてしか見ない人たちのせいで、私は。
(SCP-1682-JP-Aが再びペットボトル飲料を飲む)
私は今から死にます。わかってます。こんなの独り善がりでクソみたいな行いだって。でも、それでも、もう何もかもどうでも良くなりました。なあに、死という暗い穴に少し閉じこもるだけですから。(笑い声) 動画は私の全てでした。そしてそんなものはもうない。色を失った世界が再び色づくことなんてないんです。うーん、ちょっと文学チックすぎましたかね。(笑い声)
(SCP-1682-JP-Aが立ち上がる)
じゃあ最後に、いつも通り格言言って終わりにしましょう。
(イサナギマコモが悲しみに満ちた笑みを浮かべる)
「人は喪って初めてそれがどれ程大切だったのか気付く愚かな生き物だ」。それじゃあ、これで配信は終わりです。最後の最後まで目立とうとして消えるなんて恥ずかしいけど。
でも、そう、これだけは言いたかった。私は「あまてる」ってコンテンツじゃない。ちゃんと「イサナギマコモ」って名前がある。配信者である前にひとりの人間なんだよ!解れよクソどもが!
(間)
わかってる、わけわからないなんてわかってる。でも……すみませんでした。さようなら。
(イサナギマコモは配信を終了しないまま公園を駆け出し、道路へ飛び出て大型車に衝突された。のちに通報によって駆け付けた病院関係者により、頭部を強打したことによる即死と判断されている)
[ログ終了]
後記: それでもイサナギマコモは、私たちの心の中に生きています。 もういっそさ ねえ
報告書管理担当者注: 報告書編集者はSCP-1682-JPの影響を強く受けていたため、のちにクラスC記憶処理を施されています。その後、当映像ログは直接視聴した場合に限り、心理抵抗度の高低に関係なく視聴者の負の感情を強く引き出すことが判明しており、このケースは特例であったと研究担当職員らは判断しています。当映像ログの視聴は現在禁止されています。
補遺1682-JP.5: アポテオシス・プロトコルの実行
監督評議会によりアポテオシス・プロトコルの実行が宣言されました。実行予定日は2017/09/17です。
おねがい わたしを ころして
注記: あなたはSCP-1682-JP報告書の旧リビジョン (2017/07/22) のアーカイブを閲覧しています。現在適用されているリビジョンはこちらから閲覧してください。