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生体認証を完了。
Level4/Exodus-1クリアランスを確認。
ようこそE-1計画担当者様、情報を開示します。
アイテム番号: SCP-1690-JP
オブジェクトクラス: Euclid Ain
特別収容プロトコル: SCP-1690-JPは超深宇宙で発生している事象のため、財団による収容は不可能です。ヘルクレス座・かんむり座グレートウォールに対する詳細な観測データについてあらゆる天文観測機関へ検閲を行うと同時に収集し、銀河消失現象の原理解明に向けた研究を行って下さい。
特別隠蔽プロトコル: ヘルクレス座・かんむり座グレートウォールに対する詳細な観測データについて、あらゆる天文観測機関を検閲し関連する研究を阻止してください。本報告書を含むSCP-1690-JPの情報は、O5評議会及び各研究部門の上席研究員にのみ開示されます。また、E-1及びE-2計画の運営にあたっては一般の職員に地球圏放棄という目標が知られないように、適宜偽装目標を設定してください。
説明: SCP-1690-JPはヘルクレス座・かんむり座グレートウォールで確認されている銀河の消失現象です。銀河の消失は10-20年という非常に短期間の間に発生し、観測的には電磁波と重力波の減衰が同時に起こるため、遮蔽物によって減光している訳では無いことが証明されています。光度の分析から消滅現象が発生している銀河は巨大なものが多いということが判明していますが、観測精度の限界もありそれ以外の有意な規則性は発見されていません。ヘルクレス座・かんむり座グレートウォールまでの距離から、SCP-1690-JP現象は100億年前の超遠方の銀河において発生していた事は確かですが、銀河系近傍を含めたそれ以外の領域では現在までに確認されていません。しかし原理が未解明な現象であるため、同じことが銀河系近傍、そして銀河系そのものに発生する可能性は否定出来ないことから、ヘルクレス座・かんむり座グレートウォールの継続的な観測とSCP-1690-JP現象の原理についての研究が継続されています。
SCP-1690-JPはヘルクレス座・かんむり座グレートウォールとしてその一部が観測可能な、不明な規模の広がりを持つ平坦トーラス面です。SCP-1690-JPは3次元平坦トーラス体であるこの宇宙における特定方向ループの境界面であり、垂線方向に直線運動をおこなった光や物体はいずれ出発地点へと帰還します。このためヘルクレス座・かんむり座グレートウォールとして知られている銀河の集団の正体は、SCP-1690-JPを通して観測できる宇宙の領域が、地球からの距離及び宇宙の加速膨張によって有限の天球領域として観測されたものです。
SCP-1690-JPは地球から見て反対側の空間を光速度以上の速さで飲み込んでいると考えられています。その速度は1年間あたり█,███~██,███光年と推定されており、これにより短期間での銀河の消滅現象が確認されます。SCP-1690-JPの反対側が観測可能であるという事実から、SCP-1690-JPは電磁波と重力波を透過させる性質を有していると考えられます。SCP-1690-JPに飲み込まれた空間がどうなるのかは仮説の域を出ませんが、電磁波と重力波が単離されていることから少なくとも通常の物質が保たれているとは考えられず、宇宙の連続性の観点から空間ごと通常物質まで消失していると考えるのが妥当であるとの見方が主流です。
3次元平坦トーラス体宇宙を視覚的に理解しやすく描写した概念図。ドーナツ型の表面が宇宙であり、緯線・経線をたどると元の位置に戻ることが分かる。
空間の侵食速度が光速度を超えているため、SCP-1690-JPによる空間侵食がどこまで迫っているかを観測することは不可能です。現在想定されている膨張速度による宇宙の拡張ペースよりもSCP-1690-JPの侵食速度の方が速いと見積もられていますが、現在までに地球が存在している事から宇宙はこれまでの想定以上の大きさを持っていると考えられます。しかし現時点でこの銀河系が安全圏に存在するという証拠もなく、SCP-1690-JPが到達する時期は不明です。また、現在確認できるSCP-1690-JPの侵食速度は100億年前の時点のものであり、現在は変動している可能性があります。
補遺1: SCP-1690-JPは発見当初超深宇宙で発生している原因不明の銀河消失現象としてEuclidクラスオブジェクトとして定義されていましたが、観測精度の向上により銀河の消滅現象が近方の銀河から順に起きていることが判明したため、空間を侵食する面が現象の核であるとの予測が立てられました。更にヘルクレス座・かんむり座グレートウォールの近傍領域からの広帯域電波観測データの解析により、この構造体が見かけよりも更に大きく、かつループ構造を持つ事が判明しました。これにより立てられた仮説を元に更に詳細な観測を行った結果、宇宙が3次元平坦トーラス体であることが証明され、SCP-1690-JPについての前述の性質が99.99%以上の確率で正確であることが立証されました。これを受けて、各研究部門の上席研究員███名から成る対策委員会による多方面からの検証が行われました。以下がその際検討された計画案の内、主要なものについての概要です。