SCP-1696-JP
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回収時のSCP-1696-JP

アイテム番号: SCP-1696-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1696-JPはサイト-81██の収容ロッカー内に、不透明な布等に覆われて固定された状態で保管されます。定期メンテナンス作業時及び実験試行時を除き、SCP-1696-JPの持ち出しは如何なる場合も許可されません。また、いずれの場合でも、SCP-1696-JPの鏡面部分を被験者以外の人員が直視することのないよう、常に留意する必要があります。

SCP-1696-JP-1はサイト-81██の標準的人型実体居住セルに収容されます。SCP-1696-JP-1に対しては、自身の収容理由に関する偽装報告書のみが開示され、聴取や実験試行時を除けば、SCP-1696-JPに関する情報の一切が隠匿されなければなりません。また、何らかの手段によってSCP-1696-JP-1が自殺を行った場合、規定手順に従って対象の再回収を実施してください。

説明: SCP-1696-JPは鏡面部分に人間の認識への影響作用を有する、高さ1.5mの標準的な姿見です。構成部品の材質・耐久性等に異常性は確認できず、電子機器による鏡面の解析結果は正常な光の反射の存在を証明しています。それにも関わらず、如何なる間接的な手段を用いた場合でも、観察する人間には、その鏡面全体が黒く塗り潰されているように視認されます。

この鏡面を直接視認した被験者の極少数は、軽い眩暈の症状に加え、一時的な浮遊感や離人感の経験を報告しています。また、後述するSCP-1696-JP-1に限り、鏡面への曝露に際して、明らかに他の被験者とは異なった振舞いと異常な影響を示します。

SCP-1696-JP-1はかつて財団に雇用されていた、███・████として知られる日系人男性です。SCP-1696-JP-1がSCP-1696-JP鏡面を直接目視した場合、短時間の激しい錯乱と恐慌の反応を示した後に、あらゆる手段を用いて自殺しようと試みます。この自殺が成功し、SCP-1696-JP-1が死亡した場合、その遺体は数分程度でその場から霧散するようにして消失します。

その後、数時間程度の時間経過を経て、SCP-1696-JP-1はサイト-81██に存在するかつての自室内へと瞬時的に再出現します。この再出現に際し、SCP-1696-JP-1は自身が試みた自殺や、SCP-1696-JPに関連する全ての記憶を喪失しています。数度の検証試行より、失われたこれら記憶は、鏡面へと再び曝露することで概ね復元されることが確認されました。

現在までに、上記のような観察時の情動反応や異常性質の獲得は、SCP-1696-JP-1以外の被験者では一切確認されていません。SCP-1696-JPの異常性が、単一の個人のみを影響下に置くものである可能性も推察されていますが、依然としてその詳細は不明です。なお、SCP-1696-JP-1に対する各種検査の結果から、明確な異常性は発見できませんでした。それに加え、鏡面への曝露後は質問に対する回答を一切拒否する傾向にあり、明瞭な状態での聴取・尋問にも成功していません。

発見経緯: SCP-1696-JPは19██/██/██、京都府██郡███にて発見・回収されました。当初は"黒く塗り潰されたように見える鏡"としてAnomalousアイテムに分類されていました。しかし、19██/██/██、サイト-81██のAnomalousアイテム管理責任者の1人であった████氏がその鏡面を視認した際、突如として恐慌状態に陥いるという事態が引き起こされました。この事態に他のスタッフが介抱に当たりましたが、同氏は単なる精神疲労による混乱であったと説明し、医務室での診察を拒否しました。その後、同氏は自らのオフィスへと戻り、秘密裏に首吊りによる自殺を図りました。

この自殺はオフィスを訪れたスタッフによって即座に発覚しましたが、同氏の遺体は派遣された警備員の目の前で、痕跡を一切残さずに消失しました。更にこの消失から約3時間後、消失した同氏は完全に健康な状態で、オフィス内の椅子に腰かけて眠っている姿で再出現しました。この事態を受け、SCP-1696-JPは暫定的に現在のSafeクラスオブジェクトとして再分類され、████氏もSCP-1696-JP-1として指定されました。

収容に際し、SCP-1696-JP-1に対しては、SCP-1696-JPとは無関係な偽装情報に基づいた収容・隔離理由が説明されています。現時点までに、SCP-1696-JPへと曝露しない限りは、SCP-1696-JP-1からの反抗的な姿勢・思考の兆候は確認されていません。

補遺: 以下の記録は、鏡面への曝露後のSCP-1696-JP-1に対して行われたインタビューログからの抜粋です。曝露後の対象はあらゆる質問への回答を拒否する傾向にあることから、尋問に際しては拘束で自殺を阻害した後に、専用の自白剤が用いられました。

対象者: SCP-1696-JP-1

担当者: Lenore尋問官

付記: 投与後の対象からは選択的な記憶の除去を実施し、一種の酩酊状態に近い心理状態へと誘導を行う。その後、段階的な覚醒を経てから対象とのパーソナリティ情報の擦り合わせを行った上で、尋問へと移行する。


<記録開始>

担当者: さあ、起きて。

対象者: [唸り声]これは何だ? 何がどうなっている?

担当者: 落ち着いて。まずは、貴方のことを教えて。貴方の名前、年齢、仕事、住んでいる場所のこと。

対象者: 私、私の名前は███ ██。[8秒間沈黙]41歳、職業は司法書士。██の███に住んでいる。

[SCP-1696-JP-1の本名、年齢とも一致せず、かつて司法書士資格を有していた経歴も存在しないことに留意]

担当者: その調子で続けて。家族や親しい友人は? 奥さんやお子さんは居る?

対象者: 家族は妻と2人の娘が。友人は大学時代の同級生が、何人か。

担当者: 娘さんのお名前は?

対象者: ███と██。上の子は10才、下の子は8才。

[SCP-1696-JP-1に子どもは存在せず、妻は既に死去していることに留意]

担当者: それは素敵。ところで、貴方は今、どこにいるのか分かる?

対象者: ここ? ここは、病院のはずだ。私は。[唸り声]待て、この質問に何の意味が?

担当者: どうやら、貴方は少し混乱しているようね。話を変えましょう。貴方は今、死にたいと考えている?

対象者: 何を言っている? 生きたいに決まっている。[唸り声]私には、家族がいるんだ。

担当者: ええ、その通りね。だけど、今までに自殺を考えた経験は?

対象者: 何? 何の話だ? なぜ私がそんなことを[顔を歪めて身体を無理に動かそうとする]

担当者: どうか落ち着いて。考えたことがないのなら、それで良いの。

対象者: あ、ああ、申し訳ない。

担当者: いいえ。それではまた、話を変えましょう。あの鏡が分かる?

[尋問官の背後に当たる位置にSCP-1696-JPが持ち込まれる]

担当者: あの鏡に、貴方は何が映って見える?

対象者: あれは[5秒間沈黙]私か? 私が、映っている。

担当者: 本当に? 何も変わったところはない?

対象者: いや、鏡に映った私は、眠っている。[唸り声]あれは、ベッドの上だ。

担当者: 続けて。

対象者: 私は、何かの機械に繋がっている。ああ、私の傍には家族の姿も。それじゃあ、私は今、どこにいる?

[SCP-1696-JP-1が興奮し、激しく身体を揺すり始めたため、薬の投与量が増やされる。数分間の記録中断]

担当者: 落ち着いて。貴方はここに居る。他のどこでもない。こちら側に。

対象者: 違う[唸り声]止めてくれ。

担当者: 貴方は今、どうしたいと考えているの?

対象者: 私はただ、家族と会いたい。私を待っている。ああ、帰らなければ。

担当者: それじゃあ、帰るために、貴方は何をする?

対象者: 目を、目を覚ますんだ。そのために、死をイメージしなければ。

担当者: いいえ、貴方はもう目覚めている。これ以上、醒める必要はないの。ここが、我々の依存する現実です。

対象者: 何?

担当者: 我々は貴方を必要としています。貴方は我々の加護の中で醒め続けるでしょう。

対象者: 待て、何を言っている?

担当者: 貴方はより幸福な状態で維持されるでしょう。然るに、我々は永続性を得ます。

対象者: 止めろ、意味が分からない。私には[嗚咽]どうしてこんな、恐ろしい。君は一体、何を知っている?

[問い掛けに対し、尋問官は困惑の表情を見せる。その後、周囲を見渡し、何かを探すような仕草を取る]

担当者: いえ、ごめんなさい。私は──

[十数秒間の沈黙が続く]

担当者: 何も分からない。さっき言ったことは全部忘れて。ただ、貴方は多分、運が悪かっただけだと思う。

<記録終了>


終了報告: 尋問後、SCP-1696-JP-1には安楽死処置が実施され、その1時間後に自室で再回収されました。それ以降の尋問時においても、SCP-1696-JP-1は上記尋問時と概ね同内容の主張を行い、"███ ██"としての完全に一致するパーソナリティを有していた点には留意が必要です。

また、SCP-1696-JP-1が尋問時に述べた、各人物の身元調査も実施されました。しかしながら、過去から現在までのあらゆる期間において、人物像や個人情報、経歴等が一致する如何なる人物も発見することはできませんでした。現在、関連調査は全て終了しており、これ以上の更なる調査は予定されていません。

担当した尋問官はSCP-1696-JP-1との会話の後半に際し、原因不明な違和感や離人感を経験するとともに、無意識的に複数の不適切な発言を行っていたことを報告し、自身に対する精神鑑定を申請しました。更に、上記ログと酷似する尋問官の不可解な振舞いや状況は、以降の尋問時においても数度確認されました。

それにも関わらず、各尋問官に対して実施された精神鑑定の結果は全て正常の値を示しており、各尋問官が有する精神的問題の存在や、何らかの異常性に曝された可能性を完全に否定しました。Lenore尋問官には、長期の特別休暇が与えられました。現在、SCP-1696-JP-1に対する更なる尋問は許可されません。

なお現在、尋問官からSCP-1696-JPに関する全実験の凍結申請が提出されています。申請は受理されました。更なる実験・検証でこれ以上の得るものは無いと判断され、将来的な実験計画は無期限に中止されています。

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