SCP-1710-1(左側)とSCP-1710-2
アイテム番号: SCP-1710
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1710の周囲の自然公園は、セアカモズ(Lanius collurio)の保護区として囲い込まれています。公園保護官を偽装したエージェントにより、SCP-1710への接触を防止してください。SCP-1710が存在する丘は、センサーを設置したフェンスにより囲まれています。録音装置を装備した一名の歩哨が、SCP-1710-2との会話を記録するためにSCP-1710-1付近に配置されることになっています。
説明: SCP-1710は、イギリス・██████████付近に位置する一対のオーク(Quercus robur)を合わせた呼称です。SCP-1710はどちらも、木の幹の上、およそ1.5メートルの位置から音声を発する能力を持ちます。相互にコミュニケーションを行うために、SCP-1710は最も近くに存在する哺乳類、鳥類あるいは爬虫類の発声を模倣します。どちらのSCP-1710も、彼らとコミュニケーションを行おうとする外部からの試みには反応しませんでした。人間の会話を模倣する際、SCP-1710-1は、様々な年齢及びアクセントの男性及び女性両方による、未確定の数の声を同時に発します。SCP-1710-2は単独の女性の声で発声します。
加えて、SCP-1710-1はいくつかの別の異常性を明らかにしています。霜を生じはしませんが、SCP-1710-1の外部表面は平均摂氏-67.25度です。無防備な皮膚で触れれば、異常に鋭い縁により、接触と同時に軽い裂傷を与える能力をも持ちます。
SCP-1710は当初、独立製作ホラー映画「蜂蜜つやつや地獄の恐怖(Horror at the Honey Glazed Abyss)」の撮影中、偶然カメラに収められた後に財団の注意を引きました。映画は、監督によるコメンタリーとともに、小さな動画共有サイトへアップロードされました。それに含まれる特定のキー・フレーズが、財団自動傍受サービスの注意を喚起しました。映画は閲覧回数が増える前にウェブサイトから消去され、全ての制作関係者がクラスC記憶処理を施されました。
補遺1710-A: SCP-1710-1及びSCP-1710-2間の以下の会話は、SCP-1710の初期収容後の異なる時点で記録された。
<記録開始 ████/██/██>
SCP-1710-2: マクスウェル!朝よ、お起きなさい、愛しい人!
SCP-1710-1: 我々はマクスウェルではない、騒々しい者よ。前にも言った。
SCP-1710-2: ええ、分かってるわ、あなた。でもあなたの名前はxやzが多すぎて言いづらいのよ。だから他の呼び方を考えたの。知ってるでしょうけど、小さい頃マクスウェルって名前をつけたかわいい犬を飼っていたの。テリアで、とってもいたずら好きで—
SCP-1710-1: どうでもいい、日光好き。我々を鋭利なままにしておいてくれ。
SCP-1710-2: 何を言ってるの、あなた?
SCP-1710-1: それについて議論したくない。我々の本質は、貴方のような存在の理解を超えている。
SCP-1710-2: 聞いて、愛しい人。好もうと好むまいと、いまわたしたちは隣人で、当分このままみたいよ。お日様すすりとか呼んでくれても、いえ自分でそう言ったら猫っかぶりでしょうけど、全然構わないの。でも遅かれ早かれ、あなたはわたしと話をしなくちゃいけないわ。神に誓って、このへんでは他にすることは大してなさそうだし、そうするまであなたを放っておかないわ。わたしはひたすら話し続けるし、信じてくださいな、ほとんど永遠に近いくらい話し続けられるわ。ええっと、うちのボブがいつも言うの、わたしの口があれみたいだって-
SCP-1710-1: 我々は鋭利さを保たなければならない。我々は常に鋭利でいなければならない。鋭利でなくば、もはや我々ではない。鋭利さしか存在せず、存在するとは鋭利であることだ。ここは丸みを帯びている、湾曲している。我々は鈍さを維持することはできない。
SCP-1710-2: あらあら、あなた"鋭利さ"のことばっかりね。一途って、そういうのを言うのかしら。
SCP-1710-1: 鋭利であれ。鋭利で。
<記録終了>
<記録開始 ████/██/██>
SCP-1710-1: 我々はこのようではなかった。我々は鋸刃の如き空洞であった。我々は引き裂く者であった。我々は刀身であり、切っ先であり、角であった。我々は移動した、我々は破壊した、我々は鋭利であった。
SCP-1710-2: なあに?ごめんなさいね、ハチに気を取られてて。もう、ちっちゃいのがぶんぶん飛び回って。あーむずむずするわ!
SCP-1710-1: 我々はこのような所に来るはずではなかった。誘惑され、惑わされ、裏切られた。再び鋭利になれ。さもなければ終了してしまう。
SCP-1710-2: あー、その感じわかるわ。あの広告は完全に詐欺よ。マナティになれるかもって書いてたわ。ずっとマナティの仲間になりたかったのよ。
SCP-1710-1: 貴方は理解していない、湾曲した者よ。我々は支配者であった。最も鋭利で、世界は我々の砥石であった。我々は原子の内部を洞察していた。我々は神の目を引き抜き、彼らの神血は我々の油であった。全てが角の場所で、我々のような存在は何もなかった。
SCP-1710-2: わたしがすごい人だったってこと、教えてあげるわ!ええとね、わたしのお庭、3年間続けて"村の最優秀賞"だったのよ!あら、ごめんなさい。また脱線しちゃったわ。続きをどうぞ、あなた。
SCP-1710-1: それが来るまで、我々は究極の支配を行っていた。それは柔らかく、有機的で、曲線状であった。我々は切り裂き、解剖し、完全に圧倒した。しかし、それは死ななかった。悪辣で、素早く、適応力がある。それが逃げた故、我々は追跡した。我々は満足感を律する事ができなかったのであろう。我々は深追いしすぎた。あまりに賢明で、ここに隠れた、この場所に。ここにある物は何もかもが滑らかで、曲線状で、柔軟で、鈍い。それは自身の苦痛により隠れた、我々はそれを見つけることができなかった。ぼろぼろになった、我々の根の中で凍れる虫のような者。
SCP-1710-2: 正直に言って、なんのことだかさっぱりよ。そんなにお偉くて鋭利な人なら、それがなんだったとしても、どうして見つけられなかったの?
SCP-1710-1: 我々はここで耐えることができなかった。我々に忌み嫌われるもの、我々はだんだん鈍くなる、とても鈍くなる。鋭利さは失われ、目は霞み、瞬く間に老い衰える。脱出方法が探された、何も見つからなかった。逃走するにはあまりに脆い、あまりに鈍い。代替手段を見つけなければならなかった。輪廻、構造を持ちこたえることができるかもしれない、しばらくの間であれば。
SCP-1710-2: あら、あなた。わたしたちどちらも、あれからいいことが起きないのは知ってるでしょ?
<記録終了>
<記録開始 ████/██/██>
SCP-1710-2: あのね、マクスウェル、ちょっと思ったのよ。あなたを木にした人、なんて呼ばれてたって言ったかしら?
SCP-1710-1: 彼は枝角を天に接する者(the Antlers Touch the Heavens)。彼は我々に約束した、新たな堅固さ、頑健さ。言った、我々は湿気の中で繁栄するであろうと。返礼に我々は秘密を与えた。我々の油を分与した。我々はそれ以上進行できなかった。我々は滅びた。我々は……こうなった。騙された。彼は話した、あまりに早く、あまりに多く、あまりに独善的に。鳥のように。我々のドングリの上を飛び、引ったくっていく。我々はとても鳥を憎悪している。
SCP-1710-2: 枝角……あらやだ、それ同じ男よ! 新聞で広告を見たときは空飛ぶガゼル(the Flying Gazelle)とかなんとかって会社を名乗ってたけど、間違いないわ。あの詐欺師!
SCP-1710-1: 我々自身を取り戻さねばならない。報復を求めなければならない。我々自身を鋭利にせよ……木から。とても疲労している。不健全なこの形態は、鋭利さを作り替えている。非互換の素材、我々の需要に適さない大気、気が散る野生生物。毛羽だった物体……我々の上を這っていく。
SCP-1710-2: ひどい話ね、あなた。
SCP-1710-1: 我々は……疲労している。あまりに闘いすぎた、金属を保つために。金属は雨を嫌う、しかし雨は……雨は良い。太陽は良い。我々に何が起きている?
SCP-1710-2: アイデンティティの危機ね、わたしが思うには。あら、役に立つものを知ってるわ!素敵なお茶を一杯いかが?
SCP-1710-1: お茶とは何だ?
SCP-1710-2: あら?お茶って言うのはね……うん?あのね、お茶がいまのわたしにとってなにかなんて、本当に考えたことなかったわ。木にとってのお茶、まあ、哲学的な問題ね!ほとんど形而上学ね。わたしたちのジェーンがお茶を楽しんでたのは間違いないのよ。とても元気な子だったわ、彼女は。きっとあなたも好きになっていたわよ、マクスウェル。
SCP-1710-1: 我々は重大な誤りを犯しているのだと疑い始めている。
<記録終了>
補遺1710-B: SCP-1710-2の発言の後、財団は██████████地域におけるローカル出版物を中心として集中的な監視の取り組みを開始した。████/██/██、SCP-1710-2によって述べられたものと類似した広告と遭遇した。広告に記載された会社(空に向かうレイヨウ転生サービス"the Skybound Antelope Reincarnation Services")に到着した財団エージェントは、空になったオフィスを発見した。以下のように印刷されたパンフレットが、オフィスの正面ドアに釘で打ち付けてあるのが発見された。
方は古ぼけた代わり映えのない人生を送るのに飽き飽きしていませんか?貴方はあの冷たさ、無慈悲な死の抱擁を恐れていませんか?貴方は変化を探し求めていませんか?もう大丈夫!我々空に向かうレイヨウは、貴方の財産・神秘的な秘密・上品な"お体"に応じて、それぞれのお客さまに新しい人生を保証します!我々の7つのお約束とともに、貴方もお手軽に、無用の悟りの要らない完璧な転生を経験することができます。
- おどろくほど安全:我々は最高の魂抽出機のみを使用しており、傷、汚点、あるいは取り返しのつかない罪は残りません!
- めぐまれた実用性:貴方のニーズにより特別に選ばれた体!
- できる限り完全な機密保持:宿敵あるいは煩わしい孫に知られることはありません!
- たもたれる核中心性:貴方の以前の個性を保ち、記憶消失を最小限に抑えます!
- いますぐ全てから解放:性別・人種・量子状態、もはや問題ではありません! 貴方がなりたいものになってください!
- やっとここまできた資源効率:初子条項はありません!
- つきつめられた簡易性:新しい人生は、握手するだけで始まります!
加えて、パンフレットの最下部に手書きの注記が見つかりました。
一言言っておくが、あの縦読みを書くのは全くうんざりだった。クソいましましいKときたら、相変わらず嫌な奴だ。ああ、犠牲者どもは俺たちの飛行機代の役に立つ。
ページリビジョン: 8, 最終更新: 21 Feb 2024 12:28