アイテム番号: SCP-1712
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-1712事案に関連する全ての情報は抑制され、オフィスでの自殺というカバーストーリーが流布されます。
衛星画像に映り込んだ全てのSCP-1712-Aの全映像は、当該異常存在を観測可能な全ての組織に潜入している財団職員によって編集処理を受けます。財団操作の探査機が継続的にSCP-1712-Aの位置を追跡します。
SCP-1712-Bはサイト-77にある特製の野生動物飼育区画に収容されます。このユニットの壁は石材で作られ、直接接触は禁止されます。収容違反を起こした、または移転を必要とした場合、SCP-1712-Bは沈静され、専用の機器を使用して取り扱われます。
説明: SCP-1712はある未解明事象の結果として発生した2点の異常なオブジェクトの総称です。(RAISA通知: 詳細は添付されたUEログを参照のこと。)
SCP-1712-Aに類似する被験者とSCP-1712-Bを用いた様々な試みにも拘らず、財団はSCP-1712事案の再現に成功していません。
SCP-1712-Aは、イリノイ州シカゴの住民“リチャード・ボイド”の石化した身体と、半分に割れた鉄骨です。現在は太陽系の外周部に位置しており、時速およそ20kmで、指数関数的に加速しながら移動中です。SCP-1712-Aは今後5年以内に太陽系の観測可能圏から離脱すると予想されています。SCP-1712-Aになる以前のボイド氏が異常性を帯びていたかは現在不明です。
SCP-1712-Bは、白黒の縞模様の毛皮を持つ子猫です。体重8kgで、同年齢の猫に想定される振舞いを見せます。SCP-1712-Bが生体組織に接触すると、その組織は即座に石へと変換されます。この変換は瞬時に発生し、影響対象が直接接触している全ての非有機物質(衣服・手持ちの物品・直下の地面など)にも影響を及ぼします。この効果は元・生体組織の最も近い供給源から直径1mまでに及ぶようです。SCP-1712-Bはこれまでの収容下で加齢が記録されていません。
以下のメモがSCP-1712-Bの首輪に添付された状態で発見されました。
みつけたかたは [スヴァの王国] の [レンマー・ザ・トレビュシャー] まで ごれんらく よろしくおねがいします
R.M.
財団記録・情報保安管理局より通達
以下の文書は、関連異常存在がSCPオブジェクトに分類される以前の情報を含むため、オブジェクトファイルに収録されています。
— RAISA文書整理官、アレクシス・ローズ
項目#: UE-1721
事象説明
1959年8月11日の朝、オフィスで仕事中だったリチャード・ボイドは、目撃者の証言によれば“建設現場の猫”1に気付き、周囲からの忠告に逆らって、猫を救出するために建設現場に這って向かおうとした。猫と接触した後、リチャードは即座にバランスを崩して転落し、視界から消失した。
発生日時
1959/08/11
場所
アメリカ合衆国、イリノイ州、シカゴ
事後対応
機動部隊カッパ-11 “レッド・バロンズ”がリチャード・ボイドの位置追跡に動員されたが、対象が部隊航空機の動作範囲を離脱した後、追跡が不可能になった。財団職員は関与した猫の回収に成功し、全ての目撃者にクラスB記憶処理を施した。自殺のカバーストーリーが流布された。
ボイドの上司、マイケル・マルグリーズは、対象に関する情報を取得するためのインタビューを受けた。インタビューの転写は下に添付されている。
更新: 1961/11/22
リチャード・ボイドとの視覚的接触は衛星画像を通して再確立された。当該異常存在の現在進行形の性質に鑑みて、SCPオブジェクト分類が現在保留されている。
[ファイル終了]
回答者: マイケル・マルグリーズ、有限責任会社シカゴ精肉包装 営業部門長
質問者: フィールドエージェント ヴァルデス
序: エージェント ヴァルデスは、UE-1721について可能な限り多くの知識を得るため、シカゴ市警の捜査官を装ってマルグリーズへのインタビューを行った。
<記録開始>
ヴァルデス: 急な話にも拘らず、聞き取り調査に応じていただき感謝します、マルグリーズさん。
マルグリーズ: 別に構わんよ、刑事さん。俺も他の皆と同じように、何が起きたのか理解しようと努めてるところだ。煙草は?
ヴァルデス: 結構です。
マルグリーズ: [葉巻に点火する] だろうな、刑事さん。それで、俺に何の用事なんだ?
ヴァルデス: あなたが覚えている限りで、例の事件について説明していただきたい。
マルグリーズ: 俺の話は他の連中と全く違わないと思うが、まぁ分かった。俺たちは売上報告を毎週火曜に提出するから、今日は全員早々と出勤してた。ウィルキンスとロバーツがボイドに向かって叫ぶのを聞くまでは、何もかも普通だった。
ヴァルデス: その時点でこのオフィスから出たのですね?
マルグリーズ: まさにその通り、刑事さん。何の騒ぎか調べようと外に出たら、アンタがここに来る時通り過ぎた最初の窓、あの外にボイドが見えたんだ。たかが1匹の猫のために、鉄骨の上で綱渡り芸人みたいな真似をしやがって。ともかく、風が少し強めに吹き付けたかと思ったら [マルグリーズは机を手で叩く] バーン! 消えちまった。多分あの猫も一緒に落ちただろう。
ヴァルデス: 現場の捜査員は、彼が上を歩いていた鉄骨の一部もまた消えているのに気付きました。何かそういう重い物の落下音は聞いていませんか?
マルグリーズ: あのな、俺はこの手が届く範囲にいない労働組合の建設員を全く信用してない。あの鉄骨だって多分プラスチック製だ。気の毒なボイド爺さんと、ノミたかりの子猫と、あの自称鉄骨がひとまとめに川に沈んでても俺は驚かないね。
ヴァルデス: 建設労働者の犯行を疑っているのですか?
マルグリーズ: いや、あいつらは生活の糧を求める正直な連中だよ。組合の指導者層と奴らの馬鹿みてぇな抗議が癪に障るんだ。 [大きく咳き込む] 労組ってのは忌々しいもんだぜ。
ヴァルデス: 成程。もう幾つか質問したいことがあります、マルグリーズさん。
マルグリーズ: すまないな、探偵さん。全く変な日だったもんだから。
ヴァルデス: 人間が文字通り何処へともなく消失する日はそうそうありませんからね。
[両者ともに笑う]
[マルグリーズが咳き込み始める]
マルグリーズ: あぁ、クソッ。失礼。何の話だっけ、刑事さん?
ヴァルデス: 実は、ボイドさんに関して幾つかお聞きしたいのです。彼は同僚と上手くやっていましたか? 過去に不自然な振舞いを見せたことは?
マルグリーズ: 俺が覚えてる限りでは無い。周りとは仲良くやってたが、いつも大人しめだった。酒も煙草もやらなかったよ。
ヴァルデス: 仕事ぶりは?
マルグリーズ: そうさな… [マルグリーズは葉巻を一服深く吸い込む] いつもノルマは満たしてた。大して優秀でもないが、平均以下に落ちたこともない。どちらかと言えば信頼できる奴だった。
ヴァルデス: 彼の私生活はどうですか? 家族や、暮らしぶりの話をしたことはありましたか?
マルグリーズ: あいつはここで10年働いてたが、その間には嫁さんももらってないし子供もいない。有休を取ったのも何度か病気になった時だけだ。両親はいるだろうが、その話をしたことは一回も無い。死んでると思うか?
ヴァルデス: 調査中です。宜しければ、もう一つだけ。
マルグリーズ: どうぞ。
ヴァルデス: ボイドさんは、今回のように、自分の身を危険に晒す性格でしたか?
マルグリーズ: 絶対に違う。いたって大人しい性格だったよ。ただ、猫にはかなり甘かったな。四六時中ゴミ捨て場で野良に餌やってんのを見かけたもんだ、あいつはいつも目に涙を溜めて鼻をすすってた。きっと所謂アレ… 何とか言うアレ…
ヴァルデス: アレルギー?
マルグリーズ: それだ、それがあったんだと思う。
[両者ともに15秒間沈黙する。ヴァルデスが立ち上がり、テープレコーダーを掴む]
ヴァルデス: では、お時間を頂きどうもありがとうございました、マルグリーズさん。大変感謝しております。何か最後に聞いておきたいところなどありますか?
マルグリーズ: あー… ちょっといいか?
ヴァルデス: 勿論です。
マルグリーズ: アンタは何が起きたんだと思う?
ヴァルデス: 全く分かりません。きっと、奇妙な事は時々ただ起こるだけなのでしょう。
<記録終了>
結: インタビュー後、マルグリーズはクラスA記憶処理を施された。