SCP-1724-JP
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SCP-1724-JP

アイテム番号: SCP-1724-JP

オブジェクトクラス: Safe Euclid

特別収容プロトコル: カキ養殖事業は財団の監視下に置かれ、SCP-1724-JPの検出を目的とする検査が実施されます。野生個体群については各国の海洋研究施設や自治体との提携の下で定期調査が実行されます。

SCP-1724-JPの生存個体が確保された場合、プランクトン・有機懸濁物の定期供給を伴う水槽に収容し、非異常個体の標準的飼育手順に則って飼育してください。死亡個体は回収ののち焼却され、焼却灰は財団管理下の最終処分場で埋設処分を受けます。

SCP-1724-JP-AにステージI~IIの症状しか確認されない場合、カバーストーリー「過剰歯」「高骨密度体質」「骨リモデリングの異常」が適用されます。ステージIIIの症状が確認される場合、その著明な視覚的変化のため、当該生物は標準人型収容セルまたは標準生物収容房へ収容されます。



説明: SCP-1724-JPはマガキ(Crassostrea gigas)をはじめイタボガキ科に属する二枚貝のうち低頻度で発生する、物質量の保存に反してカルシウムを生成する異常個体です。生存時のSCP-1724-JPはエネルギーや物質量の保存に反して体内あるいは周囲の海水中にカルシウムイオンを発生させます。当該能力は体内のイオン勾配の維持、炭酸カルシウムで構成される破損・溶脱した殻の修復、外殻の発達を介した泥中への埋没阻止といった利点を持つと推測されます。SCP-1724-JPの外殻は多孔質構造の充填率が高く、殻自体も発達する傾向にあり、巨視的・微視的な観察により非異常個体との識別が可能です。

当該のカルシウムイオン生産特性はSCP-1724-JPの死後も有効であり、摂食された場合は生死を問わずカルシウム生成を誘発します。この時、SCP-1724-JPの摂食者(以下、SCP-1724-JP-A)は体内カルシウムイオン濃度が摂食量に相関して増大します。増大したカルシウムイオン濃度は当該状態で恒常性が維持され、また通常のカルシウム過剰が誘発しうる各種の疾病は発生しません。

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体重-形態変化発生率関係

SCP-1724-JP-Aの体内でカルシウムイオン量が閾値を超過した場合、SCP-1724-JP-Aには硬組織の形態的な変化がもたらされます。これは当該イオンが炭酸カルシウムやリン酸カルシウムといったカルシウム化合物に変化し、SCP-1724-JP-Aの硬組織を補填あるいは新たに構築するためです。閾値には個人差がありますが、変化が発生する確率はSCP-1724-JP-Aの元来の体重と反比例することが確認されています。このため、SCP-1724-JP-Aが軽量であるほど、またSCP-1724-JP-Aがより多くのSCP-1724-JPを摂食するほど、形態変化は強く誘導されます。

以下はDクラス職員の経過観察で確認された変化の過程です。

ステージI SCP-1724-JP-Aは骨密度の増大を経験します。SCP-1724-JP-Aの海綿骨は間隙を水酸燐灰石に充填され、緻密骨が形成されます。このためSCP-1724-JP-Aの骨格は比重が増大し、水中をはじめとする、空気よりも高密度の基質においても安定します。
ステージII SCP-1724-JP-Aの骨格形態は鰭脚類・鯨類様の形質を獲得します。上腕骨は三角筋の付着部が発達し、前腕骨はいずれも扁平化します。骨盤は脊柱に沿って伸長し、大腿骨も扁平化します。一部の頸椎は癒合・短縮します。これらは水中への適応と類似します。
ステージIII SCP-1724-JP-Aは外皮での痛覚を伴わない燐灰石結晶の形成を経験します。これは骨組織では受容しきれなかった過剰量の燐灰石の析出と考えられます。形成される結晶はエナメル質層と象牙質層を欠く半透明の薄板であり、条鰭類の鱗に類似します。


ステージII以降の症状を示すSCP-1724-JP-Aは、鱗や骨格形態において伝承上の人魚や半魚人、また財団が収容する一部の海棲生物との類似性が認められます。SCP-1724-JPはこれらのアノマリーの起源となった可能性が推測されます(詳細は歴史節を参照のこと)。

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オーストリア共和国ニーダーエスターライヒ州産Crassostrea属未定種化石

歴史: カキ類は浮遊物濾過摂食者の二枚貝類の分類群であり、有史以前より浅海域で繁栄を遂げました。SCP-1724-JPの出現も系統の進化史に伴ったものと推測されます。Crassostrea属およびその近縁属の出現が白亜紀であるため、SCP-1724-JPはジュラ紀から白亜紀にかけて異常性を獲得し、複数の大量絶滅事変を乗り越えて異常性を潜性形質として継承したものと推測されます。

マガキ類の繁栄の要因には多様な形態と生活様式が挙げられますが、SCP-1724-JPの環境改変能力も一因であったと考えられます。Crassostrea属は海水温・塩濃度・着生位置・個体群密度といった様々なパラメータに対して形態変化を遂げることが知られます。特に内湾汽水域の泥底という海水と淡水の相互作用に晒される不安定な環境において、SCP-1724-JPはカルシウムイオン濃度の調整能力を介した恒常性維持機能を獲得したと推測されます。こうした環境改変能力は新たな生態的地位の開拓と拡大に寄与したとされます。

カキ礁は物理的な環境を改変して本来泥底に生息不可能であった動物の進入を可能とし、新たな生態系を構築しました。また、白亜紀には多様な異常巻きアンモナイト類、厚い堆積層を形成する有孔虫や円石藻、生物礁を発達させた厚歯二枚貝が卓越しています。これらの炭酸カルシウム骨格を持つ海棲生物は、SCP-1724-JPが調整する海中のカルシウムイオン濃度の恩恵を受けた結果として化石記録にも残る繁栄を遂げたと推測されます。

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ビショップ・フィッシュ(1642年)

生態系サービスの恩恵を享受した存在としてヒトも例外ではなく、西洋と東洋を問わずヒトがカキ類を摂食した痕跡は古代より貝塚や文献の形で記録されています。紀元前3世紀ごろには中国の『山海経』やバビロニアの『バビロニア誌』に人魚・半魚人の存在が記録されていますが、当時は東洋圏・西洋圏でカキ類の養殖が確立された時期にあたります。これは当時のヒトがSCP-1724-JPを摂食し、SCP-1724-JP-Aが出現したことを反映すると推測されます。

人魚・半魚人伝承は汎世界的に見られます。SCP-1724-JP-Aの容姿をある程度正確に反映したとされる伝承の1つは北大西洋東部海域で捕獲記録のあるビショップ・フィッシュであり、直立二足歩行を行うヒューマノイドとして報告されています。コンラート・ゲスラー『動物誌』によれば、16世紀に中央ヨーロッパで捕獲された個体は鰭を除く全身が鱗に被覆される点、前肢が相対的に短縮する点を特徴とします。このように、カキ類の生産量の増大につれ、SCP-1724-JPとの接触で出現した水棲型SCP-1724-JP-Aの個体群は世界各地で出現しました。

やがて各地で出現したSCP-1724-JP-Aは、地理的隔離の下で独自の進化過程を辿り、西洋圏・東洋圏をはじめとする伝承上の差異に代表される適応放散を示しました。やがて19世紀にヴィクトリア朝大英帝国が海洋覇権国家へ成長すると、超常現象の確保収容に関する王立財団(HMFSCP)は各海域でヒト的特徴を有する海棲脊椎動物を発見して収容下に置きました。後継組織たる財団が収容するいくつかの人魚・半魚人・人面魚に関連するオブジェクトは過去のSCP-1724-JP-Aの子孫にあたる可能性があります。

なお、HMFSCPおよびその後の財団が各海域におけるSCP-1724-JP-Aをすべて独立のアノマリーあるいは要注意種族(SoI)と判断し、またSCP-1724-JPの発見が遅れたため、海棲人型アノマリーの分類体系は混乱しています。以下は分類の再検討が求められるSoIの一覧です。

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SoI-1003-JP

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広島湾図。赤色の点は主要な貝塚を示す。

概要:

  • 全長 - 2m
  • 分類 - 哺乳綱霊長目ヒト科ヒト属ヒト
  • 食性 - 肉食傾向の強い雑食性
  • 分布域 - 広島湾および周辺海域

形態: SoI-1003-JPはフグ科魚類様の皮膚を持つ群居性の水棲霊長類です。SoI-1003-JPの背部は黒色の斑点を伴う緑色、腹部は白色であり、頭部には体毛が存在します。SoI-1003-JPは頭蓋骨を中心にヒトとの共有派生形質が認められます。形態情報(骨格形態)と分子情報(ミトコンドリアDNAの全塩基配列)を用いた系統解析から、SoI-1003-JPは縄文人の子孫と推測されます。

歴史: 広島平野では縄文時代から弥生時代にかけての貝塚からOstrea属の殻が出土しており、古代日本人とSCP-1724-JPとの相互作用が示唆されます。特にSoI-1003-JPは当時形成された広島湾へ縄文海進に伴って進出した縄文人に起源を持つと推定されます。6世紀以降の文献記録にはSoI-1003-JPが記載されており、天然のカキやその他の水産資源を巡る対立、害獣としての駆除、また不死性の獲得に関する風説が示唆されます。

SoI-1003-JPの高い知性に注目した芸予諸島の村上水軍は彼らの狩猟行動を利用した漁業を営んだとされます。16世紀中頃にカキの養殖法が発明されタンパク源の1つとして安定供給が試みられると、SoI-1003-JPは対価としてカキを要求し、村上水軍との連携を強化したとされます。豊臣秀吉が海賊禁止令を発令した後もSoI-1003-JPはカキを直接的あるいは異常性を介した間接的なタンパク源として利用し、彼らへの対応に迫られた日本人は養殖技術や運送技術を発達させたと考えられます。

明治時代以降、カキ生産量および消費量は増大したにも拘らず、SoI-1003-JPと地域住民との接触は減少しました。広島湾へ注ぐ太田川水系をSoI-1003-JPが遡上した事例は過去数百年に亘って記録されていますが、ミヤイリガイ(Oncomelania hupensis nosophora)撲滅運動や都市化による河川のコンクリート化を受け、SoI-1003-JPの遡上件数は減少しました。1960年代以降に確認されている遡上件数は、広島湾や太田川の水質にも影響されながら平均して年間2件前後を推移しています。

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水揚げされたガザミ(Portunus trituberculatus

生態: SoI-1003-JPは魚類のほかに甲殻類の節足動物を常食します。過去に確保された個体の胃内容物にはガザミ(Portunus trituberculatus)、シャコ(Oratosquilla oratoria)、クルマエビ(Marsupenaeus japonicus)、ヨシエビ(Metapenaeus ensis)などの残滓が確認されており、また水揚げされた魚介類を求めたと推測される草津漁港や美能漁港付近での目撃例も存在します。本種は広島湾における高次消費者と目され、また旧石器時代相当の道具の利用が考えられています。

21世紀現在においてカキは広島県の漁業生産量の大部分を占め、また同県の生産量は日本の総生産量の約7割を占めます。個体群のうちSCP-1724-JPが産生するカルシウムは、外骨格中に炭酸カルシウムを多く含有する甲殻類の生育に寄与するものと推測されます。SCP-1724-JPの支持の上、食物連鎖上の意義が大きい表在移動性・半埋在性の小型種をはじめとする各種甲殻類は、SoI-1003-JPを上位の栄養段階に置く海洋生態系を構築すると考えられます。



付記: 2023/09/17、SoI-1003-JPの集団的遡上が確認されました。約10頭に及ぶSoI-1003-JP群が広島市安佐北区の太田川およびその支流の河川敷に上陸しました。生物災害対策として、広島県副知事を本部長として省庁関係各部で構成する緊急対策本部が設置され、有害鳥獣駆除の目的で陸上自衛隊第13旅団第46普通科連隊が派遣されました。民間人の被害は負傷者2名、行方不明者1名、家屋一部損壊3棟を計上しました。

陸上自衛隊が確保したSoI-1003-JPの生存個体および遺骸は機動部隊る-5("猟友会")により回収され、生物収容サイトで収容・保管されました。特筆すべき点として、確保された個体はいずれも極度の空腹の兆候を示唆しており、また確保時の胃内容物は小型の魚類・甲殻類に限られました。




追記: 2024/04/02、広島湾において例年と比較した水産資源漁獲量の大幅な減少が報告されました。品目のほぼ全てにおいて漁獲量は低下しましたが、特にマダコ(Octopus vulgaris)やコウイカ(Sepia esculenta)をはじめとする頭足類の漁獲量が十分の一以下に下落しました。加えて、全長3cm以上の甲殻類の大部分は生きた状態で水揚げされておらず、また死亡個体は軟体部が消失し空洞化した状態で発見されました。

以下は本件およびSoI-1003-JPの上陸行動に関する津川博士の提言です。

SoI-1003-JPの上陸行動は広島湾における深刻な食糧資源不足に起因するものと解釈できる.鯨類や鰭脚類といった海棲哺乳類で同様の事象は知られていないものの,これは骨格形態の差異や開放的な海域という生息域を考慮すべきであろう.類例として挙げられるのはクマ,サル,シカ,イノシシといった陸上哺乳類である.彼らは森林域で食糧に困窮した場合に人里へ下りてくる事例が知られており,農作物やその備蓄への被害,直接的な人間への危害が報告されている.SoI-1003-JPもまた食餌に困窮する事態に陥ったと予想される.

食糧資源の枯渇という着想は漁獲量の激減とも調和する.広島湾の海面漁業において重要なタコ類やエビ類を中心に漁獲量が激減しており,海面漁業の経済的損失は10億円を超過すると推定される.加えて,彼らの漁獲量減少は広島湾における海洋動物相の衰退を示唆する.節足動物と軟体動物は動物バイオマスにおいて大きな割合を占め,生物多様性における意義は大きい.彼らの減少の影響はSoI-1003-JPに留まらず,瀬戸内海全域の生態系に表出する懸念がある.

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ヨシエビ(Metapenaeus ensis

エビをはじめとする甲殻類は海域の生態的地位を占有する節足動物である.彼らは海洋生態系の他の生物との間に様々な関係を持つ.捕食-被食関係を見ると,甲殻類は捕食者として貝類の個体数を抑制し,また被食者としてSoI-1003-JPや頭足類・魚類の個体数を支持する.甲殻類に発生した致命的な影響は高次消費者を飢餓状態に追いやり,間接的に減少させたと推測される.

甲殻類の減少自体の因果は未特定である.広島湾における急激な水質変化・水温変化は確認されておらず,環境要因よりも未知の病原体の流行をはじめとする生物要因が有力視される.頭足類・甲殻類を衰退に至らしめSoI-1003-JPを広島湾から放逐した原因を見出すことは,ヒトから派生した生物までもが行動の変化を強いられた現状を踏まえるに,健全なる社会の持続の上で急務と考えられる.今後は病原体を媒介した可能性のあるSCP-1724-JP等貝類を含め,水中生物のモニタリングを実施し,原因究明に努める必要性がある.・・・


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モニタールーム

上記の見解の下、2024/04/04、広島湾での水棲生物の探索が実施されました。狭帯域超音波パルスを用いた能動的高解像度音響モニタリングでは、全長数十cmオーダーに達する海棲生物の生息が示唆されました。当該生物の反応は全長数mオーダーにおよぶSoI-1003-JPの反応とは明らかに異なるものであり、その個体群規模はSoI-1003-JPを優位に超過し、海底面を覆い隠すほどに繁殖した海域も確認されました。

特筆すべき点として、反射されたエコーの振幅スペクトル解析は、当該生物がキチン質と炭酸カルシウムを外皮として有することを示唆しました。甲殻類の外骨格はキチンナノファイバーとタンパク質からなる複合体を形成し、かつ複合体の階層の間隙は炭酸カルシウムが充填されており、スペクトル解析結果と調和します。このため、検出された生物群は甲殻類様生物であることが示唆されました。

加えて、同時に海中投入が実施された遠隔操作型無人探査機は通信を切断されており、光学的観察は失敗しています。SoI-1003-JPは探索網を拡大するも発見に至らず、通信切断の原因は不明です。今回確認された生物は海底付近で大規模群集を形成しており、甲殻類の回復を示唆する可能性があります。ヒトに対し脅威となるSoI-1003-JPの個体群密度が有意に低下していることを踏まえ、武装したエージェントらによる潜水調査が実行されます。



インシデント: 2024/04/11、潜水調査にダイバーとして参加したエージェント・福留が広島県呉市沖で水死体として発見されました。酸素ボンベとマウスピースとを接続するチューブの切断、また肺への海水の充満から、直接の死因は溺死と推測されます。なお溺死とは別に、頸部や腕部には細長い物体による圧迫の痕跡が認められたほか、頸部の正中線上には直径約8mmにおよぶ円形の穿孔が認められました。孔の内部では皮膚組織・筋組織の溶解と重度の炎症が認められ、鋭利な物体を介して注入された高い反応性を示す化学物質への曝露が想定されます。

以下はエージェント・福留が携行した水中カメラの映像記録です。

探査記録-08: 日付2024/04/10

<記録開始>

Agt. 福留: [水中で] フタマルマルマル、記録確認。畑漁港沖、これより調査を開始。

[00:07] 照明に照らされた先に種未定の魚影が映る。照明は下方へ向き、砂泥および露出した岸壁を照らす。岩壁には野生個体の複数のマガキが数十cmの間隔を空けて固着している。

Agt. 福留: いくつかへばり付いてるな。大きさは普通のと大差ない。

[01:08] 照明が海中で揺れ、奥の岩壁が照射される。無数のマガキが固着している。

Agt. 福留: 奥へ向かう。

(中略)

[17:55] エージェント・福留が水深20m地点に到達。岸壁に沿って潜水調査を続行する。当該水深にもマガキの固着が認められる。

[18:25] 映像に甲殻類の遺骸が映る。遺骸はほぼ完全に保存されているほか、粘性のある浮遊物が周囲に散乱する。エージェント・福留が接近し、残骸を手に取る。

Agt. 福留: 何だこれ。[遺骸を回しながら] エビか。

[18:32] 残骸はヨシエビのものと見られ、全長は15cm程度と推測される。画面が暗く正確な色の識別判断は困難であるが、灰色を呈するものと推測される。周囲には暗色の懸濁物が飛散している。

Agt. 福留: 何だかふわふわ、いや。[指で懸濁物を潰す] ぬめぬめしてる。表面に纏わりついてるな。

[19:00]: エージェント・福留が遺骸を振ると、関節部の間隙から懸濁物が漏出する。

Agt. 福留: 殻の中から。[間] 肉がグズグズになってるのか?

[19:33] エージェント・福留がその場を離れる。

(中略)

[23:35] 再び別のヨシエビの遺骸が画面に映る。

Agt. 福留: まただ。また死んでる。離れたところで同時に2匹、同じ死に方だ。綺麗に殻だけ残して、溶けて無くなってるらしい。変な病気じゃなきゃいいが。

[23:59] 画面奥に動くものが映る。

Agt. 福留: 今。

[24:03] 画面が沈黙する。エージェント・福留がカメラを揺らし、先ほど映った物体の方に向ける。

Agt. 福留: おい。[間] 何か居た。

[24:37] 岩肌の奥に甲殻類様の動物が映る。凹凸の発達した甲殻に被覆されてこそいるものの、付属肢は甲殻類のものよりも少なく、また異様に細長く伸長している。体に占める頭部の割合は小さく、胸部から腹部にかけての部位も細長い。腹部の末端からは1対の細い糸状の構造物が体長と同程度に伸びる。

Agt. 福留: カマキリ。[間] いや。[間] 何だあいつは。

[24:42] 当該生物が微妙に旋回し、画面に頭部と最前付属肢が映し出される。細長い1対の付属肢にはヨシエビと推測されるエビが捕獲されており、生命兆候を示さない。

Agt. 福留: あれがソナーにひっかかった群れの奴なのか?エビとかカニってよりも、虫みたいだ。[間] 大抵の虫なら新聞で一撃だが、ありゃデカすぎる。見たこともない。

[25:11] エビの腹部には当該生物の頭部が深く挿入されている。生物の頭部が小刻みに振動し、エビの外骨格の間隙を通過する管状の構造物が脈動する。振動は刺突した口吻を介した液体の流出入を示唆しており、消化液の注入と軟組織の抽出を示唆するように見られる。捕食行動が行われているものと推測される。

Agt. 福留: 食ってるというより、吸ってるのか。それにしてもデカい。目測で50セン ⸺

[25:38] 画面奥に2匹目の生物が出現する。4本の付属肢で水を掻き、高速で前進する。

Agt. 福留: 来たか。こっちに気付い ⸺

[25:41] 壁面を這うように3匹目が出現するとともに、最初の1匹が当該生物がエビを放棄する。エビは崩壊しながら画面外へ消失し、破砕された外骨格からは溶解した軟組織の残滓が流出する。全3匹の三角形の頭部はエージェント・福留の方を向き、大型の複眼が光を反射する。

Agt. 福留: こいつら、おい。

[25:47] 生物群が高速接近する。鋭利な口吻を伴う頭部が大きく映し出される。

Agt. 福留: [絶叫]

[25:48] 水中銃が射出されるが、生物は長大な肢を即座に伸長させてこれを回避する。衝突音を伴って映像が大きく振動する。携行カメラが岸壁に衝突しながら上下に大きく回転しているものと推測される。

Agt. 福留: こいつ。こいつ。

[25:52] カメラの衝突音が継続する。これと別に打撃音も発生する。

[25:55] 気泡の音。これ以降、エージェント・福留の発言は不明瞭なものとなる。

(約10秒間に亘る衝突音・打撃音)

[26:05] 微量の赤色の液体が混在した褐色の水塊が映し出される。褐色部はダイビングスーツに装備された対サメ用忌避物質が放出されたもの、赤色はエージェント・福留の血液と目される。

[26:07] 打撃音が停止。約10秒かけて褐色が薄れ、赤色の水の帯を映し出しながら画面が移動していく。

(以降、カメラは海流に従い、岩壁への衝突を伴いながらエージェント・福留とともに移動)

<記録終了>

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非異常のミズカマキリ(Ranatra chinensis

映像解析の結果、エージェント・福留を攻撃した生物は水棲昆虫たるミズカマキリ属(Ranatra)との類似性が確認されました。非異常のミズカマキリ属は全長数cmスケールの動物食性動物です。今回観測された海棲生物とは体積比にして約1000倍の体サイズ差がありますが、発達した付属肢で獲物を捕獲する点、刺突した口吻から消化液を注入して獲物の軟組織を吸引する点をはじめ、整合的な形態・行動が認められます。

確認された急激な海棲適応は、養殖・大量生産により市場に流通したSCP-1724-JPの摂食に起因すると推測されます。密漁・違法養殖・陸上廃棄等の財団が認識していない流通経路が存在する可能性が浮上し、オブジェクトクラスはEuclidに再分類されました。

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