アイテム番号: SCP-1726-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-1726-JPについての記述が存在する資料に関する広域調査が行われています。SCP-1726-JPは世間一般において、カバーストーリー「急死」が流布されています。
説明: SCP-1726-JPは、身長165cm、体重52kg、1950年生まれの日本人男性です。職業は落語家であり、2008年までは真打として活動していました。
SCP-1726-JPの異常性は、SCP-1726-JPが後述の内容を満たした会話を行うと発生します。SCP-1726-JPの対話相手(以下、対象とする)は、周りに複数の人間が存在した場合でも、SCP-1726-JPの意思によって1人に指定されます。
SCP-1726-JPの異常性は、SCP-1726-JPが対象に何らかの数を数えさせることで開始します。対象はこの行動を拒否できません。また、SCP-1726-JPと対象は以降の行動を強制的に行います。まず、対象が数を数えている最中に、SCP-1726-JPが対象に向かって現在時刻を尋ねます。対象は必ず数えるのを中断して現在時刻を答え、この答えた結果が次の数え始めになるように、数えられている値が改変されます。結果として、数えられている値は現在時刻の値から幾らか大きい値になります。この改変が行われたことは、対象及び異常性開始時にSCP-1726-JPの声を聞いた人物にのみ認識されず、SCP-1726-JP当人及び声を聞いていなかった人物は改変を認識することができます。この改変は、1人の人間に対して1度のみ使用することができます。
SCP-1726-JPは、2015年6月12日に財団によって保護されました。2015年5月から6月にかけて、東京都上野区に存在する複数の居酒屋において会計が合わないという現象が多発していました。この現象の調査を財団エージェントが行っている際、当該地域付近で路上占い師として定期調査を行っていたエージェント・屈子の元に、偶然SCP-1726-JPが当現象に関する相談を持ちかけたことによって身柄の確保に繋がりました。
インタビュー記録1726-JP
実施日: 2015/06/12
対象: SCP-1726-JP
インタビュアー: 糺川博士
付記: このインタビューは、エージェント・屈子によって勧められた医師がカウンセリングを行っているという形で行われました。
<記録開始>
SCP-1726-JP: 今日はよろしくお願いします。
糺川博士: こちらこそよろしくお願いします。それでは早速相談したい内容について話してくださいますか?
SCP-1726-JP: ええ、わかりました。僕が相談したいことは、僕が今やっていることについてです。
糺川博士: 今やっていることですか。
SCP-1726-JP: そうです。最初はただの悪ふざけだったのですが、段々調子に乗ってしまい、後戻りできなくなったというか──
糺川博士: もっと具体的にお願いできますか?
SCP-1726-JP: ああ、すいません。──あのー、正気の沙汰ではないことなんですが、言っても信じてもらえますか?
糺川博士: ええ、もちろんです。
SCP-1726-JP: ありがとうございます。ええと、「時そば」はご存知ですか。
糺川博士: はい、有名な落語ですね。
SCP-1726-JP: 私が今やっているというか、やってしまっていることとは正にそれなんです。実は僕──時そばの要領で、お金を誤魔化しているんですよ。
糺川博士: なるほど。それはいったいどのように?
SCP-1726-JP: ええと、事の発端はですね、弟子の██君に飲み会の会計を任せた時に支払い額を数えさせていたんですよ。その時にふと悪戯したくなっちゃいまして、「そういえば今何時?」って聞いてみたんですね。そうしたら、彼は「24時ですよ」って答えた後に妙な金額を出したんです。
糺川博士: 確かに時そばの通りですね。支払い額は幾らになったんですか?
SCP-1726-JP: 12000円くらいが26円になりました。
糺川博士: ……なるほど。で、それを様々な店で実行したと。
SCP-1726-JP: 誰も怪しまなかったので……こう、今になって罪悪感が……。
糺川博士: 大凡の状況はわかりました。そうですね……貴方の場合は、精密な検査も必要そうです。
SCP-1726-JP: 検査ですか!?これから予定があるのですが……。
糺川博士: あまり時間は掛かりませんのでご心配なく。
SCP-1726-JP: はあ……で、いつから始められるんですか?
糺川博士: 早くて10分後、そこから20分、30分──
SCP-1726-JP: [小声]うーん、予定をずらさなくては……[糺川博士の方を向く]えーと、今何時でしたっけ。
糺川博士: [腕時計を見る]午後4時11分ですね。では、精密検査は──411分、421分、431分──はい、このくらいがいいですね。午後11時21分からにしましょう。
SCP-1726-JP: え?すぐじゃないんですか?今4時って──
糺川博士: ええ、すぐですよ。では、準備をするのでここで待っていてください。それでは。
SCP-1726-JP: あ、待ってください!
[糺川博士が部屋から退出する。]
SCP-1726-JP: ……誰かいませんか。
<記録終了>
終了報告書: このインタビューによってSCP-1726-JPの異常性の概要が明らかになった。また、SCP-1726-JPは自身の異常性を正確に把握していないと考えられる。糺川博士はSCP-1726-JPの異常性の影響を受けていたため、Aクラス記憶処理が行われた。また、人型実体保持現実性検査室の使用予約が誤った時間に登録されていたため、修正が行われた。以降、SCP-1726-JPと会話する場合は筆談で行われる。
追記: 財団監視下において、SCP-1726-JPの異常性が再度発動する事案が発生しました。以下は当時の事案の様子を捉えた映像記録です。
事案記録1726-JP
注記: 当事案記録は2015/06/17、サイト-81██において、SCP-1726-JPが財団製偽装用医療関連書類を記入している際に発生した事案を撮影したものである。
<再生開始>
[SCP-1726-JPはパイプ製の椅子に座って書類を記入している。]
SCP-1726-JP: うーん……多いな……。講演まで時間がないが……。
[SCP-1726-JPの手が止まる。]
SCP-1726-JP: あー、そういえば生まれ年はいつだったか。
SCP-1726-JP: 昭和25年だから……西暦に直すと……いちきゅう……よんぜろ…….いちきゅう……。
SCP-1726-JP: ……。
SCP-1726-JP: マズイ!今の時間は?
SCP-1726-JP: ……。
SCP-1726-JP: いちろくいちぜろ。
SCP-1726-JP: つまり……いちろくいちぜろ、いちろくいちいち、いちろくいちに……ああ、生まれ年は1613年か。
[部屋からSCP-1726-JPが消滅する。]
<再生終了>
この事案によって、小規模な過去改変が発生しました。当初、財団は当過去改変の発生について把握していませんでしたが、サイト-8161内のシャンク-アナスタサコス恒常時間溝(XACTS)設置済データ保管室から当記事の編集ログ及び上記映像記録が発見されたため事案が発覚、ログの復元が行われました。当改変に関する詳細な調査が行われていますが、1600年代の資料の不足により調査は難航しています。現在SCP-1726-JPの死亡に基づくオブジェクトクラスのNeutralizedへの再分類申請が行われています。