SCP-1730 - What Happened to Site-13?
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SCP-1730
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無認可でのアクセスは禁止されています。

SCP-1730の主要建造物。地階への主な出入口はこの建物の下にある。

ビッグ・ベンド・ランチ州立公園、テキサス、USA。
特別収容プロトコル: SCP-1730の周囲2キロメートルには円形の境界線が確立されており、SCP-1730の周囲1キロメートルには隔離ゾーンが確立されています。SCP-1730に進入する職員はまずクラスVII高リスク性接触準備措置を受けねばならず、これには改造型「マクスウェル-ハーデン」対危険物質補強済気密服の着用などがあります。こうした保護措置は必ず仮設サイト-23の隔離用メインゲートにおいて実施することとします。
隔離エリアを出ようとする者はまず、隔離担当保安職員が実施する完全除染プロトコルに従わねばなりません。隔離終了値に満たなかった者はさらなる除染のために拘留され、もしくは除染が不可能であるとされた場合は、終了されます。
収容手順更新 ████/██/██: 危険な生物的および認識災害性実体により、保安救助チームに多数の死傷者が発生しました。現在の全探索任務には機動部隊ゼータ-9「メクラネズミ(Mole Rats)」が割り当てられます。
収容手順更新 ████/██/██: 探索ログ7に詳述される事件のため、SCP-1730の将来の探査は無期限に中断され、監督官の承認待ちとなります。
収容手順更新 2016/02/01: 財団監視チームにより収集された情報から、サイト-13の探査、回収活動の無期限中断は解除されました。詳細情報は知る必要性の原則に基づいて利用可能です。割り当てられた機動部隊ユニットは上官からの呼び出しを受けるでしょう。
収容手順更新 2017/05/15: 機動部隊アポロ-3「猟区管理人(Game Wardens)」およびタウ-5「サムサラ(Samsara)」が活性化され、SCP-1730の探索に割り当てられました。詳細は補遺1730.8を参照してください。
収容手順更新 2017/06/22: 補遺1730.9に詳細を記載された事件にもとづき、SCP-1730はNEUTRALIZEDに再指定されました。さらなる研究の試みが進行中です。デブリーフィングのレポートは機密指定解除され次第参照可能になります。
ファイルサーバー注意事項:
以下はNEUTRALIZEDに再指定される前に作成されたデータファイルです。エラーが残存している可能性があります。
説明: SCP-1730はビッグベンドランチ州立公園(Big Bend Ranch State Park)内、合衆国とメキシコの国境から北西に15キロメートルの位置にある大規模な複合施設で、████年6月5日に発見されたものです。当施設は孤立した環境にあること、また進入した人間が生きて帰る可能性は低いことから、SCP-1730は以前にも発見されていたものの報告がされることはなかったという可能性もあります。
SCP-1730で見られる識別表示および内部にある文書は、SCP-1730はもともとはアラスカ州ノーム近郊に位置していた財団のサイト-13の一部であったという説を補強しています。この説は現在の記録とは矛盾しており、ノームに建設される計画であったサイト-13はより大規模かつ先進的なサイト-19の建設を受けて中止され、完成には至っていません。現地で見られる植物はアラスカ地域固有のものであることが追跡調査により判明しています。SCP-1730がいかにして現在の位置に移動してきたのかはわかっていません。

SCP-1730の発電所。
SCP-1730は深刻な荒廃状態にあり、長期間に渡って放棄されていたものと考えられています。施設全域で多数の燃料漏れや火災が起きているにも関わらず、現地の発電機は破損した状態で稼働し続けています。これにより現地の全域において断続的に停電が発生しており、探索および救助活動の妨げとなっています。
SCP-1730の起源はわかっておらず、内部に収容されている異常実体の多くの性質も同様にわかっていません。地下2階から15階までの地階1が実体の収容に用いられていることが確認されていますが、その収容状況は著しく悪化しています

地下3階へ続く南西の階段にあるメッセージ。
この施設の地下深くのどこかには人間の生存者がいる可能性があると考えられています。英語で書かれたメッセージが施設全域で発見されており、それらには警告を表す「危険(danger)」や「死の恐れあり(death here)」の他に、「自分の身体じゃない(not my body)」や「出血(bleed)」などがあります。たびたび見られるメッセージとして、「サイト-13に何が起こったか?(What happened to Site-13?)」というメッセージが地階の様々な場所で発見されています。
現地のまだ機能している端末からはいくつかのデータ記録が回収されており、関係するデータは下記の補遺に収録されています。これらの記録と探索で得られた成果との間には、施設のレイアウト、職員の構成、および収容されている異常性オブジェクトなどについて矛盾が存在していることに注意してください。
████/██/██
部隊: チャーリー・ユーコン(Charlie Yukon)
任務: サイト-13の復旧
指揮官: CY-1
[ログ開始]
俺たちはそれを見つけた。その前にそれがデイリー(Dailey)を殺すところを見ていた。あいつの口の中に這い入って、次にどうなったかわかるだろう、デイリーは耳から血を噴いた。そこら中に吐いて、ぶちまけた。面白いくらいの血だったさ。酷すぎた。あいつの髪が抜けていった、まるで根元からこぼれていくようだった。あいつの髪はあっという間に抜け落ちちまった。
それが終わると、あいつに入っていったモノが仲間といっしょに這い出てきた。そいつらの一匹、区別なんてつけようがないが、そいつがヒルみたいにそこら中の血を飲み始めた。別の一匹はデイリーの中に這い戻って、あいつを立たせた。振り返って、俺たちの方に近付いてきた。あいつの中にいる奴があいつの口を開かせるのが見えた。だから俺はあいつの顔に弾を一発くれてやった。それからもう一発。みんな弾装が空になるまであいつを撃った。あいつはもう起き上がらなかった。
だが、俺たちももうあまり長くはもたないだろう。ここでまた一つメッセージを見つけた、そうだ、[認識災害のため抹消]。始まるのは時間の問題だろう。俺たちはC4を仕掛けてその壁を吹き飛ばした、今はもうほとんど判読できないと思うが、そういう問題じゃない。ジョーンズ(Jones)ももう他の連中と同じように静かになった。さっき俺たちはあいつをエレベーターシャフトに突っ込んできた。あいつの身体が地面に落ちる音は聞こえなかった。
連中がスレッシャー(Thresher)を起動する音が聞こえた気がする。もっと早くあれのことを知っていればな。
まあいいさ。
以下のメッセージはSCP-1730の緊急警報システムから回収されたものです。ファイルの記録によれば、このメッセージは大規模な電力障害が起こる寸前、サイトの電力中継器で爆発が起こる3分前に送信されたものです。
一斉通知
サイト-13に収容システムの大規模違反が発生しています。
[認識災害により抹消]が実験中に収容を突破しました。
備え付け核弾頭からは応答がありません。プロトコル・スレッシャーが実行されます。
生命維持システム: オンライン ●
電力システム: オフライン ●
火災対応システム: オフライン ●
水害対応システム: オフライン ●
原子炉の状況: 危険 ●
Euclidクラス収容状況: 危険 ●
Keterクラス収容状況: 違反 ●
初期探索映像ログの書き起こし
日付: ████/██/██
探索部隊: 機動部隊D-12「マッド・スリンガーズ(Mud Slingers)」
対象: SCP-1730
部隊長: D12-Cap
部隊員: D12-1 / D12-2 / D12-3 / D12-4 / D12-5
[ログ開始]
D12-Cap: 記録装置を起動。全員、マイクをチェックしろ。
D12-1: チェック。
D12-4: チェック。
D12-3: チェック。
D12-5: チェック、チェック。
D12-2: 以上5名、チェック。
D12-Cap: よし。指令部、ちゃんと聞こえているか?
サイト指令部: 問題ない、隊長。
D12-Cap: よし。安全装置は掛けておけ、何があるのかわからん。(沈黙)いいぞ、全員セットした。この扉を通って移動する。
(部隊は正面の扉を通ってSCP-1730の主要建造物に進入する。扉は施錠されていなかった。)
D12-Cap: 警戒しろ。
D12-3: 暗いな。ライトをつけます。
D12-Cap: いいぞ。
(部隊は肩に設置されたライトをつける。)
D12-1: この壁に何か書かれてますね。
D12-2: ああ、こっちもだ。
D12-Cap: 何と書いてある?
D12-1: 「下に行け(get below)」、その隣に「壁は見るな(don't look at the walls)」と。
D12-4: そいつはちょっと遅かったな。
D12-Cap: ツー、おまえの方はどうだ?
D12-2: 「我々は何をしたのか?(What did we do?)」。
D12-Cap: 見えてるか、指令部?
サイト指令部: ああ。
D12-Cap: よし、移動するぞ。(沈黙)業務用エレベーターがある。ファイブ、動くかどうか見てくれ。
D12-5: (沈黙)うん。動くみたいです。
D12-Cap: どこまで連れて行ってくれるか確かめるとしよう。
(部隊は業務用エレベーターに入る。映像からは様々な階のボタンのある制御盤が点灯しているのが見て取れる。D12-CapはB3と書かれたボタンを押した。)
D12-1: さあ出発だ。
(エレベーターはしばらく降下する。地下3階に到達後、停止する。扉が開くと暗い通路が見える。唯一の光源は通路の曲がり角、エレベーターからおよそ50メートルの距離にある。)
D12-Cap: オーケー。まずこの階を捜索しよう、それから別の場所に行く。ワンとスリー、通路を捜索しろ、俺とフォーは通路の部屋を見る、ツーとファイブはここに残れ、このエレベーターがどこかに行かないように見張っていろ。

D12-5の肩に搭載されたカメラからの画像。
(チームは散開する。D12-1とD12-3は通路の端の明かりに向かって移動する。D12-Capは通路の左側の部屋を確認し、D12-4は右側の部屋を確認する。)
D12-4: 汚い部屋だな。何だこれは?
D12-Cap: ああ、こっちにもあるぞ。これは泥か?
D12-4: そんな感じですね。沈殿物の一種でしょう。金属の臭いがします。(ベルトから試験管を引き抜く)これを後方に送る、サイト指令部。調べてみてくれ。
サイト指令部: 了解した。何なのか判明するまで、できる限り近寄らないようにしろ。
D12-Cap: もちろんだ。
D12-1: 通路の端に着きました。別の通路があります、端にはバリケードのようなものがあるようです。テーブルやデスクが積み重ねられています。
サイト指令部: そのバリケードに近付けるか、ワン?
(D12-1とD12-3がバリケードに接近する。)
D12-4: この部屋はさらに大量の沈殿物がある。壁にこびりついて―死体を発見した。
D12-Cap: その地点を保持しろ、ワン、移動するな。そっちに行く、フォー。
(D12-Capが部屋に入る。隅にある黒く凝集した物体に半ば沈み込んでいる人型の肉体が見える。その頭部と頸部は視認できない。)
D12-Cap: なるほど。何か身分証は?
D12-4: ベルトにバッジをつけるところがあるようですが、無くなっています。剥ぎ取られたようです、たぶんどこかのドアを開けるためでは?
D12-Cap: かもな。先に進め、ワン。
D12-1: 了解。(沈黙)隊長、こっちに複数の遺体です。あの泥がこのバリケードの向こうでせき止められています。
D12-3: くそっ、一つ動いたぞ。
D12-1: この山の中に何かいるな。光を当てる。
D12-Cap: 続けろ。
D12-1: ああ、そこだ! くそったれ!
(銃声)
D12-Cap: 報告しろ。そちらに向かっている。
D12-3: 死体の口から何かが這い出てきました。ヘビか何かだと思いますが…歯がたくさんありました。実際何だったのかはわかりません。
D12-1: これを見ろ。この死体を撃ったんだよな?
D12-3: くそっ。中はカラッポじゃないか。
(D12-CapとD12-4がバリケードに到達する。)
D12-Cap: これが見えるか、指令部?
サイト指令部: 確認した。
D12-Cap: よし。注意した方がよさそうだ。まだの奴は武器を用意しておけ。
D12-4: 了解。
D12-Cap: エレベーターに戻るぞ、次の階に行けるか見てみよう。あのドアは開―ああ、だと思った。じゃあ、行くとしよう。
(D12-Cap、D12-1、D12-3およびD12-4は通路を戻る。)
D12-4: ちょっと待った。
D12-1: さっきも左に曲がらなかったか?
D12-4: 間違いなくな。エレベーターはどこだ?
D12-Cap: ツー、ファイブ、聞こえるか?
(沈黙)
D12-4: 始まり始まり、だな。
D12-Cap: 黙ってろ。そのとおりだがな、くそっ。指令部、聞こえてるか?
サイト指令部: 問題ない、隊長。
D12-Cap: ツーとファイブの位置はわかるか?
サイト指令部: 12時方向、およそ45メートルだ。
D12-Cap: そこは壁だぞ…ずっとそこにあったはずだ。俺たちが幻覚にかかってるか、この建物が何かおかしなことをしてやがるか、その両方かだ。(沈黙)二人と連絡は取れるか?
サイト指令部: 少し待て。
(サイト指令部はD12-2およびD12-5に呼びかけるが、両名とも応答せず。)
サイト指令部: だめだ。
D12-Cap: ああ、くそっ。それなら上る道を見つけて、ここを出るぞ。
(D12部隊は通路を進む。通路はこのサイトで回収されたいかなる図面のものよりも長かったことに注意。)
D12-1: このドアに何かある。
D12-Cap: なんだ?
D12-1: 「静かに(silence)」とあります。確認しますか?
D12-Cap: これは収容セルなのか? ただのオフィスのドアだな。
D12-4: この階全体がオフィスみたいです。
D12-Cap: いいだろう。そこに入るぞ。
(D12-1がドアを開けようとする。)
D12-1: ロックされてます。開きません。
D12-Cap: なら、ぶち破れ。
D12-3: 今の聞こえたか?
D12-1: 1… 2…
D12-3: 誰かがシーッって言って―
D12-1: 3!
(D12-1がドアを蹴破る。映像記録に、ドアを怯えるように見つめて耳から火を噴き出しているように見える裸の人間が3フレーム写る。)
D12-3: ク―
(強烈な白い光があり、肉が焼ける音が聞こえる。すべてのカメラのレンズが破損し、機能しなくなる。マイクもD12-3のものを除いて作動しなくなる。)
サイト指令部: 何があった? 隊長? D12チーム?
(サイト指令部はさらに30秒間、D12-Capと通信を試み、D12-3のマイクがまだ機能していることに気付く。)
サイト指令部: D12-3、聞こえるか?
D12-3: (沈黙)
サイト指令部: D12-3?
D12-3: (沈黙、続いて這いずるような音。)
サイト指令部: D12-3?
D12-3: (叫び声、続いてむせぶ音。これは43秒間続き、その後に液体が漏れ出るような音、続いて流れるような音が、嘔吐の音を伴って聞こえる。大きな、濡れた物体が床を打つ音が聞こえる。鈍く低い、何かが近づいてくる音がこれに伴って聞こえる。マイクは突然切断される。)
サイト指令部: D12-3? クソッ。
D12-2: ああくそ、おい、サイト指令部。
D12-5: 神様。
サイト指令部: 何―D12-2、今どこにいる?
D12-2: エレベーターのそばだ。無線が動かなくなって、あいつらが戻ってくるのを待ってたんだ。
サイト指令部: 他の部隊員は無力化された。待機しろ、そちらの映像とのリンクを確立する。
D12-5: その必要はない、たぶん妨害されるだけだ。ここに部隊を送ってくれないか?
サイト指令部: 待機しろ、映像がつながる。
D12-2: やめ―
サイト指令部: よし、そちらは―
(両名に搭載されたカメラは彼らが立っているはずの通路を映しておらず、広い機械室のような場所を映している。ボイラーが近距離に見え、壁は崩れているように見える。D12-2は逆さ吊りにされているようで、D12-5と向かい合っており、いずれも蒼ざめていて動かない。二人の顔は口、鼻、および目から流れ出しているらしい血で覆われている。)
(D12-2の背後で大型の物体が素早く動き、併せて複数の別々の音源から這いずるような音が聞こえる。D12-5が目を開く。2フレーム後、映像および音声送信は切断される。D12部隊からの以降の応答はなかった。)
[ログ終了]
初期探索映像ログの書き起こし
日付: ████/██/██
探索部隊: 機動部隊Y-24「ガリバーズ・トラベラーズ(Gulliver's Travelers)」
対象: SCP-1730
部隊長: Y24-Cap
部隊員: Y24-1 / Y24-2
付記: 主要構造物の初期の探索により、さらなる探索はさらなる戦力が整わない限りはあまりに危険であることが判明した。出動可能な残りの機動任務部隊は3名の人員からなるMTF Y-24のみであり、発電所に進入し損傷状態を評価するよう命じられた。
[ログ開始]
サイト指令部: オンライン接続。
(3名の隊員の映像および音声送信が同時にオンラインとなった。彼らの前方にSCP-1730の発電所の入り口がある。)
Y24-Cap: 聞こえているか?
サイト指令部: 確認した。
Y24-Cap: よし。何か知っておくべきことは?
サイト指令部: 熱スキャンによれば、炉心の一つが過熱状態にあるようだ。爆発寸前かもしれない。そこからはできるだけ離れていることだ。必要なら小型無人機も使える;捨てるつもりで使ってもらって構わない。
Y24-Cap: そうか。よし、いいだろう。始めるぞ。
(Y24部隊は発電所に進入する。最初の部屋は警備室に見える。)
Y24-1: 最初の関門だ。ドアがロックされてる。
Y24-2: しかもかなり堅牢そうだな。ガラスは防弾か?
Y24-Cap: 調べてみろ。
(大きなゴツンという音。)
Y24-2: おそらくはそのようです。
Y24-Cap: 指令部、ここで爆発物を使ってもいいか?
サイト指令部: だめだ。構造は全体的にかなり脆弱になっている。生き埋めになる危険があるぞ。
Y24-Cap: それがどうした。他に入る手段は無いんだ。
Y24-1: ちょっと待った。誰かレベル4クリアランスのカードを持ってる奴はいないか? それなら収容違反時のロックダウンをオーバーライドできるんじゃないか?
サイト指令部: エドワーズ(Edwards)博士が部隊と収容ベイに―
Y24-1: いや、違う。もっと歳のいってる奴だ。エドワーズはせいぜい、そうだな、10年かそこらだろ? クリアランスを得てから長く経った奴だ。
サイト指令部: 待機せよ。
サイト指令部: ジェイムソン管理官(Director Jameson)が現在サイト-65に配属されている。
Y24-1: えーと、ここから3時間か、これはどうも―
Y24-Cap: いや、いいアイデアだぞ。電話でジェイムソン管理官に話してくれ、指令部。彼にクリアランスコードを…サイト-19が建てられた頃のコードを聞いてくれないか? 1960年だったか?
サイト指令部: 待機せよ。
(10分が経過、不要なログは削除。)
サイト指令部: よし、いいか?
Y24-1: どうぞ。
サイト指令部: [編集済み]
Y24-2: やったぜ。
Y24-Cap: 「こんにちは、ジェイムソン研究員。」 こいつは驚いた。
サイト指令部: 管理官によろしく伝えておこう。
Y24-Cap: そうしてくれ。お手柄だぞ、ワン。では入るとしよう。
(部隊は発電所の主要通路に入る。)
サイト指令部: 損傷した炉心が見えるか?
Y24-Cap: いや、全部問題ないように見える。サーマルレンズに切り替えよう。
Y24-2: あれだな。
Y24-1: 何か見逃してるのか? あの炉心は正常に見えるぞ。
サイト指令部: もっと近付いてもらえるか。
Y24-Cap: よし。無人機を出すぞ、指令部。
(Y24-Capは小型無人機を発進させる。無人機は発電所の炉心に接近し、その周囲を旋回し始める。炉心は12あり、そのうち7つは修復不可能なほど損傷している。3つは稼動しておらず、2つがフル稼働している。その2つのうち1つが過熱している炉心で、その異常な熱量を除けば損傷の形跡は無い。)
サイト指令部: 正常に見えるな。近付けるか、キャプテン?
Y24-Cap: やってみよう。
(Y24部隊は過熱した炉心に接近する。温度の測定値は炉心に近付くにつれ上昇していく。)
Y24-1: とにかく熱いぜ。
Y24-2: このクソはなんなんだ?
Y24-Cap: かなり分厚いな。泥か? 残留物か何かか?
サイト指令部: 全員、それは避けて進め。キャプテン、小型無人機にそれを一瓶載せて、来た道から後方に送ってくれるか?
Y24-Cap: ああ、少し待て。ツー、そいつを一つ―ああ、それだ。(沈黙)サンプルを送ったぞ、指令部。
サイト指令部: 助かる。全員、気をつけろ。あれの反対側に回り込むんだ。
Y24-1: 見えたぞ。何もない―ああ、くそったれ。見ろ。
Y24-Cap: ちくしょう。
(Y24-1のカメラは少なくとも10体の人間の遺体が過熱した炉心の側面にワイヤーで縛り付けられているところを映している。すべての遺体はD12部隊によって発見されたものに類似している:蒼ざめて、血があらゆる開口部から流れており、無反応である。)
Y24-2: 遺体の下に何か書かれてるぞ。血か?
Y24-Cap: 「サイト-13に何が起こったか?(What happened to Site-13?)」。
Y24-1: こいつの配管は主要建造物に向かっていません。ここを見てもらえますか? これは下の方に向かってますよ。
Y24-Cap: 何か印はないか?
Y24-1: ええと…ああ。これは全部「ボディ・ピット(body pit)」とラベルされてます。ここからまっすぐ地下に向かっているようです。
Y24-Cap: なら、下に行かねばならんな。指令部、それでいいか?
サイト指令部: 了解した。それと、今サンプルを受け取った。数分で報告が出るだろう。
Y24-Cap: そうか、いいぞ。では、降りてみるとしよう。
Y24-2: そこに階段があります。
(Y24部隊は階段に近付き、下り始める。この階段に照明は無く、部隊員は肩のライトを点灯する。)
Y24-Cap: このへんのドアは完全にロックされてるな。
(Y24部隊は階段の最下層まで下る。そこにあるドアは開いた。)
Y24-1: このドアはこじ開けられているぞ、まるで誰かが…逃げ出そうとしたのか? 入ろうとしたんじゃないな。
Y24-Cap: ここの壁に何か書かれてる。「くたばれSCP(Fuck SCP)」。
Y24-2: お行儀のいいことで。
(チームはその扉を通過する。)
Y24-1: 臭うよな?
Y24-2: ああ、ちくしょう。嫌な臭いだ。なんなんだ?
Y24-Cap: 何にせよ、この通路の反対側の端にあるようだ。全員、あの動いているラジエーターに注意しろ。
サイト指令部: 各員注意せよ、映像送信が失われている。何かがこちらの信号を妨害しているようだ。
Y24-Cap: 了解した、こちらは―
(音声送信が切断される。位置確認システムはしばらくは維持されており、サイト指令部はY24部隊との通信の回復を試みる。断続的な通信が次の15分間に受信された。)
Y24-1: 何体かは人間だぞ。
Y24-Cap: これはまるで…この中のそこら中にあの黒いクソが、鉄みたいな臭い―
Y24-1: 何かが這っていったぞ、見ろ。
Y24-2: 今のが聞こえ―
Y24-1: すぐに―
Y24-Cap: あそこに灯りがある。見えるか?
Y24-2: ハロー? 大丈夫ですか? 助けが必要ですか? 我々は―
(音声が完全に切断される。復旧作業は停止された。次の24時間の間にY24部隊からの通信は受信されず、同部隊は喪失したものとみなされた。小型無人機で回収されたサンプルは血液と発電用炉心の残留排水になんらかの生体組織が混ざったものと判明した。この物質についての研究は進行中である。)
(1週間後、Y24-1の映像送信が13秒間回復する。音声は送信されず、映像はテーブルを囲んで見下ろしている人間の一群を映していた。人間の一人がカメラを見ると、映像は切断された。それ以降に同部隊からのさらなる通信が受信されることはなかった。)
初期探索映像ログの書き起こし
日付: ████/██/██
探索部隊: 遠隔機動無人機(Mobile Access Drone)
対象: SCP-1730
部隊長: N/A
部隊員: N/A
付記: SCP-1730へ追加の戦力が到着するのを待つ間、地上用の無人機がサイトの主要建造物内部へと派遣され、D12部隊が進入したものと同じ扉を通って進入した。この作戦の目標は下層階の調査およびSCP-1730の起源に関わる情報の回収である。
[ログ開始]
無人機はメインオフィスビルに接近し、正面扉を通って進入する。しばらく内部のロビーの壁にある記述の記録を行い、続いて業務用エレベーターへ移動する。
無人機はエレベーターに入り、階を選択する。地上には5つの階、地下は15の階の選択肢がある。無人機は地下15階を選択する。エレベーターは下降を開始する。
7階を過ぎたところで、エレベーターは突然停止する。しばらく後、これは断続的な停電によるものと判断された。無人機は適切なオプションを用いて面しているエレベーターのドアを開放した。開いたエレベーターシャフトが見えたが、無人機はこのシャフトの深さを特定することはできなかった。ウィンチを使用して、無人機は停止したエレベーターの下へと下降し、下方にあった最初の階まで移動した。扉をこじ開けると、無人機はその開いた入口へ振り子のように飛び入ってウィンチを収納した。
扉のすぐそばの壁にある表示から、ここが地下8階であること、およびEuclidクラスの収容棟であることがわかる。この階の照明は落ちたままである。無人機はメイン通路を移動して次の階への下降に適切な場所を探すよう指示される。
無人機はサブ通路へ向かい、探索を行うよう指示される。壁面には多数のメッセージが書かれており、「壁を見るな(don't look at the walls)」や「静かな奴らは殺せ(kill the quiet ones)」などの内容があった。いくつかの部屋を調べ、それらが空のオフィスであると確認し、無人機はメイン通路へ戻った。

fileserv:/S:/1730/exploration/drone139.jpg
無人機は大型の、おおむね人間型の実体が通路の端近くに立っているのを見つけ、移動を停止する(explorationファイルのdrone139.jpgを参照)。この実体は通路をゆっくりと滑るように移動しているようで、無人機に気付いているようには見えない。実体が通過した後、無人機は同実体を追跡するよう指示される。
実体は最初の通路の端近くにあるメンテナンスルームに入る。無人機は実体がその外層部分の下から長い腕を伸ばして床に触れるところを観察する。さらなる観察により、この実体は以前に血液および発電施設の廃液であると識別された分厚い暗色の物体を、原始的な「指」として識別されるその付属肢で拾い上げていたことが判明した。実体は次に、その背後にある壁に向かってゆっくりと移動を開始する。この壁は無人機からは視認できない。

fileserv:/S:/1730/exploration/drone144. 認識災害抹消済み。
実体は動きを止め、続いてゆっくりと転回して部屋を出ようとする。無人機は壁の方に移動しその変化を記録するよう指示される。実体は[認識災害のため抹消]などのいくつかの独特なシンボルを残していた。無人機はこれらのシンボルをフラッシュ撮影し、サイト指令部へ転送した。
無人機は大型実体の追跡を継続するよう指示されたが、実体は通路から消失していた。実体は明瞭な痕跡はまったく残しておらず、床の一部を覆っていた分厚い物質にも痕跡は無かった。無人機は実体は無視して探索を継続するよう指示された。
無人機は収容セル群と思われる場所に到達する。最初のセルは開いている。入口の脇にあるプラカードには「実体324、1975/12/13に終了予定」とある。無人機が入口を通ると、広々とした収容セルが確認される。壁全体に厚いゴムのパッドが見られる。無人機は部屋の隅に、厚い暗色の沈殿物で覆われた人型実体を発見する。無人機がその人型実体に接近すると、その指先から無人機に向けて小さな火花が放たれた。無人機は何枚か写真を撮影して退出する。
次の3つのセルはすべてプラカードの無い空室だった。4つ目のセルは閉じられており、プラカードは破壊されていた。無人機は切断トーチを用いてドアを開けるよう指示される。しばらく後、同作業は成功。無人機は室内に進入する。
その部屋の隅に年齢およそ34歳ほどの、痩せ細った人間の女性の身体がある。肉体は生命反応は示していない。その首には鎖が見え、シャツの中に伸びている。注目すべきことに、このセル内には沈殿物が存在しておらず、おそらくは内部の者が扉を閉め内側から施錠したためであると考えられる。無人機は死体から識別バッジを探し、それを発見する。その氏名は「ジャック・ブライト(Jack Bright)」と読める。無人機は首の鎖を調べるよう指示されるが、鎖は破壊されていることが判明する。無人機は部屋を退出する。
無人機は短い距離を移動した後、階段を発見する。無人機は次の階へと降りる。扉のそばの表示には「5階」とある。無人機は今降りてきた階段を視認するために転回するが、それが存在していないことを確認する。サイト指令部で短い議論が交わされた後、無人機は入口に入るよう指示される。
無人機は大規模で広々とした、日光で照らされているオフィスフロアに入る。いくつかの端末が近くにあるが、すべて破壊されている。無人機はもっとも損傷の少ない端末に接近し、起動を試みる。端末は起動しないが、その原因が停電と機械的損傷のいずれであるのかは不明である。
無人機は部屋を横切って移動する。床には紙が散らばっており、その多くは焼かれたり千切れたりしている。無人機は「M.ハドレー(M. Hadley)」とラベルされたもっとも損傷の少ないように見える端末に到達し、起動を試みる。端末は起動し、無人機はコンピュータへの接続を試みる。このコンピュータは、何世代か古いものではあるものの、現在のモデルと同種の財団ベースシステムを実行している。無人機はアクセス可能なすべてのファイルをサイト指令部に転送するよう指示される。無人機はこの作業を実行する。
注記: 作戦のこの時点で、サイト指令部は無人機との接続を失った。操作班の数名がなんらかの異常効果によるものと思われる症状を突然呈し、沈黙するとともにその耳から発火し始めた。この症状の発生後、あらゆる音が無音の爆発現象を引き起こすようになり、サイト指令部は混乱しその通信機器のほとんどが破壊された。
後に、この影響を受けたのは地下の保管倉庫にいた大型実体によって描かれたシンボルを見た者だけであることが判明した。財団の認識災害専門家による実験およびスクリーニング技術により、このシンボルそのものが一種の火災性認識災害であることが確認された。このシンボルを認識した個人は必ずこの災害の影響を受け、このサイトの探索はいかなるものであれ危険を伴うものとされた。
無人機はその後数日間放置されたが、端末の内容の送信作業は完了した。回収された内容は補遺1730.5に収録されている。無人機との再接続の試みは失敗に終わり、建物の外部からの無人機による監視によって、主要構造物の地上部分のすべての階は完全に空(から)であることが判明した。先の無人機は発見されなかった。
初期探索映像ログの書き起こし
日付: ████/██/██
探索部隊: 機動部隊Z-9「メクラネズミ(Mole Rats)」
対象: SCP-1730
部隊長: Z9-Cap
部隊員: Z9-1 / Z9-2 / Z9-3 / Z9-4 / Z9-Sup
付記: 以前に試行された探索において多数の犠牲者が出たことから、SCP-1730における作戦を継続するべく異常構造物の探索経験を持つ部隊の召集が決定された。これにより、MTF Z-9「メクラネズミ」がSCP-1730に配置された。部隊は5名の探索隊員、およびサイト指令部に留まり局地的事象の変動を監視する補助隊員1名から構成されている。
[ログ開始]
Z9-Cap: こちらはオンライン。リンクしたら知らせて、サポート。
Z9-Sup: 今、確立しました。そちらのディスプレイに、相当正確「であると思われる」現地の地図を送っていますが―
Z9-3: それに頼ってはいけない、そういうことだな?
Z9-Sup: いつものようにな。そこにタイプ・グリーンがいることはほぼ確実だし、他にも化け物がいるようだ。
Z9-Cap: よし、指令部。まずは悪い知らせから聞かせて?
サイト指令部: 少なくとも1体、壁面に災害物を書き込む認識災害性実体が存在する。そちらのディスプレイは壁面に書かれたあらゆるメッセージをフィルタリングすることができ、この危険は無い。それ以外のことといえば、そこは収容のためのサイトということだ。
Z9-1: そいつは素晴らしい。
Z9-Cap: 各員、わかった?準備して、進入する。
Z9-3: イエス・メム。
(Z9部隊は主要建造物に進入するが、まずは上層階を捜索する。飛行無人機による観察では、これらの階は空である。以前の探索で使われた無人機の痕跡は無い。)
Z9-Cap: ここはクリア。こちらはどういう風に見えてる、サポート?
Z9-Sup: 安定しています、キャプテン。妙なところは何もありません。(沈黙)フォーにチャンネルの周波数を調整するよう言ってください、彼のモジュールへの接続に問題が出ています。
Z9-Cap: わかった。フォー、周波数をチェックして、ずれてるわ。
(部隊は中心階へ降りる。災害防止ディスプレイが機能しているか確認した後、部隊は業務用エレベーターではなく下への階段の方へ向かう。)
Z9-Cap: 今、下っている。いくらか例の泥が見えてきた。これがどこから来てるものかわかる?
サイト指令部: その混合物の一部は発電所の廃液だが、大半は血液とその他の膿のような生体残留物だ。どこから来ているのかについては、こちらも君と同じ程度の推測しかできん。
Z9-Cap: それを見つけるのが目的ということね。
サイト指令部: 目的の一つだな。
Z9-2: 思ってたほどはひどい臭いじゃないな。小銭みたいな臭いだ。
Z9-Cap: 全員、気を引き締めて。暗くなってきた。
(部隊はいくつかの階を通過し、Euclid収容棟の表示がある地下6階に到達する。Z9-Capはこの階に進入しようとする。)
Z9-1: 大量の遺体があるようです、キャプテン。
Z9-Cap: 見えている。人間じゃないものは?
Z9-2: 無いようです。しかしどれもブリーフィングで聞いていたとおりの外見ですね。顔から血を流してます。
サイト指令部: 各員、警戒しろ。
Z9-Cap: 了解。移動する。
(部隊はしばらく前進し、ほとんど何もないフロアを調査する。突然、ゴロゴロという音が聞こえる。全隊員が停止し、その音が止むまで待つ。そこで破壊音が響き、Z9-4が叫ぶ。)
Z9-Cap: いったい何?
サイト指令部: そちらの下からだ。構造的損傷はないか?
Z9-3: あるともさ。ランドール(Randall)の下の床が崩れた。あいつは俺たちの下に落ちた。ここから奴が見える。
Z9-Cap: フォー、聞こえる?
Z9-4: ええキャプテン。生きてますが、脚がだいぶひどいことになってます。起きられるかどうかわかりません。
Z9-Cap: わかった、そこにいて。これから迎えに行く。スリー、あなたはランドールとここにいて。ワン、ツー、私と来て。降りられる階段を見つける。
Z9-Sup: キャプテン、そちらの下で何か変動があるようです。聞こえていますか?
(Z9-Capは応答しない。サイト指令部もZ9部隊と連絡を試みるが、失敗する。部隊からの通信は継続して送られてきている。)
Z9-4: あいつらはどこだ?
Z9-3: 今向かってるところだ。
Z9-4: なあ、おまえはこっちに降りられないのか?
Z9-3: 俺の脚がいかれちまうよ。
Z9-4: だよな? 何かがここに降りてきてるような音が聞こえる気がするんだ。
Z9-3: (沈黙)何も聞こえないぞ。たぶん配管か何かの音だろう。
Z9-4: いや、間違いなく何かいる、これは―(沈黙)クソッ、ブレット(Brett)、這いずってきてる。ここに何か降りてきてる。
Z9-3: 待てよ、相棒。キャプテン、聞こえますか?(応答なし)キャプテン? ワン? ツー? 誰かいないか? くそったれ。
Z9-4: ブレット、くそっ、近くにいやがる。聞こえるぞ。(視界外の何かに)俺から離れやがれ、クソスライム野郎!(銃声)離れろって言ってんだ!
Z9-3: 撃つな、ランドール、おまえ―
(Z9-4が叫ぶ。Z9-3のカメラが黒い、ヒルのような、大人の腕ほどの長さおよび幅を持つ生物がゆっくりとZ9-4の方に動いていくところを捉える。Z9-4が無闇な射撃を続けたため、Z9-3はそれを避けるべく床の穴から離れる。突然銃声が止み、Z9-3は穴に振り返る。)
Z9-3: ランドール、なんてこった、俺は―
(生物はZ9-4の口に入り込み、ゆっくりと喉へと移動している。Z9-4のマイクはくぐもった叫びと、咀嚼するような低い研磨音を捉える。Z9-3は生物に武器を向けて発砲するが、Z9-4が痙攣したため失敗する。Z9-3は再び射撃するが、Z9-4の腕に命中する。)
Z9-3: ああくそ、くそっ、ああ―キャプテン! ランドールへの射撃許可を!
(応答なし)
Z9-3: ちくしょう、キャプテン! フォーへの射撃許可は?
(応答なし)
Z9-3: くそっ、くそっ、ランドール、俺は―
Z9-4: (窒息音)頼む。
(Z9-3は武器を上げZ9-4に発砲する。そのとき別の振動音が聞こえ、Z9-3の下の床が崩れる。Z9-3は下のコンクリートに落ち、続いて落ちてきた瓦礫に押し潰される。Z9-3のカメラおよびマイクが切断される。)
(Z9-4のマイクはさらに5分間、Z9-4の窒息音と嘔吐音を拾い、その後Z9-4は沈黙する。別のヒル型生物が彼の口から出現して姿を消す。Z9-4は立ち上がってZ9-3の武器を拾い上げる。Z9-4のカメラが切断される。)
注記: この時点で、Z9部隊は完全に音信不通となった。2名の隊員はKIA(戦死)と判定され、他の3人の隊員は行方不明とされた。通信途絶から3時間後、サイト指令部は監督指令部(Overwatch Command)にSCP-1730の全探索作業を完全に停止するよう要請した。その返答を待つ間に、Z9-1のマイクがオンラインに復帰した。
Z9-1: あれが見えなかったのか?
Z9-1: ああ、俺もだ。キャプテン?
Z9-1: あそこにいたんだ、あの壁に。もういないよな?
Z9-1: 開けてみよう。
Z9-1: もっと弾が要る。
Z9-1: 行ったみたいだ、ああ、だがここにいたくはないな、すると―
Z9-1: 下か?
Z9-1: 今いったい何階にいるんだ?
Z9-1: 15階までしかないものだと思ってたが。クソッ。
Z9-1: よし。
(Z9-4のカメラが突然オンラインになり、多数の小さな炎でぼんやりと照らされた広大な部屋を映す。映像の詳細な分析により、その小さな炎はすべて、壁の周囲に静かに立っている多数の人影の耳から発せられているものだと判明した。中心の穴には大量の小型生物に覆われているように見える大型生物がいる。これは低い光量のためかろうじて判別できる程度である。この生物の上にあるいくつかの大型の配管が切断され、部屋の中心部に水が流れ込んでいる。カメラが切断される。)
Z9-1: 「サイト-13に何が起こったか。(What happened to Site-13.)」。これで5回目にはなるぞ。
Z9-1: 知るもんか、俺はどう―
Z9-1: そうだな。
Z9-1: 待て。
Z9-1: ああ、俺もだ。そこから来てるぞ。
Z9-1: このクソはそこら中にあるぞ、クソ、見てみろ。
Z9-1: ドアを開けろ、あ―シィーッ。
(Z9-1は沈黙する。)
Z9-1: いや、俺は―
Z9-1: シィーッ、静かにしろ。上の階に戻ろう。
Z9-1: おい、誰だ?
(Z9-1のマイクが切断される。)
注記: 部隊全員が再び音信不通となり、サイト指令部はO5評議会からの確認が取れるまでSCP-1730の全探索作業の即時中止を命じた。4時間の通信途絶を経て、Z9-Capのカメラが送信を始めた。その直後にマイクがオンラインになった。
Z9-Capは非常に天井の高い部屋に立っており、なんらかの巨大で複雑な機械を見ている。彼女はその機械にゆっくりと近づき、バックライトスクリーンのついた入力コンソールらしきものに腰を降ろす。Z9-Capはスクリーンのすぐ上のラベルに積もったほこりを拭き取る。「スレッシャー(Thresher)」という単語がはっきりと見える。
Z9-Capの手がコンソールのキーボードに伸ばされる。マイクが別の遠くからの音、後に足音であると識別された音を捉える。Z9-Capは彼女の背後の暗闇に素早く振り向く。彼女が振り向くとき、彼女の肩に設置されたライトが彼女の背後にあった機械のどこかにぶつかり、消灯する。
足音が近づいてくる。Z9-Capの呼吸が荒くなり、暗闇の中を走り始める。彼女はつまずいて転倒し、音が近づいてくる。
Z9-Cap: やめろ、ファック、離れ―
(Z9-Capのカメラが切断される。Z9部隊からのさらなる通信が受信されることはなかった。)
ハドレー博士(Dr. Hadley)
ご覧のように、スレッシャー・デバイスへの電力供給はあなたの設計のとおりに調整してあります。あなたのご指示があれば、あの装置を起動するために必要な最大の55ギガワットまで原子炉を急速稼動させます。
以前の連絡で申し上げたように、原子炉はこれほどの電力サージには耐えられないでしょう。ボディ・ピット専用のコアには補強措置を行いますが、他の炉心には甚大な損傷が発生することが予想されます。
加えて、スレッシャー・デバイスの担当ではない私が言うことではないのでしょうが、あの装置はまだ非常に不安定です。小型の対象物への実験は推進されていますし、いずれは応用可能な技術の一つとなりうるでしょうが、現時点では本当の意味での最終的手段としてのみ捉えるべきです。あの装置の使用はこの周辺の局地的事象を不安定にします、それは装置が最終的にどこに向かうにしても同じことです。長くなりましたが、ご自身がなされていることの意味を理解しておられれば幸いです。
敬具
エンジニア242(Engineer 242)
親愛なるハドレー(340)博士殿
お便りは頂戴いたしました、私どもへのご連絡に貴重なお時間をいただき感謝いたします。貴方の要請を検討させていただきましたが、現時点では異動の承認はいたしかねます。サイト-13におられるということは、貴方がその専門分野における類稀な技術と適性を備えておられるということであり、我々に貴方を別のどこかに異動させるほどの余裕はないのです。お望みならばサイトの薬剤師に記憶処置剤についてご相談いただけますが、サイト-13からの異動を認めることはできません。
エマーソン管理官(Director Emerson)の死体処理プロトコルに関する貴方の懸念については、私どもとしても理解できます。しかしながら、あの種のアノマリー、特に「ヒューマノイド(humanoid)」と分類されるものは、人間ではないのだということをご理解いただかねばなりません。人間とは、非異常性の生命体の非常に限られたカテゴリーに分類される存在なのです。ヒューマノイド・アノマリーは人間に見えるかもしれませんが、「人型(humanoid)」であるというだけなのです。よって、彼らは倫理委員会によって人間に付与される権利と特権を享受することはできません。
我々の研究者としての職務はアノマリーがどこから来たのかを突き止めること、そしてどうすればそうした異常を人類の利益のために最大限に使役できるか結論付けることです。我々は守護者であり、その手の内にある脅威について知るべきことのすべてを知悉しない限りは、その務めを果たすことはできません。何を学ぶべきなのか学んだときこそ、我々はその脅威を消し去ることができるのです。
他にご質問がありましたら、ご遠慮なく私どもの事務所までご連絡ください。
敬具
ピーター・グレンウォルド(Peter Grenwald)
SCP財団倫理委員会委員長
世界オカルト連合倫理評議会議長
実験記録
実体-3421
責任者: ドクター1343(Dr. 1343)
実験目的: 危険な状況およびスクラントン-モリウス妨害装置(Scranton-Mollius Inhibitor Device)に曝露された際のクラスVIII実体の現実歪曲能力を確認すること。実験中、実体を再生するためにSCP-████を使用する。
実験1: 低温(-35C)への曝露
結果: 実体は気力を喪失し、敵対性が減少した。継続的な曝露の結果、外表部の体温の低下と皮膚層の崩壊が発生した。実体は継続的曝露後1時間で死亡した。
実験2: 高温(150C)への曝露
結果: 実体はすみやかに熱射病により死亡した。死体は全表面に熱傷の形跡があった。高温に晒されたことによる臓器の損傷が見られた。実体は自身の安全のために現実を改変することはできなかった。
実験5: 水中への没入
結果: [データが見つかりません]
メモ: 水はスクラントン-モリウス装置と干渉するようだ。
実験13: 電気への曝露
結果: 実体は自身の安全を確保できなかった。死体は再生不能となった。実体は焼却のためボディ・ピットへ移送された。
送信先: エンジニア242(Engineer 242)
送信元: エンジニア129(Engineer 129)
件名: 原子炉炉心の有害な毒素の処理について
ピットの排水の逆流防止についていくつか問題がある。排水は配管によって外部に流されることになっているが、空気取り入れ口から吸い上げられて原子炉へ逆流しているようなんだ。この物質はかなりの猛毒だ;清掃のために部下を送りたくはないな。原子炉をしばらく止めて、そこに行って手作業で清掃しなければ、そのうちに相当深刻な問題になるかもしれないぞ。
[データが見つかりません]
事案の概要: 実体はさらなる実験への協力に難色を示し、そのため電気的措置によりすみやかに終了されました。実体は焼却のためボディ・ピットへ移送しました。
エマーソン管理官からヒューマノイド収容棟全体の全面的な終了を求める追加命令が出されていることに留意してください。ご都合のつく時に進めていただければ、こちらもフロアの片付けを始めることができます。
敬具
ドクター790(Dr. 790)
[認識災害のため抹消]はいくらか粘っているようだが、オラトール(the Orators)による精神的圧力にまもなく屈することだろう。これは珍しいことではない;初期検査にやってきた実体の多くはさまざまな処置への曝露に対して抵抗してみせるが、ここで彼らに許された時間を超えて耐え抜くことはできない。実体は[認識災害のため抹消]について非常に面白い効果を持っており、顔、首、胸の上部と腕を取り除くことであの特性を再利用できるかもしれないし、[認識災害のため抹消]を使ってマークXIIにも適用することもできるだろう。急いでドクター874(Dr. 874)にこの知らせを送って、この計画を進展させるつもりだ。
敬具
ドクター720(Dr. 720)
送信先: ハドレー博士
送信元: エンジニア242
彼らは今日、あなたの血ヒル坊やをピットに降ろしていました。それに合わせて彼の終了記録は修正しましたし、排水がまだ阻害されていることも確認しました。彼についてあなたにどんな計画があるのか知りませんが、あの穴は今かなり有害な状態になっています。良い結果にはならないでしょう。

添付されたファイルと共に回収された画像。
エマーソン管理官
最初にこれだけは言っておくわ、あの番号制度はまったくのクソだったわね。研究者の人間性をすっかり奪いたいというなら、小部屋にでも詰めておけばよかった。番号制なんて初めからお話にならないものだったのよ。
これを読んでいるなら、あなたには決断すべきことが残っているでしょう。アノマリーたちの遺体をあの穴に投げ込んで、いったい何が起こると思っていたの? 彼らが生きていることそれ自体が彼らをアノマリーにしているのだとでも思ったの? 馬鹿ね、生きるということは我々人間のもっとも異常でない部分なのに。私はあなたもそれをわかっているのだと思っていた、でもあれから、変わってしまったのね。
収容違反は私の責任よ、あなたに嘘を言うつもりはない。仕事の中で、私はある幼い少年の分析をする機会があったわ。彼の名はエリヤ(Elijah)、彼は血液のみを糧とし、その口で他人の血を吸うことができた、相手の皮膚を通して。ヒルのようにね。彼には2歳児未満の知能しかなかったけど、それでもなお、我々と同様に生きる機会を与えられるべきだった。彼は今までとは違う道を選ぼうとしていた。
でもあなたは他の者たちにそうしてきたように、彼を焼くことを決めた。
だから私は彼の記録を書き換えた。あなたのあの穴の火は彼を焼くことはできなかった、ただ彼を駆り立てただけ。それと、あの泥の山を積み上げもしたわね? あなたはあれを掃除させたいと言っていた。あなたも喜んでくれることでしょう。あの場所はずいぶんとひどいことになっているから。
なんにせよ、あなたの決めることよ。収容違反は避けられないものだった、あの穴の底から這い出てきたものがそれをやるか、それとも私がこの手でボタンを押すか、いずれにせよ結果は変わらなかった。あなたは選ばねばならない;そのままでいれば、あなたが15年の間虐げ続けてきた怪物たちに間違いなく貪り食われるだろうし、あるいはスレッシャー・デバイスを起動して、あれが今よりも快適な現実へとあなたを放り投げてくれるのを祈ることもできるでしょう。いずれにせよ、私たちの世界はあなたとあなたの汚点を捨て去ることができ、よりましなものになるでしょう。
ここはあなたの死の収容所よ、エリオット(Elliott)。あなたは自分で墓穴を掘り、今その中で死ぬのよ。
敬具
ハドレー
追伸 この写真がいつ撮られたのか覚えていないかもしれないけど、それでも自分の顔はわかるはずよ。驚くほど多くのことが、このわずかな年月の間に変わってしまったとは思わない? すべてはあなたが地位を追い求めたため。信じられないほどにね。そこにそれだけの価値があったことを願うわ。
そうそう、もし私と話したいと思うなら、私はエリヤといっしょに地下にいる。いい具合に暖かい場所があって、彼が来たときのために準備しておいたの。ここは血でいっぱいになることでしょう。
2016年2月1日の朝に、監視装置によって次の音声伝送が傍受されました。伝送内容は声明と、それに続く暗号化された信号から構成されており、最初に検出されて以降繰り返され続けています。伝送内容は次からアクセス可能です。
[伝送開始]
こんにちは。
私はムハンマド・スコット博士。SCP財団サイト-13時間研究部門の研究員だ。
私と私のチームは、最近発生した詳細不明の破滅的事象によってサイト-13内で見捨てられた。
我々は敵対的実体と他の災害的異常存在に包囲されている。当初30名いたメンバーも、もう12名になってしまった。
この周波数を傍受している全ての財団工作員に支援を要請する。物資も弾薬ももうほとんど尽き果てている。助け無しには、我々は後1ヶ月も生き延びることはできないだろう。
このメッセージの後に、船舶位置情報周波数帯に調整して暗号化した、1980年代の標準的な財団技術で解読可能な情報を送信する。この情報の中には、我々が把握できる範囲でこちらの座標を記述してある。
送信機はデッドマンスイッチで私と直結されているから、メッセージは私が死ぬまで繰り返し送信され続けるだろう。
我々を助けてくれ。よろしく頼む。
[暗号化された情報]
[伝送終了]

SCP-1730研究エリアへのアクセス。
財団監視チームによって最近収集された情報を鑑み、サイト-13に再び探査回収チームを送り込むことは妥当だと見なされています。監督評議会指令によってSCP-1730の封じ込め手順は更新されました。現在機動部隊タウ-5("サムサラ")が運用される予定です。詳細は追って通知されます。
探索映像ログの書き起こし
日付: ████/██/██
探索チーム: 機動部隊アポロ-3 “猟区管理人”
対象: SCP-1730
部隊長: AP-3ロス(Ross)
部隊員: AP-3ヒューストン(Houston)/ AP-3ノア(Noah)/ AP-3オヘーロ(Ohalo)/ AP-3ヴィーゴ(Vigo)
[ログ開始]
AP-3ロス: 無線が繋がった、全員OKか?
AP-3ヴィーゴ: ちょっと待ってください。
サイト司令部: 突入まで60秒。
AP-3ロス: コピー。ヴィーゴ、大丈夫か?
AP-3ヴィーゴ: ええ、繋がりました。
AP-3ロス: 全員準備できたか?
AP-3ヒューストン: できてるぞ。
AP-3ロス: よし、落ち着いていけ、ライトを絶やすな、何か怪しいものが見えたら、バイザー2をONにして皆に気をつけるように言え。この場所の内部トポグラフィーは不安定なことを忘れるな。はぐれる可能性は高い。その場合には、安定化するまで待機しろ。誰かが迎えに来る。誰も応答しなかったらブロードキャスターを使え、動くものは何でも撃て。(間)仲間じゃなければな。
AP-3ノア: じゃあ常に撃ちますよ。
(チームは笑う)
サイト司令部: 突入まで30秒。
AP-3ロス: ヒューストン、お前が先導しろ。情報によると、この入口はとても長い階段に続いているが、底に達するまでドアはないはずだ。底までは幾分安全なはずだ。わかったか?
AP-3ヒューストン: 了解。
AP-3ロス: 他に質問は?オヘーロ、黙っているが解ってるか?
AP-3オヘーロ: 問題ありませんボス。
AP-3ロス: オーライ、いいぞ。
サイト司令部: 突入まで10秒。
AP-3ヴィーゴ: 始まります。
間
サイト司令部: 猟区管理人、作戦開始。
AP-3ロス: 始めるぞ。
チームはSCP-1730に入る。予想されたとおり、入ってすぐの空間は長い下り階段となっている。AP-3ヒューストンが先導する。
サイト司令部: チーム、我々は君たちをここからモニターしているが、何か予想外のものを確認、経験した場合は伝えてくれ。
AP-3ロス: コピー。
チームは3分間降下する。SCP-1730の内部は照明がなく、MTF AP-3の肩に装着されたライトのみに照らされている。
AP-3ロス: 視界はどうだ?
AP-3ヒューストン: 良好だ、我々— (間)ここにドアがある。踊り場のところ。
AP-3ヴィーゴ: 私にも見えます。
AP-3ロス: オーライ、よくないことだが。オヘーロ、ノア、通り過ぎるときにそれから目を離すな。油断するな。
チームは踊り場で立ち止まる。ヒューストンがドアを開けようとするが、施錠されている。
AP-3オヘーロ: ドアの下に風の流れがあります。塵の舞い方を見てみましょうか?
AP-3ロス: ああ、ヴィーゴ、サーマルカメラを見てみよう。
AP-3ヴィーゴ: 了解。ちょっと待ってください。(間)こちらです。
10秒沈黙
AP-3ロス: ああ、だめだ、 [通信沈黙] 何も見えない。先へ行こう。
サイト司令部: チームリーダー、聞こえるか?問題ないか?
AP-3ロス: ああ— ああ、問題ない、下降を続けている。
サイト司令部: 了解、少し沈黙があったのでな、大丈夫か確認したかっただけだ。
チームは3分間下降を続ける。
AP-3オヘーロ: ライトだ、見てください。
AP-3ロス: ああ、コマンド、前方に光がある。出口かもしれない。よく見ておけ。
チームは更に2分下降する。
AP-3ノア: クソ。
AP-3ヴィーゴ: うわ、何だこりゃ—
AP-3ロス: クソ。オーライ、コマンド、階段の底は消失している。見えていた光はどこから来ていたのかわからないが、あと3段で虚空だ。底は見えない。
サイト司令部: コピー。落ち着け、我々にも見えている。
AP-3オヘーロ: 何か落としてみたらどうです?どれくらい深いか見てみます?
AP-3ヴィーゴ: よく見えますけど、永遠につづくように見えますね。
AP-3オヘーロは肩をすくめる。
サイト司令部: 猟区管理人、引き返せ。別の突入地点を探してみよう。
AP-3ヒューストン: クソ。
AP-3ロス: オーライ、これから—
AP-3ヴィーゴ: ロス、見てください。これは虚空じゃない、液体です。全く光を反射しないだけです。ピッチみたいな黒さです。
AP-3ヒューストン: 水かなにかに見えるな。
AP-3ロス: ちょっと待て。(間)ああ、いずれにせよこいつとファックはできないな。コマンド、この階段の底までどれくらいだ?
サイト司令部: 待ってくれ。(沈黙)君たちは予想される階段の終わりから15メートル下にいる。
AP-3ロス: すごいな。ここのトポグラフィーはおかしい。戻って別の出口が見つかるかどうか見てみよう。
サイト司令部: チームリーダー、ちょっとその場に留まってくれ。君たちの場所を検出してみる。
AP-3ノア: ヘイ、チーフ。
AP-3ロス: ちょっと待て。
AP-3ノア: いや、見てください、あれは—
AP-3ロス: 黙ってくれ、今—
AP-3ヒューストン: ファック、上がってきてる。
AP-3ロス: クソ、オーライ、全員戻れ、ファック。
黒い液体がMTF AP-3の背後で急速に盛り上がり始める。チームは比較的無口で素早く階段を登る。
AP-3ヴィーゴ: 追いつかれそうです、ファック、急いで。
AP-3ヒューストン: ジーザス、俺—
AP-3オヘーロ: ヒューストン!掴んで、ロス、助けてください!
AP-3ロス: クソ、離す—
AP-3ヒューストン: 脚が!ファック、ファック、ファック、俺の脚、俺—
AP-3ノア: ドアがあるぞ!急げ!
AP-3ロス: 踏ん張れ。
チームは次の踊り場のドアに入る。ドアが乱暴に閉められる。
AP-3ノア: ジーザス、脚はどうなった?
AP-3ロス: クソ、ヒューストン、大丈—
AP-3ヒューストン: あ…ああ、待て。
AP-3ヴィーゴ: 何です?
サイト司令部: 何が起こった?聞こえるか?
AP-3ロス: ああ、すまないコマンド、あっと言う間だった。ヒューストンが足を踏み外して脚があの…モノ…に覆われて、消えちまった。スッパリと、はじめから無かったみたいに。
AP-3ヒューストン: まだ感じるんだ、皆。まるで、(間)無くなってるのは見りゃわかるが、痛みもない、立てそうな気もする。
AP-3オヘーロ: 何ですそりゃ。
AP-3ヒューストンは立とうとする。彼の両脚は膝下から失われているが、まるで消失した部分がいまだ存在しているかのように浮かんでいる。AP-3ヴィーゴがヒューストンの脚の下に手を入れると、全く障害なく空間を通り抜ける。
AP-3ノア: おぅ。
AP-3ロス: オーライ、まだあるってことだ。痛むか、ヒューストン?
AP-3ヒューストン: 普段と変わりない。
AP-3ロス: オーケー、それはイカしてるな。コマンド、これに関して何かわかるか?
サイト司令部: ネガティブ。
AP-3ロス: オーライ。では進むぞ。コマンド、ここはメンテナンス用の通路か何かみたいだ。天井や壁をパイプが走っていて、ゲージもある。やたら暖かい。
AP-3オヘーロ: あそこの壁、「サイト-13に何が起こったか?」
AP-3ロス: ここの壁に繰り返し書いてあるな。コマンド、あれはミームじゃないのか?
サイト司令部: 違うな。研究によるとそのフレーズに異常な効果はない。だがなぜあちこちにそれが見られるかもわからない。
AP-3ロス: わかった。ここを進む。
チームは4分間沈黙する。この間、AP-3ノアのカメラが突然切断する。このことはすぐには部隊に伝えられなかった。
AP-3ヒューストン: 何かが前方にある。見えるか?角のところ。
AP-3ヴィーゴ: 人間ですか?
AP-3ロス: 警戒して近寄れ、セーフティを外せ。
チームは静かに目標に近寄る。目標に達すると、ビデオフィードは激しく損傷し、腐敗した、年齢不詳で、部分的に背後の壁と融合した人間の死体を映す。天井や壁がお互いに引き合っているように見える、幾つかの他の空間の歪みが周辺に見られるが、それらはAP-3には気づかれない。
AP-3ロス: ああクソ、やっと見知った顔に会えたな皆。ザカリーだ。
AP-3オヘーロ: 神に感謝します。どうやってここに来たんだい君?
沈黙
AP-3ヒューストン: 俺たちもな。この場所はクソだ。俺の足を見ろよおい。このクソをよ。
サイト司令部: チームリーダー、君たちは強力な認識災害の影響を受けている。スクランブル・バイザーのフィルターをアップデートする、少し待て。
AP-3ヴィーゴ: いや、コマンド、何もおかしくないです。これはザカリーです。そして退却する途中です。そうでしょう?
AP-3ヴィーゴはふざけて死体をパンチし、顎が外れる。死体は応答しない。
AP-3ロス: ザカリー、俺たちはここに閉じ込められた他の奴らを探している。もっと深いレベルに行く道を知らないか?
沈黙
AP-3オヘーロ: クソ。
AP-3ロス: オーケー、オーケー、下のそれは何だ?
沈黙
AP-3ロス: ほうほう。
沈黙
AP-3ヒューストン: クソ、彼は正しいぞ。ノアはどこへ行った?
チームは振り返る。AP-3ノアは見えない。
AP-3ロス: ああクソ、ザカリー、ここにいろ。ノア、聞こえるか?(間)ノア、こちらロス。聞こえるか?(間)コマンド、ノアは一体どこだ?
サイト司令部: わからない、チームリーダー、アップロードが終わった、バイザーを再起動してフィルターを有効にしろ。
チームはバイザーを再起動する。
AP-3ロス: よし行くぞ。一体これは—うお、グロい。コマンド、壁の中に死体がある。融合しているように見える。バイザーも激しくチカチカしている。
サイト司令部: 了解した。チームリーダー、進んでくれ。
AP-3ヒューストン: 待て、見ろ、後ろだ。揺らめいているのが見えるか?
AP-3ヴィーゴ: ガスか?ガス漏れみたいに見えます。
AP-3オヘーロ: ああ、ファック、見てください、床です。後ろを見て、ファック。ファック!
AP-3ヒューストン: クソ、ノア、クソ—
MTF AP-3に、揺らめく、透明な、この領域の空間異常の源に見えるヒューマノイド状の構築物が接近している。その脚が床に着くたびに、床はその周辺の空間をワープし、実体が通り過ぎると安定化する。MTF AP-3ノアがとらわれている空間異常は極度に重度のもののようで、彼の姿は殆ど見えないため、彼の詳細は不明だが、彼は実体の背後にぶら下がって見える。ノアは少しずつ動こうとしているように見えるが、アノマリーが動くたびに拗じられ続けている。
AP-3ロス: クソ、撃て、畜生。撃ちまくれ、クソ!
MTF AP-3は実体を射撃する。銃弾が近づくとその軌道は偏向し、捻じれて実体の周辺をスピンし、床に落ち天井に刺さる。
AP-3オヘーロ: チーフ、効果ありません。我々—
AP-3ヴィーゴ: 腕が!クソ!
AP-3ヴィーゴは振り返り見えない力に抗っているように見える。AP-3オヘーロのカメラからは、長く揺らめく透明な付属肢が、動くに従いその近くの壁を歪めながらAP-3ヴィーゴに伸びているように見える。それはAP-3ヴィーゴの左腕を包み、腕は視覚的に歪んでいる。ヴィーゴは叫ぶ。
AP-3ロス: ヒューストン!アンカーだ!
AP-3ヒューストン: ああ、了解!
AP-3ヒューストンは小型のポータブルスクラントン現実錨を取り出し、実体に向け投げつける。赤い光がフラッシュし、一瞬の間実体は極度に損傷し、グロテスクに引き伸ばされたヒューマノイドとして視覚化するが、次の瞬間には、それを取り巻く空間の歪みがアンカーされ乱暴にリセットされ、強い衝撃波が狭いスペースに吹き荒れるとともにヒューマノイドは消失する。チームは一瞬で無力化される。
AP-3ヴィーゴ: うう、俺の腕が…
AP-3の左腕は明るい赤色をしているが、それ以外には損傷していない。AP-3オヘーロがそれを調べる。
AP-3オヘーロ: 色はそのうち戻る。ただのアンカーのクールダウンだ。大丈夫か?
AP-3ヴィーゴ: ああ、大丈夫です。ありがとう。
AP-3ロス: ジーザス…ノア?ノア、そこにいるのか?
沈黙
AP-3ロス: 誰かノアを見たか?
AP-3ヴィーゴ: ロス、ここです。壁に…
埃が晴れるにつれ、AP-3ノアが見える。部分的に壁、天井、床に10メートルに渡って融合している。エージェントは動かない。
AP-3ヒューストン: (えずく)
AP-3オヘーロ: (よく聞こえない呟き)
AP-3ロス: 神よ…コマンド、聞こえるか?ハロー?
サイト司令部: 聞こえるぞ、チームリーダー。
AP-3ロス: ノアを失った。奴は…壁の中にいる。まだ進むか?
サイト司令部: 少し待て。
沈黙
サイト司令部: チームリーダー、ミッションの進行と、地表へ戻ることのどちらが危険と思われるか?
AP-3ロス: お—俺にはそれを知る方法がない。何がここにいるのかわかる手段がない。ここの何もかもがファックで信じられない。そもそも戻ろうにも戻れるかすらわからない。他のチームがそうだったようにな。戻れた奴らがいるのか?
サイト司令部: その通りだな。
AP-3ロス: (間)正味の話、ここで何が起きようとも、戻る道で出会うものより悪いってことは無いだろう。多分違いなんて無い。(間)何にせよ、進もう。
サイト司令部: アファーマティブ。チームリーダー、君たちが目標に接触した場合に、君たちを脱出させるためのもう一つのチームが編成中だ。突入は4時間以内に行われる。
AP-3ロス: ここにもう一つ機動部隊を送るってのか?このギグに志願するような馬鹿はどこのどいつだ?
サイト司令部: サムサラ。
AP-3ロス: オゥ。(間)オーライ、クールだ。了解した。
チームは少しの間特に障害なく進行する。彼らは荒らされた医務室、溶けてスラッグとなったカフェテリア、体長100m以上の「オリンピア級」と同定された収容ユニットのウイングといった、いくつかの他のエリアを通過する。やがてチームはメイン通路を抜け通信センターと思われる部屋へ入る。彼らから見て反対の壁に一つのモニターが灯っている。
AP-3ヒューストン: これは奇妙だな。
AP-3ロス: 落ち着いていけ。何か使えそうなものがないか部屋を捜索しろ。
AP-3ヴィーゴ: ここらの端末は電源が来てますね、バックアップを見てみます。
部屋の反対側で静電気のような音がする。オヘーロとヒューストンが灯っている画面へ向かう。
AP-3オヘーロ: 何かが中継されているのか?
画面がチカチカとして、映像が出現する。通常型の収容セルの内部が映っているが、設備や快適装備はない。カメラの背後の赤いライトが一つ灯っていて、空間を僅かに照らしている。隅に長い人影がある。
AP-3ヒューストン: ちょっと待て、こいつは…?
AP-3オヘーロ: ホーリーシット、これは。
AP-3ロス: 何だ?
AP-3ヒューストン: クソピエロのボブルだ。
名前が出ると、部屋の隅の人影がカメラを見る。
不明な実体: 何だい?何が欲しいんだい?誰だい?
AP-3ロス: ジーザス。俺の名はカーター・ロス、ここへは—、まて、本当は、お前は誰だ?
実体は横を向き、その体が闇を通して少しだけ見やすくなる。実体の詳細はほとんど見えないが、赤い光がその目を照らしている。
不明な実体: フーーーーーーム…キミは違うね。キミからは違う臭いがする。ボクがここからも鼻が効くって、キミも知ってるだろう?知らないのかい?でもアイツらは知っていたよ。アイツらとキミは違うね。アイツらはそれを突き止めるためにずいぶん頑張ったよ。アイツらは知っていた、アイツらは知っている、アイツらは知るだろう、ンンンンン。
AP-3ロス: お前はピエロのボブル、そうだな?
実体は収容セルの壁をゆっくりと横切り、赤い光の届く外へ移動する。その動きは明らかに奇妙だ。それはカメラの近くへと来る。
不明な実体: ボクがボブルだった頃、アイツらは一度はボクに番号を与えたよ。でもキミのお友達は番号が嫌いだった。ボク達を番号で区別するとは言ってたけどね。フーーーーーーム…ボクはボブルじゃない。でもかつてボブルであったモノだ。(間)キミはあるべき場所にいないね、鉄砲くん。キミはここの空気にマッチしてないよ。キミは場違い、ボクみたいに。ボク達みたいにね。
AP-3ロス: フン、そうか。ここに何が起きた?
不明な実体: エマーソンパパはこの世界を編んでる糸でちょっとしたトリッキーなゲームをプレイしたのさ。タイトロープみたいにその上を渡って、落っこちて驚いたみたいだね。トリッキーな小さなエマーソンくんは、ただ箱が欲しかったわけじゃない、ノンノンノン、アイデアが詰まった箱が欲しかったのさ。痛み、恐怖、死みたいなアイデアだね。彼はそういう箱を糸の上に積むために頑張って、それで全部を壊したのさ。それで僕らも彼と一緒にオシマイってわけさ。(笑う。それは次第に小さくなる。)
AP-3ロス: 他にどれくらいの実体がいる?他のものについて知っているか?
不明な実体: どれくらい、ヘヘヘ、どれくらいの実体がサイト-13に飲み込まれたのかな?(笑う)おバカなおバカな場違いなキミ、おバカな小さな子。全てがサイト-13に通じてたのさ。財団が何かを見つけ、連合がそれを捕まえたときには、この下の肉挽き機に食べられたのさ。何もかもね。何も得られなかったら埋めて隠してオシマイ。ちょっと運がいいと、ボブルみたいに運がいいと、おもしろ箱に詰め込まれて遊ばれるのさ、おもちゃにされるのさ、実験されるのさ。どんな声で死なせてって言うのか聞くためにね。他のはそんなに運が良くなかった。(間)キミも知っての通り、アイツらは書庫を燃やした。スープの缶みたいに全部を逆さまにして中身をカマドにブチ撒けて、全部を燃やしたのさ。アイツらは他にもやったよ。もっと悪いことをね。エマーソンパパはそれが好きだった。彼はいつも見てたよ。見るのを楽しみにしてたね。(唾を吐く)
AP-3ロス: もっと悪いこととは何だ?
不明な実体はカメラに近づき、赤い光に照らされて全身が映る。動くにしたがって、体の大部分がビデオノイズに歪められる。そのノイズは実体の組織に切り込み、黄色い液体を滴らせる切り傷を作っているように見える。動くに従って実体の一部が剥がれ落ちていき、ノイズに置き換えられる。カメラに近づく頃には、その顔の半分が剥がれ落ち、片目はノイズで隠されている。
不明な実体: 悪いことはなんでも。
AP-3ヴィーゴ: チーフ、無線に何か感知しました。生存者の信号だと思います。我々は近づいています。
AP-3ロス: (間)オーライ、進もう。
不明な実体: 楽しんでね、みんな。死の虫に噛まれちゃダメだよ。(笑い)もし下でエマーソンパパに会ったら…(間)ボクのために死ぬまで彼をレイプしておくれよ。
AP-3チームは通信室を出てメイン通路に入る。AP-3ヴィーゴが発見したシグナルの強度から判断すると、彼らは今は無きサイト-19の低温学Y-ウイングで使われていたものに似た、冷凍収容ユニットの近くにいると考えられる。彼らがこのエリアを通過する間、司令部はチームのメンバーの信号をロストし、間欠的なノイズのみが聞こえる。信号が再度受信されるまでこれが30分続く。
AP-3ヒューストン: コマンド?コマンド?そこにいます?聞こえますか?
サイト司令部: ヒューストン?聞こえている、無事か?全員無事か?
AP-3ヒューストン: ああクソ、神よ感謝します。我々はずっと通信を試みていました。ええ、生存者を発見しました。彼らはここの…何というべきかわからないんですが、この場所に潜んでいました。でも居住に適した場所ではないです。20人、いや30人くらい?います。我々のエージェントも何人か見つけました。メクラネズミと、トラベラーズの連中です。彼らは全員ここにたどり着いてました。
サイト司令部: 脱出の準備はできているか?
AP-3ヒューストン: ええ、そうです、それで…これは我々が予想していたような展開じゃないと思います。見込んでいたより遥かに悪いです、コマンド。彼らがそもそもどうやって閉じ込めていたのかもわかりませんが、全ての収容セルが壊されて開放されていることは確実に言えます。このクソは現実です。紛れもない現実です。近くの通路でずっと物音が聞こえます。俺たちを探してるのが何であれ、そいつらはとても怒っています。もし見つかっても、そいつらを倒して、ここの人たちを脱出させるための弾薬がありません。
サイト司令部: ロスはどこだ?
AP-3ヒューストン: 彼は奴らが今夜来た時に備えて、他の人達と一緒に防御陣地を構築しています。良い状況には見えません。バックアッププランがあるのかわかりませんが、どんなアイデアでも受け入れますよ。
サイト司令部: 今までどれくらいそこにいた?
AP-3ヒューストン: ええと…(間)おそらく3日間ですか?
サイト司令部: アファーマティブ、アポロ-3チーム、救助と回収のためにタウ-5を起動し突入させる。
AP-3ヒューストン: 了解。彼らに急ぐよう言ってください。
救出・回収映像ログの書き起こし
日付: ████/██/██
探索チーム: 機動部隊タウ-5「サムサラ(SAMSARA)」
対象: SCP-1730
部隊長: T-5イラントゥ(Irantu)
部隊員: T-5ムンルゥ(Munru)、T-5オンルゥ(Onru)、T-5ナンクゥ(Nanku)
覚書: 以下は、機動部隊AP-3「猟区管理人」がSCP-1730内部の生存者に接触した後、機動部隊タウ-5「サムサラ」のメンバーにより実施された救出・回収ミッションの音声/映像の書き起こしである。AP-3チームはサイト内部に多数の敵対的実体が存在するため、生存者救出における支援を要請した。
MTFタウ-5の各構成員は各自の仕様に基づき、腕部装備型焼夷キャノン、衝撃吸収拡張脚部、耐熱プレート、眼内埋込み型スクランブル装置、その他の多数のサイバネティック強化装備を装備していた。
タウ-5の突入地点はAP-3チームの突入した第二エントランス近くの排水ゲートだった。
[ログ開始]
T-5イラントゥ: プラグインした、サイトコマンド、聞こえるか?
サイト司令部: 聞こえるぞ。突入まで60秒。
T-5ナンクゥ: それで、このミッションはどれくらい危険と思われるの?
T-5ムンルゥ: 今のところ送られて帰ってきた奴はいない程度だな。相当ってことだ。
T-5ナンクゥ: 了解、それは面白そうね。
T-5イラントゥ: チーム、視覚装備をチェックしてくれ。ミーム災害にやられる奴を出すのだけは避けたい。
T-5ナンクゥ: 了解(間)いいわ。
T-5ムンルゥ: 俺も良し。
T-5オンルゥ: 良好。
T-5イラントゥ: よし、我々の任務は生存者の救助だ。何かを収容する予定はない、だから何かアレなものが見えたら始末しろ。
T-5ナンクゥ: いつもみたいにね。
T-5ムンルゥ: 念押しする必要ないだろう。
サイト司令部: チーム、突入まで30秒。
サイト司令部: 突入まで10秒。
サイト司令部: タウ-5、救助・回収を開始。
T-5イラントゥ: 行くぞ。
T-5チームは第二オフィスビル下の廃液ゲートに入る。各チーム員は肩に装備したランプを点灯し、トンネルを照らす。少しして、チームはもう一つの扉に到着する。ゲートの後ろに何本かの太い廃液パイプが見える。
T-5ムンルゥ: 見ろ、死体だ。ゲートに押し付けられている。
様々な破壊の程度を示す、20体以上の焼け焦げたヒューマノイドの死体が扉の下部に押し付けられている。何本かの腕が格子を抜けてトンネルに向けて伸びている。
T-5ナンクゥ: これは…凄い焼けてる。どこから来たと思う?
T-5イラントゥ: 難しいな。この状態ではどの程度の距離を移動してきたのか想像もできん。
T-5ムンルゥ: この近くに焼却炉がなかったか?例のボディ・ピットの近くだと聞いているだろう?彼らはそこから来たのかもしれない。
T-5ナンクゥ: 焼却炉?
T-5イラントゥ: 調べ始めるにはいい場所だな。あのパイプに入ってみよう。
T-5チームは扉を切断し、その後ろの壁をよじ登り3本の廃液パイプのうち最も太いパイプに入る。チームは少しの間進む。
T-5オンルゥ: 温度が上昇。
T-5イラントゥ: 俺も気づいた。近づいてるんだろうな。
T-5ムンルゥ: 下降もしている。(間)おかしい、廃液パイプってのは入れるものじゃなくて出すものだろう?
T-5ナンクゥ: もしかしたらだけど、トポグラフィー異常の影響かもしれない。
T-5イラントゥ: それっぽいな。
T-5オンルゥ: イラントゥ、ここの壁は脆い。反対側で音が響いてるのが聞こえる。
T-5イラントゥ: 向こうに何がある?
T-5オンルゥ: ちょっと待って。(間)通路、だと思う。
T-5イラントゥ: わかった。(間)オーライ、二手に別れよう。ムンルゥ、お前とナンクゥはこのトンネルがどこへ続くか見てくれ。オンルゥと俺はこの壁を抜けて向こう側を探索する。
T-5ナンクゥ: で、私達が殺られたらどうするの?
T-5イラントゥ: 殺られるな。
T-5ナンクゥ: 了解。
T-5チームは分割し、T-5ナンクゥとムンルゥは排水パイプを熱源に向けて進む。T-5イラントゥとオンルゥは薄い壁を抜けて通路へ出る。
イラントゥとオンルゥは排水パイプと通路の間の壁を破壊する。通路からは薄暗い天井ライトに照らされたいくつかの簡素なオフィスに繋がっている。エリア全域はしばらく前から遺棄されているように見える。イラントゥとオンルゥはエレベーターか階段を探すが何も見つからない。
少しして、オンルゥはコントロールルームへとつながるドアを発見する。大きなガラスの監視窓が何らかの暗い色の物質でよく見えなくなっている。その部屋のコントロール機器の多くが破壊されている。
T-5オンルゥ: ここは焼却炉のコントロールルームみたい。見て、あそこに「焼却炉#1」と書いてある。その下は、ええと…「下部にボディ・ピットへのアクセス」。
T-5イラントゥ: コントロールルーム付きの炉なんて聞いたこと無いな。窓を塞いでいるのは何だ?ブラストシールドか?
T-5オンルゥ: 違う。(間)違う。(窓に近づく)これは死体。ガラクタ、廃棄物。凝集して固着してる。見て、顔がある。
T-5イラントゥ: ああ、そうだな。(間)情報によるとエンジニアたちがここから出る廃液パイプを塞いだそうだ。ナンクゥとムンルゥは多分それにぶつかるな。(間)ここから下へ行く道が他にもあるんじゃないか。焼却炉を抜けて下に行けるかもしれない。
T-5オンルゥ: ちょっと待って。
オンルゥは監視窓の近くの比較的ダメージの少ないコントロール機器に近寄り眺める。その間に、ナンクゥとムンルゥがドアから現れる。
T-5ムンルゥ: 塞がれていたぞ。パイプの終わりで何かがスラッグになっていた。突き破ろうとしたが凄く厚い。
T-5ナンクゥ: 手を折ってしまったわ、見て(手を見せるが、損傷していない)いや、折れていたって意味。
T-5イラントゥ: 静かに、オンルゥが何か調べて—
T-5オンルゥ: わかった。
オンルゥが大きなスイッチを押し、幾つかの近くのノブを回す。巨大な呻き声のような音がして、窓を塞いでいた物質がゆっくりと回り出す。
T-5ナンクゥ: 面白いわね。
何かが崩壊して外れるような衝撃があり、内容物は急速に回り出し減っていく。タービンが回る音が別に聞こえる。チームの体内温度計が熱により安定した上昇を見せ始める。
T-5ムンルゥ: 減っていくぞ。見てみろ、見えるか?
窓を塞いでいた物質はなくなり、直径最低でも300m、深さおよそ400mの巨大な円筒形のチャンバーを映す。チャンバーの中央には巨大なシャフトがあり、幾つかの巨大なタービンが取り付けられチャンバーの高さ全体に伸びている。タービンが回るにつれ、チャンバー内の物質は懸濁液になっていく。チャンバーの頂上近くにはいくつかのパイロットライトがあり、チャンバーの外周には大きな穴がいくつも開いている。
T-5オンルゥ: オーライ、それじゃあ…
オンルゥがもう1つのスイッチを押すとパイロットライトが灯る。膨大な炎の流れがチャンバーの天井から降り注ぎ、下の物質を焼く。追加のジェット火炎流がチャンバーの壁から放射され始める。
T-5イラントゥ: 見ろ、底の近くに水門みたいなゲートがある。ここから出られそうだ。あそこだ、見えるか?あれを開けられるか?
T-5オンルゥ: ええ、(間)できた。
ピットの底近くだが、内容物よりは上の大きな円形のゲートが開く。
T-5ムンルゥ: いいぞ、しかしどうやったらあそこに行けると思う?パイプはブロックされて—
ナンクゥは腕を伸ばし、手首に装備された投射武器を目の前のガラス窓に数発発射する。ガラスは割れて砕け、チャンバーの熱気が部屋に流れ込む。
T-5ムンルゥ: 率直だな。
T-5ナンクゥ: 微力を尽くしたわ。
チームは焼却炉に入り、もう1つの廃液パイプの近くの棚に飛び降りる。チームは回転するブレードやいまだに減り続ける生物由来の懸濁液を避けながら広大なチャンバーを進む。
T-5ムンルゥ: この場所、何か嫌な感じがするな。
T-5ナンクゥ: うん?
T-5ムンルゥ: ああ、実際。(ナンクゥに視線を投げかける)この中身は全部どこかへ、側溝のどれかから、多分俺達の下へ排出されるはずだろう?
T-5イラントゥ: 俺達にはそれを見つける時間がない。このパイプを通ってその先どこへ行くかを見よう。
チームは開けたゲートへ入り廃液パイプを少しの距離降下し、巨大な水槽へ出る。水槽は巨大で生い茂っている植物状の構造物に照らされている。
T-5ナンクゥ: 面白いわね。これは何だと思う?
T-5オンルゥ: これは—(間)わからない。
彼らの声に反応して、構造物はゆっくりと震え始め、数千の成長し、回転する脚が体部から放出される。これらが降るに従い、水槽全体が明るく照らされる。
T-5ムンルゥ: 見ろ、影だ。
伸びる脚は水槽の壁に、異様な動き方をするぼんやりとした複数のヒューマノイドの影を作る。これらの影は手を前方へ、まるでチームの方へ伸ばしているようにみえる。脚が懸濁液に着くと、光と影は消える。
T-5イラントゥ: オーライ、どちら側へ進む?
T-5ムンルゥ: これは焼却炉から出てきている廃液パイプだ。焼却炉は東側の複合体へ伸びる発電所の地下にある。考えられる限りは、ここから北西に進む必要があるから…(間)待て、あそこを見ろ。
T-5ナンクゥ: 何を?
T-5ムンルゥ: 壁だ。何かが滲み出ている。前からあったか?
T-5オンルゥ: なかった。
T-5イラントゥ: (壁に近づく)黒くてテカっている。間違いなく滲み出ている。何かが押し出ようとしてる。
T-5ナンクゥ: どういう意味?なにそれ?排水?
T-5ムンルゥ: そうじゃなさそうだ。多分反応炉から出てきてる。あるいは—
T-5オンルゥ: (壁に近づく)違う。これは血。ヒル。
T-5イラントゥ: 何だって?
T-5オンルゥ: 見て。
オンルゥは肩に装備したランプに照らされた壁の一点を指差す。その点では、濃厚な黒い液体の流れが壁の亀裂から滲み出ており、亀裂の中で何か小さなものが身を捩っている。チームはその一点へズームする。小さなのたうつヒルがその一点から出てきて地面へ落ちる。
T-5ナンクゥ: フン。ヒルね。これは何を意味するの?
T-5ムンルゥ: 良いことではないな。
小さなヒルは彼らの足元で生物の懸濁液へと移動し、それを吸い込み始める。それにつれて、ヒルは次第に大きくなり始める。
T-5オンルゥ: その上、壁の中、あそこ、出てくる。
チームは壁を振り返る。その壁の表面の幾つもの亀裂から黒い液体が染み出している。それらの亀裂を抜けて何匹かの小さなヒルがよじり出て来る。
T-5イラントゥ: オンルゥ、何が見える?
T-5オンルゥ: (間)下になにかある。巨大で、人の血に覆われてる。こちらへ向かってくる。指みたい。ホストに繋がってる—(間)ヒルを持ってきて。
T-5ムンルゥ: 何だって?
T-5ナンクゥ: 冗談?
T-5オンルゥ: 違う。一匹持ってきて。彼らはテレパシーを使う。そうやって連絡しあってる。ヒルが必要。
イラントゥが部屋を横切り地面のヒルをつかむ。液体から引き離される時にそれは暴れ身を捩り、彼の手からいくつか大きな肉片を齧り取る。
T-5イラントゥ: キモいな。(立ち止まってヒルを眺める)ほらよ。
T-5オンルゥ: オーライ、少し待って。
オンルゥは左手をヒルへと伸ばす。手は展開し何組かの長く、繊細な、先端の尖った金属の棒へと分割する。彼女はヒルの肉、脳の近くへとその棒を刺し込む。
T-5オンルゥ: あった。見る。(間)彼らは焼却炉が起動したのを聞いた。空腹で、ここへ食べに来た。沢山。ホストはこの下にいる。でも深くて見えない。(間)実体のネットワーク全体の神経活動が見れれば、彼らのいるエリアのマップを把握できる。できるかどうかやってみる。(間)行きましょう。みんなの網膜に全部映ってるはず。
T-5イラントゥ: クレバー。
T-5ナンクゥ: 今見えてるのが地図?地図と言うには歪みすぎてるけど。
T-5オンルゥ: トポグラフィーの変化が進行中。サイトの構造は変化してるけど、サイトはまだこの局所現実に存在する。ただ不安定なだけ。
T-5ムンルゥ: スレッシャー・デバイスがどこにあるかわかるか?
T-5オンルゥ: 多分このセクションに関連してる。ここ、このマップに示された根拠に基づく論理上の構造デザインプランを見て。ここに追加のウイングがまるまる一つある?でもそこにはヒルは全くいない。(間)ここ。そのエリアに配管が走ってるのが見える。そこがスレッシャー・デバイスのありか。
沈黙
T-5イラントゥ: 我々の回収目標は?
T-5オンルゥ: このエリア。ここ。廊下が幾つか大きな研究ウイングに繋がってるけど、殆どが閉鎖されてる。時々、ネットワークの一部が、ここ、暗くなる。(間)生存者はそこにいる。
T-5イラントゥ: 我々の現在地から一番近い道はどれだ?
T-5オンルゥ: ちょっと待って。(間)選択肢は3つ。それぞれ違った危険がある。1つめはこのパイプラインをプラントの廃液処理施設に着くまでもっと下る道。これが最も遠いけど、その施設からは生存者へまず一発で届く。2つめはこの下のもう1つの水槽へ行く道。それはここの大きなチャンバーへ直接繋がってる。(間)そこにはヒルがいる。今も聞こえる。何でそれが戻ってこないのか不思議。
T-5イラントゥ: そして3つめは?
T-5オンルゥ: 3つめはここのこのエリアを通り抜ける道。そこは…奇妙。ヒルがその地点の周りを動いてるのが聞こえる。うるさくて、無秩序で、衝動的にあまり…正確さがない感じで動いてる。でもこのエリアの中では、彼らはとても静か。彼らはそこへ…何か…のために出たり入ったりしてる。でもとても、とても静かにやってる。
T-5ナンクゥ: (脚で地面を指す仕草)このヒルを見て。もう猫くらいのサイズよ。
T-5ムンルゥ: そこには他の実体はいないのか?
T-5オンルゥ: わからない。ヒルは出口も入口も1つしか使ってない。彼らはその道からは外れない。それで—(間)彼らは周りを見ていない。
T-5イラントゥ: どの道が一番早い?
T-5オンルゥ: 最後のが一番早い。このトンネルを保守用ドアまで進んで、階段を底まで下る。そこに着いたら、そこから左側に向かってそのエリアへ向かう、あるいは多分そこを通り抜ける廊下がある。そして反対側には研究ウイングの裏口がある。
T-5イラントゥ: オーライ、(間)それじゃあ、その道を使おう。
T-5ナンクゥ: 残念。何匹かヒルを撃ってやればよかった。
T-5イラントゥ: この先いくらでもチャンスはあるだろ。確実にな。生存者の救助を急がなくちゃならん。オンルゥ、生存者のいるウイングにヒルが侵入しようとしてる感じはあるか?
T-5オンルゥ: ええ、このサイトには大量の血がある。冷えているものも多いけど。すぐに彼らのもとに来る。
チームは水槽を離れ西側への廃液パイプを進む。するとチカチカするランプに照らされた保守用ドアに着く。
T-5ムンルゥ: ドアに何か書かれている。「血(blood)」。
T-5ナンクゥ: 壁にもあるわ。見て、何で書かれてるの?
T-5イラントゥ: ちょっと待て。
T-5オンルゥ: 見て。
オンルゥは肩に装備したスポットライトを強め、トンネルの壁面全体を照らす。「血」という単語が壁の表面に、黒く濃厚な物質で何度も繰り返し殴り書きされている。オンルゥは左を向き、突き当りに数体の乾いた遺体があるのを照らし出す。全ての死体は同じ液体に浸され、滲み出している。
T-5ナンクゥ: 心が乱れるわね。
T-5イラントゥ: 行こう、時間を無駄にできない。
チームが保守用ドアに入ると、その先は階段室である。上へ向かう階段は無傷だが、下の階段は破壊されている。階段室の壁は亀裂で覆われ、そこから黒い液体が染み出している。ムンルゥはフレアを灯して落し、チームはそれが落ちるのを観察する。少しして僅かな水しぶきの音がしてフレアは着地し、下にある床を露わにする。
T-5ナンクゥ: このサイトはどれくらい大きいのかしら?
T-5オンルゥ: (間)サイト-19は最低でも地下50階ある。ウイングも80を下らない。サイト-13についてこれまでわかってることからして、それぞれその2倍以上—はなくても2倍ちょうど位はありそう。Euclid級の収容セルだけでサイト-81の倍はありそう。
T-5ムンルゥ: ということはまだ誰も見たことがないもっと悪いものが下にあるかもしれない。
T-5イラントゥ: ほぼ確実だな。
イラントゥは踊り場から跳躍してフレアの近くに着地する。彼のインプラントは衝撃の殆どを吸収する。他のチームも同様にする。階段室の底には通路へ続くもう1つのドアがあり、チームはそこへ入る。
T-5イラントゥ: どこへ向かっている?
T-5オンルゥ: この通路の200m先、右側。そこに幾つかセキュリティドアがあるけど、無効化されてると思う。そこを抜けると…データ保存センターだと思う。そこは大きくて、地表の冷却塔に繋がる排気管がある。
T-5ムンルゥ: ヒルが奇妙な行動を取り始めるのはどこだ?
T-5オンルゥ: そこ。
T-5ムンルゥ: 素晴らしいな..
チームは通路を進む。ナンクゥが先導し、オンルゥとムンルゥが左右を固め、そしてイラントゥが後方を警戒する。彼らはドアを通り過ぎる度に、施錠されているかどうか確認する。殆どのドアはネットワークメンテナンスエリアに通じているが、1つだけは以前AP-3チームが訪れた遠隔コミュニケーションルームに通じている。反対側の壁のスクリーンの1つが内側から破裂しているようにみえる。
T-5ナンクゥ: 見て。これはサーバーエリアへのドアよ。
T-5ムンルゥ: あそこのドアは何だ?
T-5イラントゥ: 「冷凍保管所への階段」と書かれているな。 (間)推測だが、おそらく上の階へ通じていて、この部屋の右上にあたりそうだ。このデータセンターにとって緩衝材になっていそうだな。
T-5ムンルゥ: そこを抜けて進むことは可能か?
T-5イラントゥ: どの道が早い?オンルゥ?
T-5オンルゥ: 私に見えるのはサーバールームを通る道だけ。そこにはヒルがいない。(間)おかしい、その部屋へのアクセスポイントが沢山ある。(間)とても奇妙。
T-5イラントゥ: サーバールームを通る道か。よし、行こう。
チームはサーバールームへのドアに入る。彼らはさらに数枚のセキュリティドアを通過するが、その全てが施錠されていない。その間、気温は著しく低下し、およそ-20℃で一定となる。イラントゥはチームに、内部器官を低温から守るための内部発熱コイルを起動するように身振りで示す。
チームがサーバールームへ向け通路を進むにつれ、T-5ナンクゥのスクランブル光学インプラントが起動し、異常ミームをフィルターするシグナルが発される。しかし、T-5ナンクゥは以前視界にオーバーレイされる警告キューを無効にし、聴覚インプラントに接続された音声キューにリレーしていた。音声による警告は全く起動されなかった。
T-5オンルゥが一切の音が聞こえない事に気づいたのは、チームが第一サーバールームに入ったときだった。はじめは聴覚インプラントの問題と考え、オンルゥはインプラントを外して再起動する。それが正常動作し始める前に、彼女はこのことをイラントゥに伝えようとする。
イラントゥはチームに止まるように身振りで伝え、異常な効果の発生源を見つけようとする。各チームメンバーにスクランブルフィルターが発動した警告が現れる。ムンルゥは彼らが入ってきたドアに向かうよう身振りするが、イラントゥはサーバーエリアの後ろ、研究ウイングに向かうよう身振りする。
音のない議論の間、ナンクゥが大きな部屋を横切る動きに気付く。チーム員に留まるように身振りしたときに、小さな悲鳴のような音が聞こえ始め、ゆっくりと高まっていく。彼らが集まると、ムンルゥはサーバーラックに黒い液体で「静かに(SILENCE)」、そして「見るな(DON'T LOOK)」と書いてあるのを見つける。彼はラックを指し示し、チームはそれを了承する。
イラントゥは遠い方の壁へ移動するように身振りで指示し、彼らはサーバーラックの間を後部出口へ向かいゆっくりと移動する。突然、オンルゥは巨大な実体が部屋を横切るのを一瞬見て、チームに前進をやめさせる。彼女は部屋の角を見て、実体を再度視界に捉える。
実体は巨大で、多数の肢を持った姿をしている。実体の基本的な構造は浮遊して座禅を組む、6本の脚、18本の腕、72本の手を備える36本の前腕を持つヒューマノイドである。それぞれの肢は独立して動き、一定の、唐突で反射的な動きでジェスチャーやポーズを取り続けている。実体は頭部を持たないが、代わりに巨大で平坦な円状の構造がその胸部上側に取り付けられている。それは明るい白色で輝き、実体の灰茶色の肌を照らす多数の印サインや図案グリフで覆われている。実体の腕には鎖に繋がった金色の帯が取り付けられており、ジェスチャーを描くために腕が使われていないときには床面に垂れ下がっている。金色の帯には、鎖が切れて不活性状態ではあるが、後に強力な抗キネト災害(antikinetohazard)3と同定された図案グリフが刻まれている。もっとも目につくこととして、一人のひどく痩せてやつれ、激しく焼け焦げた人間が実体の頭部に該当する円形構造に縛り付けられている。その人間は拘束に抗って身を捩り、叫び声を上げているように見える。悲鳴が音声を抑制する実体のキネト災害を通してすら聞こえてきているようだ4。実体がジェスチャーを行うたび、頭部の図案グリフは即座に輝き、それに接する人間の肌を焼き、さらなる苦痛と悲鳴の音量増加を引き起こしている。
T-5オンルゥは実体の何らかの性質が彼女の光学インプラントに重大な障害を引き起こし、スクランブルの演算を行う回路を焼いていることに気付く。彼女は目をそらし、網膜にダメージが及ぶ前にインプラントを抜き、タウ-5チームの他のメンバーに直接実体を見ないように身振りする。チームは了承し、前進を再開する。
突然、悲鳴が劇的に音量を上げ、チームに近づき始める。ムンルゥは近接地雷をパックから落とし、もう1つを少し離れたところに設置する。チームが実体から逃げる間、青い電流がサーバーラックの間に電弧を描き始め、その下の床面が砂でできているかのように流れ始める。ナンクゥが皆を床に引き倒すと、1つめの近接地雷が爆発する消音された衝撃波が背後から襲いかかり、床面は固体化する。
チームは角を曲がり、部屋の後部出口が視界に入る。上方では天井に穴が空き、冷凍保存研究室が露出し、完全に破壊された複雑な収容セルもわずかに視界に入る。白く加熱した図案グリフが彼らの下の床面と周囲の空中に現れる間、チームは素早くドアへと移動する。チームは図案グリフを飛び跳ね、避けながら進むが、T-5ナンクゥの左腕が空中の図案に触れてしまい炎に包まれる。イラントゥがナンクゥの後方からそれを見て肩を射撃し、腕を吹き飛ばす。腕は床面に落ち爆発し炭化した残骸となる。
ムンルゥが最初にドアに到達し開け、オンルゥが即座にその後に続く。ナンクゥがよろめき出てドアの外で倒れる。イラントゥが最後に出る。ドアを閉める寸前、イラントゥが迫り来る実体を見るために振り返る。辛うじて僅かにジェスチャーと、燃え盛る図案グリフ、そして人のものとも思えない悲鳴が知覚できたのみである。ドアが乱暴に閉められるとき、イラントゥは実体の頭部に縛り付けられたヒューマノイドの姿にズームし、「エマーソン(EMERSON)」という単語が、まるで溶けた布の繊維のように肉に焼き付けられているのを見る。イラントゥは乱暴にドアを締め、即座に光学インプラントを外す。
チームは廊下を走り保安ドアから離れる。足音がゆっくりと聞こえるようになってくる。幾つかの通路の接点である大きく開けた場所に来ると、彼らは止まり息をつく。
T-5ムンルゥ: あいつ…(間)あいつが何だったかわからんが、上手く対応できたのが信じられん。(間)あれは何だったんだ?
T-5イラントゥ: 見当もつかん。ああいうものは見たこともない。
T-5オンルゥ: 頭に人が縛り付けられていた。見えた?
T-5ナンクゥ: 見たわ。叫んでいたみたいね。(間を置き、腕の切り口を見る)あとになってから悲しくなってきそう。
T-5イラントゥ: 大丈夫だ。気をつけていけ。
T-5ナンクゥ: (おどけて)いずれにせよ必要よ。ここにもう一本あるし。それに(ナンクゥは彼女の肩に装備された火炎放射器を振って左肩へと移動させ、取り外して本来左腕があった場所へと装着する。)まだ腕があったとしても、いずれにせよ用途は同じだったんじゃない?
T-5イラントゥ: 了解した。(間)みんな問題ないか?
T-5ムンルゥ: そこまでくたびれてはない。
T-5ナンクゥ: 良好よ。
T-5オンルゥ: 私も大丈夫。(間)着いた。見て。
チームはすぐ東側の通路に目を向ける。そこはバリケードと多数の爆発物と燃焼性の装備が設置されている。
T-5イラントゥ: よし。(バリケードに接近する)ハロー?こちらタウ-5イラントゥ、誰かいるか?脱出を手伝うために来た。ハロー?
沈黙
T-5ムンルゥ: 遅すぎたのか?
T-5イラントゥ: そんなはずはない。ハロー?誰かいるか?聞こえ—
引きずる音がして、大きな木箱がわずかに動く。木箱と壁の間から、暗いが顔が見える。
T-5ムンルゥ: (笑い)
T-5イラントゥ: 隊長。
[ローカル通信ネットワークに新たな接続がある。ゼータ-9「メクラネズミ」隊長ホリス。]
Z-9ホリス: おおみんな。呪われしパワーレンジャーよ。話は聞いてるわ。(チームを見回す)。電車にでも轢かれたみたいね。
T-5ムンルゥ: 似たようなものだ。
Z-9ホリス: (頷く)よし、じゃあ来て。時間はあまりないわ。
チームは木箱の隙間に進む。ムンルゥとナンクゥが抜けたとき、オンルゥが立ち止まる。イラントゥが気付き、振り返る。
T-5オンルゥ: イラントゥ。見て。ヒル。
黒い亀裂が何本も背後のアトリウムの壁に形成される。蠢く黒いヒル達がそこからこぼれ出し始め、濃い、黒い液体が続く。
T-5イラントゥ: (間)オゥ。
救出映像ログの書き起こし
日付: ████/██/██
回収部隊: 機動部隊タウ-5「サムサラ」
探索部隊: 機動部隊アポロ-3「猟区管理人」
探索部隊: 機動部隊Z-9「メクラネズミ」
対象: SCP-1730
部隊長: T-5イラントゥ / Z-9ホリス /AP-3ロス
部隊員: T-5ムンルゥ, T-5オンルゥ, T-5ナンクゥ, AP-3ヒューストン, AP-3ヴィーゴ, AP-3オヘーロ, Z-9モロス(Moros), Z-9ウィロー(Willow)
Notes: 以下は機動部隊タウ-5「サムサラ」がMTFアポロ-3およびMTFゼータ-9の生存者と接触した後実行された救出・回収ミッションの音声/映像の書き起こしである。
機動部隊の部隊員とは別に、チームはサイト-13の時間研究部門副管理者ムハンマド・スコット博士などの27名のサイト-13職員の生存者の回収を任務としていた。これらの人員のうち何人かは重傷を負っており、救出をさらに困難なものとしていた。
機動部隊アルファ-20「ホーリー・ダイバーズ(Holy Divers)」の部隊員が地表に待機し、回収チームがサイトの深部から脱した際には救出を補助できるように準備していた。
[ログ開始]
T-5イラントゥ: マイクを入れろ。
AP-3ヴィーゴ: これが本当に全部記録されてるか心配になりませんか?
AP-3ロス: ヴィーゴ、無駄口叩くな。彼に従え。
Z-9ホリス: あなた達が先導して、パワーレンジャー。
T-5イラントゥ: 了解した。オンルゥが脱出プランを立てた。説明してくれ。
T-5オンルゥ: 私達がここから取る道は、データセンターの実体とアトリウムにいる生物のために妥協を迫られてる。スコット博士とそのチームの証言から、私たちは現在判明している主な脅威から可能な限り遠ざかるルートを考案。残念ながら、私達も全ての脅威を把握出来ていない。スコット博士ですらサイトに収容された実体の全情報のアクセス権は持っていないから。よって…(間)私たちは極限の警戒を持って進むべき。(間)このことはよくわかってると思うけど。
AP-3ヒューストン: ああ、ちょっとはな。
Z-9ウィロー: オーライ、ではどういうルートを取る予定だ?
T-5オンルゥ: (トポグラフィーマップを開く)私達の進入ルートはこことここ。今のところ遭遇したもっとも大きな障害はこのサイトの下層レベルの空間的不安定性。ホリス隊長とスコット博士の示唆から、私達は最初に施設のこのセクションに移動する。そこにはスレッシャー・デバイスが収容されている。このデバイスがこの…不安定性の原因。私達自身と地表の職員を危険に晒さずにこのデバイスを完全停止させることは不可能なので、このルートを通って、地表までの安定した経路を作るのに十分な長さにデバイスの出力を落とす。
Z-9ホリス: 私は突入から少しして道に迷って、その部屋にたどり着いたわ。多数の生物に攻撃されたけどよく見えなかった。おそらく隠された抗ミーム効果のせいね。私は逃げれたけど、確実に奴らはまだそこにいるわ。その機械はあからさまにありえない量のエネルギーをこのサイトの何処かにあるエネルギー源から得ている。私が見た生物たちはそれを食ってる。だから…奴らはそこにいる。
AP-3ヴィーゴ: その機械を停止させるためにチームを送って、その後で合流して進行するってのはダメなんですか?
T-5イラントゥ: 時間が十分無い。そしてチームを分割したら成功率は劇的に落ちる。一旦デバイスの出力が落とされたら、フェイルセーフが働いてパワーが取り戻されるまでに、我々が逃げられる時間は1時間以下だろう。我々はただここから押し進むしか無い。それがいくらか時間を稼いてでくれることを祈りながら。
AP-3ヴィーゴ: オーライ、クールですね。
T-5イラントゥ: 皆の役割分担はこうしよう。タウ-5が先導する。アポロ-3が右翼と左翼を担う。ゼータ-9が殿を務める。体力の残っている生存者は後ろ側へ、負傷の酷いものはタウ-5近くの前側に配置しよう。攻撃を受けたり囲まれた場合は、一般的な多部隊防御配置を取る。タウ-5が最も脅威度の高い敵を迎撃する。
T-5ムンルゥ: 隊列と連絡を崩さず維持してくれ。タウ-5と各機動部隊長にチャンネルを優先して割り当てる。おしゃべりは最小限にしてくれ。地表に出ればいくらでも喋る時間がある。
Z-9ホリス: 私達の最優先目標は生存者の脱出と、生き残ることよ。皆がサムサラだったらやりたいようにやれるんだろうけど、サムサラ以外の我々には限界がある。パワーレンジャーたちを死なせたら何にもならないわ。彼らが死んだら私達のツキもオシマイよ。
T-5イラントゥ: 同意だ。皆ミッション内容は理解したか?
全機動部隊員は同意する。
T-5イラントゥ: いいぞ、俺が先頭を務める。我々は素早く移動しないとならん。荷物をまとめて非戦闘員に支度をさせろ。すぐに出るぞ。
チームは隊列を組むために解散する。非戦闘員はミッション計画を説明され、隊列の中央に位置される。
Z-9ウィロー: 隊長、メインドアを見てください!ドアの下からヒルが来てます。
Z-9ホリス: クソ、イラントゥ、もうやらないとならないみたいね。
T-5イラントゥ: 同意だ。行動を起こそう。ムンルゥ、ナンクゥ、メインドアを破壊しろ。便宜上、サイドドアから出るぞ。
T-5ナンクゥ: 喜んで。
隊列はサイドドアから通路へと出る。T-5ナンクゥとムンルゥはドアフレームの周囲に爆発物を設置するために戻る。ヒルがドアフレームの下や壁の亀裂から侵入し始めている。2人がドアから離れると、ナンクゥが火炎放射器をヒルに向けて発射し始める。
T-5ムンルゥ: 残念だが結果は変わらなそうだぞ。ナンクゥ、ヒルがどんどん増えてきてる。
T-5ナンクゥ: それでも楽しいわ。(壁から来るヒルを焼き続ける。)ああ美味しい。
ムンルゥとナンクゥは側面の通路を移動し始めたチームに合流するために素早く移動する。最初のドアを隊列が通過した時、爆発があり、建物が揺れる。隊列の階下から、大きな、不気味な叫び声が聞こえる。
AP-3ロス: 奴らに我々が移動してることを悟られたと思うか?
T-5イラントゥ: 間違いないな。
グループは時折敵性実体をチェックするために止まりながら、階段に向けて幾つもの通路を移動し続ける。少しして、T-5ムンルゥが制止を呼びかける。
T-5ムンルゥ: 光学インプラントに感があった。(間)おかしい、全員戻れ、俺が偵察する。
T-5ムンルゥが武器を下げながら通路の角に来る。彼のスクランブル光学インプラントが壁の危険なミームをハイライトする。通路の終わりに、SCP-1730の以前の遠隔ドローン探索で見られたものと同じ、概ねヒューマノイド型の実体がいて、長く曲がった指で壁に何かを書いている。ムンルゥは実体の映像を、彼の後ろで曲がり角にひかえるナンクゥに投影する。
T-5ムンルゥ: 待て。
突如、実体はムンルゥとナンクゥの方を向き、一つしかない白い眼を開く。それは即座にスクランブルデバイスに処理されブロックされる。実体は通路を高速で走ってゆき、移動しながら劇的に変形していく。実体は相当に大きくなり、長いローブが両側へひらめき、さらなる認識災害が露出しスクランブルデバイスにブロックされる。ムンルゥとナンクゥは武器を構えて射撃する。そのクリーチャーは銃弾に撃たれて後ろへとよろめき、その肉に穴が穿たれていく。ムンルゥはリロードし、火炎弾を装填し、再度射撃する。クリーチャーは炎に包まれる。実体は後ろへよろめきながら右側の壁を狂ったように引っ掻く。銃撃から逃れるために壁を掘って抜けようとしているようにみえる。ナンクゥが更に一発を射撃すると、眼が撃ち抜かれ実体は床面に崩れ落ちる。
T-5イラントゥ: 被害はないか?
T-5ムンルゥ: そう見えるが、俺達—
突然、通路が激しく揺れる。倒れたヒューマノイド実体の下の床が崩落し、大きな穴となる。穴のなかは、血のような赤い目で覆われ、長く尖った歯を何列にも備える口を持った、長くぬめった黒いクリーチャーだ。それが床を爆発的に飛び出ると、小さなヒルの奔流が通路に撒き散らされる。ヒューマノイド実体は破壊された床を滑り巨大なクリーチャーの口へと落ちる。巨大なクリーチャーはそれを貪りながら大きな叫び声をあげる。長く、湿った付属肢が何本も通路へとのたうち出る。ナンクゥとムンルゥは後退し、ナンクゥは火炎放射器を再び発射し、接近してくるヒルを退ける。
Z-9ホリス: 何が起きてるの?
T-5ナンクゥ: 別の道を見つける必要があるわ、早く。
T-5イラントゥ: ついてこい。
ムンルゥとナンクゥが援護射撃をする間、グループは崩落した通路を通り過ぎる。グループは病棟区域を抜け、その後方のメンテナンス区域に入る。
T-5オンルゥ: あそこ。この道でデバイスのところへ行ける。
T-5ムンルゥ: お前の言うことは信じてるが、このクリーチャーは俺たちが予想してたよりデカいんじゃないかと思い始めたぞ。(銃声)
T-5イラントゥ: オンルゥ、先導しろ。移動するぞ。
チームは長いメンテナンス通路を移動していく。通路は左へカーブし、リフト類や機械に満たされた開けた空間に出る。部屋の後部に幾つかの大きな積載ドックが見えるが、いずれも崩壊し破壊されている。
Z-9ホリス: イラントゥ、ここの壁からも滲み出てる。長くはいられないわ。
T-5イラントゥ: ちょっと待て。ムンルゥ、ナンクゥ、お前たちどのくらい後ろにいる?
沈黙
T-5イラントゥ: ムンルゥ、ナンクゥ、応答せよ。
T-5ムンルゥ: イラントゥ、ナンクゥが損傷した。今すぐには(銃声)ランデブーできない。オンルゥ、俺たちにお前たちの場所を送り続けろ。合流できるようになったら連絡する。
T-5イラントゥ: 了解した。
グループはメンテナンス場の反対側へと移動し、従業員休憩所へのドアを抜ける。黒い液体が壁から滲み出ている。グループは再び出血しはじめた負傷者の包帯を巻き直すために短時間停止する。大きな甲高い音が近くで聞こえ、グループは移動を再開する。
グループはスレッシャーのあるウイングの方向へ向かう通路に入る。グループが通路を抜ける間、オンルゥは明らかに異なった音を感知する。
T-5オンルゥ: イラントゥ、羽音。
T-5イラントゥ: どれくらいだ?
T-5オンルゥ: (間)たくさん。数えることができないくらい。彼らは…とても小さいけど、数がすごく多い。
Z-9ホリス: 何でもできるのね、パワーガール?
T-5オンルゥ: チリンチリンという音。クリスタルにクリスタルをぶつけたみたいな。
AP-3ロス: ファック。クリスタルの蝶だ。そういう感じの奴らに違いない。ずたずたにされるぞ。
T-5イラントゥ: そうはさせんよ。
グループは音源に向かって移動する。音は大きくなり不快な不協和音のようになり、右手上方から聞こえてくるように感じる。
AP-3ヒューストン: ゴッド、どこから聞こえてくる?
AP-3ロス: 落ち着け、落ち—
T-5オンルゥ: イラントゥ、排気口。
彼らの眼前で、天井の排気口の格子が床に落ちる。そしてきらめくクリスタルの蝶が通路を満たす。イラントゥは蝶を見ると、グループに振り返る。
T-5イラントゥ: 全員伏せろ。
グループは床に伏せる。イラントゥは蝶の群れへ走り込み、姿が見えなくなる。少しして、炎が吹き出し排気口へと走り、クリスタルの砕ける音が上方から聞こえる。煙が晴れると、イラントゥが再び見えるようになる。その肉の殆どは蝶の羽根で切り裂かれており、体全体は焼け焦げている。多量の肉が彼の身体から垂れ下がっている。背中の皮膚は黒くなり火膨れしており、焼けた肉を通して金属の装具が見えている。オンルゥが立ち上がり彼に近づく。
T-5オンルゥ: 続行可能?
T-5イラントゥ: 勿論。
AP-3ヒューストン: ジーザス、ファッキング、クライスト。大丈夫なのか?
T-5イラントゥ: ああ、なぜそうじゃないと言えるんだ?
グループは黒い液体の滲み出る通路をもう1つ、そしてさらにもう1つ抜ける。しかし3つめの通路は綺麗であり比較的手を触れられた形跡がない。彼らは短い階段を登り、分厚い金庫扉のような厳重な扉に着く。
Z-9ホリス: 例の機械はこの中よ。私はこの道を来た。でも扉は私の後ろで閉じたわ。どうやって開けるのかはわからないわね。
T-5イラントゥ: スコット博士、扉の開け方がわかりますか?
ムハンマド・スコット博士: (Z-9ホリスのマイクから聞こえる)いや、私はこのチャンバーに入る権限を持っていたことはない。
T-5オンルゥ: ムンルゥがいればよかった。私に開けられるとは思えない。
突然、響き渡るクリック音がして、目の前の扉がゆっくりと開く。扉の横のモニターが灯っていて、それに暗い室内が映っている。部屋の反対側は影で隠れているが、はっきり見えないヒューマノイド実体が手を振っているのが見える。激しい、心なしか笑い声を想起させる静電気の音が、どこにあるかわからないスピーカーから聞こえてくる。スクリーンの電源が落ちる。
AP-3ロス: あのクソピエロだな。
T-5イラントゥ: 来い、急げ。
グループはチャンバーに入る。部屋はとても暗く、多数の薄暗い緑色のライトが部屋の壁に見える。ライト同士の距離と光の強さから考えて、部屋の直径は数百メートルはありそうだ。部屋の後方近くに、円を描く緑のライトの塔が見える。
Z-9ホリス: ヘイ、パワーレンジャー。何か見える?暗視機能か何かがあるんじゃないの?私のバイザーは撃たれててダメ。
T-5イラントゥ: オンルゥと俺は強力なミーム実体にやられてインプラントを外さなくてはならなくなった。
AP-3ロス: 俺のバイザーは使えるぞ。ちょっと待て。(間)オーライ、ここには…何かの機械が部屋の反対側のあたりにあるな。あそこらへんのライトの下だ。詳細はここからでは分からないが、たしかにあるぞ。よく見えんが—ああ畜生、見えた。天井にあの…ファック、奴らがたくさんいる。
Z-9ホリス: 奴らって何よ。
AP-3ロス: (囁く)正直良くわからん。はっきりと見えん。だが間違いなく奴らは知覚を何かファックするタイプだ。こっちを…奴らがこっちを見てるとは思わん。だが冗談じゃなく500匹はいるぞ。
T-5イラントゥ: そいつはオンルゥと俺で手におえる数じゃないな。(間)決断が必要だ。奴らに気づかれず機械を止めようとするか、奴らを一掃する方法を見つけるか。(間)もちろん、アイデアがあるなら聞きたい。
AP-3ヴィーゴ: …奴らを吹き飛ばせるんじゃないでしょうか?ヒューストンが爆薬を持っています。(間)いずれにせよ一度には無理でしょうが。
Z9モロス: ちょっと待って、奴らはアレからエネルギーを得てるんですよね?まず必要ないシステムに大量のエネルギーを送るようにして奴らにショックを与えるのはどうですか?蚊に刺された時に腕に力を入れるみたいに。
T-5オンルゥ: 可能性はある、だけどもっと可能性があるのは—
突然、チャンバーの下から激しい振動が発生する。グループの左側100メートルほどで爆発が起き、壁が崩落する。壁の穴から赤い眼で覆われた、長くぬめった黒い付属肢が現れる。同時に眼が開く。
AP-3ヒューストン: ファック。
上方から甲高い音がして、何百もの背の低い、見えにくい実体が天井から降ってくる。壁の黒い実体は小型の実体群を鞭で打つように攻撃し、その前面に現れ出た口へと引き込もうとする。大型のクリーチャーに小型のクリーチャー群は飛びかかり、その爪で引き裂き始めるが、彼らの多くは口へと掻き入れられる。
T-5イラントゥ: フム。(間)あれでもうまくいきそうだな。オンルゥ、機械に接近しろ。他のものは通路へ後退しろ。時間があまりない。
グループはチャンバーの外の通路へ後退する。オンルゥはさらに多数の小型実体が天井から飛び降り黒いクリーチャーを攻撃する中を駆け抜ける。その中の数体がオンルゥへと移動し始めるが、イラントゥの射撃により処分される。オンルゥは機械のマニュアルコントロールパネルに到達すると、スコット博士のチームから提供された数値を入力する。チャンバーの周辺のライトが灯り、部屋の後方の壁全体に広がった巨大で著しく複雑な機械の姿を露わにする。オンルゥに次々と実体群が剥がれ落ちてくる。オンルゥは接近してきたものに立ち止まり射撃する。
部屋の下方からさらにもう1つの振動が発生し、部屋の中央の床が崩落する。もう一体の長く、黒い実体が床の穴から出現し、長い巻きひげ状の触手がオンルゥにのたうち来る。イラントゥの後ろから銃声がし、AP-3チームの全員がドアから現れ実体へ射撃を始める。実体は銃撃で負った傷から黒い液体を撒き散らしながら後退する。触手が彼らの周囲で鞭打ち、AP-3ヴィーゴを掴み空中へ放り投げる。彼は壁に激突し床へと落ちる。1匹目の黒い実体が触手でそれを掴み、口へと放り込む。
突然、小さな黒いヒルが床の穴から吹き出し、イラントゥへ素早く迫る。ヒューストンとオヘーロがヒルを射撃し始め、ロスがイラントゥを穴から引き離す。その間、彼は火炎グレネードを穴へと放り込み、イラントゥを床へ引き倒す。爆発がして、炎が黒い実体の周りに吹き出す。実体は立ち上がり付属肢を振り回すと穴へと崩れ落ちる。
地面深くから非常に大きな叫び声がして、部屋全体が揺れる。もう一体の黒い実体は壁の穴へ撤退し、その後ろで壁は崩れ落ちる。天井の小型実体はAP-3およびZ-9チームにより処理される。その間、さらに大きな振動があり、後方の壁の機械に取りつけられたライトが点滅し、やがて暗くなる。何かが徐々に停止するような音が銃声に混じり聞こえる。
AP-3ロス: ファック!畜生、ヴィーゴ。ファック!
T-5オンルゥが部屋を横切り近づいてくる。
T-5オンルゥ: ヴィーゴの喪失は残念。ごめんなさい。悲しんでる時間はない。進まなくては。
オンルゥ、ロス、ヒューストン、オヘーロ、イラントゥがチャンバーを離れる。さらなる鳴動が下から感じられ、時折大きな金切り声がこの施設のセクションの機械ノイズを切り裂く。彼らは階段室に到着し、ヒューストンがドアを開ける。
AP-3ヒューストン: うおぁ、ファック!何だ?
T-5イラントゥ: 何が問題だ?
AP-3ヒューストン: 何もないぞ。ドアはただ…何もないところへ開けてる。見える限り暗い。
T-5オンルゥ: スレッシャー・デバイスが乱れたために予定していたルートが改変された可能性。地表へ行くには別のルートを考案することが必要。
T-5イラントゥ: ああ、ちょっと待て(間)ムンルゥ、今どこにいる?
T-5ムンルゥ: 残念だがどう説明していいかわからん。例の機械はパワーダウンできたのか?
T-5イラントゥ: 今やったところだ。
T-5ムンルゥ: ならいいタイミングだ。俺達はクリーチャーに追いかけられていたが、突然クリーチャーがいたところが壁になった。局所トポグラフィーが自身をリセットしたようだな。
T-5イラントゥ: 一箇所に留まってくれ。お前たちを探しに行く。脱出を始めるぞ。
T-5ムンルゥ: ファンタスティック。
メイングループは空の階段室を離れ、来た通路を引き返し、スレッシャー・デバイスへの通路を再び通り、曲がってもう一つの階段室を登り始める。頂上に達すると、イラントゥは立ち止まる。彼らの眼前の通路は足首ほどの深さの水で覆われている。彼らが水をゆっくりと渡り始めると、彼らの後ろの研究員の一人が悲鳴を上げる。
T-5イラントゥ: 何だ?
研究員: 死体だ、見ろ。
水面の下に、半メートルほどの深さに漂うように見える青白い人間の死体が見える。
T-5オンルゥ: 見てはだめ。知覚しないで。素早く移動して。
チームは通路の終わりのドアへ向けて急ぐ。そこには壁に「サイト-13に何が起こったのか?(WHAT HAPPENED TO SITE-13)」と書かれているが、「何が(WHAT)」の部分が「エマーソン(EMERSON)」で塗りつぶされており、その下に「俺たちは冒涜的になった(HAVE WE BECOME BLASPHEMOUS)」と書かれている。
暫くの間グループは特に変わりなく進み、安全なルートが利用できるようになるたびゆっくりと上昇する。概ね8分進んだあと、グループは幾つかの巨大な機械の一部が修理の様々な段階で置かれた大きな機械ガレージに到着する。負傷した生存者の1人を手当するために止まり、その間オンルゥは新しい経路を考案する。突然、大きなバタンという音がして、機械部品が部屋を飛んで横切りAP-3ロスをかすめ、彼は叫び声を上げる。
AP-3ロス: ウワ!ファック!どこから来た?
部屋の隅で、積み上げられた機械部品が動き、立ち上がり、半ヒューマノイド実体に自動的に組み上がるように見える。巨大な機械の構造物の頂点に、雑に組み立てられた玩具のロボットが取り付けられている。実体は彼らに接近し始め、実体内部の不明な音源から声が聞こえる。
機械実体: (低い笑い声)我はこの汚れた大地に破壊の息吹を吹かせるために復活した。哀れな人間たちよ。お前たちは我が永遠の責め苦の暗き痛みを感じるであろう。(構築物の頂上の小さなロボットが腕を大げさに振るのが見える)
T-5イラントゥ: こいつは…うざいな。オンルゥ、彼らを外へ。ロス、俺と一緒に来い。
機械実体: 我はお前たちの破滅を告げるものである。死を受け入れるがよい。
T-5イラントゥ、AP-3ロス、ヒューストン、オヘーロが実体を射撃するが、ほとんど効果はない。実体は大きな機械部品を持ち上げグループに投げつけるが、大きく外れている。オヘーロは破片手榴弾を実体に投げつける。実体はそれを伸ばした手で掴み固く握り込む。手榴弾は爆発し、クリーチャーの手は砕け、左右へよろめく。
機械実体: やってくれたな。貴様を踏み潰—
T-5オンルゥが実体に駆け寄る。接近しながら彼女は跳躍し、高い孤のような軌道を描く。その頂点で手を伸ばし、構築物の頂点にある小さな玩具のロボットを掴み取る。構築物は崩れ去る。着地と同時に、彼女はロボットを壁に投げる。
ロボット: やめろ!我は告げるもの!我は—
玩具のロボットは壁に衝突し砕け散る。
T-5ムンルゥ: イラントゥ、お前か?何かが壊れる音がしたぞ。
T-5イラントゥ: 近くにいるようだな。そこにいろ、我々は向かっている。
チームはガレージを出て、広いアトリウムへと進む。角からT-5ムンルゥとナンクゥが現れる。ムンルゥは胴体下部に火傷を負っているように見えるが、他は無傷のようだ。ナンクゥは顎の下半を失っており、彼女のボディスーツの前部を黒い液体が覆っている。グループが近づく間、彼女は残った手を振る。
T-5オンルゥ: 元気そう。
T-5ムンルゥ: 全くね。ナンクゥが喋れなくなったお陰で士気も上がったよ。
(T-5ナンクゥはムンルゥを火炎放射器で指し示す。まるで腕を失っているのを忘れているかのように見える。それに気づくと、彼女は残った手でムンルゥに卑猥なジェスチャーをする。)
Z-9ホリス: いい再会だけど、クソ仕事に戻るわよ。入り口からはどれくらいあるの?
T-5ムンルゥ: ここがメインアトリウムだ。ここからこの通路をたどれば、処理ステーションに出る。そこを過ぎれば地表へのアクセスポイントに出るはずだ。
Z-9ホリス: 素晴らしいわね。先導してちょうだい、それで—
その時、下方から大きな破壊音とさらなる叫びがして、グループの下の床面が捻れ始める。
Z-9ホリス: ファック!走って!
グループはムンルゥが見つけた通路へ逃げるが、そこの床面も崩壊したため停止する。破壊された床から煙の柱が吹き出し、1人の研究員が崩壊する床の上で転倒しそこへ滑り落ちる。T-5オンルゥが、アトリウムの床が完全に崩壊する前にグループをアトリウムから退去させる。イラントゥが立ち止まって振り返り、穴の中を見下ろす。
穴の下は信じられないほど巨大なチャンバーで、数ダースの地下階層に渡って掘り進められたように見える。チャンバーの中には外周に沿って多数の小さなライトが設置されていて、底には巨大な、黒い質量があり、更に数個の黒い質量がそこから伸びている。イラントゥは後退しながら、クリーチャーの質量全体に渡って赤い眼が開くのを見、さらなる叫びを聞く。
グループは側方の通路を走り逃げるが、穴から出た複数の長い黒い触手に追跡される。AP-3ロスとヒューストンは触手に射撃する。触手は一瞬牽制されるものの、さらなる触手が後ろから出て来る。Z-9モロスが黒い液体で滑って落ちていき、一本の触手の先端に消費される。彼らの周囲の構造物が暴力的にひしゃげるにつれて、金属のよじれる音と岩とコンクリートがぶつかる音が聞こえる。周囲の壁から黒いヒルが転がり出はじめ、ナンクゥが火炎放射器でそれを焼く。
彼らが角を曲がると行き止まりである。後ろを振り向くと更に触手が壁の穴から噴き出す。
AP-3オヘーロ: ホーリーファック、閉じ込められた。もうお終いだ。ホーリーファック。
T-5イラントゥ: オンルゥ、脱出する道が必要だ。
T-5オンルゥ: しゅ…集中が難しい…(銃声)…
Z-9ホリス: 待って、待って、考えがあるわ。この場所に見覚えがある。考えがある。こっちへ来てみんな、ここで死ぬわけにはいかない!!
グループはホリスについて階段室へ向かい、それを降りる。ホリスは迫りくる触手に火炎手榴弾を投げ、爆発前に扉を閉める。下方からの叫び声は彼らが下るに従い激しくなっていき、階段は揺れる。階段室に穴が空き、更にヒルがそこから出てくる。穴を蛇のようにのたうつ触手を全機動部隊員が射撃する。踊り場に着くと、ホリスはグループをドアへと導く。
Z-9ホリス: ここよ!ここへ入って!
グループは通路に入り、反対側の通路の終わりへと走る。その間、「冷凍保管所への階段」と書かれた標識の前を通り過ぎる。ムンルゥが通過する間それに気づく。
T-5ムンルゥ: ホリス隊長…何をしている?
Z-9ホリス: ここでは私を信頼して、ブルーレンジャー。私はこういうことをずっとやってきた。
T-5ムンルゥ: 俺—(間)ハハン、オーケー、うまくいきそうだな。
グループは通路を抜け、広大な観察セクションに入り、障壁を備えた大きな窓を幾つも通り過ぎる。チームは巨大な鋼鉄の扉がいくつも並んだ広大なチャンバーを観察する窓の前で停まる。上部には「オリンピア級テスト観察設備」と書かれている。
T-5イラントゥ: ホリス、どんなプランを考えているんだ?
Z-9ホリス: 勘よ。下へ行かなくちゃ。来て。
グループは部屋の端にある階段へ走り、急いでそのウィングの主要な階へと降りる。オリンピア級収容チャンバーの床へと出ると、彼らの後ろの壁がたわみ始め、そこからヒルが飛び出してくる。
Z-9ホリス: ピンクレンジャー、あそこにパネルがある。あのドアを開けて。
T-5オンルゥ: な—何?
Z-9ホリス: あのドアを開けてと言ったの、急いで!何をグズグズしてるの?行って!
T-5オンルゥは大きな鉄製のドアの近くにあるコントロールパネルに走る。彼らの後ろの壁はたわみ続ける。
Z-9ホリス: ムンルゥ、あれ。あのドアも開けて!
T-5ムンルゥ: 了解。勿論。
T-5ムンルゥはドアのコントロールパネルに行こうとする。Z-9ホリスがグループに向き直る。
Z-9ホリス: みんな聞いて。非戦闘員はこの部屋の反対側へ、行けるところまで行って。そこにここの上にある発電所への道があるから、そこに着くまで登り続けて。そこに着いたら、壁を吹き飛ばして外に出れる。でも急がないとならないわ。クソどもがここの下の通路に出てきてるところよ。ロス、あなたと部下は壁から出てくるものはなんでも撃って。私達が行けるようになったらあなたに連絡する。イラントゥ、私と来て。ここはメチャクチャになるから。
T-5イラントゥ: 了解。
Z-9ホリス: オーライ、(間)ほら行って!ほら早く!
グループは撓む壁から離れチャンバーの中央を走っていく。彼らの後方で壁はついに耐えきれなくなり、巨大で、黒く、ぬめった実体がチャンバーに滑り込む。それは最低でも高さ200mで、黒い触手と暗赤色の眼で覆われている。それはグループをみて、黄色く長い歯が何列にも並んだ巨大な口を開ける。口の中央には、裸の人間の女が把握力のある舌と融合しているのが見える。それが口を開くと同時に突き刺すような叫び声を上げ、グループへ向けて移動し始める。
全機動部隊員が全ての残存する弾薬をクリーチャーへ叩き込み、火炎性の武器を投げつける。クリーチャーはわずかに怯むが、武器で穿たれた穴の全てからさらなる黒い液体とヒルが湧き出してくる。数本の長い触手が機動部隊にのたうち来る。
T-5オンルゥ: ホリス隊長、出来た。出来た。
Z-9ホリス: よし来て。そいつをぶつけて!
T-5オンルゥがコントロールパネルから離れ、チャンバーの中央のグループへと走って戻る。巨大なうめき声が彼女の後ろから聞こえ、巨大な金属の扉が開いていくのが見える。凍るように冷たい濃い霧が流れ、扉の中はよく見えない。
AP-3ロス: 何が入ってるんだ?
Z-9ホリス: ムンルゥ、あなたの分は?
T-5ムンルゥ: ちょっと待て、(間)よし、これでいいはず—
突然、ムンルゥの後ろの扉が明るい赤色に輝き、次に白色に変わり、さらにその中央から撓み、崩落する。ムンルゥが急いで離れると、巨大で、動かない、燃え盛るヒューマノイド実体がチャンバーへ浮遊してくる。その動かない手は巨大な剣になっている。それが破壊された扉を通るとき、巨大な燃える翼がその背から翻る。黒いクリーチャーは叫び、その触手が新たなクリーチャーへ襲いかかる。
触手が接近すると、炎の奔流が剣から触手へと走り、それらを引き裂く。黒い液体と焼かれたヒルがチャンバーに飛び散る。巨大な黒いクリーチャーは叫び、何ダースもの新たな触手が燃え盛るヒューマノイドに迫る。2体が交戦する間、長い嗚咽のようなさらなる音がして、突然部屋は静寂に包まれる。
冷たい霧に霞む部屋から、そびえ立つ、概ね鹿に似たクリーチャーがチャンバーへと歩み出る。明るい緑の体とクリーム色の毛、細い首の先端には毛のないヒューマノイドのような顔、そして巨大でより合わさり、青い光の放電が脈動する白と黒の枝角を備えている。その頭部の上には輝き、回転する水晶と金属の球が9つ同心に浮遊している。
クリーチャーはゆっくりと収容セルからから歩き出て、眼下の床面に立つチームを見る。それが口を開くと長い、蜂の羽音のような音がチャンバーに響く。その体の周囲に、数個の大きな、金属製で円筒形の構造物が出現し、続いて何かが割れるような音が別に聞こえる。それは機動部隊の集団に向けて動き始めるが、背後から3本の触手に攻撃され、触手が首に巻き付く。クリーチャーは新たな羽音を発し、突然チャンバーに音が戻る。それと同時に弧を描く炎の奔流が宙にほとばしる。円筒形の物体は横になると加速し、黒いクリーチャーへと飛翔し、その中央部に激突する。鹿様の実体の周囲に幾つもの金属球が出現し、黒いクリーチャーと燃えるヒューマノイドの双方へと飛びかかり、彼らはお互いに攻撃を始める。
Z-9ホリス: ファッキン—いいわ!デカブツ同士壊しあえ!(チームに向かって)今のうちに行きなさい皆。行くのよ!
チームはチャンバーの反対側へ向けて、非戦闘員のグループを追って駆け出していく。その周囲の床面に炎の奔流が弾ける。T-5ナンクゥの肩に切断された触手が当たり、彼女はバランスを崩す。彼女は転倒し、武器を掃射しながら炎に包まれる。AP-3ヒューストンが一瞬立ち止まり彼女の方を向くが、その肩をイラントゥがつかむ。
T-5イラントゥ: 時間がないんだ。
彼らがチャンバーを出るドアの近くに集まった生存者のグループに近づくと、破壊音がする。振り向いた彼らの眼前で、チャンバーの端まで投げつけられた鹿様の実体が立ち上がる。黒いクリーチャーがそれを触手で叩く間、さらに数個の金属球が出現し反撃する。別の数本の触手が燃えるヒューマノイドを打ち据えて黒い実体の口に引き込もうとし、さらに炎がほとばしる。機動部隊の集団が生存者に合流し、ドアからチャンバーを出る。グループはその先にある階段室を急ぎ登る。
Z-9ホリス: オーライ、言った通りになった。登って!どんどん登って!その先—
長く、細い金属の円筒が階段室の壁を貫き、スコット博士と研究員の一人の近くをかすめる。もう一本の円筒が壁を突き抜け、イラントゥを粉砕してその後ろの壁に刺さる。グループが登り続けると、炎が階段室を下から満たしていく。もう1つの長く、大音量の羽音が聞こえ、沈黙が訪れるが、次の瞬間には重厚な爆発音が施設全体を揺らす。グループは踊り場につき、通路を抜けてもう1つの階段室へと移動し始める。Z-9ホリスが後ろに残る。
T-5ムンルゥ: 何をしてる?
Z-9ホリス: もう少し時間を稼ぐ。それと…あと少し何かできると思う。皆を脱出させて。行って!
T-5ムンルゥ: 君と一緒に残る、ホリス。君は不死身じゃない。
Z-9ホリス: ええ、ええ、何度も聞いたわパワーレンジャー。でも今は、あなたがこの人達を脱出させる必要がある。私には私の仕事があるでしょう?あとで追いつくから。
T-5ムンルゥ: わかった。感謝する、ホリス。
Z-9ホリス: (笑う)会ったばかりには思えなかったわ、ムンルゥ。
Z-9ホリスはグループから別れる。T-5ムンルゥは次の階段室に到達し登り始めた残りのグループと合流する。
次の10分間、グループは施設内を登り続ける。サイトの下層が崩壊し始めるに従い振ってくる瓦礫や破片が何度か危うく当たりそうになる。下にいる実体の音が聞こえ続け、何度か崩壊した壁や床を通してクリーチャーたちが見える。ある一点で、AP-3ロスは動かない、燃えるヒューマノイドが、ほぼ完全に金属に覆われ、その封印の隙間から長い炎の奔流が吹き出ているのを見る。その少し後で、ビデオ記録には2分間の空白があり、再開したときには鹿様のクリーチャーの頭部がグループの眼前の壁を打ち抜いている映像を映している。彼らが引き返しそれから逃げると、頭部が彼らを向き、2人の研究員が未知の、黄緑色の物質の六角柱に変化する。
程なくして、AP-3ロスがサイト司令部からのシグナルを感知する。
サイト司令部: チームリーダー、こちらサイト司令部。聞こえるか?
AP-3ロス: ホーリーファック、イエス、聞こえている。聞こえるか?
サイト司令部: 聞こえるぞ。我々の位置システムに君が出現した、ロス、出口は近いぞ。ホリス隊長とイラントゥは?
AP-3ロス: イラントゥは死んだ、ホリスは…ついさっき別れた。そのとき以来見ていない
サイト司令部: 了解した。他のものは?
AP-3ロス: 何人か犠牲者が出た、非戦—(銃声)ファック!非戦闘員を何人かと、ヴィーゴ、他にも何人か失った。今もかなりマズい、コマンド、出来る限りの支援が必要だ。我々-ムンルゥ、オンルゥはどこへ行った?
T-5ムンルゥ: オン…おお、後ろにいたはずだ。どこへ行った?
サイト司令部: 今はそれに構うな。脱出ポイントをバイザーに送った。救出チームがそこで待っている。皆連れ出してやる。
サイトが彼らの周囲で崩壊するなか、グループは脱出ポイントへ急ぐ。空中からの映像では、サイトの大部分が地面へ滑り飲み込まれるのが見え、煙が発電所と近くの機械施設からうずまき始めるのが見える。SCP-1730が割れるに従い炎の柱が地下から見えてくる。
機動部隊アルファ-20「ホーリー・ダイバーズ」が崩壊する発電所付近に進入する。生存者の集団が視界に入り、MTF A-20の助けのもと脱出ポイントに移動しサイトから遠ざかる。他の機動部隊のメンバーがサイトから撤退する間、T-5オンルゥからの通信がサイト司令部に入る。
T-5オンルゥとZ-9ホリスは、活性化し唸りを上げるスレッシャー・デバイスの前に立っている。2人は炎の奔流に貫かれながら迫りくる黒い物体に向けて射撃している。後ろからは、鹿様の実体が黒い触手をその角で引き裂きいているのが見える。燃える金属の奔流が黒い実体に向けて部屋を横切る。ホリスはカメラに向き、銃を撃ちながら笑っている。彼女はヘルメットを脱ぐ。彼女らの後ろの機械のハム音が明らかに大きくなってきて、他の音全てを覆い隠す。放電が彼女らの上の天井を走る。彼女が笑ってオンルゥの方を向くと、オンルゥの胴体が噴きつける炎に破壊されるのが見える。
オンルゥの体が側方へ倒れ、映像は彼女の後ろの機械が明るい白に輝き始め、Z-9ホリスがヒステリックに笑い、武器を掃射する様を映して終わる。閃光があり、通信は終わる。
外部では、MTF A-20が1730の研究員と職員を安全な場所に移動させ続ける間に、耳を聾する崩壊音と、巨大なハム音が空気を満たす。サイト周辺の領域が水面を通して見るかのように視覚的に歪み始め、そして突然SCP-1730は消失する。その場所は直径1kmを越す広大なクレーターとなる。サイト内部から他に通信は聞こえない。他に異常な活動は検出されない。
[ログ終了]
Note: このログに記された出来事に基いて、SCP-1730はNEUTRALIZEDに分類されました。さらなる研究が進行中です。デブリーフィングの報告書は機密指定が解除され次第閲覧可能になる予定です。
ミッションデブリーフィングインタビュー
日付: ████/██/██
インタビュー対象: エフラム・ロス隊長(Cpt. Ephram Ross)、機動部隊アポロ-3 "猟区管理人" チームリーダー
インタビュワー: ピーター・ビンセント(Peter Vincent)博士
デブリーフするミッション: SCP-1730救助
主題: SCP-1730
Notes: 以下は暫定サイト-23の職員によりSCP-1730に関して行われたインタビューの音声の書き起こしの抜粋である。このファイルに含まれる情報は未確認であり、さらなるレビュー中である。ファイル全文に関しては、サイト-17の情報及び記録管理者にコンタクトすること。
[ログ開始]
ビンセント博士: 記録のために名前を言ってください。
AP-3ロス: エフラム・ロス隊長、機動部隊アポロ-3、猟区管理人。
ビンセント博士: ありがとうございますロス隊長…では、始めましょうか。あなたのチームはSCP-1730に侵入し、受信されていた無線シグナルの発信源を捜査するように命令されていた、間違いないですね?
AP-3ロス: ああ。
ビンセント博士: 侵入の最初について話してください。
AP-3ロス: ログは聞いていないのか?
ビンセント博士: 私自身は聞いていません。まだ編集中です。
AP-3ロス: (間)いい状態ではなかったな。俺が言える限り、サイト-13がどこから来たにせよ、奴らはそこを一種の…"どん詰まり"処理施設として使っていたのは確かだ。時々、収容セルに何が終了される予定かを書いたプラカードがついてるのを見た。サムサラチームが見たものからして、これがこの件に絡んでる。奴らはアノマリーを運び込んで、いくらかの…侵襲的実験を行い、そして破壊していた。
ビンセント博士: どんな種類のアノマリーがいたかを話せますか?
AP-3ロス: なんと言えばいいか、クソ… それを言うのは難しい。経路のどっかでパワーが途切れてて、あそこ全体がジュラシック・パークになっちまってた。俺達が出会った奴で言うと…這いよる暗黒、ヒューストンの足をファックした奴だ、それと…あんたヒューストンを見たか?あいつは無事か?
ビンセント博士: 彼はちょうど今医療チェックを受けています、すぐにこちらへ運ばれて来るでしょう。おそらく大丈夫だと思いますよ。
AP-3ロス: それは良かった…ああ、それと、それに加えて、アイツもいたな、ヒトなのかどうかわからんが、周りの空間を歪める奴、そしてノアは…(間)
ビンセント博士: それに関しては結構です、我々は—
AP-3ロス: いや、言わせてくれ。(間)俺達は何人か失った、どのチームもな。ひどかった。俺達が最後に見たものからして、もっと悪くなる可能性もあった。
ビンセント博士: 最後に?
AP-3ロス: 見てないのか?いや、ビデオは見てないんだったな。サイトの下部にはあれらのセルがあった、それぞれ間違いなくフットボール場くらいの大きさのな。ホリスが幾つかを開けて、それで俺たちは退却できた、そしてその中身…そのうち1つが俺を見た、俺が蟻を見るみたいにな。そいつは神のようだった、そして奴らはそいつを箱に入れていた…俺は20個までセルを数えられたが、見えないところにもチャンバーは続いていた。(間)その中には何があったんだ?どうやって奴らはそいつらを収容してたんだ?
[ログ終了]
ミッションデブリーフィングインタビュー
日付: ████/██/██
インタビュー対象: エージェント・リアム・オヘーロ(Liam Ohalo)、機動部隊アポロ-3 "猟区管理人"
インタビュワー: ピーター・ビンセント(Peter Vincent)博士
デブリーフするミッション: SCP-1730救出
主題: SCP-1730
Notes: 以下は暫定サイト-23の職員によりSCP-1730に関して行われたインタビューの音声の書き起こしの抜粋である。このファイルに含まれる情報は未確認であり、さらなるレビュー中である。ファイル全文に関しては、サイト-17の情報及び記録管理者にコンタクトすること。
[ログ開始]
ビンセント博士: それでは、もしよろしければ、公的な記録のために、あなたの名前を言ってください。
AP-3オヘーロ: (沈黙)
ビンセント博士: エージェント・オヘーロ?
AP-3オヘーロ: (沈黙)
ビンセント博士: 何か—
AP-3オヘーロ: 俺達はあそこで死ぬべきだった。(間)これは現実じゃない。これは現実じゃない。俺達はあそこで死ねばいいと思われてたんだ。
ビンセント博士: エージェント、私たちはこのレポートを残さなくてはなりません、少しだけ協力してくだされば、私はあなたの公的な証言を残せます、あとで相談できるカウンセラーもサイトにいます。
AP-3オヘーロ: (沈黙)
ビンセント博士: オヘーロ?
AP-3オヘーロ: (沈黙)
[ログ終了]
ミッションデブリーフィングインタビュー
日付: ████/██/██
インタビュー対象: イラントゥ、機動部隊タウ-5 "サムサラ" チームリーダー
インタビュワー: イーシャ・セイント・クレア(Isha Saint Claire)博士
デブリーフするミッション: SCP-1730救助
主題: SCP-1730
Notes: 以下は機動部隊タウ-5研究チームのメンバーによりSCP-1730に関して行われたインタビューの音声の書き起こしの抜粋である。このファイルに含まれる情報は未確認であり、さらなるレビュー中である。ファイル全文に関しては、サイト-17の情報及び記録管理者にコンタクトすること。
[ログ開始]
セイント・クレア博士: 記録のために、あなたの名前を言ってください。
T-5イラントゥ: 俺はイラントゥ、機動部隊タウ-5、サムサラのチームリーダー。
セイント・クレア博士: あなた自身の言葉で、SCP-1730にあなたがいた間に起きた出来事を描写してください。
T-5イラントゥ: 勿論だ。タウ-5チームはSCP-1730に派遣され、通信の発信源へと移動を開始した。オンルゥが生存者の位置を追尾することができ、あり得る空間災害と遭遇する頻度が最も少ないと思われるコースを考案した。予想されていなかった障害により、コースを数回修正しなくてはならなかったが、克服できないものではなかった。ホリス隊長と生存者たちと合流して程なくして、救助の努力の結果、スレッシャー装置が設置された施設のセクションを通り抜けた。我々はその装置がSCP-1730が我々の世界に存在する原因だと考えている。それから少しして、退却中に俺は終了された。
セイント・クレア博士: わかりました、エージェント・モロス、ヴィーゴ、その他は?
T-5イラントゥ: 彼らも終了された。
セイント・クレア博士: 終了された?
T-5イラントゥ: 終わった、負傷に屈服した。
セイント・クレア博士: 意味はわかります、イラントゥ、私はただ…あなたがそのことを心地よく思っているように感じずにはいられません。
T-5イラントゥ: 俺は良くも悪くも感じない、結果に満足してるだけだ。
セイント・クレア博士: (間)何ですって?
T-5イラントゥ: 俺たちの救出ミッションは成功だった。最小限の犠牲で、俺達のチームは極度に危険で変容しやすい空間アノマリーに進入し、何人かの価値の高い、財団が関心を寄せる人物を救出できた。
セイント・クレア博士: (間)
T-5イラントゥ: あんたが俺に他に何を言わせたいのか知らない。俺達は多数の危険なアノマリーに晒され、ミッションを成功裏に遂行できた。有能で経験豊富な人員の惜しむべき喪失はあった、だが我々のエラー許容マージンの範囲内だ。対して、俺達のチームは俺達の初期モデルから予想されるものよりいい結果を残した。
セイント・クレア博士: わかりました。(間)ありがとうございますイラントゥ、あなたの発言を報告書に確かに載せさせて頂きます。
T-5イラントゥ: どういたしまして。(間)共同ミッションのプロトコルで要求されているとおりに、ゼータ-9隊長ホリスとのデブリーフィングの機会を持ちたいのだが。
セイント・クレア博士: ホリス隊長はSCP-1730で死亡しました。
T-5イラントゥ: (間)
セイント・クレア博士: イラントゥ?
T-5イラントゥ: 残念だ。ホリス隊長はほとんど失敗が確定した状況に対して素晴らしい対応を見せた。(間)プロトコルに記載された通り、代わりに俺がホリス隊長の配属されたサイトの管理者へ報告書を提出する。ご足労感謝する、博士。
[ログ終了]
医療審査インタビュー
日付: ████/██/██
インタビュー対象: エージェント・コッター・ヒューストン(Cotter Houston)、機動部隊アポロ-3 "猟区管理人"
インタビュワー: イアン・ハリス(Ian Harris)博士
デブリーフするミッション: SCP-1730救助
主題: エージェント・コッター・ヒューストン
Notes: 以下は暫定サイト-23の職員によりSCP-1730に関して行われたインタビューの音声の書き起こしの抜粋である。このファイルに含まれる情報は未確認であり、さらなるレビュー中である。ファイル全文に関しては、サイト-17の情報及び記録管理者にコンタクトすること。
[ログ開始]
ハリス博士: では、最初に、記録のためにあなたの名前をお願いします。
AP-3ヒューストン: ええ、俺の名はコッター・ヒューストン、アポロ-3チームのメンバーです。
ハリス博士: はい、では、エージェント・ヒューストン、あなたの悩みや問題を、できるだけ詳しく説明してください。
AP-3ヒューストン: ああ、意識ははっきりしてるんですが、俺にはその、脛があるように見えないんです。なんというかその…あのモノが上がってきて覆ったあたりに線があるような感じで、先生にもその…脚の中身みたいなものが見えるでしょう?平たいガラスか何かに入れ替えたみたいに…でも俺はまだ、見た通り、まだ歩ける。 何かがなくなったような感じはしないんです、ただそう見えるだけで。そして脚があるはずの場所に手を通すこともできる、明らかにそこには何もないから、でも…でも俺はそこにあるのを感じられる、だから…ああ。
ハリス博士: わかりました。あなたが踏み込んだというその物質について説明できますか?
AP-3ヒューストン: 実際には落ちたんです。あるいは転んだというか、それはせり上がり続けて。そいつは、クソ…俺達はドアを開けて、そしてドアの向こうには何もないように見えた。それでそいつは…そいつはドアから上がってきはじめて、階段を登ってきた。ビデオゲームをやったことはありますか?そいつはある種のグラフィックのバグみたいだった。そいつは速く登っていたわけじゃない、ただ留まっていた。俺達はドアにたどり着いた、だがそれは俺が落ちたあとだった、それで…そしてこうなった。
ハリス博士: 最初はどんな感じだったか説明できますか?
AP-3ヒューストン: 最初の感じ?
ハリス博士: それは痛みましたか?
AP-3ヒューストン: いや、なんというか、最初は何が起こってるかわかりませんでした。誰も彼もがパニックしていて、それで下を見てそいつが無くなってるのを見て、俺もパニックし始めました。だけど…なんというか、明らかに俺は大丈夫でした。全く痛まなかったんです、普段通りに感じました。(間)ああ、普段通りじゃない。あからさまに奇妙でした、俺の脚はなくなってる、多分その時の俺はショックを受けていたんだろうと思います、だけど…時々、何かが撫でるような感じを、感じるような気がします。
ハリス博士: 何かが撫でるような?
AP-3ヒューストン: ええ、つまり、体の一部はなくなってる。最初は俺も、幻肢痛を感じる人たちみたいに、イメージしていたんだと思います、だけどそれは…なんというか、実際に脚を感じられるんです、だから幻肢痛とは違う。まるで毛の生えたような、そして濡れた何かがあるような…ただ何かを撫でたような。誰にもわからない感覚です。
[ログ終了]
ミッションデブリーフィングインタビュー
日付: ████/██/██
インタビュー対象: ムンルゥ、機動部隊タウ-5 "サムサラ"
インタビュワー: エリオット・オニール(Elliott O’Neil)隊長、機動部隊D-26 "時間警察(Time Cops)"
デブリーフするミッション: SCP-1730救助
主題: SCP-1730
Notes: 以下は暫定サイト-23の職員によりSCP-1730に関して行われたインタビューの音声の書き起こしの抜粋である。このファイルに含まれる情報は未確認であり、さらなるレビュー中である。ファイル全文に関しては、サイト-17の情報及び記録管理者にコンタクトすること。
[ログ開始]
オニール隊長: 君がホリス隊長を見失ったのはいつだ?
T-5ムンルゥ: 退却の混乱の中で、ホリス隊長は俺達から別れた。いつのことだかわからん。
オニール隊長: ムンルゥ、君のカメラは壊れていなかった。我々は君が彼女と別れる前に会話したのを知っている。
T-5ムンルゥ: クソ。(間)こういうのは苦手だ。
オニール隊長: なぜ彼女がグループから離れるのを止めなかった?
T-5ムンルゥ: (間) 俺はホリス隊長とは出会って数時間だった、だがその間に、彼女は経験豊富で有能なエージェントだということを示した。俺は彼女が個人的行動としてする決断は彼女の経験と訓練に基づくものだと思った。そのどちらも俺を越えている。その上、彼女の階級は俺より上だった。
オニール隊長: 君のミッション内容では他のチームメンバーが自ら危険に向かうのを放置することは許されていないし、犠牲を最小限にするために最大限の努力をすることが求められている。これと君の行動をどう整合するつもりだ?
T-5ムンルゥ: 厳密な法解釈をするなら、俺がしたことのうちで、ホリス隊長が自ら危険に向かうのを許したものは何もない。俺は彼女の行動の結果を予見することなどできなかったし、俺自身に恥じないベストな判断をした。俺が知る限り、彼女は安全な場所へ移動することができた。
オニール隊長: グループから離れてか?
T-5ムンルゥ: 彼女ほどの経験を持つエージェントが予想の付かない状況で故意に自身を危険にさらすと想定することは不合理だったろうよ。
オニール隊長: つまり君は自身の弁明はミッションのプロトコルの解釈として許容可能なものだと考えるわけだな?
T-5ムンルゥ: 勿論。
オニール隊長: わかった。君が宿舎に戻れば、イラントゥにあって話ができるだろう。君の理屈が通ればいいな。
T-5ムンルゥ: 俺もそう思うよ。
[ログ終了]
ミッションデブリーフィングインタビュー
日付: ████/██/██
インタビュー対象: オンルゥ、機動部隊タウ-5 "サムサラ"
インタビュワー: ダリアン・アーノルド(Darian Arnold)博士
デブリーフするミッション: SCP-1730救助
主題: SCP-1730
Notes: 以下は機動部隊タウ-5研究チームのメンバーによりSCP-1730に関して行われたインタビューの音声の書き起こしの抜粋である。このファイルに含まれる情報は未確認であり、さらなるレビュー中である。ファイル全文に関しては、サイト-17の情報及び記録管理者にコンタクトすること。
[ログ開始]
アーノルド博士: なぜあなたはホリス隊長を追ったのです?
T-5オンルゥ: 救助を開始する前に、ホリス隊長が私達のチームリーダーと交わした議論に基づき、彼女がグループを離れるときの彼女の意図を私は理解したと考えた。私の助けなしには彼女は私達の辿った道にそって戻ってこれないかもしれない恐れがあった。
アーノルド博士: あなたの記録機器は、スレッシャーのある場所でアクティブになる前に、長い間途切れていました。その間何がありましたか?
T-5オンルゥ: (沈黙)
アーノルド博士: オンルゥ、私は回答を必要とします。
T-5オンルゥ: 私は装置を切った。そこには…(間)私達が通り過ぎた部屋は以前とは変わっていた。そこはオリンピア収容セルの上にあるサーバールームだった。私には…どうしてそこにたどり着いたのかわからない、それは意図していなかった。それはミスだった。私達が入った時、以前と同じようにそれは部屋にあった、でも…
アーノルド博士: どういう意味ですか?
T-5オンルゥ: ごめんなさい、それを描写するのは困難。私達がドアを入った時、周りにサーバーが見えた、でもそこに別の景色が重なって…私たちは断崖に立って、推測できない程の広さの領域を見渡していた。私達の下には手首から先のない人たちが叫んで、物言わぬ空へ償いを求めて泣いていた、そして…空は燃えた。星が落ちてきたみたいで、私は目を背けた。ホリスは目を離せないようだった。私がもう一度見ると、焼かれた死体が、何十億と地面にあった、でも何十億もの他の生き物たちが落ちた星へと手を伸ばして殺到して、その星の中に捻れた操り人形のように浮かんでいたのは…サイト-13で、マリドラマギウアンと呼ばれていたもの。その場所では、彼らは別の名前でそれを呼んでいた。憎しみのこもった名で。
アーノルド博士: なぜ記録機器を切ったのですか?
T-5オンルゥ: その実体とはじめて遭遇した時、それは異常なミーム災害と認識災害を発生させた。それは私の目のスクランブルユニットを焼くほど強力だった。防護されていないものに何をもたらすかわからない。
アーノルド博士: あなたには何をもたらしたのですか?
T-5オンルゥ: それは…私にいくらかのビジョンを見せた。炎の螺旋と空は魂の嵐を伴う光を作った。私に叫ぶ宇宙の中央の穴。悪夢の神、ゆっくりと終わりなき受難の列の間を歩く何か長く寄りかかるもの、そして…ホリスにも何かを見せた、私には見えないものを。そうする時、ルーンがその…その頭に描かれ、加熱し脈打った。そしてそこに縛られた男が火ぶくれを作り焼けただれた。それが終わると、私はその背後に海と、青空を見た。私達の空。それは海に変わり、そこへと沈んだ。それが終わるとビジョンは薄れ、部屋は空だった。
アーノルド博士: わかりました、その後は?
T-5オンルゥ: ホリスは走って、私はそれに続いた。彼女は機械のところに着くまで何も言わなかった。彼女は 暫くの間一人でそこにいたことがあると言った。それを起動する方法を知っていると言った。彼女はどこへ向かうのかはわからない、でも見てきたものをまとめて闇に葬らなくてはならないと言った。機械をスタートできるより前に、収容セルのクリーチャーたちがチャンバーに入ってきた、そして私は終了された。
アーノルド博士: ホリス隊長はあなたが死ぬ前に何かあなたに言っていましたか?
T-5オンルゥ: いいえ、ただ笑って、泣いていただけだった。
[ログ終了]
ミッションデブリーフィングインタビュー
日付: ████/██/██
インタビュー対象: ムハンマド・スコット博士、サイト-13時間研究部門補佐管理者(Dr. Mohammad Scott, Site-13 Assistant Director of Temporal Studies)
インタビュワー: 管理者ウィリアム・ベスターランド(Willam Vesterland)
デブリーフするミッション: SCP-1730救助
主題: SCP-1730
Notes: 以下は暫定サイト-23の職員によりSCP-1730に関して行われたインタビューの音声の書き起こしの抜粋である。このファイルに含まれる情報は未確認であり、さらなるレビュー中である。ファイル全文に関しては、サイト-17の情報及び記録管理者にコンタクトすること。
[ログ開始]
管理者ベスターランド: 記録のために、お名前をお願いします。
スコット博士: 私の名前はムハンマド・スコット博士。
管理者ベスターランド: 少し場違いのように見えますね、スコット博士。
スコット博士: (笑う)少しね。我々の2つの世界線は大した違いはないと思うがね。
管理者ベスターランド: ある一点を除いて。
スコット博士: ああ、そいつは確かに違った。
管理者ベスターランド: サイト-13についてお話いただけますか?
スコット博士: サイト-13…簡潔に済ませるかね?それとも…?
管理者ベスターランド: できるだけ詳しくお願いします。
スコット博士: いいとも。元々、アメリカ中西部に大型の収容施設を作る計画があった、そいつは確か…始まりから話そう。1964年、財団は巨大な、死んだ海洋性のクリーチャーがインドとバングラデシュの国境近くの海岸に打ち上げられているのを発見した。その地域の施設にはこの実体のボディを保管して単独で研究できるような設備は無かったので、数隻の船が派遣され、洋上でそいつを牽引して合衆国へ戻ってきた。それに先立ち、サイト-19をアメリカ中西部に建築しようという計画があったが、後にそのサイズのクリーチャーを秘匿し、合衆国本土を移送することは不可能だと決定された。したがって、熟考の末、サイト-19計画は破棄され、アラスカのノームの近くの別の施設に注目が集まった。それがサイト-13だ。最初からそれは巨大だった。財団の運営する他のサイトよりも随分と大きく、すぐに我々の主要な収容施設となった。それは遠く、要塞化されていて、何よりも、雪と氷に簡単に隠すことができた。85年にソビエト連邦が崩壊すると、ソビエトにはサイト-13の位置どころか、存在すら知られていなかったことがわかった。
管理者ベスターランド: わかりました。あなたが財団に入ったのはいつですか?スコット博士。
スコット博士: ああ…76年だ。大学を出てすぐだ、管理者の一人によって学校でリクルートされたよ。我々がまだ独立組織だった頃の話だ。私はバミューダのサイト-22で働いた。それが私にとって仕事が一番良かった頃だ。(笑う)その頃の財団は随分違った。
管理者ベスターランド: 財団に何が起こったのか話してください。
スコット博士: (間)サイト-13を運営するには随分費用がかかった、それにいくらかの…財政上の困難があった。1994年、ウクライナから来たマルクス主義の過激派がシカゴのマンチェスター・ファイナンシャル・タワー5の地下で爆弾を爆発させた。火の手がビルの基部で上がって、基部が崩壊したことによりビルは真横に倒れ、数千の命が失われた。その過激派がセキュリティをやり過ごして地下に侵入するためにあるアノマリーを使ったことがわかって、合衆国政府は財団に激怒した。合衆国が財団につぎ込んだ何十億ドルもの金は無駄だったと考えたのだ。1996年の選挙後、ドール大統領は合衆国にある財団サイトへの支援金を全て減額した。財団は現存するサイトの維持だけで手一杯になり、特にサイト-13は重くのしかかった…状況は深刻だった。
管理者ベスターランド: そして何が起きたのです?
スコット博士: 妥協だ。ドールの元スタッフであるポール・マナフォート(Paul Manafort)が世界オカルト連合の事務総長に任命され、我々に解決策を提案しに来た。我々は連合と資源を統合し、彼らのリーダーシップのもとに力を合わせて正常性を守る。我々は名前とサイトを保持するが、管理者たちは国連安全保障理事会により任命される。我々はもう一度合衆国政府と、同様に国連からも支援金を受けとり、光を照らし続けることができる。
管理者ベスターランド: しかし…
スコット博士: しかし監督評議会は拒絶した。彼らは司令部に居座り膝を折ることを拒否した。そして数年後、オレゴン州ポートランドのサイトが脆弱化したインフラのために崩壊し、我々が夢のクジラと呼ぶクリーチャーがカリフォルニアの沿岸に漂っているのが発見された。その頃はインターネットの普及し始めだったが、フィルムカメラもまだ使用されていて、それで…それは災厄だったよ。監督評議会は全ての機動部隊をそこへ集結させた、しかし我々には記憶処理剤のための金すら不足していた。それがあれば一日でサンフランシスコに散布され、それで終わりだっただろう。(間)そして我々は監督評議会は解散させられ、財団は今やGOCの運営下にあるというEメールを受け取った。マナフォート事務総長と保安評議会が管理者の委員会を一晩で設立し、日が昇る前に夢のクジラは再収容され、漏れ出たものは全て処理された。
管理者ベスターランド: リーダーシップの変更に関して抵抗はなかったのですか?
スコット博士: 何故抵抗するんだ?我々には突然金が与えられた。手の甲にノートをとるか全く取らないでいるかなんて状況から突然開放された。マナフォート事務総長は財団の新しい管理者として、ジャック・ケンプ(Jack Kemp)副大統領を任命した。しかし彼はほとんどお飾りだった。新しいサイト管理者たちが任命されたが、その殆どは元々のサイトのスタッフだった。それで…正直、悪くない状況に思えた。我々はついに我々のミッションを万全に行うことができるようになった。我々には技術も、人員もあった、素晴らしい状況だった。(間)そしてその時、職員が配置転換され始めたと聞こえ始めた。アノマリーはサイトから運び出され、二度と戻らなかった。もしあなたが我々の世界の職員だったら、「ああ、誰々がトラブルに巻き込まれてるだって?サイト-13に送られるだろうさ。」なんて聞いただろう。私はそれらの殆どがただの雑談だと思っていたが、私も2003年には配置転換された。
管理者ベスターランド: そこはどんな感じでしたか?
スコット博士: 寒かったね。サイト-13は広大でいつも明かりが灯っていたが、施設はいつも寒かった。いつも誰かしら働いていて、地下はどんどん工事されていて、外部へのドアはいつも開けられていた。最初はそう悪くもなかった。私は自身の研究を続けられたし、それまでよりも潤沢に予算を使えた。時間/空間の研究だよ、知っての通り。その時のサイト管理者はジャック・ブライト(Jack Bright)で、昔々からいた年寄り博士の一人だ。とてもカリスマがあり、スタッフは彼を好きだった。彼は大きなメダルを身に着けていて、そいつははるか昔からのアノマリーで彼を不死身にしていた。それを身に着けている限り、彼は歳を取らなかった。何にせよ、数年間は素晴らしかった。そしてある日、もう一人の評判の良い博士が彼女のオフィスで死体で見つかった。シンシア・ライト(Cynthia Light)だ。我々が聞けた話は、ブライトは彼女を気に入っていたが、彼女が他の男と居るのを見て激昂して殺したということだけだった。ブライトは単純に閉じ込められ、エリオット・エマーソンがサイト-13の管理者として赴任した。彼は…
管理者ベスターランド: どうしたのですか?
スコット博士: エマーソンはサイト-15に赴任していた時にブライトの研究チームの一人だった。彼はそれほど評判の良い博士ではなかったが、良い管理者で、財政危機の間重要なプロジェクトを維持する一助となっていた。彼は組織再編のときサイト-13の管理者の数少ない候補者の一人だったが、ブライトが優先して選ばれたのだ。彼は軽んじられたと感じていると言うものもいた。彼がブライトを陥れたと言うものはもっと多くいた。私はマナフォートはブライトの反連合的な感情を嫌っていて、それが彼こそが収容されるべき危険なアノマリーとみなされる原因となったと考えている。そして誰も反対するものがいなかったので、エマーソンが推薦された。彼はとても中庸な人物だった。それほど際立っていたわけではない。エリオットは最後には…恐ろしいことをするようになった、だが私は心から、彼はただマナフォートが求めることをしただけだと信じている。
管理者ベスターランド: 恐ろしいこととはどのようなことですか?
スコット博士: 私は何年も後になるまでそれを見たことはなかった、だが…我々はサイトの地下深くで起こっていることについてはいつも聞いていた。彼らは新しい収容セルや研究施設を作った。そして火葬場も。元々は以前からあった海の怪物の死体を処理できるように作られたが、やがて彼らはそれを…全てに対して使い始めた。最初は彼らは異常性を持つ動物に侵襲的な試験を行った。やがては人間に。そして生体解剖が始まった。倫理委員会が介入しようとしたが、彼らは排除された。彼らは古い委員長のジェレマイア・シンメリアン(Jeremiah Cimmerian)をサイト-17の会議場に呼び出して彼の頭を撃ち、財団を売った。ピーター・グレンウォルドが新たな財団/GOCの倫理委員会のトップになり、勿論、新たな試験は全て承認された。私は彼らが何を試験していたのか知らないが…例えばある人間に異常性があり、しかしそれがあることを発見されなかったら、ボディ・ピット行きになった。我々は「これはより大きな善のため、人類の保護のためだ」と聞き続けた。我々はどうすればよかったのだ?声を上げて、シンメリアンのように終わればよかったのか?(間)より勇気ある人間にとってはそうかもしれん。だが私は自分の仕事がうまくいっていると思っていたので、頭を低くし、仕事をし続けた。そして…ああ、(笑う)今では馬鹿みたいに聞こえる。2010年に我々は神を収容した。といってもただの神ではない。アブラハムの神。まさに、雷と稲妻、Y-H-W-H、炎と硫黄の神。私は彼らがどうやってそれをやり遂げたのか知らない。どんな技術が連合により開発されたのかも。彼らは手の届く範囲のものは何でもサイト-13に入れて縁までいっぱいにした。
管理者ベスターランド: (間)なるほど。それは…とっさに理解が追いつきませんね。今すぐに思いつく質問は一つしかないのですが…サイト-13に何が起こったか?です。
スコット博士: ベラ・ハドレー(Vera Hadley)。イタリアのサイトから来た内科医だ。数年にわたり、彼女はサイトの主任生物学者だった。保安評議会は彼女を異常生物学の補佐管理者にし、同時に私は時間研究の同ポジションに昇進した。彼女はエリオットと…共に…いて、彼が我々にさせようとすることの全てに強硬に反対した。エリオットは尻尾を巻き続けたが、マナフォートはそうではなかった。彼は彼女を3ヶ月で解任し、その後は下位の研究職につけた。ある夜、何かのデモンストレーションのあと、何人かの保安員が現れ、そして…その…彼らは彼女を裸にし、何かを隠し持ってるか検査をした、メインの廊下の真ん中でな。それが終わって満足すると、彼らは彼女を死ぬ寸前まで打ちのめし、そこに彼女を置き去った。私とあと数人の博士が彼女を医療センターに連れていき、彼女は回復した。だが彼女は本当には回復しなかった。彼女の中の何かが死に、あるいは何かに置き換わった。彼女は何かをした。何かの計画を始めた。彼女はそれをする前の晩に、それについてのEメールを私に送った。だが私は注意を払わなかった。それが起きて、あの…モノがサイトを攻撃した時、エマーソンが来てスレッシャーを起動するように私に頼んだ。それはまさに世界を守るために、列車を脱線させるような最終手段に思われた。世界を救うというより、むしろ燃やしてしまいそうに思える、全く試験をしていない技術の断片。その存在まるごと、冗談で、私がその時真剣に捉えすぎただけかと思った。だがそうではなかった。私は拒絶し、彼にリスクが大きすぎ、もし作動したとしても、もう1つの世界に問題を作るだけだと言った。だが…彼は説得されなかった。彼は残って事務総長に会うのは、死よりも悪い運命だと言った。彼は銃を私に突きつけ、行うように言った。私は逃げ、脱出できることを祈って私のチームを招集しに行った、しかし我々が研究室を離れてすらいない時に、それは起こった。(間)それ…
管理者ベスターランド: 大丈夫ですか?
スコット博士: ああ、スレッシャーは複雑な機械だ。生き残れただけで私は幸運だと思うべきだろうな、しかし…我々は世界の狭間の奇妙な場所に数千年もいたのかもしれん。我々が目を覚ました時、我々はまだサイト-13の中にいた、だが収容セルは開け放たれ、中身は開放されていた。もし君たちが来てくれなかったら、我々は死んでいた。(間)それは確実に言える。
管理者ベスターランド: サイト-13がどこへ行ったのかわかりますか?
スコット博士: それを予測する方法はない。ここのような場所に行ったのかもしれないし、そうではないかもしれん。奇妙で知られていない世界はいくらでもあり得る。(間)取り残された者と知り合いかね?
管理者ベスターランド: そうです。
スコット博士: 私もだよ。我々だけが生存者ではない、それほど多くはいないとしてもな。彼らは…ああ。彼らは我々ほどうまくは行かなかった。これは悲劇だ、だが今できることは何もない。(間)私はただ…もしかしたら…私は今となっては祈るよ、エマーソンが何らかの安らぎを得られんことを。彼は本当に偉大な博士だった、そして私の友人だった。
管理者ベスターランド: 私…勿論です。お時間いただきありがとうございました、スコット博士。またすぐにお会いしましょう。
[ログ終了]