職員コード認証……
レベル4/1736クリアランス認証……
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アイテム番号: SCP-1736-JP
オブジェクトクラス: Euclid Thaumiel
特別収容プロトコル: SCP-1736-JP-1およびSCP-1736-JP-2を観測するため、日本国内で稼働中の鉄道に存在する自動ドア全てにノーライズ時空変動観測機および小型監視カメラを設置し、自動ドア閉扉と同時に駆動状態になるよう設定して下さい。故障が発生した場合、カバーストーリー"自動ドアの故障"を用いて即座に修理もしくは交換を行って下さい。
SCP-1736-JP-2による影響の観測のため、SCP-███によって生成される安定した異空間内に設置した記憶媒体に財団の全データベースのコピー、現在の世界情勢の詳細な記録および日本の住民票の全データのコピーを保存し、1日単位で更新を行って下さい。SCP-1736-JP-2が発生した場合、情報の更新を停止して我々の宇宙におけるデータと異空間内に保存されたデータとを比較し、現実改変の痕跡を記録して下さい。現在、SCP-1736-JP-2の発生を抑止する方法を研究中です。
(2032/8/25追記)SCP-1736-JP-1が観測された場合、担当チームはプロトコル"Alternative"を実施して下さい。プロトコル"Alternative"実施のため、SCP-1736-JP-3はプロトコル"Entrench"に基づいて厳重に管理されます。
説明: SCP-1736-JPは、SCP-1736-JP-1、SCP-1736-JP-2、SCP-1736-JP-3の3つのアノマリーが関連する大規模な時空間異常の総称です。上記報告書におけるSCP-1736-JPは、この文書中ではSCP-1736-JP-2にナンバリングされています。
SCP-1736-JP-1発生時の宇宙の動的変化を表した模式図
SCP-1736-JP-1は日本全国の鉄道車両の自動ドアに不定期に発生する時間軸の分岐及びそれに伴う宇宙の分裂現象です。現在推測されているSCP-1736-JP-1の発生条件は、任意の人間(以下、対象と表記)が約20km/h以上の速さを伴って閉扉中の連動式自動ドアに接近することです。SCP-1736-JP-1が発生すると、対象の存在する宇宙の時間軸は"対象が乗車できた時間軸"と"対象が乗車できなかった時間軸"に分岐し、結果的に非常に酷似した2つの平行宇宙(以下、対象が乗車できた宇宙をSCP-1736-JP-A、乗車できなかった宇宙をSCP-1736-JP-Bと表記)が生成されます。SCP-1736-JP-A、B間には"対象が鉄道に乗車できたか否か"以外の差異は確認されていません。現在の財団が接続できるのは直前に分裂した宇宙のみであり、接続されていないSCP-1736-JP-AとSCP-1736-JP-Bは互いに完全に不干渉であることが証明されています。SCP-1736-JP-1が発生すると、その地点を中心に微弱な時空歪曲波が生じます。
SCP-1736-JP-2は、財団の並行宇宙部門の研究からSCP-1736-JP-1の発生エラーであると考えられている異常現象です。SCP-1736-JP-2が発生すると、本来SCP-1736-JP-1事象によって分岐するはずであった時間軸は分岐せず、対象は我々の宇宙に存在する記録や記憶ごと抹消され、初めから存在していなかったという形に改変されます。しかし、唯一SCP-1736-JP-2が発生した自動ドアの動作はこの改変の影響を受けないと考えられており、このためSCP-1736-JP-2は外見上はドア挟み検知機能の誤作動として知覚されます。
SCP-1736-JP-2によるヒューム値の変動などは一切観測されていないため、この現実改変事象がどのような原理で発生しているのかについては未だ不明です。また、対象の経歴を全て抹消するという性質上、SCP-1736-JP-2が発生するとバタフライ効果的に広範囲に改変が伝播します。しかし不定期に発生し、かつランダムな人間が改変の対象となるため、詳細な観測は非常に困難であるとされています。SCP-1736-JP-2による現実改変を長期的に観測した結果、現在までに世界情勢の記録に8件、財団のデータベースに3件の改変が生じていることが判明しています。
SCP-1736-JP-2が発生すると、発生地点を中心に強力な時空歪曲波が発生し、周辺の時空間体に損傷をもたらします。
SCP-1736-JP-3は、████社製鉄道車両用ドア開閉装置です。SCP-1736-JP-3は適切な自動ドアに取り付けた際に活性化します。SCP-1736-JP-A、B双方においてSCP-1736-JP-3が活性状態にある場合、SCP-1736-JP-3が取り付けられた自動ドアは、開扉時に直前に分岐したSCP-1736-JP-A、B間のポータルとして機能します。SCP-1736-JP-3はSCP-1736-JP-1の発生と同時に自動的に閉扉して直後に再度開扉し、SCP-1736-JP-2発生時には、閉扉を途中で停止して再度開扉します。SCP-1736-JP-3の異常性は、それが電源に接続されていない場合でも問題なく発現します。他のSCP-1736-JP-3と同規格の製品には異常は見られていません。
SCP-1736-JP-1及びSCP-1736-JP-A、Bの存在は、SCP-1736-JP-3の実験において発覚しました。SCP-1736-JP-3は元々"取り付けると勝手に動作する自動ドア開閉装置"としてAnomalousアイテムに登録され、動作の経過を観測されていました。しかし、SCP-1736-JP-3の動作とSCP-1736-JP-2の発生が同期していることが判明し、SCP-1736-JP-2に付属する異常物品としてSCP-1736-JP-3に指定されました。その後、財団の平行宇宙部門による調査の際、位相の僅かなずれからSCP-1736-JP-A、Bの存在が確認されました。また我々の宇宙との差異の局所性からSCP-1736-JP-1事象の存在が発覚し、正式な報告書が機密ファイルとして作成されました。SCP-1736-JP-3は元々通常の報告書にも記載されていましたが、真の異常性の発覚に伴って機密ファイルに移動され、SCP-1736-JP-3に関する報告の閲覧履歴をもつ職員には記憶処理が施されました。現在、SCP-1736-JP-3はSCP-1736-JPの研究に使用されていますプロトコル"Alternative"実施のため、SCP-1736-JP-3はプロトコル"Entrench"に基づき、規定の状況下を除く活性化が禁じられています。
SCP-1736-JP-2の真の異常性は、上記報告書の補遺に記録されたインシデントの原因究明の際に発覚しました。調査チームはSCP-1736-JP-2発生中、エージェント・咲崎が異空間内に存在していたことに注目し、平行宇宙部門に協力を依頼しました。その後のエージェント・咲崎へのインタビュー及びSCP-███が生成する異空間を用いた日本全国の住民票データの継続的な観測から、SCP-1736-JP-2の現実改変作用が明らかとなり、██氏がその改変によって消滅した可能性が有力視されました。██氏に関する情報はSCP-███-JPの研究に不可欠であると判断されたため、エージェント・咲崎をはじめとした関係職員には記憶処理を行わず、カバーストーリー"目下原因調査中"を流布することで対応しています。
補遺: O5評議会による審査の結果、プロトコル"Alternative"の実施が承認されたため、オブジェクトクラスがThaumielに変更されました。プロトコル"Alternative"の内容の概略は以下の通りです。完全版の閲覧権限はO5評議会員及び担当チーム主任職員に限定されています。
== プロトコル"Alternative" 概略 ==
目的: SCP-1736-JP-1によって生成される一致率の極めて高い並行宇宙を用いた、高危険度プロジェクト実行時における人類社会の持続可能性の向上
手順: SCP-1736-JP-1発生確認後即座に、担当チームは監視カメラの映像から各々の財団が存在する宇宙がSCP-1736-JP-AとBのどちらに該当するかを判別してください。SCP-1736-JP-Aに存在する財団は、SCP-1736-JP-1発生前にO5評議会によって選定されたプロジェクトを実行します。その後両財団は対象プロジェクトを記録し、O5評議会は次のプロトコル実施時に実行するプロジェクトを選定してください。プロジェクト実行/不実行による悪影響の伝播を防止するため、SCP-1736-JP-3はプロトコル"Entrench"に基づいて管理されています。なお、選定基準を満たすプロジェクトが存在しない、もしくは新たなプロジェクトを実施することで、現在行われているプロジェクトに支障を来すと判断された場合は、プロジェクトの実施は見送られます。
プロジェクト選定基準の一部抜粋
- 優先度クラスがA以上である
- K-クラスシナリオ発生リスクがレベルγ以上である
- 予想されるプロジェクトの成功率が30~70%の範囲にある
- 事案が対処不能な状況になるまでに、1年以上の猶予がある / 事案への対処方法として、この基準を全て満たす代替プロジェクトが存在する
- プロジェクト実施に際して、SCP-1736-JP-3を通したSCP-1736-JP-Bからの資源の供給が必要となる場合、SCP-1736-JP-B側の財団の事案対処能力に与える悪影響が軽微である
- 実施によってSCP-1736-JP-Bに接続する可能性が3%以下である
プロトコル"Entrench"
SCP-1736-JP-3は、プロトコル"Alternative"実施の影響の伝播を防ぐため、不活性状態を保った状態でサイト-8127の地下300mに存在する機密アノマリー保管庫に保管されます。SCP-1736-JP-3の活性化は下記の状況下を除いて禁じられています。SCP-1736-JP-3へのアクセスには、O5評議会によって暫定的に付与されるレベル5/1736クリアランスが必要です。SCP-1736-JP-3の活性化が許可される状況は以下の通りです。
- プロトコル"Alternative"におけるプロジェクトの実行に際し、SCP-1736-JP-B内の資源を利用する必要がある場合
- SCP-1736-JP関連事象によって何かしらの悪影響が生じ、SCP-1736-JP-3の調査が必要となった場合
- その他、O5評議会によって活性化の必要性が認められた場合
O5-8による解説
このプロトコルの成立にあたって、各所から反対意見が挙がった。その多くは、"どちらも等しく守るべき世界であり、実験台やバックアップのように使うことは許されない"というものだった。だが、この世界がいつ壊れてもおかしくないほど脆いという事実は、レベルの高い職員であれば自ずと身に染みて理解している共通認識である。それこそ、電車に乗れるかどうかで世界の存亡が分かれるようなことも充分ありうると、誰もが知っている。賛成意見も根強く、議論は長引いた。
結論はご覧のとおりである。もちろん無駄な犠牲を出すことは許されないから、プロジェクトの選定には両財団のリスクが同等になるよう、多くの制約が設けられた。幸いなことに、プロジェクトを実行するのもしないのも"私たち財団"であるから、SCP-1736-JP-1が発生する前に実行プロジェクトを決めておけば、醜い衝突が起こることもない。
分岐した世界のどちらがパンドラなのかどうかは、永久に判りえない。私たちはただ淡々と、わずかにでも世界が生き残る可能性を上げる努力をするべきなのだ。
プロジェクト実施記録の一部抜粋
No.1
実施日: 2032/9/8
優先度クラス: A+
K-クラスシナリオ発生リスク: γ
成功確率: 64%
プロジェクト概要: 財団の航空宇宙部門が保有するK34-P2スペースシャトル38機を用いて地球付近に適切な質量を持った小惑星を誘導し、その重力によってSCP-2460を地球周回軌道から弾き飛ばす。その後、使用した小惑星内にHYP63型原子爆弾を埋め込み爆破する。
対処事案内容: SCP-2460はスペースデブリなどの吸収によって徐々に軌道が低下しており、現在の観測によれば2年以内に地球表面に接触し、QK-クラス:量子縮退世界終焉シナリオを引き起こすと予想されている。
実施結果: 成功。SCP-2460はEuclidクラスに再分類され、動向を観察されている。
No.27
実施日: 2052/6/6
優先度クラス: A
K-クラスシナリオ発生リスク: δ
成功確率: 52%
プロジェクト概要: SCP-078-JPを財団によって開発された超合金P-670Sを用いた防護ケース内に収容し、JS-6Yロケットで宇宙空間に廃棄する。
対処事案内容: 事案2540によってSCP-078-JPの表面温度が5800℃に達した。現在、超断熱繊維G-237および真空断熱材T-890を用いた収容ケース内に封じ込めている。しかし、収容ケースの材料的特性とSCP-078-JPの異常な高温により、内部の酸素は未だ除去されていない。2052/6/6現在SCP-078-JPの温度は40000℃以上であると想定されており、万一現在の収容ケースが損傷した場合、直ちにXK-クラス:世界終焉シナリオが発生すると考えられている。
実施結果: 成功。2082/6/6現在、JS-6Yロケットは地球から約4.7×10^9kmの距離を飛行している。
No.88
実施日: 2083/12/3
優先度クラス: A+
K-クラスシナリオ発生リスク: γ
成功確率: 38%
プロジェクト概要: SCP-2191-3が生息するバルカン半島の地下構造をHYS23型原子爆弾によって爆破し、SCP-2191-3及びその子を無力化する。
対処事案内容: SCP-2191-3が原因とされる大規模な震災が連続して発生。地下構造の観測及びホイア森林周辺の住民の証言から、SCP-2191-3の出産が今後8ヶ月以内に行われると考えられている。出生したSCP-2191-3の子らによる災害の程度は未知数だが、何らかのK-クラスシナリオに繋がる可能性が非常に高いと予想されている。
実施結果: 失敗。SCP-2191-3の無力化には成功したが、その子らが地上に出現し、[編集済]。SCP-████、SCP-████-DEが急遽使用され、4ヶ月かけてSCP-2191-3の子を全て無力化した。これらの事案の影響でバルカン半島を中心とした周囲約3000kmが壊滅的な被害を受け、24個のアノマリーが収容違反、サイト-1926を喪失した。
No.110
実施日: 2091/11/27
優先度クラス: S
K-クラスシナリオ発生リスク: δ
成功確率: 63%
プロジェクト概要: SCP-CN-████の異常性を利用し、SCP-571実例に反ミーム性を付与することで事案の鎮静化を図る。
対処事案内容: 不明なソースからSCP-571実例がインターネット上に拡散され、各地でSCP-571の収容違反が発生している。インターネットサーバーの停止と大規模な記憶処理、情報統制によって抑制しているが、13ヶ月後には抑制不可能になり、AK-クラス:世界終焉シナリオが発生すると考えられている。
実施結果: 成功。付与された反ミーム性により、SCP-571の観測可能な異常性が消失。万一SCP-CN-████の効果が消失した場合に備え、全世界的なSCP-571の発見、破壊が機動部隊イータ10("See No Evil")と財団の反ミーム部門を主導に進められている。
No.168
実施日: 2136/1/2
優先度クラス: A
K-クラスシナリオ発生リスク: ε
成功確率: 68%
プロジェクト概要: SCP-188-KOのワイヤーを到達できる最下部である地下2601kmから徐々に熱しながら、強度を維持できる程度に引き延ばす。重心の落下の影響がクラスα以下になったと予想された時点で、ワイヤーを切断する。
対処事案内容: SCP-188-KOにより、オブジェクトの存在する島はオブジェクト周辺を除いて水没、地球の自転やマントルの動きにも異常が確認され始めている。約2年後には地殻変動をはじめとした各種の災害が連鎖的に発生し、5年ほどかけてXK-クラス:世界終焉シナリオが発生すると予想されている。
実施結果: 失敗。重心が元の位置から95m離れた状態でワイヤーが切断され、[編集済]。SCP-████-FRを稼働させることで鎮静化したが、突発的な地殻変動によるK-クラスシナリオ発生リスクがβに格上げされた。
No.183
実施日: 2155/3/19
優先度クラス: S+
K-クラスシナリオ発生リスク: δ
成功確率: 35%
プロジェクト概要: SCP-████-KOによって生成されるループ空間をSCP-████、SCP-████-ITを用いて大幅に拡張・強化し、グレートブリテン島全域に拡散したSCP-████-ωを封じ込める。
対処事案内容: SCP-████-ωによるSK-クラス:支配シフトシナリオが進行中である。約2ヶ月後にはSCP-████-ωがグレートブリテン島を脱出し、ヨーロッパ全域に拡散すると予想されている。なお、SCP-████-ωはSCP-1736-JP-2の現実改変作用によって生成された異常存在であると判明しており、事案1736-JPとして記録されている。
実施結果: 成功。プロジェクト途中でサイト-673/678/679、職員923名、民間人約35000名が無力化。グレートブリテン島内のSCPオブジェクトは遠隔操作とコンピュータプログラムのみによって管理されており、2155/9/19現在52個が収容違反状態にある。コンピュータによるシミュレーションでは、今回生成した収容空間の有効期限は約30年であると算出されている。
補遺2: 事案1736-JPを受け、日本で稼働中の全鉄道の自動ドアをSCP-1736-JP-1が発生しえない形式に変更することによってSCP-1736-JP-2を封じ込めるプロトコルが提案されましたが、それに伴うプロトコル"Alternative"の停止によるリスクの大きさから却下されました。プロトコル"Alternative"は継続されます。