SCP-1749-JP
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アイテム番号: SCP-1749-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1749-JPはサイト-81-109の標準物品収容ロッカー内に収容されます。SCP-1749-JPに関する実験の実施には担当職員1名からの許可が必要です。新たなSCP-1749-JPが発見された場合、カバーストーリー「不良品回収」を流布・適用したうえで回収作業を実施します。

説明: SCP-1749-JPは無柄の紙製パッケージに封入された、異常性を有する粉末状入浴剤です。現在までに34袋分のSCP-1749-JPが回収されており、実例ごとに枝番号に指定されています。

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SCP-1749-JP-Aの大浴場外部。

SCP-1749-JPの異常性は、40℃以上の湯に溶かした上で、その湯に全裸の人間が肩に浸かるまで入浴し、一定の速度で数字を1から10まで数え上げることで発生します。湯はD-UMUPaS11型ポータルと同様の性質を示し、入浴していた人物は別地点(SCP-1749-JP-Aに指定)へと転移します。

SCP-1749-JP-Aは銭湯の大浴場に類似した空間であり、非異常の湯船や洗い場が多数設置されています。内部には人型実体が複数確認されており、内部空間の従業員や客としての振る舞いを見せます。

大浴場の外には脱衣所と思われる空間が存在し、その先にも空間が続いていると推測されます。内部からの観察では、前述の実体らが浴衣を着て歩いている姿や、和風の建造物などが建ち並ぶ、いわゆる「温泉街」と称される都市景観が確認されました。実体らはSCP-1749-JP-Aを含めたこれらの空間全体を「湯元街」と呼称しています。

SCP-1749-JP-A内部の浴槽にてSCP-1749-JP起動手順を再び実行した際、入浴した人物は再び転移前の地点へと帰還します。

SCP-1749-JPは2015/03/06に北海道札幌市にあるアパートから回収、住民からの聞き取りによる異常性発現機序の特定がなされました。なお、アパートの住民らは超常に関する知識を有さないと判断されたため、回収に伴いカバーストーリー「夢オチ」の流布を行いました。


補遺1: 2015/03/16、SCP-1749-JP-A内部空間の調査が実施されました。調査には、録画・録音機能付きのカメラを携帯させたDクラス職員(D-2490-1)が用いられます。以下は調査時に記録された映像です。

映像記録1749-JP.1


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«記録開始»

[大きな水音。カメラは下から徐々に正面を向き、SCP-1749-JP-A内部の大浴場を映し出す。湯船の他、シャワーの水音が定常的に発生しているが、水蒸気により映像が徐々に曇る]

D-2490-1: [大きな音を立てて水面に浮上し、大きく息を吸い込む] SCP-1749-JP-Aに来たみたいです。開始します。

[D-2490-1はレンズを指で拭き、カメラを左右に向ける。大浴場には複数種類の人型実体が入浴しており、いずれも当惑の表情を浮かべている]

D-2490-1: [人型実体らを見回して]うわ、なんか自分以外にもいっぱい入ってますね。とりあえず、きがえ場? の方に向かいます。

[D-2490-1は人型実体らを押しのけるようにして浴槽の手すりをつかみ、湯船から出る]

[洗い場の方向から、ツナギを着用したやや等身の低い人型実体がD-2490-1に小走りで接近する]

人型実体: ちょっとちょっと。何やってるんですか。

D-2490-1: え、オレですか?

人型実体: そう、そこのあなたですよ! 急に大きな水音がするんで来てみたら⋯⋯はい、カメラそこに置いて。

[D-2490-1が実体に促されるようにしてカメラを床に伏せる。映像が暗転、音声のみになる。]

人型実体: こんなところで何やってるんですか。とにかく、詰め所の方で話を聞きますよ、付いていってもらいますからね。

D-2490-1: な、なんだよ! いや、オレはここに来たばっかりで⋯⋯

[多数の足音・実体同士の話し声]

D-2490-1: なんだよ! 放せよ! オレはあいつらに言われてやっただけだって!

[断続的に続く大きな水音。D-2490-1と実体の揉み合う音と推測される]

人型実体: [人型実体の倒れる音]あいたたた⋯⋯着いていってくれないんじゃ仕方ないですねえ⋯⋯

[大型の物体がねばつく音が奥から近づいてくる]

D-2490-1: な、なんだよこいつ⋯⋯[叫び声。次いで走り出す音]

人型実体: おっと、銭湯で走ると危ないですよ!

D-2490-1: は?ふざける  

[D-2490-1が足を滑らせ転倒する音]

人型実体: ほうら言わんこっちゃない⋯⋯ささ、連れてっちゃってくださーい!

[再び大型の物体がねばつく音。D-2490-1の叫び声が徐々に遠ざかっていく]

人型実体: [溜め息] 困ったものですねえ。

[突如カメラが持ち上げられ、実体の顔面が大きく映し出される]

人型実体: どなたのご指図か知りませんけどね、銭湯内の盗撮は禁止ですよ! 他のお客さんのプライバシーがあるんですから! それから、浴場でバシャバシャ水音を立てないことです! [咳払い] くれぐれも! ルールを守ってもらわないと! それじゃ!

[カメラが実体によって湯に投げ込まれる。泡と共に数秒のノイズが走り、転移前の浴槽が映し出される]

«記録終了»


終了報告書: SCP-1749-JP-Aに存在する実体は、財団の確認する複数の口碑実体2と外見上の類似がみられる。SCP-1749-JP-A内部は、銭湯のルールに類似したいくつかの禁忌事項が存在すると予測され、これを破ることによって生じた未知の異常存在により、D-2490-1はロストしたと思われる。



映像記録1749-JP.2


付記: 前回の内部調査より、予期せぬ事態を防ぐため、SCP-1749-JP-A内部での移動は不用意な音を立てず、また記録装置の起動は十分な安全及び内部の実体による許可を確保できたのちに行う。


«記録開始»

[実体らが話し合う声。エージェントの証言によると、SCP-1749-JP-Aの大浴場を抜け、脱衣所に移動し、その場にいた従業員を懐柔。撮影およびインタビュー許可を取ったとのこと。]

エージェント・渥美: では、カメラを回させていただきますね。

[カメラが起動される。銭湯の更衣室のような部屋。一方の壁にある扉は、SCP-1749-JP-Aと思しき大浴場へと繋がっている。白タオルを腰に巻いたエージェント・渥美の目の前には、映像記録1749-JP.1の従業員に類似した人型実体が着物を着用し座っている]

人型実体: ええ、ええ、でもインタビューなんて初めてだから緊張しちゃうわ。お兄さんもお手柔らかにね?

エージェント・渥美: はい、お手柔らかにいたしますよ⋯⋯。早速ですが、ここはやはり銭湯でしょうか? お風呂に入浴剤を溶かして、そこに浸かっていたらこの場所にやってきたんです。

人型実体: そうよ、ここは銭湯さ。でもただの銭湯じゃないよ? 私たちが何年も続けてきた、自慢の温泉さ。大浴場に湯上がり場に⋯⋯[笑顔]最近はサウナもつけたのよ。

[同じくツナギを着用した人型実体がインタビュー地点に近づく。以後、実体2と呼称]

実体2: あら美形さんじゃない。どこから来たの?

エージェント・渥美: ええとですね⋯⋯[前述の記述と重複するため省略]

実体2: へえ! 入浴剤ですって  

[エージェントの向かいに座っている、顔面がカエルに類似した人型実体が会話に割り込む。以後、実体3と呼称]

実体3: 何? 入浴剤? じゃあリュウさんの作ったやつと違うんかい?

エージェント・渥美: [実体3の方を向いて]その話、ちょっと詳しくお聞かせ願えませんか?

実体3: [エージェントの右横にある藤椅子に座る]よくここの銭湯来るリュウさんっつう人がいてな、ここの湯が体に合うから入浴剤にするっつって、溜まった湯の花でちょちょいと作り上げたらしんだ。なんでも、その入浴剤使えばいつでもここの湯楽しめるんだと。確か、ちょっとここ置かしてくんろってリュウさんが残してた奴があるはずなんだが⋯⋯[画面外部を指差す]あれだあれだ。

[実体3の指差した先に、ダンボールに大量に詰め込まれたSCP-1749-JPが積み上がっている]

エージェント・渥美: うわ⋯⋯意外とたくさんあるんですね。数個ほど、回収しても?

実体3: ん! 大丈夫大丈夫! リュウさんには俺が言っとくよ。今日はどこの湯いっかなあ⋯⋯リュウさん浮気もんだからなあ![笑う]

エージェント・渥美: この空間には他にも銭湯があるんですね?

実体: ええ、湯元自慢の源泉はここだけじゃありませんから。お兄さんも外に出てぶらついてみる? 今なら浴衣の一つや二つ、貸しちゃうわよ?

エージェント・渥美: そうなんですね。まあ、今回はここの調査だけなので、それはまたの機会に⋯⋯えっ。

[撮影場所を人間の従業員が通りかかる。ツナギと鉢巻を着用しているが、その外見はD-2490-1のものと酷似している。]

実体: うん? どうしたの。

エージェント・渥美: ⋯⋯あの、すみません [人間を指差す] あの従業員の方に見覚えがあるんですが⋯⋯

実体: ああ、あの子? あの子もね、アンタみたいに湯船から突然やって来た子でね⋯⋯もしかして、あの子の言ってた「あいつら」ってお兄さんのことだったの?

エージェント・渥美: そうですね⋯⋯その節は、ええと、申し訳なかったです。

実体: 湯船を勝手に撮ってたから罰としてここで働かせてたんですけど、みるみる腕を上げていってね、今ではすっかりウチらの一員ですよ! だからお兄さんは気にしないで。

[実体がD-2490-1を呼び止める。D-2490-1はエージェントの姿を認め、会話に参加する]

D-2490-1: よっ! 久しぶり! あのあと色々あって、なんかニョロニョロした化け物に捕まってここの事務所? みたいな場所に連れてかれてやばい! ってなったんだけどさ、なんかここで銭湯の手伝いやればOKってことになってさ。

エージェント・渥美: [警戒しながら]そ、そうだったんですね⋯⋯無事で何より⋯⋯

D-2490-1: そんな緊張すんなって! でさ、最初はまあダルかったワケなんだけど、そっちよりも全然ブラックじゃないし、シャワー浴び放題だし、やることやるだけでなんかめっちゃ褒められるし⋯⋯なんだ⋯⋯やりがい? ってやつ? もあってさ、結果的にこっち来て逆にラッキーって感じ。

画面外からの呼び声: おーい! タケ3! 牛乳こっちもってきてくれるかい!

D-2490-1: [画面外を向いて] はいよ![エージェント・渥美に向き直る]ってわけだからさ、オレ、ここで働かせてもらうわ。大丈夫だって、そっちの機密情報とかは横流ししないからさ。じゃ!

[D-2490-1が牛乳やコーヒー牛乳などの入ったボトルコンテナを抱え、周囲の実体らにぶつからないようにして画面外へ退出する]

実体: [D-2490-1へ手を振りながら]今度こういうインタビューがあった時はタケに頼もうかしら。人間同士の方がそちらも詰まる話出来て良いでしょう?

エージェント・渥美: ええ、まあ、考えておきます⋯⋯

[SCP-1749-JP-A外部から、「ヨイサ」や「ソレソレ」といった囃し言葉の混じった、太鼓・笛で構成された音楽が接近する]

実体2: [立ち上がり、客らに向かって]さあ皆さん、お神輿が近づいてきたよ! 荷物はコッチで見ておくから、ぜひぜひ外に出て見てらっしゃいな!

[脱衣所にいた客とみられる実体群が次々と浴衣を着用し、屋外へと去っていく。エージェントの横に座っていた実体3も、浴衣の帯をきつく締めた後、小躍りしながら画面外へと退出する。脱衣所にはエージェントと従業員らのみが残り、内部は急に静かになる]

エージェント・渥美: お祭りですか?

実体: そうそう! 今日は近くの神社で例大祭をやってるのよ!

実体2: 神社の近くには屋台もわんさか出てね、お神輿、お山車のどんちゃん騒ぎだよ!

実体: 昨日はお神輿担いだ男衆たちが仕事終わりにこの銭湯に来てね、もう大入満員だったのよ。

エージェント・渥美: 随分賑やかですね。

実体: そうさね⋯⋯やっぱり、温泉街ってのは賑やかでなくっちゃ。

エージェント・渥美: ん? 何て言いました?

実体: あらやだ独り言よ、恥ずかしいわ。

[後略]

«記録終了»


終了報告書: エージェントの回収した入浴剤はSCP-1749-JPと同一のものであることが確認されました。SCP-1749-JP-A内部の空間が想定よりも広範囲かつ広く異常の存在が認められたため、財団は当該空間を要注意領域「湯元街」に指定することに決定しました。情報収集のため、Cクラス以上の財団エージェントをSCP-1749-JP-Aに派遣し、労働契約を結ばせることの是非については議論中です。



補遺2: 追加情報

SCP-1749-JPの成分分析を行った結果、北海道にある██温泉の源泉成分と一致することが判明しました。██温泉の旅館群は経営不振によって既に廃業しており、財団による現地調査の結果、当該地域の温泉街は廃業以降も湧出を続ける源泉により、施設の大半が水没していました。

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旧██温泉、廃旅館の大浴場。

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