SCP-1765-JP
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事例19の際に記録されたSCP-1765-JPの近影

アイテム番号: SCP-1765-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1765-JPの収容は不可能です。警察組織に潜入している財団エージェントは出現事例の発見を試みます。出現事例を発見した場合にはSCP-1765-JP-Aを収容し、関係者への記憶処理を行います。

説明: SCP-1765-JPはサングラスを掛け、鮮やかな色のアロハシャツを着た外見上非異常のヒト型実体です。SCP-1765-JPは日本国内の殺人未遂事件に付随して出現が確認されており、SCP-1765-JPが出現しなかった場合、対象となった全ての殺人未遂事件は既遂になっていたと考えられています。SCP-1765-JPの出現が付随する殺人未遂事件は年間で20件程度であり、出現には特定の条件や法則が存在すると推定されています。

対象となった殺人未遂事件における容疑者(以下SCP-1765-JP-Aと記載。また必要に応じてナンバリングを記載。)は、犯行の直前にSCP-1765-JPが出現し、犯行を断念させられたと主張しています。SCP-1765-JP-AはSCP-1765-JP-JPとの遭遇後、大鬱病性障害と類似した精神影響を受けます。財団が確認した全ての事例において、SCP-1765-JP-Aはどのような措置を施そうとも3カ月以内に死亡しています。

映像記録: (2005/12/██)最初にSCP-1765-JPの出現が確認された事例において、SCP-1765-JP-A-1は自らの殺人を記録するためにビデオカメラを用いて撮影を行っていました。以下はその書き起こしです。

<映像開始>

[地下室と思われる室内が映し出される、SCP-1765-JP-A-1の笑い声が記録される。くぐもった女性の唸り声が記録される。]

SCP-1765-JP-A-1: えー、ふふっ。ついにこの時が来ました。僕はこの殺人を動画に残し、ファイル共有したり、インターネットに投稿したり、テレビ局に送ったりします。

SCP-1765-JP-A-1: これは人類初の試みです、ふふっ。きっと僕を賞賛する人も沢山現れるでしょう。楽しみです。

[映像内に音もなくSCP-1765-JPが出現する。]

SCP-1765-JP: んー……。いやどうですかねぇ……。

[大きな物音が記録される、SCP-1765-JP-A-1が動揺し付近の物体に衝突したものと推察される。]

SCP-1765-JP-A-1: ななななんだお前!? なに! 誰!?

SCP-1765-JP: いやー、ここまで見させていただいたんですけども、なんというかなぁ……。面白くないというか、どっかで見たというか、あんまりオリジナリティを感じないんですよね。「人類初の試み」と仰ってましたが。

SCP-1765-JP-A-1: 突然なんなんだよお前! も、文句あるのか!

SCP-1765-JP: いや、別に文句とかではないんですけど……。うーん、下調べとかもあまりされてませんよね? そもそも殺人を収録した映像っていうもの自体は全然ありますし、映画とか漫画とかでも居るじゃないですか、そういうことする人。だからなんだろうなぁ……まあこれは貴方の普段の生活も観察した上での話なんですが、そういう創作上のサイコパスに憧れてる感といいますか、異常だと思われたいんだろうなぁっていう感想が拭えないんですよね。まあ普通は思っても実行はしないので、そういう意味で異常っちゃ異常なんですが。

SCP-1765-JP-A-1: [不明瞭な怒鳴り声]

SCP-1765-JP: こういうのが人々に魅力的に思われるには、あなた自身に魅力が必要なのかな~と。こっちの世界で言うと……"ハンニバルさん"とか"ジグソウさん"とか、そういうのですよね。今のあなたの身辺を調べられるとオタク趣味の物が沢山出てくるわけで、「アニメの影響を受けた犯行」みたいに言われると思いません? それを避けるためにもあなた自身の「キャラクター」的な部分も「演出」に組み込む必要があると思います。現状だと「目立とうとして過激な事をやってる」の範疇を出ないのかなぁと。

[以降およそ30分間に渡り、SCP-1765-JPはSCP-1765-JP-A-1への人格攻撃を含んだ主張を行う。]

[SCP-1765-JPが主張を終える。連続したSCP-1765-JP-A-1の嗚咽が記録されている。]

SCP-1765-JP: じゃあ、また機会があれば。

[SCP-1765-JPが消失する。]

<映像終了>

付記: 留置所からのSCP-1765-JP-A-1の回収後、SCP-1765-JP-A-1の精神的、肉体的な衰弱が認められました。財団は治療、及び延命を試みましたが、SCP-1765-JP-A-1は衰弱により79日後に死亡しました。

事例記録: 以下の全ての事例にはSCP-1765-JP-Aに指定された人物の証言に基づいて記録されています。

事例5: SCP-1765-JP-A-5が金銭目的で一般宅に押し入り、家主と揉み合いになった事例。

概要: SCP-1765-JP-A-5が包丁を用いて家主を殺害しようと試みたところ、SCP-1765-JPが出現した。この際SCP-1765-JPからSCP-1765-JP-A-5に対して発せられた内容のうち、特筆すべき内容を以下に示す。

・どうせ捕まるのだから、逃げるか謝るかするべき。
・こんな偶発的な殺人は面白くもなんともない。
・そもそも殺人も強盗も計画をもって行うべき、行き当たりばったりでこのような行動をすべきではない。
・何の計画も無く生きてるから、こういう無計画な犯行をすることになる。

結果: SCP-1765-JP-A-5は犯行を行うことが出来なかった。SCP-1765-JP-A-5は財団による回収後、82日後に衰弱して死亡した。

事例11: SCP-1765-JP-A-11が自身との恋愛関係を絶とうとした恋人に対し、逆上した事例。

概要: SCP-1765-JP-A-11がワインボトルを用いて恋人を殴打しようと試みたところ、SCP-1765-JPが出現した。この際SCP-1765-JPからSCP-1765-JP-A-11に対して発せられた内容のうち、特筆すべき内容を以下に示す。

・こういうことをしようとする奴があまりにも多くて飽き飽きしている。
・殺したところで、永遠にその相手をあなたの物に出来るわけではない。根本的に勘違いをしている。
・別にこの恋人も特別ではないし、この恋も特別な恋ではない。あまりにも視野が狭い。
・物事をきちんと見ず、すぐ短絡的な行動をするから恋人にも愛想をつかされる。

結果: SCP-1765-JP-A-11は犯行を行うことが出来なかった。SCP-1765-JP-A-11は財団による回収後、52日後に衰弱して死亡した。

事例18: SCP-1765-JP-A-18が普段から暴力を振るっていたいじめの対象に対して、川の中に飛び込むように指示した事例。

概要: SCP-1765-JP-A-18がいじめの対象に対して手足を縛り、川に飛び込むように指示した。対象が抵抗したためにSCP-1765-JP-A-18は自ら対象を川に転落させようと試みたところ、SCP-1765-JPが出現した。この際SCP-1765-JPからSCP-1765-JP-A-18に対して発せられた内容のうち、特筆すべき内容を以下に示す。

・凄い笑顔だったがこれが面白いのか。
・常々達成感のある殺人が見たいと思っているが、これには全くない。
・これが致命的な結果に繋がるのが分からないのか。
・明らかに自分の手で殺すのに、殺した後は「こうなると思ってなかった」等と言いそうである。

結果: SCP-1765-JP-A-18は犯行を行うことが出来なかった。SCP-1765-JP-A-18は財団による回収後、66日後に衰弱して死亡した。

事故記録: (2006/11/13)SCP-████-JPの定期給餌プロトコルを行う際、飼料として用いる人工培養人間1をSCP-████-JP収容室に投入する操作を行おうとした職員の眼前にSCP-1765-JPが出現しました。SCP-1765-JPは職員に対し「化物にエサとして人間を与えるのはありきたりではないか。」「もっと工夫が欲しい、新規性がない。」という主旨の主張をしました。職員は他のSCP-1765-JP-A同様に苦悩を示し、操作を中断しました。これにより適切な給餌を行われなかったSCP-████-JPは収容違反し、付近にいた花村博士を殺害し摂食しました。他のSCP-1765-JP-Aと同様、操作を担当した職員は57日後に死亡しました。

以前より倫理委員会の主導でプロトコルの見直しは段階的に進められていましたが、倫理的観点の不要論も根強く、改定は難航していました。しかしこの事故により、人命を犠牲にする必要のあるプロトコルはSCP-1765-JPの出現により破綻する可能性と、関与した職員がSCP-1765-JPの異常性によって死亡する可能性が示され、不要論を支持していた職員の態度も軟化しました。

しかしなんでアノマリーのほうじゃなく、私達のほうに言うんだ。 -椿博士

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