アイテム番号: SCP-1768-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1768-JPはサイト-81██の低危険物収容庫に保管されます。実験に使用する場合、セキュリティクリアランスレベル3以上の職員1名の許可を得てください。実験に使用した物品は実験終了後に処分してください。
説明: SCP-1768-JPは100cm×400cm×50cmの鉄でできた直方体の箱です。表面はほとんど酸化していませんが、酸化被膜等の処理は行われていないことが確認されています。
SCP-1768-JPの特異性は、中に人間、あるいは人間由来の組織を入れた状態で蓋を閉めると発生します。人間以外の場合異常性は発生せず通常の開閉が可能です。
蓋を閉められたSCP-1768-JPは2~48時間が経過するまで開閉が不可能になります。入れた人間の重量が少ない程、開閉不可時間が短くなる事が█回の実験により明らかとなっています。開閉不可時間を過ぎると、再び蓋を開閉出来るようになります。その際、内部の人間は消失しており、同質量の鉄が代わりに出現します。この鉄に異常性は存在していません。出現する鉄は多くの場合極めて不純物が多いため、使用する場合、精錬を行うことが必要です。
このことからSCP-1768-JPは中に入れられた人間を鉄に変換するオブジェクトなのではないかと議論されていますが、内部の観測は蓋が閉められた時点で通信が途切れるため仮説の域を出ていません。
SCP-1768-JPは日本伝承における温羅1の所持品であったとされ、蒐集院による捜索、調査が行われていましたが、19██年まで発見されることはありませんでした。19██年、東弊重工の関連施設を財団が調査、襲撃した際発見され、数名の関係者と共に押収されました。
事案記録1768-JP-1 20██/██/██、SCP-1768-JP移送の際、所属不明の組織による襲撃が発生しました。襲撃者は軽度の現実改変者と何らかの方法で身体を強化したと推測される人員からなっており、SCP-1768-JPの奪還を目的としていたと推測されます。この事案における死者はありませんが、3名が重傷、12名が軽傷を受けました。数分の襲撃後、襲撃者はSCP-1768-JPの確保に失敗したと判断したのか、何らかの方法で消失、逃走し追跡は失敗しています。
襲撃者に対しての後続調査により、襲撃者は東弊重工に起因するもので無かったことが判明しました。以下は当襲撃事案において情報を持つと推測される東弊重工の関係者、新港氏へのインタビュー記録です。新港氏はSCP-1768-JPを発見した襲撃時に構成員の一人として確保されていました。
インタビュー記録1768-JP-1
対象: 新港 ██氏
インタビュアー: 護良研究員
<録音開始>
(前半部は事実確認のため省略)
護良研究員: では本題に移りましょう。あのオブジェクトはあなたたちの所持品ですね?
新港氏: もう一度言うが、俺は下っ端の下っ端。で、詳しい事は何も知らねえんだってことは分かってくれよ? ん、分かってくれるならいいんだよ。で、あの箱か、確かにアレは俺んとこの所持品だがよ。実際は貰った、いや、奪ったもんらしいわな
護良研究員: 奪った、とは
新港氏: アンタらも知っての通り、俺たちはまあ、理から外れるようなもん作ってる人間だってのは知ってるな? ん、そういうわけで同じような組織とも付き合いっつうか関係があるわけだ。ニッソ2くらいなら知ってるだろ、俺らとアイツらとは不干渉らしいが。そんなこんなでよ、いざこざ起こったときにそういった団体から奪ったもんらしいわ。ニッソはアイツらの体狙ってるが俺たちの欲しいのは技術だったからよ、産業スパイとかも送り込んでな
護良研究員: 他の団体のオブジェクトというわけですか。では、その団体の名は?
新港氏: きさらぎ。如月工務店よ
護良研究員: 如月工務店?
新港氏: そうらしい。知ってるのか? 俺は知らんが、何でもアイツらこちらに来た時、…いや、こっちにいたときだっけか? からあれを使ってたらしいな。俺らの先輩方はこの国盛り立てるために頑張ったらしいが、そこにアイツらもいたとよ
護良研究員: ならば如月工務店にとっての材料とは
新港氏: それは流石に知らねえよ
<録音終了>
この証言から如月工務店に対する調査が進められることが決定されました。後続調査により東弊重工と如月工務店は19██年頃から度々衝突し、互いの技術を簒奪し合う関係にあったことが推測されます。この時期は如月工務店の名称が初めて確認される時期と一致し、また、これは日本における高度経済成長期と一致しています。ここから高度経済成長の背景に両組織が関係していることが推測されましたが、人間1人から算出される資材量と高度経済成長期に使用された資材量に大きく開きがある等の問題から否定意見も頻出したため、複数の資料調査が開始されました。
補遺1: SCP-1768-JP関連資料 以下の資料は、SCP-1768-JP回収以前に収集されていた"如月工務店"が関与すると推測された事象に対する資料です。これらの資料は上記の調査によりSCP-1768-JPと密接な関係を持つと推測されたため、統合・再編され調査が行われました。
"鉄錆の果実教団"に対する調書(抜粋)
20██/██/██、[編集済み]地域において活動していたGoI-2722"鉄錆の果実教団"への第三次襲撃作戦の際、物質を金へと変換するオブジェクトが発見されました。同様の特異性を持つオブジェクトの存在が確認されることから、調査が進められています。以下は当オブジェクトに付随していた文章です。
SCP-1768-JP関連文章-1
賽銭箱
※使用には担当者の許可を取ること
使用方法
儀式の際発生する肉を放り込み、開けられるようになるまで待つ。けして中に入らないこと
※如月工務店様からの貴重な寄贈品です。大事に使いましょう!
SCP-1768-JP関連文章-2
寄贈記録
寄贈番号: 12887
寄贈日時: 19██/██/██3
寄贈者: 有限会社如月工務店
寄贈品: 賽銭箱
備考: これまでの材料提供に対する感謝としての寄贈 今すぐあの鬼どもを見つけ出せ
担当者: ██
補遺2: 20██/██/██、Web走査Botにより自殺志願者が利用する廃ビルの存在を確認。何らかの異常性質を持つ可能性があることから調査に向かったところ、該当ビルに如月工務店のロゴが確認されました。これを受けビル内への侵入が計画、承認されたのちエージェント・██を含む3名が侵入。その後、連絡が途絶えました。
事案記録1768-JP-2 上記の連絡喪失を受け、機動部隊を組織しビル内への侵入を計画していたところ、20██/██/██、東弊重工、日本生類創研らがビルを襲撃する甲種接触事案が発生、それに伴い緊急対応として周囲のエージェントを派遣しました。
エージェントらが突入を行おうとしたところ、両団体の渉外部と接触、該当ビルの収容方法に対する情報提供の見返りに後述するSCP-1768-JP-Bを一部回収する協力を提案されました。この取引は財団上位職員会議により可決され、成立しました。以下は当事案時、東弊重工及び日本生類創研の構成員より入手した情報です。これらの情報により該当ビルはSCP-1768-JP-Aとして指定されました。
SCP-1768-JP-A内室番号 | 異常性 | 備考 |
---|---|---|
エントランスホール | 通常時は異常なし。特定の儀式を執り行うことで内部の人間を肉塊へと変質させる。この肉塊をSCP-1768-JP-Bと指定。SCP-1768-JP-Bは変質前の人間と同等の知性、記憶を保持すると推測される。肉塊は本来の人間の約十倍程度の体積まで増加する | "鉄錆の果実教団"が実施していた儀式との類似点が見られる。また、日本生類創研の技術が使用されたとの指摘あり |
101 | SCP-1768-JPと同様の異常性を持つ | - |
102 | SCP-1768-JPと同様の異常性を持つが、変質する物質が金である | - |
703 | SCP-1768-JPと同様の異常性を持つが、変質する物質が真鍮である | - |
地階 | SCP-1768-JP-Bに埋め尽くされている。これらのSCP-1768-JP-Bには複数の人物のDNAが確認され、消失したエージェント3名、日生研の研究者█名、東弊重工の技術者██名、現在までに確認されている民間人███名が含まれる。 | SCP-1768-JP-Bは自己増殖を繰り返している |
これまでの調査結果からSCP-1768-JP-Aにおいて約███人以上がSCP-1768-JP-Aにより鉄、真鍮、マグネシウム合金等の金属、合金へと変換された可能性が指摘されています。また、その影響範囲を鑑みるに、日本国民が通常使用する製品にSCP-1768-JPによる材料が使用されている可能性が指摘されました。
事案記録1768-JP-3 20██/██/██、SCP-1768-JP-Aが所属不明の団体により襲撃を受けました。常駐していた警備員が一時退避し翌日機動部隊と共に襲撃を行った際、SCP-1768-JP-Aの消滅が確認されました。これらの襲撃者は前回の襲撃者と特徴が一致していました。現在、web走査等の結果からSCP-1768-JP-Aが他所に存在していると推測される為、調査、同定の試みが続けられています。
補遺3: 全国的に調査を行ったところ、日本国内の約██.█±██%の製品、住居にSCP-1768-JP由来の資材、材料が使用されていることが判明しました。これらの金属は複数の会社、あるいは要注意団体を通じ洗浄されているため追跡は困難です。この中には█████、████████等日本において重要な意味を持つ施設、また、サイト-81██を含む財団関連施設も多数確認されました。これらの資材は現在時点で一切の異常性が確認されず、一般の工業製品と区別困難なため、回収は検討されていません。