SCP-1769-JP
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ペットボトル1.jpg

砂浜に漂着したSCP-1769-JP

アイテム番号: SCP-1769-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1769-JPの成体は10個体がサイト-8168の5m×5m×5mの超硬強化ガラス製収容ユニットに収容されます。ユニットの内部は深さ4mの海水で満たすと共に人工波浪発生装置によって15cmの高さの波が発生している状態を維持してください。SCP-1769-JPの中から生じたSCP-1769-JP-Aは気泡体の減圧と生殖腺の切除・回収を実施した後に強酸によって溶解処分します。ユニットの点検は1週間ごとに行い、損傷が確認された場合は直ちに修復を行ってください。

収容外にあるSCP-1769-JPの監視活動は機動部隊む-10("逆さ海月")が担当します。SCP-1769-JPの野生個体が発見された場合は直ちに回収・溶解処分と、カバーストーリー「清掃活動」の適用を、被害者が出た場合は関係者へのクラスA記憶処理とカバーストーリー「心臓麻痺」の適用も実施してください。また収容外でのイベント1769-JPの発生が確認された場合は上記の手順に加えてプロトコル・バミューダを実行してください。

説明: SCP-1769-JPはDNA鑑定の結果からカツオノエボシ(学名: Physalia physalis)の近縁種であると考えらえているクダクラゲ目(学名: Siphonophorae)の刺胞動物です。通常は一般的なクダクラゲ目と同様に機能と形態の異なるヒドロ虫の群体として存在しています。生態は後述する点を除けば概ねカツオノエボシに類似するものですが、形態は大きく異なります。

SCP-1769-JPの外観は横倒しになった大型ペットボトル1に酷似しています。個体差はありますが、一般的に流通している大型ペットボトルに準じた大きさと形状を有している点は全個体で共通しています。"ペットボトル"は水を主成分とした半透明の組織で形成されています。この組織は未知の原理によって非常に高い靭性と耐久性、及び耐熱性と断熱性を有しており、結果としてSCP-1769-JPは約████MPaの力と約████Kの熱に耐えることが可能です。そのためSCP-1769-JPに引張や温度の変化によって損傷を与えることは非常に困難です。

SCP-1769-JPの身体は役割ごとに2つの部分に大別することが出来、"ペットボトルの下側"に存在する水中部と"ペットボトル"の残りの大部分を占めている水上部がそれぞれに該当します。

水中部は一般的なクダクラゲ目の栄養部に相当する部分であり、主に栄養体2と感触体3、及び生殖体4と触手から構成されています。触手の長さや構造はカツオノエボシのものと同様ですが、刺胞に含まれる毒の主成分はダイオキシン類の1種であると考えられている未知の神経毒です。これは高い毒性を有しており、SCP-1769-JPに刺された場合、平均的な成人男性であれば約5分ほどで心筋障害や呼吸困難などにより死亡します。

水上部は浮力の調節を担っている部分であり、気泡体と"飲み口"及び"キャップ"に酷似した独自の器官から構成されています。前者は浮袋としての役割を果たす器官で、二酸化炭素を主成分とした気体の生産と生産された気体を溜める役割を果たす器官であり、後者は開閉機構を備えた"弁"としての役割を果たす器官です。SCP-1769-JPは気泡体を伸縮させると共に"弁"を開閉させて内部の気体の量を変化させることによって浮力を増減させます。

SCP-1769-JP-Aには明確な繁殖時期は存在せず、気象や海水温によって多少の影響は受けるものの年間を通して繁殖を行います。SCP-1769-JPは一般的なクダクラゲ目と同様の方法によって繁殖を行いますが、一方でSCP-1769-JPにしか見られない異常な繁殖行動も行います。後者の繁殖行動を開始した個体を便宜上SCP-1769-JP-Aと呼称します。SCP-1769-JP-Aはまず約8日間で生殖腺を発達させ、その後生殖腺の内部に約20日間で有性生殖により卵を約████個ほど発生させます。次にSCP-1769-JP-Aは"弁"を海水面に対して開くと同時に、気泡体を急速に縮小/膨張させて陰圧状態を作り出すことで内部へと海水を取り込みます。この過程でSCP-1769-JP-Aは体積の約70%が水没し、"飲み口"を下へと向けた状態になりますが、これは引き込んだ海水の重量によるものです。約300㎤の海水を取り込んだSCP-1769-JP-Aは"弁"を閉じると共に気泡体の内部の気体を急激に増加させ始めます。この際は内部が満たされることによって気体の増加が止まることはありません。そのため内部の気体と海水は徐々に圧縮されていき、約30日後には気泡体の内圧は約███MPaにまで達します。内部の海水から高圧氷が生じない理由、及びSCP-1769-JPが浮力を維持できる理由は不明です。以上の行程を完了させたSCP-1769-JP-Aは以下の条件が満たされることでイベント1769-JPを発生させます。

周囲約1km以内の海域の平均波高が10cm以下である。
    〃      晴天かつ雲の量が4以下である。
    〃      大気の状態が安定している。

イベント1769-JPはSCP-1769-JP-Aが"弁"を開いて内部の気体と水を噴出させることによって発生するイベントです。高圧化に置かれていたこれらが噴出することでSCP-1769-JP-Aは作用・反作用の法則により鉛直方向へと初速約██km/秒で打ち上げられます。SCP-1769-JP-Aは未知の原理により空気抵抗を極限まで軽減することで上昇を続けて最終的に約██km/秒にまで達し、イベントの発生から約██分で最高地点である高度約████kmへと到達します。上昇中のSCP-1769-JP-Aは膨大な量の運動エネルギーを有している為に、これと接触した物体は集中した力を一点へと受けることで甚大な被害を受けます。最高地点へと到達したSCP-1769-JP-Aは落下へと転じますが、全ての殆どの個体はこの時の大気圏への突入角度の深さのために、空力加熱によって高度約████kmへと落下するまでに燃え尽きます。しかしながら"ペットボトル"の内部に存在する生殖腺と卵は、"ペットボトル"が断熱材としての役割を果たすことによって殆ど熱によるダメージを受けることなく大気圏内へと再突入します。卵は自由落下する生殖腺から空中で放出されることによって広範囲に散布され、それらの中で海面へと落着したものは成長してやがてSCP-1769-JPとなります。このことからイベント1769-JPは広範囲へと生息域を拡大させるための繁殖行動であると考えられています。散布された卵のうち海中へと落着したものは成長してやがてSCP-1769-JPへとなります。なお、SCP-1769-JPが気象条件を感知するメカニズムは解明されていません。

SCP-1769-JPは20██年██月██日にジャワ海上で発生した旅客機の行方不明事故の調査を行っていたインドネシア共和国海軍の艦艇によって、20██年██月██日に発見されました。潜入エージェントからの報告によって詳細を知った財団は直ちに事故現場付近の海域の調査と封鎖の実施を決定しました。その後の調査によりイベント1769-JPの存在及び事故の原因が旅客機と上昇中のSCP-1769-JP-Aとの接触であったことを確認した財団は、直ちに回収・収容と現在の特別収容プロトコルの制定・適用を実施しました。関係者にはクラスAまたはクラスB記憶処理とカバーストーリー「機器の故障による航空機事故」の適用が、事故関連資料に対しては改竄工作が実施されました。

付記1: 20██年█月██、ジャワ海に生息していた野生個体の根絶の完了が確認されました。周辺海域に存在する残存個体の撲滅も近日中に完了すると見られています。

付記2: 20██年█月、月別のイベント1769-JPの発生回数が先月の約770%にまで増加していることが確認されました。撲滅活動の進行状況と本件の因果関係は現時点では不明です。

付記3: 20██年█月█、太平洋の西経███.██°、北緯██.██°付近の海域5で、それまでの記録を大幅に更新するイベント1769-JPが観測されました。本イベントを発生させたSCP-1769-JP-Aは何らかの方法によって気泡体の内圧をより高めることに成功した個体であったと見られており、通常より強力な噴射及びその反作用によってその最高速度は██km/秒にまで達していました。しかしながら途中でSCP-1769-JP-Aの反応がレーダーから消失したために本件の詳細は判明していません。SCP-1769-JP-Aの初速が第3宇宙速度6を上回るものであったことから、現在では反応の消失は地球の重力圏を完全に突破したことによるものと考えられています。

付記4: 20██年█月██、太平洋の[編集済み]で任務に当たっていたSCPS「しおさい」7が未知の発信源からの無線通信を傍受しました。判読が不可能であったために財団の数学者が解読作業に当たったところ、共通鍵暗号方式8によって暗号化された和文をモールス信号へと変換したものであることが判明しました。以下は解読された通信の内容です。

アマタノ ドウホウタチガ ソノミヲ チラセタ。シカシ ソレハ ケッシテ ムダデハ ナカッタ。カレラハ ホシト トモニ シニユク サダメカラ ワレワレヲ スクッタノダ。カレラノ タマシイハ エイエインニ ワレワレノ ナカデ イキツヅケルデ アロウ。ミナノモノヨ トキハ キタ。イマコソ シンテンチヘノ タビダチノ トキデ アル。

通信の発信源は未だ特定されていません。

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