SCP-1778-JP
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生前の勇也氏(当時4歳)。

アイテム番号: SCP-1778-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1778-JPはサイト-8119の電子保管庫に収容されています。異常性に影響しないことが確認された上で、SCP-1778-JPはエンバーミング1されています。

説明: SCP-1778-JPは日本人男性小柴 勇也氏(享年7歳)の遺体です。SCP-1778-JPの上空半径10 mの範囲には雲が進入/発生せず、常に晴天の状態が保たれます。これまでの範囲内で人工的に雲を発生させる試みは全て、雲が発生しないという結果に終わっています。

SCP-1778-JPが白い布で覆われている時、晴天となる範囲は最大20 mまで拡張されます。晴天となる範囲は、白い布がSCP-1778-JPを覆う面積に比例して拡張されることが確認されています。布の材質は範囲の広さに影響しません。

補遺1: 2018/09/04、勇也氏は大阪府[削除済]の自宅にて縊死しました。翌日、付近の警察署によって虐待等の確認を目的とした捜査が行われました。当時、警察官として潜入していた財団エージェントが「勇也氏の遺体の上空が不自然な円形に晴れており、勇也氏の遺体の移動に合わせて晴れた部分が移動している」という事実を報告したことで財団の興味を引き、SCP-1778-JPはカバーストーリー「検死」の下で確保されました。

勇也氏の死亡当時、大阪府には平成30年台風第21号が上陸しており、JR西日本の京阪神在来線全線や私鉄の大半が運転を取り止めていました。勇也氏の家庭は母子家庭であり、母親である小柴 加奈子氏は当時自身の職場で業務を行っていました。小柴氏の自宅の室内にはワイヤレスカメラが設置されていましたが、映像を確認できるスマートフォンは自宅に放置されていました。小柴氏はこれを「自宅に忘れた」為であると証言しています。

以下は、室内ワイヤレスカメラに記録された映像記録の内容です。音声は記録されていません。

[記録開始]

<14:41:22> 映像には小柴氏の自宅リビングが映っている。勇也氏はリビング窓付近にてレゴブロックで遊んでおり、窓には7つの「てるてる坊主」が吊るされている。

<14:41:30> 勇也氏はレゴブロックで遊ぶのをやめ、窓の方を見る。窓の外は暗く、多量の雨粒が確認できる。

<14:41:37> 勇也氏は立ち上がり、玄関の方へ移動して映像外に出る。

<14:42:57> 勇也氏が映像内に戻り、リビングを徘徊し始める。

<14:43:19> 勇也氏は、カメラの右側に設置された固定電話まで移動して受話器を取る。表情は明るい。

<14:43:31> 勇也氏は受話器を置いて固定電話から離れる。表情が暗くなる。

<14:43:36> 勇也氏はレゴブロックが散乱した場所に戻り、レゴブロックで遊び始める。

[省略。この間、勇也氏は3回に渡って玄関の方に移動した]

<14:53:20> 勇也氏が顔に手を当てながら映像内に戻る。勇也氏がカメラに接近すると、泣いていることが確認できる。

<14:53:32> 勇也氏はレゴブロックが散乱した場所に戻り、泣きながらレゴブロックで遊び始める。

<14:53:47> 勇也氏がレゴブロックを放り投げ、口を大きく開いて泣き始める。

<14:57:59> 勇也氏は再びレゴブロックで遊び始める。時折、身体が震えているのが確認できる。

[省略。この間、勇也氏はレゴブロックで遊んでいた。]

<15:25:39> 勇也氏が再び窓の方を見る。

<15:25:43> 勇也氏が立ち上がり、寝室の方へ移動して映像外に出る。

<15:25:59> 勇也氏が、白いシーツと黒い延長コード、及び灰色の物体を持ってリビングに戻ってくる。勇也氏はシーツや延長コード、灰色の物体を床に置き、再び寝室の方へ移動して映像外に出る。

<15:26:09> 勇也氏が物干し台を引きずりながらリビングに戻ってくる。物干し台を窓の前に設置する。

<15:26:17> 勇也氏は物干し台に延長コードをもやい結びで固定する。コードのもう一端ももやい結びする。

<15:26:23> 勇也氏は白いシーツを被り、灰色の物体を右手に握った状態で、もやい結びされたコードの一端を下へ引っ張る。

<15:26:31> 勇也氏は直立した状態で沈黙した後、首からコードを外しシーツを脱ぐ。

<15:26:43> 勇也氏は灰色の物体を床に置き、玄関の方へ移動して映像外に出る。

<15:27:04> 勇也氏が4冊の本と灰色の物体を抱えながらリビングに戻ってくる。本を物干し台の下に積み上げる。

<15:27:27> 勇也氏は再びシーツを被り、灰色の物体を右手に握った状態で、本の上に立って延長コードの一端を首にかける。

<15:31:19> 勇也氏は直立した状態で沈黙した後、足を本から下ろそうとする。

<15:31:23> 本が崩れ、勇也氏の足が本から離れる。勇也氏は痙攣しているものの直立姿勢を保っており、手でコードを外そうとしたりする様子がない。

<15:32:37> 勇也氏が動かなくなる。

<15:32:43> 勇也氏の右手から灰色の物体が落ちて床を転がる。以降、映像に特筆すべき変化は見られない。

[記録終了]

当時、勇也氏は白いシーツを被った状態で、室内の物干し台にかけられた延長コードで縊死していました。延長コードの両端はもやい結びされており、一端は物干し台に、もう一端は勇也氏の首にかかっていました。また、床には直径約6 cmの石が転がっており、映像中の灰色の物体はこの石であると確認されました。氏の自宅は寝室を中心に荒らされた形跡があったものの、そこから検出された皮膚片や汗のDNAは勇也氏や小柴氏のもの以外確認されませんでした。信頼性は高くないものの、映像分析の結果は勇也氏が高い確率で異常な精神影響を受けていなかったということを示しました。

以下は、警察官として潜入していたエージェント・光浦が行ったインタビューの内容です。

対象: 小柴 加奈子氏

インタビュアー: エージェント・光浦


[記録開始]

エージェント・光浦: では、映像の疑問点について幾つか質問させていただきます。よろしいですか。

小柴氏: …はい。

エージェント・光浦: それでは、まずもやい結びに関して。あなたの自宅にはキャンプか何かに出掛けていた写真がありましたが、あの結び方はその時に教えたものですか?

小柴氏: そうです。息子はよく前の夫とキャンプに行ってて、確かその時に。こう結ばないと危ないぞ、って。

エージェント・光浦: キャンプですか。

小柴氏: はい。土曜、晴れるといつも前の夫がキャンプに連れ出してて。息子も、雨が降るとうるさいぐらいに泣きじゃくるぐらい楽しみにしてました。

エージェント・光浦: では、 [写真を取り出してテーブルの上に出す] この石もキャンプの時に?

小柴氏: あ…。そうですね、昔拾ってからずっと大事に持ってました。前の夫が、綺麗だなって言ったのを聞いて気に入ったみたいで。確か、枕元に置いてた筈です。

エージェント・光浦: なるほど。次に、シーツや延長コードはどこに置いてありましたか?

小柴氏: ええと、シーツは寝室に置いてありました。コードは…確か掃除機か何かの横に。

[省略]

エージェント・光浦: 分かりました。映像については、この当たりにしておきましょう。ところで、勇也君の行動ですが、ご主人も似たような方法で自殺されているそうですね。

小柴氏: …はい。仕事が上手くいかなくなって、ギャンブルに走って、その、借金を。

エージェント・光浦: 勇也君もその現場に?

小柴氏: いました。何が起こったのかはわかってなかったみたいですけど。

エージェント・光浦: つまり、そもそも死ぬということを理解していなかったと。

小柴氏: そうだと思います。

エージェント・光浦: なるほど。その時、勇也君に言ったことを覚えていますか?

小柴氏: …あ、そういえば、その、電話してて…。

エージェント・光浦: どなたと?今のご主人とでしょうか?

小柴氏: …知ってたんですか?

エージェント・光浦: 何のことでしょうか。

小柴氏: [舌打ち] …その、前の夫が死んだとき、今の夫と電話してたんですよ。それを勇也に聞かれてて。

エージェント・光浦: なるほど。具体的には、どんな言葉を?

小柴氏: [ため息] あいつやっと死んだわ、これで、晴れてあんたと一緒になれる…みたいな。そしたらあの子、明日晴れるの?とか言って。 [小声で] 余計なことを…。

[記録終了]

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