
SCP-179-JP
アイテム番号: SCP-179-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-179-JPは部屋の一辺がすべて25.52m以上の長さを持ち、天井の高さが12.76m以上あり、地下には固定された建築材以外何も存在しない部屋の中央に安置してください。室内の視認しやすい場所にSCP-179-JPと同期させた3分27秒を計測するタイマーを設置し、アラームを設定してタイマーの終了を30秒前には通知するようにしてください。そしてアラームが鳴った時にSCP-179-JPから半径12.76mの範囲内に存在する職員は、持ち込んだ物品を持ってすみやかに範囲外に離脱してください。SCP-179-JPの運搬に関しては、補遺1の特別運搬プロトコルを参照してください。
説明: SCP-179-JPは古いアンティークの木製振り子時計です。初期状態では時計の針は10時08分02秒(以下t1とします)を指しています。文字盤にゼンマイを巻くための穴が存在し、動力はゼンマイ式であると推測されています。重量は██kgで縦180cm、横45cm、厚さ25cmの大きさがあります。
SCP-179-JPは時間に干渉する性能を備えています。SCP-179-JPはt1より針がスタートし、3分27秒(以下期間Tとします)が経過した時、つまり10時11分29秒(以下t2とします)を針が示した時に元のt1の位置へと針が瞬間的に戻ります。t2において、時計から半径12.76m以内(以下この影響範囲をSCP-179-JP-Aとします)に存在した物体がt1での状態から移動していたり変質していた場合、t2になると同時にt1の状態に復元されます。またこの時SCP-179-JP自身も状態を復元される模様で、今までにゼンマイの動力が尽きたことはありません。しかしSCP-179-JP自身の位置座標自体はなぜか復元されず、これにより運搬が可能となっています。
また期間TにSCP-179-JP-Aに物体が進入し、存在し続けた場合、t2になると物体を構成するすべての粒子がSCP-179-JP-Aの境界面まで位置を復元されます。SCP-179-JPは位置座標を復元するよう努めますが、外部から侵入した物体の元の座標はSCP-179-JP-Aの外側のため、結果として復元されるのは物体がSCP-179-JP-Aに入った瞬間での座標、つまりSCP-179-JP-Aの境界面に復元が限定されることとなります。この時SCP-179-JPの復元効果は粒子の配列を無視して行われるため、物体は境界面に平たく押しつぶされた形で位置座標のみを復元されます。
実験記録179-JP - 日付20██/██/██
目的: SCP-179-JPの復元効果がSCP-179-JP自身にどの程度及ぶのかを測定する
対象: SCP-179-JP
実施方法: 期間T内にSCP-179-JPを分解し、放置する。
結果: 通常の振り子時計と同様に、破損しないように慎重に分解したところ、内部には振り子時計の部品としては用途不明のオブジェクトが複数(以下SCP-179-JP-B群とする)確認された。職員がSCP-179-JP-B群の一つを取り外したところ、t2到達までに時間的余裕があったにも関わらず復元が行われた。これにより職員は死亡。SCP-179-JPはt1の状態に戻り、再び動き出した。
分析: SCP-179-JP-B群はSCP-179-JPの最重要部品であり、復元の効果を発揮している装置と推測される。期間Tの3分27秒という限られた時間ではこれ以上の複雑で精密な分解は物理的に困難であり、また失敗した際の人材損失が大きいためこれ以上のSCP-179-JP-B群に関する実験は禁止にすることが妥当と思われる。
補遺1: 特別運搬プロトコル
SCP-179-JPはその性質上、一般的な運搬が非常に困難なオブジェクトです。短距離の移動の場合は、期間T内にSCP-179-JP-A内の物体に注意して、精密機械を運ぶのと同様に運搬してください。長距離の運搬を行う場合は、以下に示すリレー式運搬方法1をDクラスの職員2名又は自立移動と物体の受け渡しの可能なロボット2台を用いて行ってください。まず片方の職員がt1後にSCP-179-JP-Aに入り、SCP-179-JPを持って移動し、もう片方の職員がSCP-179-JP-A内に入らないように目的地に先行します。t2が近づいてきたら、先行している職員は移動を停止し、SCP-179-JP-Aに入るのを待ちます。SCP-179-JPを運搬している職員は、SCP-179-JPを先行していた職員の側に置き、SCP-179-JP-Aから離れて先行する役に交代します。再びt1になったら、SCP-179-JP-Aにいる職員はSCP-179-JPを持ち、目的地への移動を開始します。目的地に到着するまでこの動作を繰り返します。ロボットの場合も同じです。
補遺2: 発見経緯について
SCP-179-JPは██県███市にある廃墟で発見されました。廃墟は1940年代に放棄された洋館です。近辺ではその廃墟は「いつも子供の笑い声がする」と噂されていました。調査者が行方不明になるという報告もされていたため、噂の実態調査を行うためにエージェントが派遣されました。結果、廃墟内には男子児童数名、女子児童一名が存在し、SCP-179-JP-Aを出ることなく、期間T内で同じ行動を繰り返していました。派遣されたエージェント二名のうち、一名はSCP-179-JPの復元に巻き込まれ、死亡。もう一名は児童たちを観察することにより、おおよそのオブジェクトの特異性を把握できたため、児童たちの収容及びインタビューに成功しました。
対象: 児童たち
インタビュアー: エージェント・星
付記: インタビューは現地にて、SCP-179-JPの影響範囲を全員脱した状態で行われました。児童たちは当時、全員小学三年生でした。
<録音開始, 2014/6/7>
エージェント・星: ちょっといいかい?君たち?
男子児童██: 何?おじさんお巡りさん?
エージェント・星: おじ……いや、ちょっと違うよ。何をして遊んでたのか聞かせてもらおうと思ってね。あの廃墟は遊び場なのかい?
男子児童██: 俺たちいつもは近所の公園で遊んでるんだけど、せっかく夏休みだし、今日は隣町まで行ってみようって話になって、そしたら面白そうな建物見つけたんだ。
エージェント・星: 夏休み……?
女子児童███: 怖いし、怒られたら嫌だからやめようよって言ったんだけど、みんな入って行っちゃって、私も一緒に入ったの。
男子児童██: でも廃墟ってお化け屋敷みたいだし、探検できて面白いよな。
男子児童███ 隠れるところもたくさんあるし。
エージェント・星: それで、中に何か面白いものとか見つけたのかい?
男子児童██: なんか古そうな時計があったよな。
エージェント・星: 時計?
男子児童██: [編集済み](男子児童のあだ名)が弄ったら勝手に動き出して……まあそれだけだったから気にしないで遊ぼうとしてたのさ。
エージェント・星: それで時計が動いてから何かあったかい?
男子児童██: 三分も経たないうちにおじさんが呼んだからこっちに来てあげたんだよ。
女子児童███: ねぇ、なんか入った時と辺りの様子が違うくない?あんな綺麗なお家あったっけ。
エージェント・星: ところで君たち……今日がいつなのか覚えてるかな?
男子児童██: おじさん手帳でも無くしたの?8月14日だよ。
エージェント・星: 何年の……?
男子児童██: 昭和41年。
[その後、いくつかの質問をし、児童たちを収容した。]
<録音終了>
終了報告書: 廃墟で発見された児童たちの名前は、1966年に捜索願の出されていたリストと一致しました。児童たちはSCP-179-JP-Aを出ることなく、約50年間に渡って同様の行為を繰り返していたことが確認されました。児童たちの保護者のうち幾名かは既に他界し、また児童たちの元の時代と現代があまりに離れているため、社会復帰は不可能です。そのため、彼らの身柄を財団施設にて保護することが決定されました。