SCP-1796-JP
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アイテム番号: SCP-1796-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 日本全国の監視カメラ映像の検閲、猟友会・警察組織などの無線傍受、環境省・防衛省からの情報提供などを経て、自然界のSCP-1796-JP実例を発見してください。エージェントによる収容が困難と判断される場合、現地に機動部隊る-4("飼育員")を編成し派遣してください。SCP-1796-JP-Aの情報がSNS上に流出した場合はカバーストーリー「悪質なデマ」が、報道機関により報じられた場合はカバーストーリー「悪質な悪戯」が適用されます。

SCP-1796-JP実例はサイト-8102をはじめとする最寄りの生物収容サイトに収容されます。SCP-1796-JP-5と同種の実例が発見された場合、各部門への通達に際して財団言語学部門を優先してください。

説明: SCP-1796-JPは、狭義の日本列島で出現が確認されている、未記載の野生動物の総称です。現在確認されているSCP-1796-JPは全て哺乳類に属します。当初は互いに無関係のSCiPオブジェクトあるいはAnomalousアイテムとして収容されていましたが、以下に示す共通点から同一の要因を共有することが有力視され、ナンバリングが改められました。

  • 200█年以前に類例が報告されていない。
  • 群居性を示さず、1種につき1個体のみ知られている。
  • 日本国内の非異常の哺乳類との高い共通性を示すゲノムを有する。
  • 明らかな異常性を持たず、非異常の生物学の理論に沿って特徴を説明できる。

以下は202█年時点で確認されているSCP-1796-JPの一覧です。

実例: SCP-1796-JP-1

最も近いゲノム: ニホンジカ(Cervus nippon

特徴: 体長4mに達する雑食性の半水棲動物。頭部は幅広かつ大型で、背外側に配列する感覚器官は水面での呼吸や刺激の受容を可能とする。耳の付近にはコブ状の角質構造物が1対存在する。頸部は短く、胴部と頭部の境界は明瞭でない。左右に広がる胸郭からは体骨格が自重の制約からの解放が示唆され、内部には反芻のための複雑な構造を持つ内臓器官が推測される。幅が広く頑強な四肢は、水中の推進力への寄与を示す。四肢の先端にはヘラ状の蹄が存在する。

事案: ██県██市内の森林公園に出没した。観光客█名と職員█名が当該実体への刺激に起因する重軽傷を負い、警察への通報を傍受した財団により検知された。機動部隊る-4("飼育員")が派遣され、事務室を襲撃中の当該実体と遭遇。5名が負傷したが鎮圧に成功した。カバーストーリー「カバの脱走」が適用された。

実例: SCP-1796-JP-2

最も近いゲノム: テン(Martes melampus

特徴: 体長1.5mに達する動物食性の猛獣。長さ40cmに達する1対の上顎犬歯を特徴とする。白色と黒色の斑模様を示す体毛に覆われており、皮膚は背側において強靭である。高い敏捷性を持ち、巨体にも関わらず高所や不安定な場所での活動に長ける。ただし木登りを不得手とする。

事案: 農村部の民家で飼育されていた犬が立て続けに野生動物の被害を受け、██県警に寄せられた通報を財団が傍受した。当初はツキノワグマ(Ursus thibetanus)による被害と考えられていたが、食痕や爪痕がツキノワグマのものと一致せず、未知の生物によるものと判断された。機動部隊る-4("飼育員")と陸上自衛隊による山林での捕獲作戦が展開され、捜索開始から7日を要して確保に成功した。地元住民の死傷者は█名に上った。

実例: SCP-1796-JP-3

最も近いゲノム: ニホンノウサギ(Lepus brachyurus

特徴: 体長3mに達する四足歩行の植物食動物。眼球が発達する一方で耳殻は極端に小さい。門歯が顕著に発達し、植物の葉の他に樹木の幹に対する摂食を可能とする。肩甲骨の鉤上突起と胸椎の神経棘が卓越し、また腰椎・骨盤・後肢も広大な筋肉の付着・発達が見られる。後肢は前肢に比べやや長い。灰褐色の体毛に覆われ、皮下脂肪が卓越する。

事案: 「カピバラが居る」という通報を受けた██県警により██駅前で保護。県警に潜入していたエージェントを介して財団に確保された。対応した警察官には記憶処理が施された。地元住民に関しては、動物に関する知識量とカピバラの脱走の噂が拡散していることを踏まえ、噂が既にカバーストーリーとして機能していると判断された。

実例: SCP-1796-JP-4

最も近いゲノム: コキクガシラコウモリ(Rhinolophus cornutus

特徴: 体長1mに達する、霊長類に類似する昆虫食性動物。吻部が長く発達し、全身は茶褐色の体毛で覆われる。後肢に比較して前肢が長く、またX線CTスキャンの結果から尺骨の消失が判明している。発達した第2指を用いて地中や樹木を掘り、アリやシロアリなど内部に潜む昆虫を摂食する。高い聴力を有しており、地面や樹木に頭部を密着させて骨伝導により獲物を探知する。

事案: ██県██市内の公立小学校の児童が校庭で実体を発見。同校の教職員の通報を傍受したことで財団が検知した。類似性の高い生物が少ないことからカバーストーリーによる処理が困難と判断され、関係者にはBクラス記憶処理が施された。

実例: SCP-1796-JP-5

最も近いゲノム: アカネズミ(Apodemus speciosus

特徴: ニホンザル(Macaca fuscata)に似た姿勢をとる、体長約140cmの知的生命体と目される動物。関節部分に可動性を持つ緻密な布を何重にも纏い、複数の物品が収納された道具入れを所持した状態で発見された。ヒトやその他の霊長類と比較して吻部の突出や門歯の発達が見られる。前肢の第1指が消失しており、代わりに第5指が対向性を獲得している。

事案: ██県警によりネズミの被り物を被った不審人物として確保されていた当該実体は、潜入していたエージェント・██により報告された。サイト-81██の大型動物収容房へ収容。

付記: 移送時、SCP-1796-JP-5は高揚したような態度を示し、移送用車両や財団施設に強く関心を抱く様子を見せた。また、警察官や職員の頸部や腰部を凝視する傾向がある。



確認されたSCP-1796-JP-5の所有物を以下に列挙します。

  • 軽量な樹脂製の六角柱型の容器。内部には植物の葉や動物の肉を加熱処理した物体が収納されている。
  • 軽量な樹脂製の円筒形の容器。内部容積の1/3を飲用に適した低濃度食塩水が占める。
  • 強磁性を示す細い金属柱が内部で針に支持されるガラス球。方位磁針と同様の機能が強く示唆される。
  • 黒鉛に類似する物質で構成された棒状の物体。長軸に沿って未知の有機体が表面を被覆する。
  • 様々な図と不明な言語が記述された、全27頁からなる用紙の束。動物性繊維から構成されている。全体的に経年劣化が見られ、欠損・汚損した頁も見られる。

以下は言語学部門・有機化学部門・解剖学部門・地質学部門が共同で解読を行った、図を中心とした記録用紙の記載内容の解読結果です。記載された本文の大部分は言語と保存状態が障壁となり、完全な解読には成功していません。

読み取られる内容
1 表題・氏名・日付と思われる文字列。一般の論文・報告書・レポートの体裁に類似する。なお第1頁以降の下端には1つ以上の文字が既定の位置に記載されており、レイアウトから頁数にあたると推測される。数字は8ごとに桁の増加と対応する変化が周期的にみられることから、SCP-1796-JPは八進法に基づく数学を発達させていることが推測される。
2 不明な長文。論文・報告書における要旨に該当すると推測される。以下、文章のみ記載されている場合は省略する。
3 現実の地形と有意な差異が見られるアジア地域の地図。オーストラリア大陸が赤道直下に位置し、東南アジア地域が北に歪曲している。日本列島は樺太島および北方四島から九州島にかけて、また九州島は朝鮮半島と連絡する。
6 キャプション付きの表。第1列には第1頁の日付と同様の形式で数字が記入されており、時系列に沿った一覧表と推測される。第2列には第3頁の極東地域の拡大図に付記されている地名と同様の文字列が見られる。
7 キャプション付きのスケッチ。複数の哺乳類が多く描写されている。SCP-1796-JP-1~4と一致する特徴を示すものも見られる。イラストの下には種名と思われる文字列が並んでおり、第6頁の一覧の第3列にも同様の記述が見られる。
9 針葉樹林を背景とする未知の光源の写真が用紙の約8分の1を占める。記載には第7頁と共通する文字列が見られる。
13 3次元ユークリッド空間上に3本の直交する軸が置かれ、幾何学的図形が描画されている。何らかの概念図と推測される。
15 第13頁の図とほぼ一致するが、動線が加えられている。図のキャプションには第7頁の種名と一致する文字列が見られる。
16 男女の人型実体のスケッチが掲載されている。全身が体毛に覆われるパターンと無毛のパターンがそれぞれの性で描かれているが、いずれのスケッチにも頭髪は描画されていない。男性の生殖器および女性の乳房はヒト(Homo sapiens)でなく齧歯類のものに類似するが、全身像はSCP-1796-JP-5よりもヒトに類似する。
17 第3頁と異なり厳密な日本の白地図が掲載されている。ただし津軽海峡・東京湾・瀬戸内海などの一部の海域が陸地として扱われている。地図の各所は汚損により判読不能。
21 後述の柱状図。

第21頁の柱状図は地質学部門と言語学部門により、既知である数字および地名・種名・地図・各種スケッチに基づいて解読が進められました。以下は上位層から順に概説したものです。

補遺1: 地質学部門・有機化学部門・解剖学部門は記載内容に見られる語彙の反復およびキャプションの類推に基づき、可能性の高い物質・生物の特定を試みました。以下が最上部氷新統の地質学的特徴と推測されます。

  • 海成層では遠洋域において樹脂に由来する有機化合物層が厚く堆積する。浅海域においては陸上植物や菌類・地衣類のバイオマーカー3を多く含有する黒色頁岩層4が卓越する。
  • 陸成層は酸化鉄・石灰・石膏に富む。化石記録では類人猿・中型鳥類・その他7種の大型哺乳類の断片化石が多産するほか、無脊椎動物では巻貝化石がボーンベッドを形成する。

また、汚損された頁の復元に着手していた情報処理班が第17頁の一部復元に成功しました。復元内容を以下に提示します。

補遺2: 202█年█月現在、言語学部門は記載内容中に反復される単語・記号の頻度と組み合わせに対し統計的処理を行い、品詞および時制・単数/複数・格・性などの文法カテゴリーを仮定した文法構造の解析を行っています。言語学部門は第一目標として記載内容の完全翻訳、究極目標としてSCP-1796-JPとの意思疎通を掲げています。

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