SCP-1797-JP
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水路上に出現したSCP-1797-JP

アイテム番号: SCP-1797-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1797-JPの出現地点は、キリスト昇天祭当日はカバーストーリー「水路の整備中」で封鎖されます。実験および警備の担当者は、ヴェネツィア市の委託を受けた現場作業員に偽装して下さい。

乗船実験の被験者はDクラス職員のみ許可します。勤続年数5年以上、かつミルグラム従順性試験において90%以上のスコアを達成した職員のみ許可します。

転移中はゴンドラから降りる等の外部への干渉は禁止されます。また転移中の紛失防止のため、カメラ等の実験機材は全て衣服に固定するタイプを使用して下さい。

説明: SCP-1797-JPはイタリア共和国、ヴェネツィア市、ヴェネツィア本島、██████地区の小規模な水路上に出現する人間型実体です。外見的にはコーカソイド系の若年男性ですが、最初に確認された199█年以来加齢している様子は見られません。常にゴンドラ1に乗っており、ゴンドリエーレ2として振る舞います。質問には答えますが、名前や出自に関しては毎回内容が異なり、信憑性がありません。

SCP-1797-JPはキリスト昇天祭3当日の14:00~16:00にかけて、水路上にゴンドラと共に瞬間的に出現し、付近の人間を乗船するよう誘います。この際料金は請求しませんが、コースは自分に任せて欲しいと述べます。同意して乗船した場合、SCP-1797-JPはゴンドラや乗客と共に転移します。

転移先については以下の点が判明しています。

1. 基底世界とは一切の通信が不可能、映像や音声の記録は可能。
2. 古代から近世までのヴェネツィアに酷似した景観であり、住人も多数存在する。
3. 住人はSCP-1797-JPを認識できず、能動的には干渉しない。
4. 複数の異常な実体が存在する。
5. 高確率で歴史的に重要なイベントに遭遇する。ただし内容は史実と一部、あるいは大部分が異なる。

SCP-1797-JPは転移先を「過去のヴェネツィアである」と主張し、ゴンドラで航行しながら案内します。詳細は乗船実験ログを参照して下さい。転移から十数分が経過すると、SCP-1797-JPはゴンドラや乗客と共に出現水路に帰還します。乗客を下船させるとSCP-1797-JPはゴンドラと共に即座に消失します。

SCP-1797-JPの捕獲や妨害を試みた場合、転移前であればSCP-1797-JPとゴンドラが即座に消失、転移中であった場合は乗客のみが出現水路へ帰還させられます。以降、SCP-1797-JPは翌年まで出現しません。この性質のため、SCP-1797-JPの物理的確保は成功していません。

転移先が何処であるかについては以下の3説が主流ですが、結論には至っていません。

1. 過去のヴェネツィアである。
2. 過去のヴェネツィアに酷似した異世界である。
3. 過去のヴェネツィアを模倣した"アトラクション"である。住人や異常な実体はその演者、あるいは舞台装置である。

仮に転移先が過去のヴェネツィアであった場合、Dクラス職員を被験者に用いると、転移中の逃亡や実験機材の紛失による歴史干渉、最悪の場合CK-クラス再構築シナリオの発生が懸念されます。そのため第2回以降の乗船実験では、被験者は完全に信頼できる職員から選定されています。

SCP-1797-JP乗船実験ログ例: 全ログは研究本部サーバーに保管されたファイルSCP-1797-JP-logを参照

日時: 199█/6/██

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〈以下、書き起こし〉


[ゴンドラの転移先は広大なラグーナ4地帯]

D-7091: ど、どこだ、ここは?(15:08:03)

SCP-1797-JP: 425年のヴェネツィアです。ご覧の通り、当時は無人のラグーナに過ぎませんでした。アシが風にそよぎ、海鳥が寂しげに鳴き交わすばかり。しかし、そこへヴェネツィア人の祖先が移り住みます。(15:08:06)

[数艇のボートが通過する。船上の人々はSCP-1797-JPに気付いている様子はない] (15:08:22)

D-7091: あいつら、何だってこんな所に来るんだ? 不便じゃないのか。(15:08:30)

SCP-1797-JP: 生き延びるためですよ。彼らの母国たる西ローマ帝国は崩壊寸前、国中を蛮族が荒らし回るようになっていました。海に囲まれたラグーナは不便ですが、同時に安全でもあります。これから彼らは、この新天地に1からヴェネツィアを造り上げていくのです。何百年も掛けてね。(15:08:35)

D-7091: なんとまあ、気が遠くなるような話だなぁ。(15:08:53)

[周囲では人々が島に杭を打ち込む、石材を積む等の作業を行っている。SCP-1797-JPはその様子を参照しながら、ヴェネツィアの土台作りについて解説する] (15:08:57~15:15:06)

SCP-1797-JP: あちらをご覧下さい。(15:15:09)

[D-7091がSCP-1797-JPが指差す方向にカメラを向ける、豪華な装飾が施された船が浮かんでいる] (15:15:11)

SCP-1797-JP: あれは初代ドージェ5を乗せたブチントーロ6です。(15:15:14)

[ブチントーロの前方の海中から、古代ギリシャの神殿風の建造物が浮上する] (15:15:29)

D-7091: うわっ、何だ!?(15:15:31)

SCP-1797-JP: はてさて、何でしょうねえ。どれ、もっと近くに行ってみましょう。(15:15:31)

D-7091: だ、大丈夫かよ?(15:15:36)

[SCP-1797-JPがゴンドラを建造物に漕ぎ寄せる] (15:15:37)

[建造物の中で、ブチントーロから下船した人々と、魚類の尾状の下半身を持つ人型実体群が向き合っている] (15:20:12)

D-7091: に、人魚?(15:20:14)

[下船した人々の中から若年男性が一人、実体群の中から若年女性の外見をした実体が一体、それぞれ進み出て向かい合う] (15:20:20)

男性: [ラテン語]海よ、我は汝と結婚せり。真に永遠に、汝が我がものである様に。(15:20:28)

[男性が女性型実体の指に指輪をはめ、口付けを交わす。人々と実体群が拍手し、歓声を上げる] (15:20:37)

SCP-1797-JP: これがヴェネツィアの初夏の風物詩、海との結婚7の始まりです。こうして海と結ばれたヴェネツィアは、地中海の覇者への第一歩を踏みだすのです。(15:20:47)

D-7091: ん? 海との結婚って確か、教皇様から指輪を貰ったのが始まり8じゃなかったか?(15:20:56)

SCP-1797-JP: 表向きはそういうことにしてあるのですよ。異教の神に頼った等と教皇聖下に睨まれては、やり辛くなりますからね。(15:21:07)

[ゴンドラが出現水路へ帰還する] (15:21:16)

 

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