アイテム番号: SCP-1831-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1831-JPはサイト-8161の低危険物収容ロッカ―に収容されています。
SCP-1831-JP罹患者を利用した実験を行う場合はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員1名以上の許可が必要です。実験を行う際には、実験に使用するもの以外の野菜、果物を実験室およびその周辺に近づけないよう気を付けてください。
現在、SCP-1831-JP罹患者を利用した実験は無期限で禁止されています。
一般市場にSCP-1831-JPの類似品が存在しないか確認するため、財団Webクローラによる市場の監視が常に行われています。類似品が発見された場合は直ちに回収してください。
説明: SCP-1831-JPは1枚のDVDとそのパッケージで構成されています。DVDに収録されている映像の複製は不可能です。SCP-1831-JPのDVDには子供向けの教育番組のような内容の映像が収録されています。詳細については、後述の異常性によって不明な部分が多く、現在調査が進められています。SCP-1831-JPの再生時間は26分27秒です。
パッケージの表には「サルからはじめよう!せんそうげーむ~みどり~」というタイトルと、サルを模したキャラクター1匹、迷彩服を着た男性を模したキャラクター1人が描かれています。裏には内容が爆弾、銃火器などの兵器の構造および取り扱い方の紹介であることが書かれています。
SCP-1831-JPの異常性はヒトがSCP-1831-JPの内容を視聴すると発生します。まず、SCP-1831-JPの映像を見る、もしくは音声を聞くと、徐々に意識が朦朧とし始め、思考能力の低下が発生します。また、徐々に身体への変化が現れ、体毛の増加や身体の萎縮が発生します。この状態のままSCP-1831-JPの内容を最後まで見る、もしくは聞くことを続けると、被験者は完全にチンパンジー(Pan troglodytes)に変化します。
被験者が完全に変化した状態で野菜、果物に接触すると接触した野菜、果物が兵器のような性質を持つようになります。以下、変質後の野菜、果物をSCP-1831-JP-1と指定します。詳細は下記の実験記録を参照してください。
実験記録1831-JP-A 日付20██/██/██
対象: D-1831
実験物: オレンジ(Citrus sinensis)
結果: ヘタ部分を千切ってから5秒後に果肉部分が炸裂し、霧状になった果汁が実験室内に蔓延した。
実験記録1831-JP-B 日付20██/██/██
対象: D-1831
実験物: パイナップル(Ananas comosus)
結果: 葉部分を1枚千切った後アラート音が発生し、10秒後爆発した。この衝撃により実験室の壁の一部が破損した。
実験記録1831-JP-D 日付20██/██/█
対象: D-1831
実験物: ピーマン(Capsicum annuum)
結果: ヘタ部分を引き抜いてから6秒後、爆音と同時に強い閃光が発生した。閃光の発生源は不明です。
実験記録1831-JP-F 日付20██/██/██
対象: D-1831
実験物: ネギ(Allium fistulosum)
結果: 緑の葉部分を軽く握ることで根部分の先端より火が発生した。火の発生源は不明。
追記: 20██/██/██、SCP-1831-JP-1を使用してヒトを救出、または殺害を行うと、行った人物の周囲にバナナ(Musa sp.)が出現することが判明しました。また、このバナナを被験者が摂食すると、被験者の身体能力が少量ですが上昇することが分かっています。
事案記録1831-JP
リンゴ(Malus pumila)を使用した実験において、被験者の予期せぬ行動により、中規模のDクラス職員の収容違反が発生しました。この収容違反により9人の職員が負傷、1人の職員が死亡しました。
以下は事案当時の実験記録です。
実験記録1831-JP-H 日時20██/██/██
担当職員: D-1831実験物: リンゴ
結果: 下記の映像記録を参照。
<再生開始>
芭蕉博士: よし、ではD-1831にリンゴを与えてくれ。
椎名研究員: 了解です。
[実験室内にリンゴが投入される。]
[リンゴを視認した後、D-1831が即座にリンゴを摂食する。]
芭蕉博士: 何?
[摂食完了後、実験室内を見回す。]
[手のひらを広げる動作を行う。2秒後に手の内にブドウ(Vitis sp.)が出現した。]
芭蕉博士: なんだ?ブドウが出てきたぞ?
椎名研究員: いったいどこから……?
[D-1831が実験室の壁にブドウを1粒貼りつける。3秒後ブドウが爆発した。その衝撃で壁が破損した。]
芭蕉博士: おっと、ちょっと危険だな。椎名、沈静ガスを散布してくれ。
椎名研究員: 了解です。
[椎名研究員により沈静ガスが散布されたが、直後にD-1831の周囲にメロン(Cucumis melo)が出現した。]
[D-1831が手を用いて加工したメロンで、ガスマスクのようなものを作り顔に着けた。その後ドリアン(Durio zibethinus)が出現した。]
[ドリアンをD-1831が地面に叩きつけた後、実験室の映像にノイズが走り暗転した。]
芭蕉博士: なんだ?!カメラの故障か?!
[直後、実験監視室宛てに無線通信の申請が通知された。椎名研究員が受け取った。]
椎名研究員: 布藤警備員ですか?そちらで一体――
布藤警備員: 飛んでいきました!サルが!火がでて、天井が――
椎名研究員: 落ち着いてください!D-1831はどこへ行ったのですか?!
布藤警備員: え、えーっとほ、方角的には……セクター-8161、の方です。
芭蕉博士: セクター-8161?……Dクラス職員が……まずいな。機動部隊ふ-6は即座にセクター-8161に直行せよ!
椎名研究員: 布藤警備員、D-1831は何を使って飛んで行ったのですか?
布藤警備員: ネギです。ネギから出た火で飛んで行ったんです!
<再生終了>
終了記録: この後、機動部隊ふ-6("青空市場")の報告によって、D-1831によるセクター-8161のDクラス職員の収容違反が発生していたことが判明しました。後に機動部隊によりD-1831は沈静され、負傷者が発生したものの、Dクラス職員全員の確保に成功しました。沈静時、部隊員と沈静後のD-1831へインタビューが実施されました。
インタビュー記録1831-JP-A
対象: 三神隊員インタビュアー: 芭蕉博士
<記録開始>
芭蕉博士: では、あの時セクター-8161で何があったのか、教えてくれ。
三神隊員: はい。私たちがセクターに駆け付けた時、すでにDクラスたちが何人か脱走していたんです。そして、奥の方にDクラスの収容室のドアの前に毛深い何かがいたんです。
芭蕉博士: それがD-1831だったのか。
三神隊員: ええ、でもものすごく奇怪でした。
芭蕉博士: どういうことだ?
三神隊員: 頭にメロンをかぶり、左手にネギ、腰にイチゴをつけて右手のブドウで鍵を破壊していたんです。そして、私たちの姿を見た瞬間、腰のイチゴを投げつけて奥の方へ逃げて行きました。
三神隊員: そして、追いかける際にそのイチゴを踏んだ隊員の足が、爆散して……。[7秒沈黙]
芭蕉博士: 大丈夫か。
三神隊員: ……ええ、大丈夫です。それからは戦争のようでした。こちらは銃や盾で、向こうはレンコンのガトリング銃やレタスの葉の盾で、お互いに戦い合いました。それぐらいですね。
芭蕉博士: なるほど、分かった。ご苦労だったな。
三神隊員: ああ、そういえば1つ気になることが……。
芭蕉博士: なんだ?
三神隊員: D-1831がDクラス職員を解放する度にあいつの周囲にバナナが出てきたんです。で、なぜかあいつはそのバナナを武器にしなかったんです。
<記録終了>
インタビュー記録1831-JP-B
対象: D-1831インタビュアー: 芭蕉博士
<記録開始>
芭蕉博士: なぜこんなことを起こしたんだ?
D-1831: バナナのためさ。
芭蕉博士: いや、その前に、何故喋れてるんだ?
D-1831: 知恵の実を食べたからな。
芭蕉博士: ……リンゴの事か?
D-1831: あの実はレアアイテムだからな。気が付いたら食べてたよ。そして今に至るわけだな。
芭蕉博士: どういうことだ?結局Dクラス職員を解放した理由は何なんだ?
D-1831: 捕虜を解放すると、報酬のバナナが増えることを知ったからだ。人を殺すよりたくさんもらえるんだ。
芭蕉博士: 報酬?何のことだ?
D-1831: なあ、報酬のバナナくれよ。こんだけ喋ったんだぞ。時間がねえんだよ。はやくくれよなあ、なあ、なあ、よこせよ。ばなな。
<記録終了>
終了報告書: この後、D-1831が再び発語能力を消失しました。また、この事案から、これ以上の実験が危険視されたため、特別収容プロトコルが変更されました。