SCP-1837-JP
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アイテム番号: SCP-1837-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-1837-JPは不活性ガスが充填された密閉容器に保存した上でサイト-8120の低危険度物品収容室に保管されます。財団が保護していたSCP-1837-JP-AおよびSCP-1837-JP-A'がすべて死亡したため、SCP-1837-JP-A専用収容ユニットは破棄されました。有害性および危険性のため、新しくSCP-1837-JP-Aを発生させる実験は無期限に凍結されています。

説明: SCP-1837-JPは黒色の強酸性を示すエタノール溶液です。SCP-1837-JPは通常のリキュールと類似した成分に加え、未知生物の血漿と見られる成分を含みます。SCP-1837-JPを経口摂取した陸上に生息する生物(以下、SCP-1837-JP-A)は1週間ほどの期間をかけて肉体の構造を変化させます。SCP-1837-JPの摂取によってもたらされる変化には肺あるいは気門の退化と鰓の発生および発達、鱗の発生、前腕を除く脚部の癒着などがあります。呼吸器をはじめとする器官の急激な変化に伴い、SCP-1837-JP-Aは高い確率で死亡しますが、一部のSCP-1837-JP-Aは海水中での生存に適応します。なお、SCP-1837-JPを経口以外の経緯によって摂取した生物および水中に生息する生物に対してSCP-1837-JPは異常性を示さず、非異常性の強酸と同様の作用をもたらします。

ヒトを除くSCP-1837-JP-Aは海中での生存に適応する以上の変化を起こしません。しかし、SCP-1837-JP-Aとなったヒトの肉体はその後も変化を続け、より低温/高圧の環境に適した構造へと変化します。最終的にヒトSCP-1837-JP-A(以降、SCP-1837-JP-A')に適した環境は水深5000 m相当に達すると考えられています。陸上で再現された環境において、SCP-1837-JP-A'を1年以上生存させる試みに成功した事例はありません。

SCP-1837-JP-A'は水中における発声機能を獲得し、SCP-1837-JP-A'同士で単純な意思疎通を行います。意思疎通の精度はSCP-1837-JP-A'が本来使用していた言語に依存しません。また、SCP-1837-JP-A'が発する音声は人間に対して強い依存性と悪影響を持ちます。音声への暴露は短期間では平衡感覚や意識の消失、長期間では妄想性パーソナリティ障害や記憶障害、さらには重度の意識障害をもたらします。

SCP-1837-JPは宮城県の廃棄されたビル内で、海水で満たされた大型の水槽中から発見されました。また水槽の傍には数カ月前に失踪していた桂木 昴氏が衰弱状態で横たわっているところが発見されました。長期にわたるSCP-1837-JP-A'の音声への暴露によって桂木氏は意思疎通が困難な状態にあり、財団で保護されました。桂木氏に対する事情聴取の試みは成功していません。以下は桂木氏によると考えられる走り書きの内容です。

文書1837-JP

書きのこしとく、おれが正気でいるうちに。今もだいぶ支りめつれつだが、たぶん、明日はもっとひどい。今がいちばんましだろう。だれか、これをよむ人、アルキュネを海にかえしてやってくれ。おれにはできない。もう海にもどこにもいけないし、きっとこの、歌とはなれられない。おねがいだ。陸でくらせる体じゃなかった。おれはいくじなしだ。

 

よみ返したらまるで意味がわからなかったので説明する。上のアルキュネってのは水そう内にいるひと。[判読不可能]引きはなさないで海に返してやってくれ。

一回順を追って書く。せいりにもなるかもしれん。一番さい初はおぼれかけた夜に彼女の歌を聞いたことが始まりだった。いやもっと前だったか。みんな幸せになったから事故が起きたんだろう。とにかくおれは海に放り出され、そして気づいたら歌に彼女に抱きあげられていた。浜辺に連れて行ってくれるときにヒトじゃないとわかったが、気にならなかった。浜についてさよならと言われたときにおれは引き止めた。もう一回会いたいとたのみこんだ。そして一週間してアルキュネが浜辺に立ってるのを見た。夜見たときとちがってきれいな足で立っていた。でも声は失われていた。あの声があっては人と一しょにくらせないということらしかった。(後で聞いた。正しかった)
おれはそれでがっかりした。ひどい事を言った気がする。アルキュネは困ったように笑って二人ですごせる場所(人がいない)と大きな海水をためておける入れ物がほしいと絵でおれにいった。このビルを見つけて██が出来たころ彼女は一つのくすりビンを持ってきて半分のんだ。[判読不可能]

多大な苦しみのはてにアルキュネは声を取りもどした。あんなに苦しむと知ってたらたのまなかった。いや、たのんだかな。頼むべきじゃなかったな。あの声を取り戻すことをねがわないなんて事があるか?

そうしておれは望んでいたものを手にいれた。はい初は幸せで天にのぼるような心地だった。それだけきれいな歌なんだ。どこまでも上に上がっていけるような。そう言ったらアルキュネは「水面であなたを見つけたようなことか」とふしぎそうに聞いた。かの女は空を[判読不可能箇所]つづきはしなかった。アルキュネは弱りはじめた。おれの頭は日に日におかしくなっていく。彼女をきずつけるかもしれない。かえさなきゃいけないが、おれはこのビルを出られない。
出たいとも思わない、なんで離れなきゃいけない?どうしろと。どうすればいい? この[以下判読不可能]

 

よみ返して気づいた。まだ半分のこってる。あれがあれば、おれも海にかえれる。一しょに。なぜ忘れていた? そうすれば一緒に歌える。さがさなきゃいけない。どこにある? ぬすまれたのか? あいつら? そんなことできるはずがない。メモ、おきたらアルキュネに聞く。最近はねているときが長くなっている。

 

彼女に言った。薬はあいつが持っていた。そして、おれにそれを与えることなく消えてしまった。ちょっと泣いて、歌って、それで終わり。気づいたら泡があって、弾けて、アルキュネはどこにもいなかった。それっきり。どうしておれをおいていった?許さないくすりをさがさないと。

 

見つからない。あれがあればまた会えるのに。探すことができない。もうまっすぐ立てなくなっている。このままあの歌のことを思いながらおれは死ぬんだろう。ごめん、アルキュネ。きみの王子にはなれなかった。

桂木氏とSCP-1837-JP-A'を引き合わせる試みは全て桂木氏による"歌"の請願および"歌"の否定という結果に終わりました。財団管轄下のSCP-1837-JP-A'は全て死亡した後に異常性を示さず、文書中で言及された"泡"の再現には成功していません。

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