クレジット
タイトル: SCP-1841 - 君がこれから行くところ
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2024
著作権者: Uncle Nicolini (匿名の著作を改稿)
原題: SCP-1841 - Oh The Places You'll Go
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 10
元記事リンク: ソース
アイテム番号: SCP-1841
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1841はサイト-55の標準的な収容ロッカーに保管されています。SCP-1841の閲覧を希望する職員は、SCP-1841研究主任に申請することができます。SCP-1841の異常性を活性化させた人物は、それから1週間、自分が見る夢の詳細を記録する必要があります。
倫理的懸念から、Dクラス職員によるSCP-1841の利用は現在禁止されています。
説明: SCP-1841は使い込まれた形跡があるソフトカバー本であり、レイチェル・マクフィー著 “死ぬまでに行きたい1000の場所” と題されています。ページ数不定、厚さ4cmです。SCP-1841に記載された版権情報では、1989年に“ペリスコープ・パブリッシング”という出版社から発行されたことになっています。調査によると、この社名は1985年に登録されていますが、同社名義の書籍が出版されたことは一度もなく、既に廃業したと考えられています。
冒頭95ページでは、SCP-1841は95ヶ所の人気観光地を紹介し、主な見所を説明し、SCP-1841が出版された当時の推奨交通手段を挙げています。これら冒頭部のページに由来する異常性は報告されていません。
SCP-1841の95ページ以降で紹介される場所は、当初は山頂や私有地など、読者が金銭的・肉体的な理由で到達できない場所であり、閲覧するたびに変化します。読み続けると、場所への到達難度は劇的に上昇し、説明文はより扇情的かつ肯定的になります。1997/09/18時点で、閉鎖された財団の所有地6ヶ所1と、閉鎖された財団フロント企業の建造物3棟が確認されていますが、運営中の施設が紹介されたことはありません。
読者が1001ページを読み終えると、SCP-1841に追加項目が表出します。これらの新しいページはSCP-1841に質量を付加せず、めくって次のページを閲覧しようとすると消失します。これらの場所の説明文は読者に直接宛てられたものらしく、しばしば読者がそこを訪れた際に完了すべき特定の課題を挙げています。例として以下のようなものがあります。
対象者 | 場所 | 説明文 | 課題 |
---|---|---|---|
D-1221 | ナラの墓 | 君がああした後、彼女を埋めた場所を見に行ったことは一度も無かったね。そこには春になるとポピーが咲き誇り、美しい。 | あんなことがあった後でも、彼女はまだ君を愛している。君ができるせめてもの償いは、墓前にユリの花を供えることだ。 |
サンドバーグ研究員 | 君が初めて彼にキスした場所 | 遊園地のダークライド、数多の若いカップルたちが暗闇の帳に隠れて最初の口づけを交わす場所。夏には松葉の香りが一段と際立つ。 | 雰囲気を感じ取り、そもそもなぜ彼に恋したのかを思い出そう。 |
エリオット博士 | 4号温室 | 窓はもう割れているが、温室はまだ大丈夫。昔の隠れ家を訪れるつもりならガラスに気を付けてほしい、破片が幾つか散らばっている。 | 鞘の中の種を数えよう。種に名前を付けるのもいいかもしれない、彼らが呼び名を持たずに育ってしまうことのないように。 |
エバーウッド博士 | ママの居場所 | そこではいつも香水と薔薇の香りがする。上着を持っていこう、この季節は冷えるから。 | 君はもう何をすべきか分かっている。 |
アルダー管理官 | 屋外 | 君ならできる。君が足指の間に泥や土を感じたのはかなり前のことだが、外はまだ存在する。もし忘れてしまったのならば、今こそそれを思い出す最後の機会だ。 | 雲が作り得る全ての形を見届けよう。雲が作り得ない形には名前を付けよう。 |
クレフ博士 | コンドラキの居場所 | 長い時間がかかったが、彼は諦めた。誰しもいずれはそうする。 | 友の子が踏み出す最初の足音を聞こう。それはどんな許しの言葉よりも尊い。 |
SCP-1841に曝露した人物らは、SCP-1841で紹介された場所へと旅行する鮮明な夢や悪夢を経験し、目的地に到着する直前に目覚めたと報告しています。一部の被影響者はこれらの場所に行きたいという強い欲求を報告し、実際にそこを訪れて、SCP-1841で提示された課題の達成を試みる場合があります。以下は、SCP-1841が紹介した場所を訪れようとした財団職員が提出した報告ログです。
対象者 | 取った行動 | 注記 |
---|---|---|
D-1221 | D-1221は1990年に飼い猫を殺傷して逮捕された町、フロリダ州ジャクソンビルへと護送された。ナラの墓を示す木製の十字架に辿り着いた直後、彼は膝をついてすすり泣き始めた。 | この出来事の後にどう感じたかを問われると、D-1221は“ナラが[彼を]許してくれた、あの子は本当に[彼を]許してくれた”ように感じたと述べた。 |
サンドバーグ研究員 | サンドバーグは1週間の休暇を取ってペンシルベニア州ウェスト・ミフリンへと旅行し、ケニーウッド遊園地の“オールド・ミル”ダークライドを訪れた。 | 「あれは昔、ガーフィールドのダークライドだったんです。“ガーフィールド・ナイトメア”。最悪のアトラクションでした。でも彼はそれが大好きだった。あそこまでガーフィールドを真摯に好きになれる人間がいるなんて信じられない。もう、本当にどうしようもない人なんだから。」 - サンドバーグ研究員 |
エリオット博士 | エリオットは3日間の休暇を取ってカリフォルニア州バークリーへと旅行し、カリフォルニア大学植物園を訪れた。SCP-1841の記述通り、4号温室は使用されなくなっていた。 | 「信じられますか、あれから何年も経ったのに、友達と隠れてマリファナを吸ってた場所がまだ残ってたんですよ。みんな元気でやってるといいんですけどね。そうそう、種にも名前を付けました! チェルシー、ダニカ、ローザ、ソーラ。友達と同じ名前を1つずつ。」 - エリオット博士 |
エバーウッド博士 | エバーウッドは介護施設に住む母親を終業後に訪問したが、到着時には既に母親は死去していたと主張している。 | 「その話はしたくない。」 - エバーウッド博士 |
アルダー管理官 | アルダーは10年ぶりにサイト-55の外に出た。 | 「私の記憶よりずっと暖かい。でも、同じくらい美しい。」 - アルダー管理官 |
クレフ博士 | N/A | 「断る。」 - クレフ博士 |
SCP-1841はマサチューセッツ州ボストンの高齢者施設から、従業員がその異常性を地元当局に通報した後に回収されました。その起源を調査したところ、SCP-1841は最近死去した高齢の居住者であり、書籍収集家でもあったスタンリー・ドゥーカスによって施設に持ち込まれたことが判明しました。ドゥーカス氏は生前、計11回にわたって、ギリシャのメツォヴォにあるかつての自宅を訪れることを要望していました。目撃者にクラスC記憶処理が施され、SCP-1841はSafeクラスに分類されました。
補遺1841.1: 以下は、SCP-1841の裏表紙に残されていた書き込みのデジタル複写です。
君には決して見ることができない美と驚異の世界がある。
たとえ見ることができないものが沢山あったとしても、今まで成したことだけで十分だ。万物を見るのに十分な時間は絶対に得られないが、今持っているもので幸福になる時間ならあるじゃないか。
君が世界を見られなかったとして、それがなんだと言うのだろう。家族がいて、友達がいて、君ならではの経験があった。それは私たち一人一人が持っているもの、君がこの思いやりのない広い世界から得たものだ。君がどれほど多くのものを見逃したにせよ、その驚くべき未知には決して見ることができないものがある — 君の経験だ。