SCP-1841を放出するF████ L████氏
アイテム番号: SCP-1841-EX
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized Euclid Keter Explained
オリジナルの封じ込め記録は『珍品と過ぎ往く幻想の研究の為の王立財団』のアーカイブより取得。最終編集日1878年3月16日
特別収容プロトコル: SCP-1841は現時点で封じ込めの外にあり、その規模と一時的性質により、確保することが酷く難しく不可能です。F████ L████氏は現在財団の手の届かない、ドイツ帝国とローマカトリック教会の保護下にあります。財団は影から、L████氏の行動や移動する地域すべてにおいて、現地警察機関に電報によって連絡をとりあってください。そして、彼の存在の結果として発生する暴動や不当な扱いを払い退ける知恵と支援を提供してください。
王立財団の特別会員とその他の職員は、L████氏の公開演奏会に出席することが禁じられており、自分自身に影響を受けないようにしなければなりません。SCP-1841の影響を受けた者は誰もが平穏を脅かしますので、必要に応じて処刑か鎮圧をしてください。被影響者への健康診断は、SCP-1841の影響が蔓延する手段を特定するために認可されています。
SCP-1841の結果として、ヒステリックな状態に陥った女性に対する電気または手による刺激は、女性の衝動を落ち着かせ、淫らな振る舞いを防止する為必要に応じて認可されます。
概要: 『L████熱風』や『L████マニア』と大衆紙に呼ばれたSCP-1841は、ハンガリー人の血を引く作曲家でありピアニストであるF████ L████の公開演奏会に訪れた人々によって起こされた、一連の奇妙な行動を指します。
L████氏自身の作曲または他者の作曲したものであるかに関わらず、L████氏のピアノ演奏を聞いた人々すべてが、未知の科学的手段を介してSCP-1841の影響を受ける危険があります。そしてその影響は最短3時間、最長で5年間続く可能性があります。SCP-1841が1844年にベルリンで最初に文書化されて以来、一次および二次感染がヨーロッパ大陸全体の何千もの人々に影響を及ぼしています。
L████氏の公演に訪れた人々の約63%に、SCP-1841の症状が現れます。より若い世代の男性(ボヘミアンや特に独身者)が簡単に影響を受ける事が証明されていますが、女性はさらに殊更にSCP-1841の影響を受けやすいです。初期症状においては、公演の間にはっきりと現れます。賑やかな応援や大声、曲のテンポに合わない踊り、興奮した様子の会話や、また多くの場合、演奏中のL████氏に触れようとしたり、彼の所持品やゴミ、切れたピアノの弦を持ち去ろうとしたりします。彼らの行動の間でさえ、例えば葉巻の吸いさしやコーヒーのかすが捨てられた効果によってでさえ、聴衆の間で争奪戦が突発すると観察されています。
公開演奏会の終了後、感染者はしばしばL████氏の宿舎に押し入ろうとし彼を追いかけ、警察が出動する暴動や騒動にまで発展しています。SCP-1841の流行についてインタビューをした所、L████氏をまるで聖人のように、今までの人生で最も偉大な音楽家でさえ一線を画すとして尊敬し、L████氏から盗まれたものを聖遺物のように扱い崇拝している、と答えています。感染者が周りの知人に対しL████氏がいかに有名で素晴らしいかを『説いて』回るため、それにより思想を植え付けられ、彼とその聴衆を探し始めます。二次感染はこれらの人々の努力の結果発生します。ドイツ旅行中に発生した複数の事件において、SCP-1841の本格的な流行は、L████氏が街に到着する数日前に発生しています。
極端な症例では、SCP-1841に罹患した女性が、L████氏の一行に加わる自分自身を妄想し、ヒステリーに苦しめられる事が観察されています。女性は、完全に淑女としての貞淑を捨て去り、まるで娼婦のように振る舞いだします。それに罹患した人々は、彼らの夫さえ除外して、L████氏と親密であるという精巧な妄想を重ねます。そして感染期間中は、厚かましく、相応しくない振る舞い防止することができません。骨盤マッサージと電気刺激では、これらの症状の一時的緩和に有効であることが証明されました:注意しなければならないのは、その時点では罹患女性がL████氏の事を心の中で想っていませんので、ヒステリーの発症によって女性の妄想を強化しないようにしてください。
SCP-1841の原因は不明です。1863年に実施したインタビューでは、L████氏自身、現象に対する理解や能力のコントロールを否定しており、演奏に出席している女性のヒステリックな反応が彼を最も動揺させると述べました。心に影響を及ぼすSCP-1841の奇妙な性質の為、パリのサロンである『Sommes-Nous Devenus Magnifiques?』との繋がりが疑われています。:しかしL████氏とその組織との繋がりについての直接の証拠はなく、現在まで明らかになっていません。
補遺1841-1 RFSCPアーカイブ、1886年7月31日付
SCP-1841の感染源であるF████ L████が肺炎に罹った後、ドイツで死亡したというニュースが本日、ロンドンに届いた。L████氏の公演がSCP-1841の唯一の起源と焦点であると考えられている事と、彼の演奏のどれもが蓄音機で録音されていない事から、SCP-1841は現在Neutralizedと思われている。我々は伝統的な喪に服している間、暴動やヒステリックな振る舞いが増えていくことを予想しているが、その後感染者は徐々に消滅させる必要がある。『L████マニア』の症例が観察されないか、感染の封じ込めが5年経過するまで、観察は継続する。-T.T.B-
補遺1841-1 O5理事のメモ、1956年4月8日付
O5理事会が確実に認識しているように、ロックンロールミュージシャンのエルヴィス・プレスリーが関係している、突発的な大衆の興奮やヒステリー症状は、『エルヴィス』自身か、彼と関連付けられる誰かがcognitohazardや他の異常な精神作用をもたらしていると財団の多くが憶測している。これらのケースが発生した時、それが事実であるように見えるのは、私にとって不運な義務である。補助研究員のワーサムの知見に基づくに、プレスリーのファンの振る舞いは、既に中和された減少であるはずのSCP-1841、19世紀の作曲家フランツ・リストがファンに与えた影響と同一であるように思われる。全ての証拠が、観衆に不合理な振る舞いを誘導する、リストに備わっていた異常な能力が、現在プレスリーに発現していることを示している。私はSCP-1841の封じ込めを復活し、オブジェクトクラスを前回のレベルまで戻す事を推奨する。そして補助研究員ワーサムにこの現象の再研究と状況に応じて封じ込め方法の草案の更新を命じる。-ジェイコブス博士
要求を認可する。-O5-2
補遺1841-2 O5理事のメモ、1958年6月23日付
当財団のSCP-1841の継続的研究では、問題は以前に考えられていたよりもはるかに広まっていることを示している。私は現在、SCP-1841の影響を受けた聴衆を誘導することができる、一個人から発せられるのではない凡そ24弱の人気のミュージシャンを同定している。またこれら演者の幾つかは、黒人社会のメンバーであることから、SCP-1841は人種や社会的な障害を超越する能力を有することを示唆している。これまでに同定されたうちの5グループは、我々の研究が始まった時点では影響を及ぼすようなミュージシャンではなく、この影響を誘導することが出来る人間の数が増えていることを示唆している。この流れを止めるための抜本的対策が取られていない場合、現行のSCP-1841感染は1963年までに世界流行のレベルにまで達すると予測する。そして大衆の不安と混沌は続くだろう。私はSCP-1841のオブジェクトクラスをKETERに更新し、キャリアの影響を緩和するための積極的措置を許可することを推奨する。さらに、SCP-1841の封じ込めに関する文書をプライマリーデータベースと現在のアクティブな状態についての情報から削除し、直接封じ込めに関わる職員に対し、Need To Know に基づいて運用することを提唱する。SCP-1841は特に若い世代に対して強毒性を持つ。さらに、これらのミュージシャンにこの能力が存在し、持っているという知識は、我々のランク間で二次感染の発生につながる可能性がある。-ワーサム博士
要求を認可する。-O5-11
補遺1841-3 O5理事のメモ、1961年1月12日付
SCP-1841への処置が大きく成功している事を報告できるのは、とても喜ばしく思える。プレスリーの陸軍徴兵が大幅にSCP-1841を広める彼の能力を軽減させており、対象者ホリー、リチャードソン、ヴァレンスの影響を中和すべくジャンルが完全に瀕死であることの宣伝を、いくつかのメディアの音楽評論家に求めている。我々の行った対象者ペニマンの転向は、これまでに完全に効果的であると判明し、ロックンロールの潜在的な脅威に関する我々の張った偽のキャンペーンは、宗教保守派コミュニティ内で牽引力を持ち始めている。一体化した行動を取る未知のSCP-1841キャリアのグループが突然出現するような事がなければ、我々は3年以内にこの現象を中和できると考えている。-ワーサム先任研究員
補遺1841-4 O5理事のメモ 1969年7月15日付
私はSCP-1841が我々の制御能力を超えて成長していることを恐れ始めている。1964年の対象者ハリスン、レノン、マッカートニー、スターキーの突然の出現に続いて、既知のSCP-1841キャリアの数は数百に成長し、我々の追跡及び監視能力を超えて成長し続けている。SCP-1841の感染による社会不安は、ベトナムでのアメリカの戦争努力を損ない、国際政治プロセスについても影響を及ぼし始めている。過去二年間で催された様々な"フェス"は、SCP-1841キャリアの参加が100,000人以上に昇る事を計上している。ニューヨーク州北部で計画予定の"フェス"では、現在ほぼ50万人の潜在的感染者を予測している。積極的措置の時は来た。対象者エリオットに限定せず、ヘンドリックス、ジョプリン、レノン、モリソン、レルフ等知名度の高いSCP-1841キャリアの今後数年間で可能な限り暗殺の実施を提案する。それだけでなく、SCP-1841の更なる感染拡大を防止するための将来的な暗殺等も合わせて提案する。-サイトディレクターワーサム
要求を認可する。 -O5-8
補遺1841-5 倫理委員会のメモ 1996年9月22日
To:サイト19倫理委員会
From:サイト19機動部隊司令官ジェームス・A・オストハイム将軍
月初に起きたラップミュージシャンのトゥパック・シャクールの殺害は、ギャングの抗争による結果と報告されていたが、実際にはサイト19で私の監督下にある機動部隊β-6(“カセムの復讐”)の隊員による暗殺であることが、私の知ることになった。機動部隊経費のルーチン監査時に、我々はいくつかの用途不明の旅費と、β6の将校と兵士の不正な動きを発見した。私がこの問題を議論するために機動部隊隊長キャラハンと予定していた会談では、彼は彼のチームが殺人を犯した事を公然と認め、さらには1994年のミュージシャン、カート・コバーンの自殺、1980年の元ビートルズのジョン・レノンの殺害、ここ数十年のいくつかの著名なミュージシャンの死に関係していると自ら申し出た。機動部隊隊長キャラハンは暗殺は監視司令部より直接命令を受けて実行したと言い、私にO5-6のデジタル署名を冠した文書を提出した。さらにSCP-1841封じ込めの一環として暗殺を命令されていたことも私に伝えた。しかし財団のメインデータベースを確認しても、その文書が分類されている指示もなく、SCP-1841の存在の情報を全く見つける事ができなかった。
直感で、私は中央アーカイブと連絡を取り、1983年に電子化された際にコピーされていなかったDecommissioned分類かNeutralized分類の、その番号の付いたSCPがあったかどうかを尋ねた。私は、1886年に没したドイツの作曲家であるフランツ・リストの音楽を聞くことに、ヒステリックな反応をみせる人々について説明した、王立財団の頃にまで遡る古い手書きの文書を得た。文書には、それ以来更新されていなかったと見えてNeutralizedとして記載されていた。O5理事会のメンバー自身が指揮系統に取って代わり、その権限の元に1世紀以上不活性であったSCPに関して、私の知らないところで注目されている一般人の暗殺を指示する命令を出していることを、私は大変遺憾に思う。可能な限りこの問題の検討をお願い申し上げる。
補遺1841-6 倫理委員会のメモ 1997年5月21日付
From:サイト19倫理委員会
To:O5-1、O5-13、ジェームス・A・オストハイム
徹底的な財団アーカイブの見直しと、専門家の証言の調査の後、SCP-1841は異常特性を全く持たず、現在適所での封じ込めには値しないと、我々は結論づけた。SCP-1841は『スタンダール症候群』と『エルサレム症候群』と呼ばれる精神状態と同様に、カリスマ的な個人か芸術作品によって動かされる感情のどちらか、または両方に対する、通常の人間の精神的反応であると我々は決断した。そして「キャリア」自身に決して異常はなく、彼ら自身のカリスマと音楽の才能を超えて、人間の心理に影響を及ぼすような異常な能力もない。
直ちにSCP-1841は概要をデータベースに記載され、再分類される。SCP-1841の影響を受ける人々の更なる監視や封じ込めの権限は、与えられていない。そしてそれ以上の行動を、キャリアと考えられている人々に対して取るべきではない。SCP-1841封じ込めに長く関わりを持ち、それ以外はなんら汚点のない彼の人事記録を考慮した結果、O5-6には満額での早期退職が許可された。懲戒処分は、SCP-1841の封じ込めに関わった財団職員に対しては適応されない。関係する全ての職員は、その裁量によってBクラス記憶喪失の治療を受けることが出来る。
中央委員会への懸念や上訴を参照されたし。