SCP-1843-JP
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アイテム番号: SCP-1843-JP

オブジェクトクラス: Euclid Neutralized

特別収容プロトコル: 現在、SCP-1843-JPの残骸は、サイト-███内の低危険物収容ロッカーに収容されています。


説明: SCP-1843-JPは、全高1.80m、体重25kgのマネキン人形です。SCP-1843-JPの顔には、20代程度の男性の顔が写実的に描かれており、一般的なマネキンと同様の物質で構成されているにも関わらず、様々な言語での発話および四肢の駆動を行います。

SCP-1843-JPの口腔は、未知の空間につながっており、様々な物品を取り出すことが可能です。取り出す物品の大きさが口腔の大きさをはるかに上回っていた場合でも、対象は問題なく物品を取り出すことができます。SCP-1843-JPは、しばしばサーカス用の道具を取り出し、サーベルを用いたジャグリングなどの芸の練習を行います。

ほとんどの場合芸は失敗し、それによってSCP-1843-JPは衣服や身体に損傷を負います。衣服に損傷が発生した場合、SCP-1843-JPは支給された裁縫道具を用いて、破損箇所の修繕を行います。その日の練習が終了した後、SCP-1843-JPは支給されたノートにその日の成果や改善点などを書き留めます。これまでにSCP-1843-JPが使用したノートは46冊、ボールペンは13本に及びます。

SCP-1843-JPは、██████の外れに位置する廃材置き場にて、「人が口から剣を取り出して、芸をしている」という業者からの通報が財団の注意を惹き、発見に至りました。また発見時、SCP-1843-JPと共に、GoI-233"ハーマン・フラーの不気味サーカス"に関連するポスターや、異常性のない物品が複数回収されました。

以下は、収容直後にSCP-1843-JPに対し行われたインタビューの記録です。

インタビュー記録-1843-JP-1

対象: SCP-1843-JP

インタビュアー: ███博士

<記録開始>

███博士: では、これからインタビューを行いますが、よろしいですか?

SCP-1843-JP: [沈黙]

███博士: まず、あなたが発見されたとき、ハーマン・フラーの不気味サーカスの物品がいくつか回収されていますが、あなたもサーカスの関係者なのですか?

SCP-1843-JP: [沈黙]

███博士: もし関係者であるのなら、サーカスについていくつかお聞きしたい事があるのですが。

SCP-1843-JP …申し訳ありませんが、サーカスに不利益をもたらしかねない質問にはお答えしかねます。

███博士: それは何故でしょうか。

SCP-1843-JP: …私は、あのサーカスを心から愛しています。確かに、今は理由あって離れてしまっていますが、決して嫌いになったわけではありません。ですので、サーカスに不利になるような事を喋るつもりはありません。

███博士: では、あなた自身についてお聞きしてもよろしいですか?

SCP-1843-JP: …でしたらその前に、1つお願いしてもよろしいでしょうか。

███博士: できることには限度がありますが、なんでしょう。

SCP-1843-JP: …部屋で、芸の練習をしてもよろしいでしょうか。私は不器用ですから、練習しないと、すぐ腕が落ちてしまいますので。あと、反省や改善点を書いておく為のノートとペンと、衣装が破けた時の為に裁縫道具が欲しいのですが…。

███博士: …わかりました、上に掛け合ってみます。今日はこれで終了にしましょう。

<記録終了>

終了報告: SCP-1843-JPは、何らかの形でハーマン・フラーの不気味サーカスに関係している可能性が高いと思われます。また、サーカスに関する情報収集は困難と思われるため、次回以降のインタビューは、SCP-1843-JP自身に関する情報の入手を中心に行います。 -███博士

2日間の協議の後、芸をする際監視を配置する事、SCP-1843-JPの起源および発見までの経緯を話す事を条件として提示し、SCP-1843-JPがこれを承諾したため、芸の練習の監視及び物品の支給が、特別収容プロトコルに追加されました。

プロトコル改訂から5日後、SCP-1843-JPに対し、2回目のインタビューが行われました。

インタビュー記録-1843-JP-2

対象: SCP-1843-JP

インタビュアー: ███博士

<記録開始>

███博士: こんにちは、SCP-1843-JP。

SCP-1843-JP: …どうも。

███博士: では約束通り、あなた自身について教えていただけますか?

SCP-1843-JP: …まずは、私がどうして作られたか、からですかね?

███博士: えぇ、お願いします。

SCP-1843-JP: [深呼吸]当時、サーカスは売れ行きが伸び悩んでおり、人件費削減の一環として、私は作られました。人形は食事も休息も必要ありませんし、汗もかかないので、服もあまり汚れません。コスト削減としては非常に合理的な手段だと思います。

███博士: 人を雇うのではなく、人員を作ったということですか。喉から様々な物品を取り出せることに関しては、何か聞かされていませんか?

SCP-1843-JP: これは、もともと売り切れそうな商品をすぐに補充する為に、団長がつけてくれたものです。あと、口から出す方がインパクトがあるから、と。悪ふざけ半分だと思いますが。

███博士: では、何故今はサーベルのような道具が入っているのでしょうか。

SCP-1843-JP: [5秒間沈黙]私は、自分が売り子をするという為に作られたことを理解していましたし、不満はありませんでした。しかしある日、いつもより準備が早く終わって、何か手伝いがないか指示をもらおうと団長を探しに行った時があったんです。そこで、私は見たんです。

███博士: 何を見たのでしょうか。

SCP-1843-JP: ショーのリハーサルです。アクターの皆さんは自分の演技を確認し、団長はセリフを噛まないよう、何度も何度も繰り返し声を張り上げていました。その時、私は団長がいつもサーカスの事を話すときにいつも言う言葉を思い出したんです。どんな言葉か、ご存じですか?

███博士: いえ…何と言っていたのですか?

SCP-1843-JP: 「最初にして最高のショー」と。私は、他のサーカスがどのようなショーをするのか知りませんが、あのサーカスが世界で一番のショーであると確信しています。その後、時々リハーサルを覗くようになって、回数を重ねるうちに、私もショーに出たいと思うようになったんです。それでしばらく経ったある日、団長にショーに出してくれないか頼んでみたんです。

███博士: 彼は何と?

SCP-1843-JP: [6秒間沈黙]相手にしてくれませんでした。「お前は売り子として作ったんだ。余計なことは考えず、人形らしく与えられた仕事だけしていればいい」と言われました…

███博士: その後はどうしたのですか?

SCP-1843-JP: その後は、リハーサルを見に行くこともなくなり、今まで通り、売店での仕事をこなす日々に戻りました。ですが…[7秒沈黙]

███博士: SCP-1843-JP?

SCP-1843-JP: ですが、私は諦めることができませんでした。頭の中に、あの輝かしいステージが、何度も何度も浮かび上がってきたんです。結局、私は諦めることができず、サーカスを抜け出し、芸を磨く事を決心しました。あの街でのショーの後、小道具をいくつか拝借して、廃棄する材木や商品の山の中に隠れました。アクターがいなくなっても探さない人でしたので、私がいなくなったところで、気にも留めないということは分かっていました。そして、あなた方に見つかったというのが、私の身の上話の全てです。

███博士: …1つお伺いしますが、あなたはまだ、目標を諦めていないのですか?

SCP-1843-JP: 勿論です。ここから出ることはとても難しいでしょうが、これまで費やしてきた日々を無駄にしないためにも…そして何より、いつかあのステージに立つという夢のために、私は諦めるわけにはいかないのです。

<記録終了>

終了報告: SCP-1843-JPは、直接的に収容違反を起こす物品を所持していないものの、収容違反可能な状態となった場合、逃走する意思があると思われます。監視を怠らないよう注意してください。 -███博士

補遺1: 1996/5/18、所属不明の武装勢力によるサイト-███への襲撃により、複数の死傷者およびSCP-1843-JPを含む複数のオブジェクトの収容違反が発生しました。事案発生から6日後、SCP-1843-JPからのものと思われる手紙が、サイト-███に郵送されました。以下は、その手紙の全文です。

博士、逃げ出してしまって申し訳ないと思っています。しかし、あの機会を逃したら、もう二度とそこから出ることはできないと思ったのです。正直に言うと、今サーカスがどこにいるのか、皆目見当もつきません。いつ会えるかもわかりません。それでも、私は自分の夢を叶えるために、芸を磨きながら彼らを探す旅をすることにします。できればもう、あなた方に会わないことを祈っています。

自分勝手なマネキン人形より

補遺2: 1998/7/27、SCP-1843-JPの収容房内に、段ボールが1箱出現しました。中には、頭部を切断されたSCP-1843-JPと共に、以下の手紙が同封されていました。

2年前、うちの元売り子がそちらでお世話になったと、先ほど本人から聞きました。大変遅くなってしまいましたが、謝罪と最大限の感謝をあなた方に。

彼は自分の芸を私に見せ、ショーに出してほしいと言ってきました。ですが生憎、先日新しいアクターを迎えたばかりで、演者の枠に空きがないのです。また、既に新しい売り子を作っており、彼を雇う必要がないというのが現状であります。かと言って、そちらに彼をそのまま送り返すわけにはいきません。ご存じの通り、当サーカスは素性の一切がヴェールに包まれているのも売りのひとつでございます。彼がもしあなた方に色々と喋り、こちらに不利益が生じることは、こちらとしてはあまり望ましくないので、2年前の道具の持ち出し及び無断でサーカスからいなくなり、売店運営に少なからず損害を与えた"けじめ"として、このような形を取らせていただきました。ご了承ください。

私どもは、これからもお客様を楽しませることをモットーに活動して参りますので。どうぞよろしくお願いいたします。

ハーマン・フラーの不気味サーカス団長 ハーマン・フラー

以降、異常性を示すことがなくなった為、SCP-1843-JPはNeutralizedに再分類されました。

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