Are we cool yet?
ごめんね、冗談だよ
アイテム番号: SCP-1850-JP
オブジェクトクラス: Cool
特別収容プロトコル: SCP-1850-JPは通常閲覧されるべきではありません。閲覧者はオブジェクトの影響下にあることを余儀なくされるため、影響を抑える為SCP-1850-JPに関する事は一切話さないでください。SCP-1850-JPの閲覧は通常の情報管理教育によって防止されます。
説明: SCP-1850-JPは同ナンバーのスロットに出現したSCP報告書の形式を模した文書です。削除や編集の試みは全て失敗しています。内容はSCP-1850-JPに関する事実が記述されており、時には追記が行われる場合もあります。プロトコルも妥当なものであるとみられますが、財団職員によって記述されたものでないことに注意してください。初期画面には大仰な警告文と偽りの認証ページが用意されていますが、これは心理的リアクタンスを引き起こし、閲覧の可能性を高める効果を発揮しています。
SCP-1850-JPは閲覧者に自身を重大なものであると思わせるミーム効果を有し、一度把握すれば忘却は不可能です。一部分を把握したならばそれを全て読もうとし、全容を把握していても常にそれを意識することを強いられます。集中力等に悪影響を及ぼす為、出来るだけ閲覧しないことが望ましいです。この効果は長期間SCP-1850-JPの情報を認識しなければある程度抑えられますが、再び認識すると影響が再発します。事前の説明等はその自己言及的内容から説明自体が異常性発現のトリガーとなる為、意味を為しません。記憶処理やミーム処置はSCP-1850-JPをより強く定着させました。
SCP-1850-JPのスロットは当初要注意団体"Are We Cool Yet?"によって制作されたアーティファクトに割り振られる予定でした。しかしそのオブジェクトは正式な登録を前に自ら無力化、消失し、同時に現在のSCP-1850-JPが出現しました。以下は本来SCP-1850-JPとして登録されるはずだった報告書です。(便宜上SCP-1850-JP-Nと表記)
アイテム番号: SCP-1850-JP-N
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1850-JP-Nはサイト-81██の低脅威度物品保管ロッカーに覆いを掛けた状態で収容されます。
説明: SCP-1850-JP-Nは"好奇心"と題された45cm×38cmの油彩画です。SCP-1850-JP-Nはイエネコ(Felis silvestris catus)が描かれています。SCP-1850-JP-Nの鑑賞を繰り返し行うと、描かれた実体が不規則的に不定の要因により死亡した状態になる、また元の状態に戻る様子が確認されています。誰かが観測を続けている間は変化することはありません。また撮影されたものには異常は起こりません。
SCP-1850-JP-Nを観賞した人物はまだそれを見ていない人間に対し具体的に説明することに抵抗感を持ちます。説明を求められると、ポジティブな印象を抱いている場合は"実際に見て欲しい。"、ネガティブな場合は"話す程の価値はない。"などと拒みます。報酬又は罰を与えることなく話させることは困難です。SCP-1850-JPを見ていない、説明を拒否された人間はそれに強い興味を持ちます。
SCP-1850-JP-Nは未特定の人物の"Are We Cool Yet?"集会の情報のリークに基づいた襲撃の際に、他複数のオブジェクト群とともに回収されました。以下は製作者であるPoI-1850(ペンネームとしてヘイ・ウェイを自称)に対してのインタビュー記録です。
インタビュー記録 - 1850-1 20██/██/██
インタビュアー: 水無川博士
対象: PoI-1850
<再生開始>
インタビュアー: インタビューを開始します。初めまして、ヘイ・ウェイさん?
対象: よろしく。手短に終わらせようぜ。俺だって面倒だし、あんたらは俺よりずっとたちの悪い"芸術家"どもを相手にしなきゃなんねえし。
インタビュアー: では、あなたの作成したオブジェクトについて説明して下さい。
対象: あれはな、試作品だ。俺のアイディアが上手くいきそうかどうかのな。
インタビュアー: もっと具体的にお願いします。
対象: ところでさ、今回の件でどれくらいあんたらのお仲間が死んだんだ?
インタビュアー: 質問に答えてください。
対象: 俺が言いたいのはだな、異常芸術は危険であるべきだと考えてる輩の多さについてだ。そういう輩のせいで俺たちがアートテロリストなんて呼ばれちまうこともあるのは、あんたらも知ってるだろ?ああいうのは俺はクールだとは思わない。いや、クールか否か以前の、言うなれば品性の問題だ。
インタビュアー: 続けてください。
対象: まだそれだけなら俺の好みの話で済む。問題は大勢がそれを注目を集める為の安易な手段として使ってることだ。酷いマンネリズムだ。しかもそれが注目されるってことは更に浅はかな連中を生み出すことになる。
インタビュアー: 迷惑極まりない話です。
対象: 俺はその理由を考えた。なんで皆んな"死"ってもんをそんなに特別視するんだ?ってね。で、それは死というものを禁忌と見なしてるからだという結論に至った。常識から逸脱した行為だからこそ注目を受けるのさ。結局、世間外れでクレイジーな天才ぶってる連中も、常識の鎖からは逃れらないワケよ。
インタビュアー: なるほど。
対象: この状況を変える為には別の方法を提案しなきゃならない。皆んなが試したくなるようなクールなアイディアをだ。そもそもこの世界じゃクールでなきゃ発言力だって皆無だしな。そんでもって、俺が見つけた死に代わるものは何かっていうと…。
インタビュアー: なんでしょうか?
対象: それは"秘密"だ。さっきも言った通り、人間ってもんはタブーに魅せられちまう。ウラシマタロウやツルの恩返しを知ってるだろ?ああいうのが今現在まで語り継がれてるのが何よりの証拠だ。他にも、アングラなイメージに憧れてウチに来る新人も割といたりすることとかもな。
インタビュアー: ではそれがあの作品のテーマなんですね?
対象: テーマってか、重要な技法の1つってとこかな。他にも注目される為の要素を使ってね。なにせ、上手く行くかわからないもんをいきなりすすめるわけにゃいかねえだろ?
インタビュアー: …一応理屈は理解できました。では、あなたの作品は評価されたのですね?
対象: ああ、一部の、ヒトが死ぬのを面白がるような連中を除いてはな。だから次はこのアイデアを広めるんだ。できたらあんたらにも見せてやれると思うよ、多分。
インタビュアー: それは自分の状況をわかった上での発言ですか?…まあいいでしょう。では、特になければ、インタビューを終了しますが。
対象: じゃあ、1ついいかい?働いててさ、自分じゃ知りえない、組織の機密とかを知りたいと思ったことある?
インタビュアー: ええ、まあ、否定はしませんが。ですが当然、実際にはそんなことはしませんよ。
対象: ふーん、やっぱそうか。でもあんたらでも気になるもんなんだな。安心したよ。
<再生終了>
終了報告書: PoI-1850はこのインタビューの後不明な方法で拘留を脱出しました。なおこの事案においてPoI-1850と対立していた、複数の過激派異常芸術家も確保された点は特筆に値します。
なお不明な方法でSCP-1850-JPが外部に"財団の極秘文書"として流出していることが確認されています。セキュリティ上では問題なく、SCP-1850-JPの作用の1つのようです。財団では指導・教育の徹底により閲覧する職員はほとんどいないこと、またその内容及び関連情報から、財団にではなく"AWCY?"を主な標的として作成されたものであると推測されています。