アイテム番号: SCP-1854-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1854-JP-Tはサイト-8104の低脅威物保管ロッカーに保管されます。実験にはサイト管理官の許可が必要となります。被験者は必ず録画機材を装備してください。実験により異常性を失ったSCP-1854-JP-Tも実験前同様の収容を施します。
████線██駅及び周囲500mの区域には財団職員を2人以上24時間体制で配置し、一般人の侵入を阻止します。無許可の侵入者は速やかに確保し、簡単な尋問の後クラスA記憶処理を施して解放してください。
説明: SCP-1854-JPは19██年に廃線となった████線の██駅-██駅間、19██年█月█日が期限の硬券回数券11枚(SCP-1854-JP-T-1から-11に指定)と、SCP-1854-JP-Tを1970年以前に実際に鉄道会社により使用されていた改札鋏によってパンチした際に侵入できる異常空間です。SCP-1854-JP-Tは一度のみ使用が可能であり、何らかの形で破損した場合異常性を失います。収容後から現在までにSCP-1854-JP-T-1から-4の4枚が実験のため使用され、異常性を失っています。
SCP-1854-JP内は廃線前の████線██駅及び周辺地域に酷似しています。複数回の実験における観察から、SCP-1854-JPは廃線となった19██年当時を再現したものと推定されており、常に廃線当時の流行曲がランダムに不明な発生源から流れています。SCP-1854-JP内には後述の人型存在以外に動物らしきものは存在せず、また、現実における季節や時間帯に依らず、常に晩秋の夕暮れ時であることが判明しています。SCP-1854-JP内の██駅は駅員室、待合室、手洗い場を持つ簡素な平屋建ての駅舎と一つのプラットホームからなり、一般的な駅から逸脱した構造は見られません。
SCP-1854-JP内に正常な知覚力がある人間が侵入した場合、侵入の5分後に████線と同型の列車が到着します。この時、侵入者は乗車することへの微弱な欲求を感じます。この欲求は抵抗することができますが、乗車する以外にSCP-1854-JPから脱出する手段はないため、侵入者は乗車することを余儀なくされます。侵入者が乗車すると、列車は直ちに出発します。
列車の発進後、侵入者は「自身がそれまでに経験した中で最も郷愁を覚える」と共通して称される経験の記憶が車窓に映し出されていることに気付きます。この記憶は以下の要素を大まかに含んでいます。
- 幼少期の侵入者が特定の事物に熱心に取り組んでいる様子。
- 家族、もしくはそれに類似する関係の人物によって幼少期の侵入者の技術上達や、身体的・精神的成長が称賛される様子。
- 上記の発言に追随する年月の経過を思わせる発言。
- 時間は有限である旨の発言と、その発言に伴う幼少期の侵入者の焦燥感。
記憶の再生が終了した後、「車掌」を自称する人型生物(SCP-1854-JP-Cに指定)が現れ、次の駅は到着までに時間がかかるという旨の説明をします。SCP-1854-JP-Cは知性を有しており、財団職員を含める侵入者との会話にも友好的に応じます。財団職員との具体的な会話の内容に関してはインタビュー記録-1854-JPを参照してください。SCP-1854-JP-Cは会話の終了後、隣の車両に移動するような素振りとともに消失します。会話時間が約10分を超過すると、仕事に戻ることを理由にやや強引に侵入者との会話を終了し、上記の行動を見せます。
SCP-1854-JP-Cの消失後、列車内に終点に近づいていることを告げるアナウンスが流れると同時に、列車は減速を開始します。列車が減速するにつれ侵入者は急激な眠気を覚え、入眠と同時に現実に帰還します。SCP-1854-JP-Cの消失から帰還までの数分間、車窓には侵入者がそれまでに一定期間以上生活した経験のある地域がランダムに映し出されます。
帰還後、侵入者は自身が持つ時間が有限であるという切迫感に固執し、他者の記憶に残ることを目的とした活動に尽力します。侵入者自身は切迫感の理由を説明することができず、SCP-1854-JP内の経験については断片的な記憶しか持ち合わせません。侵入者は外的要因によって活動を阻害されない限り、即時の社会復帰が不可能な程度に体調を崩すまで何らかの活動を続けることに執着します。この影響はクラスA記憶処理によって除去することが可能です。
SCP-1854-JP-Tの上記の性質による体力の損耗は、使用回数、頻度に比例して劇的なものとなります。標準的な成人男性では、1ヵ月に3回の使用により社会復帰が完全に不可能となるか、もしくは多臓器不全により死に至ります。
回収: SCP-1854-JPは201█年に当時廃線写真家として有名だった█████氏の突然の不審死により財団の注意を惹きました。死因は極度の疲労による多臓器不全であったことから、SCP-1854-JP-Tを連続使用したことによるものと考えられます。氏は死の直前、周囲に「珍しい物が手に入った」、「創作意欲が湧いて止まらない」、「まるで若返ったみたいだ」と頻りに漏らしていたため、██県警に潜入している財団エージェントを通して氏のコレクションを調査したところ発見されたものです。SCP-1854-JP-Tの入手経路については現在調査中です。
補遺: SCP-1854-JP-Tの裏面にはSCP-1854-JPへの侵入方法を暗示する文書が印刷されています。詳しくは以下の文書1854-JPを参照してください。
文書1854-JP
お元気ですか? こちらは秋も深まってきた頃合いで、皆何かしらに勤しんでいます。
便利な切符を送りました。少し立ち止まって、自分を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
懐かしの改札鋏で切ってみてください。いい機会になると思います。
でも、頑張りすぎには気を付けて。くれぐれもご自愛ください。酩酊街より 愛を込めて
文書1854-JPの文面及びインタビュー記録1854-JPの内容を鑑みて、SCP-1854-JPと要注意団体(“酩酊街”)との関連性が指摘されました。調査は現在進行中です。