クレジット
タイトル: SCP-1858-JP - 美食家、月を食う。
著者: ©︎indonootoko
作成年: 2018
アイテム番号: SCP-1858-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 月面にて活動するSCP-1858-JP-Aに対し、月面機動部隊アルファ-4000("ルナフレーム=アサルトギア")を派遣し拘束して下さい。拘束されたSCP-1858-JP-Aは月面コンポジットベース228-第2ブレード「隔壁構造体」にて留置した後、エリア-81763の地下94層「対人型オブジェクト強化収容区画」へ移送されます。
SCP-1858-JP群の異常性による民間人による月面への跳躍が、新たに確認された場合は機動部隊は-6("スカイコードリープ・プレアデス")を派遣し、跳躍地点の封鎖と事態の収拾を行って下さい。その後近隣住民に対しカバーストーリー「小惑星の着弾」を流布し、必要に応じてA級記憶処理を施してください。
アーカイブ済特別収容プロトコル: SCP-1858-JP-Aはエリア-81JHの人型標準収容室へ収容されます。「割烹 森」は財団により接収され、財団フロント企業として利用されます。
SCP-1858-JP群のサンプル実体は、エリア-81JHの食品収容用冷凍セルへ収容されます。SCP-1858-JP群の実食実験には、レベル3以上のセキュリティクリアランスを持つ職員1名の承認が必要です。
説明: SCP-1858-JP群は岐阜県飛騨市内の飲食店「割烹 森」で提供されていたスッポン(Pelodiscus sinensis)の刺身や鍋料理から構成されるセット料理です。SCP-1858-JP群は全てで5種類存在し、摂食者に対し異常性を付与します。SCP-1858-JP群の摂食者の多くは、月を鍋料理として摂食する欲求を抱く精神影響と、跳躍にて月面へ到着する異常な脚力と、摂食者が月面に跳躍した場合に宇宙空間にて活動可能な異常耐久を獲得します。摂食者の多くは獲得した異常性を、鍋料理の材料として月の石を採取する為に利用します。これらの異常性は摂食したSCP-1858-JP群が完全に消化し排出される事で回復します。
SCP-1858-JP-1
料理名: スッポンの生き血の日本酒割
備考: 摂食者の異常性に対する耐性を低下させる異常性を保有しています。そのため、SCP-1858-JP-1の摂食者とそれ以外の人物では、付与される精神影響と身体能力に大きな差が発生します。
特に付与される身体能力の差は著しく、SCP-1858-JP-1を摂取しなかった場合は、跳躍はするものの、月面に到達する事が出来ないケースが多く確認されました。
SCP-1858-JP-2
料理名: スッポンの刺身(肉、肝、卵、心臓)
備考: 摂食者の持久力を上昇させる異常性を保有しています。この異常性は心臓や肝を摂食した場合に顕著に発現します。財団がDクラス職員を利用して実施した持久力テストでは、SCP-1858-JP-1とSCP-1858-JP-2を摂食したD-6632が45時間に渡り2,000mトラックを走行し続けました。
SCP-1858-JP-3
料理名: スッポンの足の付け根
備考: 摂食者の脚力を大幅に増幅させる異常性を保有しています。SCP-1858-JP-1とSCP-1858-JP-3の摂食者が跳躍した場合、跳躍の初速はマッハ6程度であるものの、徐々に加速し最高速度はマッハ15程度に到達します。この不可解な加速にもSCP-1858-JP-3の影響が指摘されていますが、詳しい原理は判明していません。
SCP-1858-JP-3はSCP-1858-JP群の中でも特別美味であると称されており、SCP-1858-JP-3を目当てにSCP-1858-JPを注文する客の存在が確認されています。
追記: ██日に行った実験にて、D-1021がSCP-1858-JP-3の摂食を味覚的な好みにより拒否しました。再度摂食するように命じましたが、森氏がSCP-1858-JP-3を回収してしまった為実験の再開は不可能となりました。特筆すべき点として、D-1021はSCP-1858-JP-3以外全てのSCP-1858ーJP群を摂食したのにも関わらず、異常性の全てを発現しませんでした。研究チームは、「SCP-1858-JP-3を美味と感じなければ異常性は発現しない」と予想していますが、詳しい因果関係の発見には至っていません。
SCP-1858-JP-4
料理名: スッポン鍋
備考: 摂食者へ月を摂食する欲求と山林への移動欲求を付与する精神影響を保有しています。ŞCP-1858-JP-3を摂食していない場合は、月面への跳躍を断念し、研究機関などに対し月の石の窃盗を計画する例が多く報告されています。
SCP-1858-JP-1を摂取せずにSCP-1858-JP-4を摂食した場合、極稀に摂食者が月の石ではなく、熊肉を摂食する欲求を抱く精神影響を発現する例が報告されています。この精神影響を発現した摂食者は、移動した山林でツキノワグマ(Ursus thibetanus)の捜索を開始します。摂食者は発見したツキノワグマをSCP-1858-JP-3で獲得した脚力を利用し殺傷後、捕食します。
SCP-1858-JP-5
料理名: スッポン鍋の雑炊
備考: 摂食者へ、宇宙空間にて生身で活動可能な耐久性が付与されます。財団がDクラス職員を利用して実施したテストでは、SCP-1858-JP-1とSCP-1858-JP-5を摂食したD-6632が宇宙空間にて複数回スペースデブリとの衝突に耐え、45時間活動し続けた他、宇宙線等による身体的影響が確認されませんでした。
SCP-1858-JP-AはSCP-1858-JP群を調理する技能を持つ人物です。当初は「割烹 森」の店主である森 武克氏のみが該当していましたが、インシデント-1858-JPにより民間人の中にもSCP-1858-JP-Aに該当する人物が存在する事が判明しています。詳しくは「インシデント報告-1858-JP」を参照して下さい。
SCP-1858-JP-Aである森 武克氏は、██████剤をはじめとする記憶処理薬や記憶改竄薬に対し強固な耐性を保有しています。「割烹 森」の店内メニューにて、森 武克氏がGoI-0655「イェンロン料理研究会」の会員である事が示唆されている為、同氏が保有する異常性はイェンロン料理研究会の会員達に共通してみられる耐性と同一の物と予想されます。
SCP-1858-JP群の発見は、月面にて生身の人間が石の採取を行っている様子が月周回衛星「かぐや」に撮影された事が起因となりました。その後、撮影された写真を基にこの人物の特定を行いました。エージェント・██がこの人物の追跡を行った所、「割烹 森」への頻繁な出入りが確認され、SCP-1858-JP群の発見に繋がりました。
インシデント記録-1858-JP: █月█日にSCP-1858-JP-Aである森 武克氏が、SCP-1858-JP群を摂食していないにも関わらずSCP-1858-JPの異常性を発現し、収容室から跳躍する事でエリア-81JHの天井を突き破り収容違反を発生させました。この収容違反に呼応するようにDクラス職員██名がSCP-1858-JP群の異常性を発現し、SCP-1858-JP-Aと同様のプロセスを経て脱走しました。特筆すべき点として、この██名はSCP-1858-JP群の実食実験に参加し、月の石を摂食しています。また、財団が認知している過去にSCP-1858-JP群を摂食した経歴があるとして、財団諜報部より監視されていた民間人 ███名が、一斉に住居から最も近い山林へ移動し、月面への跳躍を行いました。
その後の追跡でSCP-1858-JP-Aが、月面に跳躍した民間人とDクラス職員に対して、SCP-1858-JP群の調理方法を教育している様子が確認されました。現在、SCP-1858-JP-A達は月の石を摂食しながら月面を移動しスネリウス峡谷付近に潜伏していると思われます。
追記: SCP-1858-JP-AよりSCP-1858-JP群の調理法を教育された民間人が、地球へ帰還し他の民間人に対しSCP-1858-JP群を提供しているのが確認されました。これを受け財団理事会は、SCP-1858-JP-AによりSCP-1858-JP群の調理法を教育された民間人をSCP-1858-JP-Aとして収容対象とする決定を行い、特別収容プロトコルの改定を行いました。
≪再生≫
[重要度の低い会話の為省略]
森氏: 師匠の声……。導きの声が聞こえました。
佐久博士: いきなりどうしました?
森氏: 私の師匠は、私を弟子に取った時58歳でしたし。私もいい頃ですな。
佐久博士: 森さんの師匠の話ですか?興味ありますね。お聞かせ願えませんか?
森氏: まぁそんな語るような事でもないですよ。ある日太陽を食うとか言って出ていったきり帰ってきませんし、今頃はどうしてるかも解りません。ああ、師匠かぁ、懐かしい。師匠に連れられ食べたあの月の味が私の料理人としての原点だった……。あのセット、"月とスッポンセット"はあの時の私の体験を、あの時のスッポンを遥かに上回る月への感動を再現しているんですよ。
佐久博士: 再現、ですか。
森氏: 私は、初めてヘリウム3のレゴリスからとった出汁を飲んだあの時、食という概念を悟りました。味覚とは神秘であり、食事とはスピリチュアルな体験なのです。決して舌がアミノ酸を感知してどうだなんていうケチなものではないのです!師匠はこれを私に教えてくれました。
佐久博士: なるほど。しかし再現とは。あれはどのように行っているので?
森氏 貴方達もしつこいですな。それは秘密ですよ。師匠から弟子にのみ伝授するものなんでね。まぁ、そうだなぁ。佐久さんにもお世話になりましたし少しだけ。酒と血で神を降ろしやすくするのが月とスッポンのポイントですな。これを教えるのは大サービスですよ?
佐久博士: お世話になりましたって……。それに神って何の事ですか?それはどういうことですか?
森氏: そのままの意味です。神を降ろすんですよ。今も宿っています。私にも、明日からの弟子たちにも。[立ち上がる]
佐久博士: ちょっと待ってください。その場から動かないでください。
森氏: ああ、師匠。遂に私は貴方の高みに。見守っていてください。必ず立派な弟子を育てて見せます。
[森氏が天井を突き破り収容違反する。]
≪終了≫
終了報告: この記録により、自然回復すると考えられていたSCP-1858-JP群の異常性は、不可逆的なものであり回復しないものと判明しました。また、森氏によりSCP-1858-JP群の調理には降霊術的プロセスが行われている事が示唆された為、霊術部隊が霊痕調査を行いました。その結果、森氏に対し約███体のスッポンの霊素生命体が憑りついていた事が判明しましたが、森氏が降ろしたと主張していた神霊に当たる存在は確認できませんでした。
ページリビジョン: 20, 最終更新: 21 Feb 2024 12:00