SCP-1866-JP
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検出されたSCP-1866-JP実例の1つ

アイテム番号: SCP-1866-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 民間人によるSCP-1866-JPの利用を妨げるため、財団のネットワーク監視システムが主要なインターネットサービスを自動的に監視します。主要な広告配信サーバーにはバックドアが設置され、制御下のサーバー上からSCP-1866-JP実例が検出された場合、自動的に財団セキュリティ部門へとデータが転送された後に、削除が実施されます。SCP-1866-JPの利用者であると判明した人物は拘留され、個々の状況に応じて尋問・治療・記憶処理が適時実行されます。

説明: SCP-1866-JPはあらゆる主要なインターネット上において、主に"睡眠"・"欲求"・"夢占い"・"心療内科"・"マッチング/出会い系"等と関連するサイトの閲覧中に、未解明なタイミングで出現する異常なインターネット広告群です。広告のリンク先へのアクセスが試みられた場合、これら広告はいずれのサイトにも接続されることなく消失します。その一方で、サイトへのアクセスを試みた個人(以下、利用者)は、鮮明かつ瞬間的な白昼夢をその場で経験することになります。

この白昼夢は、利用者がパソコンやスマートフォンを用いて特定のサイトを閲覧している場面から開始されます。多くの場合、利用者は自身が夢を経験していることに気付かず、"広告のリンク先となるサイトを開いた"と解釈を行います。閲覧中のサイト上では、"オネイロイ夢資産ポイント(oneiroi dream assets points)"と称される数値が常に表示されており、利用者はこのポイントを一定数消費することで"特別なサービス"を受けることができると潜在的に理解しています1

利用者がサイト内操作によってサービスの注文申請を行った場合、現実の利用者は即座に完全な睡眠状態へと移行し、30分間に及ぶ不特定内容の夢の経験後に覚醒します。この夢を見ている最中、利用者は追加でポイントを消費することで、最大480分間まで睡眠時間の延長を行うことが可能です。これが初のサービス利用であった場合、覚醒後の利用者のデバイス上には、SCP-1866-JPと同様の異常性を有する未知のアプリケーションソフトが追加されます。

以下は、利用者が経験したと報告した夢の1例です。

  • 利用者-12は四本足が付いて動き回る横倒しの洋服ダンスにまたがり、城の中でロデオを30分間楽しんだ。
  • 利用者-18は人語を話すウサギの群れに纏わりつかれ、身体のあらゆる箇所を90分間甘噛みされ続けた。
  • 利用者-31は巨大なブリキの怪物であり、森の奥深くでライオンと案山子から30分間鞭打たれ続けた。
  • 利用者-35は魔女の箒であり、120分間飛行に使用された後、最終的に魔女に折られてしまった。
  • 利用者-40は狼であり、老婆を生きたまま飲み込んで、老婆が寝ていたベッドで180分間眠り続けた。
  • 利用者-44はカエルの石像であり、30分間引っ切り無しに足の生えた蝋燭が訪れては、身体に蝋を垂らした。

覚醒後、大半の利用者は自身が見た夢の内容に関わらず、漠然とした満足感や解放感を報告します。更に、利用者グループと一般グループ間の比較検証において、前者の作業効率や能力向上の有意な傾向性が調査結果より証明されました。また、利用者の一部がSCP-1866-JPの反復的・継続的な利用を強く望むケースも確認されています。しかしながら、この反応はオブジェクト自体の性質ではなく、覚醒後の上記満足感等に起因するものであると診断されています。

これら要因によって、頻繁にSCP-1866-JPを利用し続けてポイントが尽きた場合であっても、利用者はポイント残数に関わらず、引き続きサービスを受けることが可能です。しかしその場合、利用者のポイント残数にはマイナスの値が表示されるようになり、通常の睡眠時において、利用者は異常な悪夢を経験するようになります。

大半の場合、この悪夢の経験が継続し続けている利用者からは、躁鬱病やオネイロフレニア/非定型精神病の兆候が診断されます。一方、悪夢を経験する度にSCP-1866-JP上のポイントが加算され、マイナスの値が無くなった場合に悪夢の経験も解消されることが判明しています。しかし、覚醒中の症状を解消するためにSCP-1866-JPのサービスを受け続けるケースも多く、一向にマイナスの値を清算できず、悪夢が解消されない利用者も度々見受けられます。なお、覚醒後に利用者が上記悪夢の内容を記憶していたケースは現在まで確認されておらず、現在もその詳細な内容は判明していません。 以下のインタビュー記録を参照のこと。

SCP-1866-JPの起源となるオブジェクトは、1███年代に極少数の雑誌やチラシ等のアナログ媒体を介する形で一般向けに拡散・利用されていました。しかし、19██年代になって、初めて主要なインターネット上にて発見されたことでその規模は瞬く間に増大し、その危険性を加味した上で、現行のSCP-1866-JPとして新たに再指定・再分類されました。なお、現在でも新たな利用者が発生していることから、財団によって認知されていない何らかの媒体を介したSCP-1866-JPが存在する可能性も示唆されています。

補遺: 20██年になって初めて、SCP-1866-JP利用者が経験する悪夢の解析を目的に、機動部隊オミクロン-ロー("ドリームチーム")の工作員を用いた夢界調査が実施されました。以下の記録は、上記調査時に工作員が遭遇したオネイロス型幽体(以下、SCP-1866-JP-α)と行った対話内容からの抜粋です。

対象者: SCP-1866-JP-α

担当者: Lenore工作員

付記: 夢界において、利用者-69(D-81186684, 男性, 54歳)は群体のメスウサギの姿を取っており、それらはいずれも不明なスライム状の物体に塗れて藻掻いている。工作員はそれらに対話を試みようとするが、タキシードを着たトカゲのようなオネイロス型幽体によって制止を受ける。工作員はオネイロイ・ウエストとしての偽りの所属と身分を明かした上で、当該のオネイロイ型幽体に対してインタビューを希望し、承諾を得た。


<記録開始>

担当者: それでは始めましょう。ミスター──

対象者: あー、何でもいいよ。好きに呼んでくれて構わない。

担当者: OK、分かりました。ミスターレプタイル。まず最初に、彼もとい彼女はあそこで何を?

対象者: あれか。あれは貯まった借金の返済のため、頑張って働いてもらっているだけさ。

担当者: あれが仕事ですか? 私には、苦しそうに藻掻いているだけにしか見えませんが。

対象者: そういうのでも、ちゃんと意味はあるのさ。

担当者: 申し訳ありませんが、その目的も含め、仕事内容を具体的に教えていただけますか?

対象者: ほら、分かるだろう。人様を喜ばせ、満足感を、現実で生きる活力を与えてやれる素敵な仕事だ。ヤツは現実だと、まあ、比較的ロクデナシの部類なんだろう? だが、ここでは違う。借金を返すためとはいえ、世界を救う、素晴らしい仕事に従事できているってわけだ。何か問題でも?

[5秒間の沈黙]

担当者: 目的は世界を救うこと、ですか。まあ、一先ず良いでしょう。ところで、私たちの調査結果では、1█世紀以前から貴方方がサービスを行っていたと判明しています。ですが、主要なコレクティブにすら、貴方方の営業活動を知る者はほとんどいませんでした。いずれも、正式な営業許可は得た上でのサービス行為なのですか?

対象者: ああ、俺たちばかり儲けたせいで、吊し上げ裁判制度(kangeroo kourt system) に狩り出されるんじゃないか心配してくれているのか? それならば問題ない。これはオネイロイ・コレクティブから委託されてやっている立派なサービスさ。誰も口出しなんかできるものか。

担当者: 貴方が主張される営業活動の正当性については善処しましょう。ところで、貴方方のサービスは、どうも奇妙なシチュエーションばかりですね。多くは童話や昔話に由来するような登場人物や周辺環境等、その上で明瞭を得ない振舞いや攻撃を受けるケースまで、一体どういった意図があるのですか?

対象者: おいおい、ここは夢の中だぞ? 顧客が本当に望んでいるからそうなるんだ。喋る動物や動き回る家具、イッツ・ファンタジー! 肉体持ちの潜在的にとかで、どうせ、こういうのがみんな好きなんだろ? お互いに。だから、俺たちも合わせているだけさ。なあ、もうこれくらいでいいか?

担当者: ええ、ではまた別の質問を。彼のように、奇妙な仕事に従事させられる者が他にどれくらいいるのですか? 貴方方のサービスを利用する者も増えています。それと同様に、彼のように借金のツケを払わされる者も。

対象者: 俺たちは肉体持ち様方に満足を与え、それによって得られる夢資産価値で、もちろんいくらか儲けさせてもらっているが。さっきも言った通り、これは世界を救う重要な仕事なんだぜ? 分かるだろう? 世界中に、一体何人の肉体持ちがいると思う? 無論、大半は夢の中での出来事なんざ、覚えていないトーシローばかりだが、それでも漠然と満足し、欲求を空っぽにして平穏無事に現実を続けてくれる。

担当者: 世界を救う重要な仕事だから、多少の忙殺を受ける者は致し方ないと? 物は言いようでは?

対象者: まあ、そういうがな。かのコレクティブ薄明の時代からずっとやってきていることさ。今更、冠を立てて何になる。ともかくだ。俺たちはこの仕事で人様を喜ばせ、現実では満たされないものを解消させてやっているのさ。それはヤツらも良く分かっているはずだぜ。だったら、いつも自分が楽しんでいる分、今度は自分がお客様を楽しませる側になってもらわないとな。1回30分きっかり、ただし延長有りで。

[7秒間の沈黙]

担当者: 失礼、アレは、あのスライム状の物体は他の利用者だと? では、利用者にサービスを提供しているのは借金を負った同じ利用者で、彼はメスウサギの格好をして、別の利用者にサービスを行っていると?

対象者: ああ、そうなる。ここで仕事するヤツは全員そうさ。だが、何だかんだ楽しんでるんだと思うぜ?

<記録終了>

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