SCP-1867-JP
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チャールズ・R・ナイト研究員によるSCP-1867-JPのイラスト(1901年)

アイテム番号: SCP-1867-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1867-JPが出現した場合は現地に機動部隊る-5("猟友会")を派遣して確保してください。確保された個体はサイト-8103の大型動物収容房に収容されます。10羽を必要最大限の個体数とし、収容個体数が10羽を超過する場合は終了が許可されます。

収容房の室温は-5℃以上25℃以下を維持してください。餌は生の動植物あるいはそれらを加熱調理したものが1日あたり2000kcalに達するよう量を調整された上で与えられます。穀物の給餌は行われません。収容房の清掃は3日に1回自動清掃装置により実施され、被収容個体はその間に隣接する房へ移動されます。



説明: SCP-1867-JPは頭頂部までの高さ2.5m、体重130kgに達する地上性の大型鳥類です。SCP-1867-JPは生死を問わず人口密集地などに突如出現した例が多く知られており、出現までの過程は現時点で判明していません。このため反ミーム性や空間移動能力を持つ可能性が指摘されていますが、収容房内で異常性を発現した例は確認されていません。20世紀までの事例ではSCP-1867-JPは遺骸のみが確認されていましたが、21世紀に入って存命の個体が確認されています。

SCP-1867-JPの概形は化石鳥類のフォルスラコス科の属種に類似しますが、遺骸から抽出されたゲノムの塩基配列はカラス属(Corvus)との高い一致を示し、また細部の形態形質にも差異が認められることから、フォルスラコス科との類似性は収斂進化によるものと推測されます。ミトコンドリアゲノムに分子時計を適用した結果、約4600万年前にハシボソガラスから分岐した種と推測されますが、当該の化石記録はどの時代においても確認されていません。

SCP-1867-JPは哺乳類に対して敵対的で、特に未成年の人間に対して執拗な攻撃を加えます。一方で爬虫類への被害は少なく、鳥類・両生類に対しては敵意を示しません。襲われた人間が捕食された例は少なく、攻撃行動は捕食を主目的としないことが強く示唆されます。食性は動物性タンパク質を多く接食する雑食性で、生よりも加熱調理された食物を好みます。脂肪の蓄積が早く冷涼な環境への適応が示唆されるほか、実験からは約24時間40分の概日リズムを持つことが確かめられています。

SCP-1867-JPは前肢が退化して飛翔能力を喪失している代わりに、長く頑強な2本の後肢による敏捷性を持ち、脚部と鋭利な嘴を狩猟や戦闘時に使用します。後肢は関節が発達しており、趾骨の補助に関与する未知の細骨、および当該の骨に付着する靭帯と筋肉が存在します。この骨は既知の脊椎動物が持つ前肢の尺骨・橈骨および後肢の脛骨・腓骨と同様の機構を持ち、趾骨の回転運動の向上に寄与します。このことと、拇指対向性を示す第I趾を持つことから、SCP-1867-JPの趾はヒト(Homo sapiens)の指を上回る機能性を示します。

SCP-1867-JPの胴部にはベルト状の装身具の痕跡が確認されています。このことから、SCP-1867-JPは何らかの知的生物により飼育されている可能性が示唆されています。後肢の機能性は複雑な道具の利用を可能とします。重量約1300gの脳を持つSCP-1867-JPは、体重のうち脳の占める比率がヒトのそれを下回りますが、鳥類は一般に低いEQ値1を持ちながら哺乳類に匹敵する知能を示すため、理論上はヒトと同様の知的生命体である可能性が高く見積もられています。すなわち、SCP-1867-JPはかつて考えられていた別の知的生命体の家禽ではなく、自身の文明を持つことが示唆されます。

発見経緯: SCP-1867-JPは1879年10月23日にイギリス・スコットランド地方アバディーンシャーの農場に遺骸として突如出現しました。超常現象の確保収容に関する王立財団(HMFSCP)は異常存在として当該実体を回収しましたが、出現経緯と損傷の度合いを除いて特筆すべき異常性・特徴が確認されませんでした。特徴の希薄性と生物体の死を理由にオブジェクトは無力化されたと判断されました。

その後1969年7月20日、██県██市に同様の大型鳥類の遺骸が出現しました。財団はカバーストーリー「動物園からの脱走」を適用して遺骸を回収し、過去に回収されていた鳥類実体の記録との解剖学的特徴の一致を確認しました。この時点でオブジェクトクラスはEuclidに指定されました。

SCP-1867-JPは2011年まで遺骸の出現のみ報告されていましたが、2013年7月26日に最初の存命個体が確認されました。その後は生存した個体の出現が継続しており、また年代を下るにつれて羽数が増加傾向を示唆しています。以下は日本における出現事例の一覧です。日本国外の事案も含む完全な一覧はこちらをご参照ください。
日付 場所 羽数 事案
2013/07/26 ██県北部 1 放棄された炭鉱跡地に出現した、初の存命個体。著しく衰弱しており、収容直後に死亡した。既知の個体と同様に羽毛には損傷が見られた。
2014/10/23 ██県██地方 1 公園に出現。著しい疲労を示していたため鳥類用の栄養剤を投与すると回復し、職員に対し敵対行動を執り、職員1人が軽傷を負った。既知の個体と同様に羽毛には損傷が見られた。
2014/12/14 北海道██地方 1 石油コンビナートに出現。羽毛は傷んでいたが、休息を取りながら自力での歩行が可能であった。金属製の器具で体を固定して栄養剤を投与すると、職員に対し敵対的な態度を見せた。
2018/06/14 ██県南部 1 自力での歩行が可能であり、市街地に出現した後、近隣のガソリンスタンドに侵入した。職員からの通報を受けた警察官と衝突し、2名が負傷した。
2021/03/12 ██県北部 2 初の複数個体同時出現事案。家屋が被害を受け、民間人█人と飼育されていたイヌ(Canis lupus familiaris)1頭が負傷、うち█人が死亡した。羽毛の傷みは極めて軽微であった。
2021/03/15 ██県東部 1 LNGプラント2の警備員室が襲撃を受け、その後管理室に実例が侵入。職員█人が死亡、██人が重軽傷を負った。実例の胴部には未確認の爬虫類の革が巻き付いていた。
2021/06/30 ██県中部 3 ██駅で警官隊と衝突し██人が死傷。2羽が死亡したため1羽のみを収容し、また危険性を鑑みて今後はやむを得ない場合の終了が許可された。3羽とも革が巻き付き、羽毛は警官隊との衝突以外に起因する傷みが見られなかった。個体数の増加を受けオブジェクトクラスをKeterへ変更。
2023/02/02 北海道██地方 7 高速自動車道上に出現し、1羽が通行車両に轢かれ死亡。残る6羽が当該車両を追跡してサービスエリアに侵入し、施設を破壊して██人を殺傷した。高速道路交通警察隊が被害の抑制に努め、その後出動した機動部隊る-5("猟友会")が鎮圧した。全個体が死亡。未確認の金属片が革に収納された個体が確認された。
2024/11/22 ██県北部 11 全個体が胴部に未知の銃器を装着。当該装備に起因する発砲および黒色火薬様物質の爆発が市街地で発生し、ガソリンスタンドが爆破され火災に発展した。陸上自衛隊第13普通科連隊第2中隊および機動部隊る-5("猟友会")が交戦し、事態を重く見た普通科連隊により110mm対戦車弾が使用され、全個体が終了された。死傷者数は██人に上り、カバーストーリー「爆破テロ」が適用された。
2026/04/16 ██県南部 33 ██火力発電所内部に出現。銃撃および爆破により職員██人が重軽傷を負い、タービンが破損・落下、施設全体が緊急停止した。陸上自衛隊第42即応機動連隊第1中隊および機動部隊る-5("猟友会")が出動し、第16式機動戦闘車を多数投入し応戦。██人の犠牲を出した上で実体群は全個体が掃討された。なお、今回の出現個体には装飾品が見られる個体も確認された。カバーストーリー「爆破テロ」を適用。
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回収された銃

補遺: 現時点でSCP-1867-JPによる利用が確認されている具体的な道具としては、鉄・銅・亜鉛およびそれらの合金で形成された銃器、黒色火薬に近い物質で形成された爆発物が挙げられます。また、金や銀などの貴金属・黄銅鉱や重晶石などの鉱物3・別種の鳥類の羽毛を用いた装飾品を身に着けた個体も確認されており、雄個体に多く見られます。これらの道具類・装飾品類は金属あるいは爬虫類の革などを用いて装着されていますが、哺乳類の革を用いた例は確認されていません。寺澤研究員による提言を以下に抜粋します。

SCP-1867-JPは金属の精錬加工に代表される十分発達した技術を持ち、またそれらをアクセサリーに転用する文化が育まれていた、ということの何よりの証左が得られています。その一方で、侵略行動に際して爆轟性爆発物や大型重機などを投入しておらず、技術水準は我々で言う産業革命前夜の段階にあるのではないかと思われます。示唆される彼らの文明の制約は、出自や行動を推測する上で熟慮すべき点と考えます。

そしてもう一つ重要だと考えられるものが形質。形態情報と分子情報です。分子系統を過信するわけではありませんが、彼らは約4500万年前に既知の系統から枝分かれしていながら、化石はどの時代にもない──少なくとも今は特定できません。独特な形状をした趾骨は、進化の歴史に残らなかった未発見の種とは考えにくい変異を示しています。既知の異常存在を含めても、地球上にこのような進化を遂げた鳥類は見られません。

しかし一方で、彼らの形態形質の多くは鳥類のそれを示唆しています。体軸の柔軟性を提供する脊柱は、かつて海で暮らしていた所謂魚類から継承されたものです。眼球を支持する強膜骨、癒合した脛骨と足根骨、最後位胸椎から最前位尾椎にかけて癒合した複合仙骨は、紛れもなく軽量化を果たした鳥類の骨格です。

鳥類でありながらその足跡や系譜を一切辿らせない、そして発達した文明を持つ。となると、最節約的な推論は──分子時計から得られる年代の2倍として、約9000万年の未来から来訪した生物。そう考えられるのではないでしょうか。

⸺寺澤研究員



追記: 2028年6月18日、██府██市に銃器などの装備を伴った1羽のSCP-1867-JPの遺骸が出現しました。頭部には鈍器による打撲と見られる負傷が確認されており、何者かにより撲殺されたことが示唆されます。厳密な死因の特定のため解剖を実施したところ、耐腐食性液体処置を施された1通の書簡が食道中に発見されました。書簡は時間異常部門の紋章で封緘されていました。内容は本報告書に添付されています。

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