SCP-1883-JP
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SCP-1883-JP

アイテム番号: SCP-1883-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1883-JPはSCP-1883-JP-1と共にサイト-81██の人型実体収容施設に収容されます。SCP-1883-JP-1には収容が維持可能な範囲でなら、低クリアランスエリアを自由に動き回ることが許可されています。

説明: SCP-1883-JPは視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)に酷似した外観を有する生物群の総称です。SCP-1883-JPは一般的な点字ブロックと同様に黄色の外観をしていますが、これは体表に微細な黄色の体毛が存在する為です。また、SCP-1883-JPは鼓動しており、心拍音が確認されています1が、SCP-1883-JPの心臓を含む臓器の正確な位置や大きさは判明していません。SCP-1883-JPは異常な破壊耐性を有しており、損傷させたり、サンプルを取得するといった試みは全て失敗しています。SCP-1883-JPは自身の複製を瞬間的に構築し自由に増殖する、または減少することが可能です2。また、通常の点字ブロックでなら"警告"を意味する円型の隆起(A状態)と、"誘導"を意味する直線状の隆起(B状態)の2つの形態へ瞬時に変化します。

SCP-1883-JPは後述するSCP-1883-JP-1の考えを読み取り、SCP-1883-JP-1が望む方向へと地面を滑るように移動します。但し、SCP-1883-JP-1が危機的状況に陥りそうになると、SCP-1883-JPは安全な場所へと向かうように移動し、SCP-1883-JP-1をそこへ導きます。SCP-1883-JPがどのようにして周囲の状況を感知しているのかは判明していません。SCP-1883-JPが移動する際、SCP-1883-JP-1以外の人間はこのことに違和感を覚えません。SCP-1883-JPは階段など、現在地と目的地に高低差がある場合は目的地に転移することで移動します。SCP-1883-JPがSCP-1883-JP-1以外の人間に関与した例は確認されておらず、何故SCP-1883-JPはSCP-1883-JP-1にのみ固執しているのかは現在調査中です。

SCP-1883-JP-1は62歳女性である高橋 由美です。SCP-1883-JP-1自体は非異常性です。SCP-1883-JP-1は幼少期に起きた自動車の衝突事故で両親、弟を亡くしており、自身も両目を完全に失明しています3。SCP-1883-JP-1はSCP-1883-JPの異常性を理解しており、SCP-1883-JPに対して絶対的な信頼を置いています。その為か、SCP-1883-JP-1はSCP-1883-JPから足が離れることに異常なほど恐怖し、そのような行為を強く拒みます。

SCP-1883-JPは2042/1/21、京都府██市██町で別件でクラスW記憶補強薬を投与していたエージェントに発見、確保されました。収容当初はSCP-1883-JP-1に異常性があると推測されており、SCP-1883-JP-1を"SCP-1883-JP"と呼称していましたが、後の調査により異常性は今のSCP-1883-JPが有していることが明らかとなり、現在の呼称に変更されました。

以下はSCP-1883-JP-1へのインタビュー記録です。

対象: SCP-1883-JP-1

インタビュアー: 星波博士

付記: SCP-1883-JP-1が高齢でありインタビューに慣れていないことを考慮し、SCP-1883-JP-1への心的負担を軽減する為にSCP-1883-JP-1を本来の名前である「高橋さん」と呼称しています。

<録音開始>

インタビュアー: こんにちは高橋さん。今日はちょっとした質問に答えて貰いたいのですが、よろしいでしょうか?

SCP-1883-JP-1: こんにちは、先生。質問とはどういったものでしょうか?私に答えられるものであれば協力致しますが……。

インタビュアー: 高橋さんがいつSCP-1883-JPに出会ったのか教えて欲しいのです。

SCP-1883-JP-1: えすしー……あぁ、この子達のことですね。分かりました。この子達は、その、54年前、私が子供の頃、ご存知の通り事故に遭ったわけですが…… [嗚咽] …すみません。

インタビュアー: 大丈夫ですか?無理に答える必要はありません。話すのが辛いのでしたらまた日を改めて伺います。

SCP-1883-JP-1: いえ、大丈夫です……。あれから結構時間が経っていますが、中々傷は癒えないものですね。 [沈黙] ……それで、私だけが生き残ってしまい、病院に運ばれました。そこで目覚めた時から、この子達はいましたね。あの時は、最初、家族がいなくなり目も見えなくなったものですから、毎晩一人でベッドの上で丸まって、えんえん泣いていました。ですがある日、ベッドの下から「おーい、お嬢さん」「もしもしー?」って声がしたんです。最初はおばけだ!って思っていたので物凄く怖くて、毛布の中で震えていたのですが、どうしてもトイレに行きたくなって、泣きながら看護師さんを呼びました。看護師さんにさっきのことを伝えると、ベッドの下を覗き込んで、「何もいないよ」って言ってくれました。私は気のせいか、と思って安心してベッドから降りたのですが、また、あの声がしたんですね。驚いて叫びそうになりましたが、その"なにか"が「怖くないよ、今踏んでるブツブツのヤツだよ」ってまた、声をかけて来たんです。それで初めてこの声が足下の点字ブロックから発せられているんだと気づきました。それがこの子達との出会い、ですね。

インタビュアー: ありがとうございます。えっと、その……話しかけてきた、っていうのは、SCP-1883-JPは喋るってことでしょうか?ここに来てからは一度もそのようなことは確認されていませんが……。

SCP-1883-JP-1: はい、えっと、今も話しかけてくれています。なんていえば良いんでしょうか、俗にいうテレパシー?みたいな感じです。耳に直接聴こえてくるんじゃなくて、頭にほわっ、と浮かぶような感じです。……あまり上手く伝えることが出来ないです……すみません、先生。

インタビュアー: いえいえ、話してくださりありがとうございます。SCP-1883-JPのことを周囲の人に伝えたりしましたか?

SCP-1883-JP-1: はい、伝えました。ですが看護師さんや目の検査をしてくれたお医者さん、他の患者さん誰一人としてこの子達のことが分かる人はいませんでした。みんな私がこの子達を紹介しても困惑したように接してきたのを覚えています。この子達はずっと私の足下にいるっていうのに。この子達も誰にも気づかれないことに傷ついているらしくて「悲しい」って泣いていました。最初私はこの子達のことを警戒していたのですが、誰にも気に停められない様子が、目が見えなくなってから一人ぼっちの私と重なり、親近感が湧きました。それから似たもの同士、ってことでこの子達とはすぐに仲良しになりましたね。

インタビュアー: ……ありがとうございます。では、その子達の異常性、えーっと、特別な力があると気づいたのはいつでしょうか?

SCP-1883-JP-1: 仲良くなった後、この子達が教えてくれました。「私達が案内する場所全て安全だよ、ついておいで」って。……おかげで、今まで人にぶつかったことも、階段から転げ落ちることもありません。本当にこの子達には感謝してもしきれないですね。この子達がいなかったら今頃墓の中だったかも知れません。

インタビュアー: ありがとうございます。高橋さんはSCP-1883-JPを肯定的に受け入れているんですね。

SCP-1883-JP-1: はい、友達……いえ、私の一部と言っても過言ではないですね。いつも一緒にいてくれて、悩みを聞いてくれて、まるで母と父のようです。 [微笑] ……なんだか照れくさいですね。目が見えなくなったのはとても悲しかったのですが、この子達と会えたのは嬉しかったです。私はこの子達に救われたんです。感謝してもしきれないくらいですね。今ではこの子達無しでの生活は考えられないです。24時間一緒に起きて、話して、行動して、寝ています。この子達の寝息、とっても可愛いんですよ。「すぴーすぴー」って、まるで天使みたいなんです。この寝息も私にしか聞こえず、先生方に聞かせてあげられないのが残念ですね……。

インタビュアー: SCP-1883-JPも就寝したりするんですね。

SCP-1883-JP-1: はい、寝ますよ。だいたい夜の11時ぐらいには寝息が聞こえてきますね。私が移動しようと思えばすぐに起き上がって誘導してくれますけど。

インタビュアー: なるほど。[筆記音] ……これで質問は全て終わりです。お疲れ様でした。

SCP-1883-JP-1: 上手く答えられたかは分かりませんが、お役に立てたのなら良かったです。お疲れ様でした。

<録音終了>




以下はSCP-1883-JPの実験記録です。

実験記録001

実施方法: SCP-1883-JP-1を歩かせ、進行方向に壁を設けて妨害する。

結果: B状態のSCP-1883-JPが壁をなぞるように出現し、SCP-1883-JP-1を誘導した。

分析: SCP-1883-JPは何らかの方法で周囲の状況を感知しているようだ。

実験記録002

実施方法: SCP-1883-JP-1を歩かせ、進行方向に回避不能な壁を設ける。

結果: A状態のSCP-1883-JPが壁のすぐ手前の地面に出現し、SCP-1883-JP-1の進行を制止した。

分析: SCP-1883-JPは瞬時に状態を変化することが出来るようだ。それはSCP-1883-JP上にSCP-1883-JP-1がいたとしてもそうらしい。

実験記録003

実施方法: SCP-1883-JP-1を様々な箇所に誘導し、SCP-1883-JPがどこまで移動可能か調査する。

結果: 階段や坂道など、不安定な足場だけではなく、車や飛行機の内部にも移動可能であった。

分析: SCP-1883-JP-1の足が十分に置ける場所であればSCP-1883-JPは移動可能だと考えられる。

実験記録004

実施方法: SCP-1883-JP-1に2本ある道のどちらかを渡らせる。なお、どちらか一方の道は一定時間後に微細な電撃が流れる。どちらの道に電撃が流れるかは完全にランダムである。また、この実験を何度か繰り返す。

結果: 道中で引き返すこともあったが、最終的には全ての実験においてSCP-1883-JPは安全な道へとSCP-1883-JP-1を誘導した。

分析: やはりSCP-1883-JPは未来を何らかの方法で認知しているようだ。また、最初にハズレの道を選ぶパターンもあることを見ると、SCP-1883-JPは直前の未来しか認知出来ないと推測できる。

実験記録005

実施方法: SCP-1883-JP-1をSCP-1883-JPから逸らし、通常の地面へ足を置くよう指示する。

結果: SCP-1883-JP-1はその場で身を屈ませ動くことを強く拒んだ。SCP-1883-JPは動揺したかのようにSCP-1883-JP-1の周囲を回り続けた。それでもなおSCP-1883-JP-1の移動を促し続けるとSCP-1883-JPが多数増殖し、部屋の床一面を覆った。

分析: SCP-1883-JPはSCP-1883-JP-1を守り、SCP-1883-JP-1が通常の地面を踏まないように行動しているように感じる。また、この実験終了後、SCP-1883-JP-1は半日間ずっと泣き続け、職員との会話も成立しなかった。倫理的観点からこのような実験はこれ以上行わない方が良いのかもしれない。

事案1: 2042/4/19、サイト-81██で震度6の地震が発生しました。発生時、SCP-1883-JP-1はベッド上に腰掛けて就寝していましたが、地震の衝撃でバランスを崩して前のめりに転倒し、身体が全てSCP-1883-JP上から外れました。起き上がったSCP-1883-JP-1は酷く混乱した様子で支離滅裂な言葉を繰り返していました。SCP-1883-JPはそれをすぐに察知し、今まで観測されていた以上のSCP-1883-JPに増殖し、SCP-1883-JP-1を中心に"箱"のような陣形を取り、SCP-1883-JP-1を隔離しました。この"箱"は18時間維持されました4。18時間後、SCP-1883-JP-1は無事解放されましたが、当事案の記憶を保持していませんでした。特筆すべき点として一連の流れを目撃していた職員は、SCP-1883-JP-1はSCP-1883-JP上から外れた際、目が見えるように振舞っていた、と証言しています。

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