
ミズナラ(Quercus crispula)を宿主樹木にもつSCP-1884-JP-1原基の学術的スケッチ
アイテム番号: SCP-1884-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1884-JPはサイト-8102にて培養・管理が行われています。SCP-1884-JP対策チームは全国の森林におけるSCP-1884-JP感染木の調査を行い、必要ならばSCP-1884-JPの侵入防除として樹木への薬剤散布やビニールシートによる被覆を行ってください。感染が確認された樹木は実験に用いるものを除き伐採した後、焼却処分を行ってください。
SCP-1884-JP-1は発見後速やかに確保されます。SCP-1884-JP-1は経過観察および実験を行う個体のみサイト-8102の中型生物飼育室に収容され、それ以外は焼却処分されます。収容中のSCP-1884-JP-1に対し、担当職員は1日に1回、指定された飼料の給仕を行ってください。SCP-1884-JP対策チームは「森ガール」ブームの鎮静化に努めると同時に、SCP-1884-JP-1のファッションを批判するカバーストーリーを各メディアから発信することで、SCP-1884-JP-1の確保を助長してください。
説明: SCP-1884-JPはRaffaelea属に分類される糸状菌の一種です。SCP-1884-JPは既知のRaffaelea属菌と似た性質を有しており、近年既存の種から分化した新種であると考えられています。SCP-1884-JPは主にキクイムシ科に属する昆虫に随伴して樹木に侵入し、ブナ科およびクスノキ科樹木の幼木に感染します。
SCP-1884-JPの異常性は上述した科に属する樹木に感染した際に発現します。SCP-1884-JPに感染した樹木(以下、宿主樹木)は感染後50年程度でコルク形成層より内側の領域が変質し、内部に人型実体が形成されます。この人型実体はSCP-1884-JP-1に指定されています。
SCP-1884-JP感染の症状は以下のように進行します。
ステージ 1: 宿主樹木にSCP-1884-JPが侵入する。宿主樹木はその後約40年、一般的な同種の樹木と同様に生育する。
ステージ 2: 感染から約40年後、SCP-1884-JPが宿主樹木内で急速に増殖し、宿主樹木の心材部分を分解する。その後5年程度かけてコルク形成層内部の組織が変質しSCP-1884-JP-1の原基が形成される。この原基は主に柔細胞からなり、プログラム細胞死を起こさない。
ステージ 3: ステージ2から約5年間、宿主樹木内部でSCP-1884-JP-1が生育する。SCP-1884-JP-1の成長には宿主樹木が生産した光合成生産物の他、様々な木部組織が用いられる。この段階でSCP-1884-JP-1は筋肉や眼球組織、および後述する布状組織が分化する。
ステージ 4: 感染から約50年、宿主樹木の外樹皮を破ってSCP-1884-JP-1が外部へ進出する。多くの場合、SCP-1884-JP-1の"誕生"は春先に起こる。進出後間もないSCP-1884-JP-1は他の樹木をよじ登り、樹幹に達すると葉に似た同化器官を体内から伸長させ光合成を行う。
ステージ 5: 気温が下がり秋から冬になるとSCP-1884-JP-1は同化器官を落とし、地上に降りて人間のように振舞う。
SCP-1884-JP-1は宿主樹木内で生育する人型実体です。SCP-1884-JP-1の体高は140cmから170cm前後であり、総じて一般的な日本人女性と酷似した外見的特徴を有しています。また、SCP-1884-JP-1は内部にSCP-1884-JP菌糸による神経系や樹木の柔細胞に似た栄養貯蔵器官などの特徴的な器官をもつ他、セルロース繊維からなる衣状組織を身に着けています。これらはおおむね自然色を基調とし、ゆったりとした形状をしています。布状組織の"着こなし"は宿主樹木によって多少の差異が見られ1、SCP-1884-JP-1と一般的な女性を見分ける大きな指標となります。
SCP-1884-JP-1はその生命活動維持のため水と炭水化物を消費すると同時に、筋組織や内部のSCP-1884-JP菌糸維持のためタンパク質を摂食する必要があります。この性質のためSCP-1884-JP-1は元々生息していた森林から、食料が比較的容易に手に入る都市近郊に移動する傾向があります。都市部においてSCP-1884-JP-1は日中日当たりのよい場所で体温調整に必要なエネルギーを節約し、夜間にゴミをあさり食料を確保します。

皮膚組織の木化が始まったヤブニッケイ(Cinnamomum tenuifolium)を宿主樹木にもつSCP-1884-JP-1。
気温が上昇し春になるとSCP-1884-JP-1の皮膚組織が一部木化し、表皮が細かく割れ始めます。その後SCP-1884-JP-1は近くの森林へと移動し、両手を左右に広げT字型の姿勢をとり活動を停止します。この際SCP-1884-JP-1は体内のSCP-1884-JP菌糸を除くすべての組織を木化させると同時に、体表からキクイムシ科昆虫が用いる集合ホルモンを分泌し、これに誘引された昆虫がSCP-1884-JP-1の体表を食い破り内部へ侵入します。これによりSCP-1884-JPが昆虫の体表に付着し、SCP-1884-JPは新たな媒介者を手に入れ次の宿主樹木の元へと運ばれます。
発見経緯: SCP-1884-JP-1は2006年、██県██市の家屋に数十体が集合していたことで近隣住民が通報を行い、発見されました。当該家屋は廃棄物が野積みとなっている所謂「ごみ屋敷」であり、SCP-1884-JP-1はその中にある食料品を探して集まっていたと推測されます。SCP-1884-JP-1が発見された当時、都市部においてSCP-1884-JP-1の着こなしに酷似した「森ガール」ファッションが流行していたため、結果的に多くのSCP-1884-JP-1が社会に溶け込む形で生息していました。現在、財団が行った流行の誘導によって「森ガール」ブームは下火となっており、都市部に生息するSCP-1884-JP-1の発見率は大幅に上昇しています。
補遺: 2016年以降、新たな形態のSCP-1884-JP-1が確認されました。これらの宿主樹木はスギ(Cryptomeria japonica)やヒノキ(Chamaecyparis obtusa)などの針葉樹であることから、元となったSCP-1884-JPは既存の種の亜種と考えられています。スギおよびヒノキは戦後の拡大造林期において大量に植林された樹種であることから、新たに発生するSCP-1884-JP-1は現在までに確保した数を大幅に上回ると推測されています。
新たに発見されたSCP-1884-JP-1の特徴は以下の通りです。
- 頭髪は明るいブラウン。前髪に該当する部位は緩く流しており、頭髪は全体的に軽く巻いている。
- ボルネオ―ルやα-ピネンに由来する特有の芳香を放つ。
- 多くがロングスカートに似た器官を纏う。ヒノキを宿主樹木に持つ場合、裏にY字の気孔線が見られる。
- SCP-1884-JP-1同士で群れる傾向がある。
これに対し財団はカバーストーリー「量産型女子」を流布し、各メディアを用いてSCP-1884-JP-1に似たファッションの批判を行っています。しかし同様のファッションは20代付近の女性から高い支持を集め続けており、SCP-1884-JP-1と一般人を外見的特徴のみで判別するのは依然として困難な状況が続いています。