アイテム番号: SCP-1890-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1890-JPへの入り口は現在サイト-81██の異世界扉管理区域内の2033号扉に接続された状態で固定されています。1日に3人程度オピオイド系薬物に耐性のないDクラス職員を入室させて下さい。退出したDクラス職員にはBクラス記憶処理を行ってください。
説明: SCP-1890-JPは高位神格を持つエリファス型霊素生命体が作成したと考えられる異世界ポータルです。現在SCP-1890-JPへの入り口はサイト-81██内に留め置かれていますが、収容以前は東京都新宿区歌舞伎町に存在している性風俗店の入り口に接続された状態にあり、出現する度に転移していました。SCP-1890-JPからはオピオイド系薬物を主体とした未知の成分が混入した精神感応剤のミストが微量流出しており、耐性のない人間は誘因され、SCP-1890-JPを風俗店と認識して入室します。SCP-1890-JP内部は一般的な性風俗店の個室に類似した間取りであり、ベッドやシャワー等が設置されています。SCP-1890-JPに誘引された人間は退出後も一貫として一種の風俗店であると認識する傾向があります。
SCP-1890-JP内にはSCP-1890-JPを作成したと考えられるエリファス型霊素生命体(SCP-1890-JP-A)とその他の霊素生命体(SCP-1890-JP-B群)が存在しています。SCP-1890-JP-Aは常にSCP-1890-JP内に存在していますが、SCP-1890-JP-Bには多数の別個体の存在が確認されています。SCP-1890-JP内に入室した人間(以下、入室者と呼称)SCP-1890-JP-Aに着用している衣服を脱ぎ、全裸になるよう促されます。その後、SCP-1890-JP-Aと入れ替わるように入室するSCP-1890-JP-Bに触手等で接触されます。接触の形態は各個体によって異なりますが以下のようなものが確認されています。
- 毛穴を含む全身の開口部より極細の触手を挿入される
- 耳穴より挿入、脳に達した触手が微弱な電流を発することで脳内麻薬を大量に分泌させる
- 全身を抱き締めると共に身体の██%がSCP-1890-JP-Bと癒着、結合する
高位神格であるSCP-1890-JP-Bは視覚・聴覚・触覚に関する高強度の認識災害作用を保有しており、接触することで重度の精神汚染を及ぼすと考えられますが、SCP-1890-JP-Bと接触した入室者は「これまで体験したことのない多幸感」や「歴史上の宗教指導者でなければ達することのできない神秘的体験」と異常に肯定的な感想を抱きます。結果として入室者の多くは「神に直に会い、愛された」と認識し、その██%は新興宗教を含む既存宗教団体に入信するか、あるいは自ら宗教団体を興しています。なお、SCP-1890-JP-B群はいずれも非人型であり、高位神格を持つにも関わらず宗教関係者からは"形容が困難""グロテスク""冒涜的"などと評される外観をしていますが、入室者は不自然と感じない傾向にあります。これはSCP-1890-JP内で焚かれている薬物の影響であると考えられます。
探査ログ1890-JP-01 日付 20██/██/██
対象者: D-13294(日本人28歳男性)
探知したSCP-1890-JP入口より入室させる。全裸となるため埋め込み式音声・映像記録装置を使用し、五感及びバイタルサインを記録している。
D-13294: 何だここ、風俗か?
SCP-1890-JP-A: ようこそ、さあ服を脱いでお待ちください。全部脱いで下さいね。
D-13294は指示された通りベッドの上で着衣を脱いで待機する。3分後SCP-1890-JP-B-1が入室する。SCP-1890-JP-B-1はタコに類似した体型をしているが、全身は爬虫類の鱗のような表皮に覆われている。また、体の上部に常に緑色に輝く気体を纏っている。
D-13294: おお、何だこれ、こいつが俺を相手するのか?
SCP-1890-JP-B-1: ああ、可愛らしい子、いっぱい可愛がっちゃうわね。
SCP-1890-JP-B-1は触手を伸ばし、D-13294の耳穴より触手を挿入するが、D-13294は特に嫌悪感を抱いていないようである。その後D-13294の心拍数は急激に低下し、20bpmまで低下する。
D-13294: あ、あ、光が見えます。極彩色の、見えない、黒い、宇宙がここにある。私が消える。生まれる。
SCP-1890-JP-B-1: 可愛い声出しちゃって。ここが弱いのかな。えいえい
SCP-1890-JP-B-1は触手を全身に這わせた上で激しく動かし始める。D-13294は白目を剝き、視界がブラックアウトする。心拍数が最大250bpmから最低5bpmまで変化し続ける。
D-13294: [5分に渡る絶叫]
SCP-1890-JP-B-1: あら、ちょっとやりすぎちゃったかな。ごめんね、もうちょっと優しくするから。よしよし。
触手の動きがゆっくりとなるが、代わりに細かく振動する。
D-13294: [高速で旧約聖書創世記をヘブライ語で暗誦し始める。D-13294に聖書及びヘブライ語の知識が皆無であることは特筆すべきである]
90分後、SCP-1890-JP-B-1はD-13294から離れる。
SCP-1890-JP-B-1: ああ、とても良かった。今日はありがとう。
D-13294: ああ、ありがとうございます。真理を、見ました。宇宙の開闢と終焉、生命の輪廻に触れることができました。
SCP-1890-JP-B-1の纏う気体が虹色に変色する。その後すぐにSCP-1890-JP-Aが入室する
SCP-1890-JP-A: 時間です。本日はありがとうございました。
D-13294は衣服を着用し、SCP-1890-JPから退室する。
インタビューログ1890-JP-01 日付 20██/██/██
SCP-1890-JP内を探査したD-13294に対するインタビューを実施した。探査後D-13294は反抗的な行動を一切行わなくなり、精神的に非常に安定している。
██博士: こんにちはD-13294、SCP-1890-JPでの体験はどういったものでしたか?お聞かせ願いたい。
D-13294: 言葉で説明するにはあのお方に失礼に当たりますが、あのお方の偉大さを広めるためには仕方ありません。話す前にあのお方に許しを請わせて頂きます。
D-13294はその場に跪き祈りの言葉らしき文言を呟く
D-13294: 失礼。あの体験は、世界、宇宙、この次元全てを遍く俯瞰する様なものでした。私が生を受け、罪を重ね、あのお方に巡り合うその運命は必然であったことを理解できました。
██博士: えー、もう少し分かりやすく説明して頂けますか?
D-13294: 私の脳に、霊体に、魂に、真理が止め処なく流入し、弾け、そしてそれは私に天上の安らぎを齎しました。あの真理を説明することは私には不可能です。真理を感じることは真理に触れた者にしかできません。正直なところ、あなた方のような無知蒙昧たる未到達者は直ぐに神に触れ、その罪を漱いだ上で全てを知る義務があります。
██博士: 私達もあそこに行けと?
D-13294: 無論です。あなた方はせめて私の、私達と同じステージに立って話をするべきです。今の私にはあなた方がただの猿としか感じられません。
██博士: はあ、それでは猿である私達に分かるように、端的に説明して貰えますか?
1分ほど沈黙
D-13294: ええと、その……とても気持ちよかったです。
探査ログ1890-JP-05 - 日付 20██/██/██
D-13294による5回目の探査、D-13294はSCP-1890-JPへの探査を至上の喜びと表現している。認識異常等の障害は残っていないが精神的に若干不安定となっている。
SCP-1890-JP-A: いらっしゃい、さあ服を脱いで、あら、もう脱いでらしたんですね。そのままお待ちください。
D-13294: はやく、はやく神の啓示を私に。はやく
SCP-1890-JP-B-2が入室する。SCP-1890-JP-B-2は葛に類似した植物で構成されている。
SCP-1890-JP-B-2: こんにちは、あ、可愛い子だ。今日は
D-13294はSCP-1890-JP-B-2に抱きつくように接触する。
D-13294: 貴方様が今日啓示をして下さるのですね、ああ!神よ!我に真理を与えたまえ!
D-13294は極度の興奮状態にあるとみられる。SCP-1890-JP-B-2を乱暴に抱きしめる。
SCP-1890-JP-B-2: ちょっと、痛い。一旦落ち着きなさい、少し離れて。
D-13294: ああ!神よ!神よ!私こそ神の伝道者、神のために私はあります。早く天上の世界に我を誘いたまえ
D-13294はSCP-1890-JP-B-2の言葉が耳に入っていないようである。SCP-1890-JP-B-2の周辺部より黒い靄が漂う。
SCP-1890-JP-B-2: 一旦離れろ!ちょっと!何よ!店長!ちょっと来て!
D-13294はSCP-1890-JP-B-2に突き飛ばされる。D-13294は壁に強く叩きつけられた。バイタルサインのログでは肋骨部と右腕に骨折が認められた。
D-13294: うう、どうしてです神よ、我を見捨てるのですか?
SCP-1890-JP-B-2周辺部の霧が濃くなり、SCP-1890-JP-B-2の顔部分が覆い隠す。
SCP-1890-JP-B-2: 愚鈍なるヒトよ、我を不快にさせるな。気分を損ねたぞ。我は帰る。
SCP-1890-JP-Aが部屋に出現し、両者の間に立つ。SCP-1890-JP-B-2とSCP-1890-JP-Aは未知の言語で口論をした後SCP-1890-JP-B-2は退室する。
SCP-1890-JP-A: 今日はここまでです、お帰り下さい。おいたが過ぎましたね。今度来るときはもっと大人しくしてください。
SCP-1890-JPは消滅し、D-13294は帰還した。負傷は治療されていた。
D-13294: クソッ、何だよ、何が神だよ、クソッ!
その後、D-13294は強固な無神論者となり、精神的に非常に不安定かつ反抗的になりました。6回目の探査を強制させましたが、自己終了を図ったため中止しています。
特定の行動をとることでSCP-1890-JP-Aとの対話が可能となることが判明したため、財団エージェントによる潜入試験が行われました。SCP-1890-JP-Bからの接触による影響はBクラス記憶処理によりある程度除去可能であることを確認したため、いくつかの記憶処理薬を携行させた上で潜入させています。
探査ログ1890-JP-06 日付 20██/██/██
SCP-1890-JP-A: 服を脱いでください。全部ですよ。
エージェント██: すみません、少しお話を聞かせて頂きたいのですが。
SCP-1890-JP-A: 駄目です。まずは彼女と会ってください。
エージェント██: もし話を聞かせて頂けないのならば前にウチの人間がやったように暴れますけど、いいですか。
SCP-1890-JP-A: [数秒思考しているように見える]はあ、まあ私も色々言いたいことがありますし、終わってからでいいなら話しましょう。
エージェント██: ありがとうございます。
エージェントはインタビューに支障をきたさないよう、遅効性のBクラス記憶処理剤を服用する。
(中略)
エージェント██: さて、お話を伺います。単刀直入に聞きますが、あなた方の意図は何でしょうか。
SCP-1890-JP-A: 商売です、お上には許可を頂いています。
エージェント██: 商売とは?我々は何か対価を支払っているんですか。
SCP-1890-JP-A: いえいえ、代金を支払っているのはあなた方ではありませんよ。乱暴な言い方をするとあなた方ヒトは私の商売道具です。
エージェント██: えっ、どういうことでしょうか。
SCP-1890-JP-A: つい数千年ほど昔までヒトを拾ってきて飼ったり野良のヒトを手懐けたりするのが流行っていたんですが、生態系への影響とか何とかでお上がヒトの飼育やこの世界への干渉を禁止してしまいましてね。あなた方の世界への立ち入りとヒトの飼育が禁止されたのでうまい逃げ道を探したわけです。それでヒトをこちらの世界に呼び寄せて、しばらくしたら帰してしまえばいいというこの商売をやっているわけです。
エージェント██: なるほど。ちなみに、どうして我々ヒトが対象になっているんでしょうか。
SCP-1890-JP-A: 体毛の少ない柔らかい肌や、脳下垂体を撫でたり霊体をくすぐったりすると気持ちよさそうな声を上げてくれるところや、可愛がった後に懐いてくれるところ、そしてとても賢いところが可愛いと言われてまして。まあ常連さんはみんな癒されているようです。
エージェント██: はあ、可愛いですか、うーん、なるほど一応理解しました。特に我々に害を与える意図はないんですね。
SCP-1890-JP-A: 当たり前じゃないですか、と言いたいんですが、おいたが過ぎると私もちょっと考えなくちゃいけません。あなた方は最近店によくやって来る首輪をつけたヒトのボスか何かですよね。
エージェント██: ええ。
SCP-1890-JP-A: 最近寄って来るヒトがめっきり減ってしまって商売あがったりなんですよ。あなた方が店にやって来る他のヒトを追い払ってしまうせいです。最悪場所を変えようとも思いましたが、あなた方はそれは困るんですよね?
エージェント██: そうですね、場所を変えられると困ります。
SCP-1890-JP-A: そこでちょっとお願いしたいんですが、扉の位置をどこかに固定するんで、代わりにあなた方が管理している首輪をつけたヒトを定期的に店に入れてくれませんか。あんまり言うとお上に叱られちゃいますんで、内密に。
エージェント██: それは、ちょっと私が決められることではないですね。私もそちらの方が良いようには思いますが。
SCP-1890-JP-A: お願いですよ██さん、上司の██さんに相談して決めて下さい1。手荒なことは私もやりたくないです、ほら、上司の方と相談できるようにしますから。
[協議の内容と方法については検閲により削除されました。セキュリティクリアランスレベル3以上の職員にのみ開示されます]
エージェント██: はい、わかりました。財団とあなた方とで協定を結びましょう。では出現場所の移動についてよろしくお願いします。
SCP-1890-JP-A: いいでしょう。
エージェント██: ところで、こういう仕事をしているあなたもやっぱりヒトが好きなんですか。
SCP-1890-JP-A: いや、あくまで商売ですからね。私自身はあまりヒトは好きじゃないです。どちらかというとイヌ派ですね。