アイテム番号: SCP-1903-JP
オブジェクトクラス: Keter
白頭山の衛星写真、この山の地下にSCP-1903-JPが存在する。
特別収容プロトコル(2017年█月改定): SCP-1903-JPの位置、規模および性質上、物理的収容は現在不可能です。財団と世界オカルト連合及び当事国と周辺関係諸国は、SCP-1903-JPに関する観測データや情報は検閲し関連する研究を阻止および一般社会に対してSCP-1903-JPの存在の隠蔽を行います。さらに、SCP-1903-JPが活性化した場合発生すると考えられるK-クラスシナリオに備えて、関係各国の国民の生命と財産を保護するための暫定特別秘密協定プロトコル5プラス2を締結しています。
SCP-1903-JPの状況を常時監視するためプロトコル5プラス2に基づき、中華人民共和国領内のSCP-1903-JPが存在する地域一帯に小型の気象観測機器に偽装したSCP-1903-JP監視点を設置しています。また、SCP-1903-JPを直接監視するために中華人民共和国政府の了承のもと、財団と世界オカルト連合による合同の超々深度掘削監視施設の建設を計画しています。
特別収容プロトコル: SCP-1903-JPの位置、規模および性質上、物理的収容は現在不可能です。財団と世界オカルト連合及び当事国と周辺関係諸国はSCP-1903-JPに関する観測データや情報は検閲し関連する研究を阻止および一般社会に対してSCP-1903-JPの存在の隠蔽とSCP-1903-JPが活性化した場合発生すると考えられるK-クラスシナリオに備えて、各国の国民の生命と財産を保護するための特別秘密協定プロトコル6プラス2を締結しています。
SCP-1903-JPの状況を常時監視するためプロトコル6プラス2に基づき、中華人民共和国及び朝鮮民主主義人民共和国領内のSCP-1903-JPが存在する地域一帯に小型の気象観測機器に偽装したSCP-1903-JP監視点を設置しています。また、SCP-1903-JPを直接監視するために朝鮮民主主義人民共和国政府の了承のもと、財団と世界オカルト連合による合同の超々深度掘削監視施設サイト-216による超々深度掘削が行われおります。
説明: SCP-1903-JPは、中華人民共和国(中国)及び朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の国境に位置する、標高2,744mの火山である白頭山(長白山)の地下20-40km地点のマグマ溜まり内に存在する東西推定17km、南北推定11km、体積推定9,000立方kmの楕円体の実体です。
財団の高精密地震波トモグラフィー及び三次元構造調査により、実体の詳細が判明しました。地熱調査ではSCP-1903-JPから推定摂氏1███度の熱が発生しており、この高温が白頭山のマグマ溜まり形成の要因と考えられます。また財団が開発した超精密地震計よりSCP-1903-JPからヒトの心臓の拍動同様の振動が観測されています。
SCP-1903-JPは現在鎮静状態だと考えられます。もしSCP-1903-JPが活性化した場合、白頭山の山体崩壊を伴う火山爆発指数(VEI)8クラスの大規模破局噴火による、GHまたはXK-クラスシナリオが発生するものと予想されます。
SCP-1903-JPに関連する実体として、SCP-1903-JP-A及びSCP-1903-JP-Bが、財団のサイト-81██に収容されています。
SCP-1903-JP-Aは高さ約4.3メートル・幅約1.5メートルの角柱状のベリリウム青銅製の異常性のない実体で、表面に古代中国の商(殷)王朝時代に使われた甲骨文字の文章と戦闘の風景を刻んだレリーフが施されております。
SCP-1903-JP-Aの甲骨文字の文章は、この実体を所有していた大日本帝国異常事例調査局(IJAMEA)より一部風化して解読不能な箇所以外はすべて解読されており、紀元前13世紀後半に即位した商王朝第22代王武丁が、中国の古典的文献『易経』に記述されてる北西の異民族である鬼方との戦争に勝利したという内容の文章で、戦闘の風景を刻んだレリーフに多数の人間の兵士と人間と類似した異形の戦闘や、複数の神官が巨大な心臓や子宮などの内臓の集合体に対して何らかの儀式を施している様子が描かれており、商王朝と鬼方の戦闘に関するモニュメントだと考えられます。
SCP-1903-JP-BはSCP-1903-JP-Aが発見された周囲で発掘された遺骨及び遺物群です。遺骨群はヒト及びヒトに概ね似ているヒューマノイドのものであり、放射性炭素年代測定で死亡時期を紀元前1200-1000年(1σ)と位置付けられました。遺物群は商王朝時代の武具の他にメカニトに関連すると考えられる物品も存在します。
SCP-1903-JP-Aは、1937年に満州国間島省安図県(現在の中国吉林省延辺朝鮮族自治州安図県)の森林地帯にて野生の朝鮮人参を採取していた一般人が発見し、その後満州建国大学の発掘調査により、SCP-1903-JP-A周辺からSCP-1903-JP-Bを発見しました。1938年にSCP-1903-JP-AはIJAMEAに、SCP-1903-JP-Bは大日本陸軍特別医療部隊(負号部隊)に接収され、日本へ輸送されました。
第二次世界大戦後、財団日本支部発足直後にSCP-1903-JP-A及びBとそれらの研究資料をIJAMEA及び負号部隊から接収、当時この二つの実体はそれぞれSCP-███-JP-1とSCP-███-JP-2として指定されましたが、SCP-1903-JPの発見と調査の結果、二つの実体は関連性がある結論づけSCP-1903-JP-A及びSCP-1903-JP-Bに再指定されました。
帝武丁と王妃婦好の王師(商王朝の軍)は3年に渡る鬼方との戦のすえ、鬼方の軍勢を三つの河が始まる白き山の麓に追い詰める
この戦はもっとも激しいものであったが、王師と王師に加わっていた神官達の手で鬼方の軍勢を殲滅し、鬼方の総大将たる娘を捕らえ、速やかに車裂に処し、二度と蘇らぬよう肝・心・脾・肺・腎・女子胞(子宮)を刳り出した
だが、刳り出した鬼方の総大将の肝・心・脾・肺・腎・女子胞が、最後の抵抗と言わんばかりに天空を覆うほどに膨れ上がり、大量の邪気と高熱を発し始め、討伐に困難を極めた
帝武丁とその神官達は討伐を諦め、父たる蛇[判読不能]、鬼方が崇拝す母たる[判読不能]を[判読不能]太[判読不能]ように、神官達は自らの命を削った仙術でかの肝・心・脾・肺・腎・女子胞を金属の檻に閉じ込め白き山の頂の池の奥底に封印した
西方から訪れしものから聞きしことは、西方にある鬼方の国は滅亡し、鬼方の国を治めし邪肉の王殃ヤンは何処へと隠れてしまった
ゆえに我々が戦っていた鬼方の軍勢は東方にて鬼方の国の再起を図る残党の軍であろう
しかし邪肉の王はいつかは力を取り戻し戻ってくるだろう、それに呼応してあの腸はらわたは再び暴れだし、邪肉の王とともにこの世を腐肉と膿と鬼が支配する悪しき世に変えるだろう
父たる蛇は未だ壊れたままだが、父たる蛇が治り[判読不能]からお戻りになれば、悪しき腸はらわたを八つ裂きにし、邪肉の王すらも退けることができるだろう、その時までかの悪しき心臓を白き山の奥深くに封じ込め続けなければならない
帝武丁の命にてこの戦の功績と封印した悪しき腸はらわたについて永久に後世に伝えるべくこの碑をこの地に建立した
- 多数の青銅でできた商王朝時代の武器や防具の欠片と騎馬戦車の残骸
- 商王朝の兵士の遺体だと思われるモンゴロイド系の人間の多数の遺骨、一部遺骨には体の一部または全身にベリリウム青銅または真鍮製の部品が埋め込まれたものがあり、メカニトの技術で強化された兵士だと考えられる
- 商王朝時代の祭祀・儀礼用の器具と思われるベリリウム青銅製の物品、全てにメカニト特有の意匠が施されている
- ヒトに概ね似ているヒューマノイドの遺骨多数、体長が4m以上あり、目や耳、鼻は退化してる一方異常に発達した口と歯といった点からSK-BIOタイプAの遺骨と考えられる
- ヒトに概ね似ているヒューマノイドの遺骨多数、顎が縦に開口する点、骨性の鉤爪で終わる指と言った点でSK-BIOタイプBの遺骨と考えられる
また、SCP-1903-JP-AのレリーフにはSCP-981-JP-1やSCP-981-JP-2と考えられる実体が描写されています。
サーキック系実体に見られる異常な生物種の遺骨の存在により、商王朝と交戦した異民族である鬼方はサーキック・カルトの集団と考えられます。
補遺: SCP-1903-JPは2009年に日中米の国際共同による中国東北部の地殻・マントル調査によって偶然発見されました。その後、財団の地球科学専門チームも大規模実体についての調査をしましたが、推定される実体の規模や発熱していること、ヒトの心臓の拍動同様の振動以外の詳細なデータは得られませんでした。財団は当初、大規模実体を未解明領域UE-██████-JPとして指定し、一般社会に流布した観測データや情報をカバーストーリー等で隠蔽し、財団以外の大規模実体に関係している研究者に対して記憶処理が施されました。
2011年に財団日本支部サイト-81██で行われた、日本支部全体の研究報告会で、UE-██████-JPに関する研究報告を発表した際、考古学部門の研究者からSCP-███-JP-1の内容にUE-██████-JP実体と推定される記述があるとの指摘がありました。財団はUE-██████-JPとSCP-███-JPの関連性を調査するため、中朝両政府の了解のもと、白頭山周辺の詳細な調査を行いました。その結果、白頭山の頂上周辺で、過去の噴火活動による損傷は見られたものの、SCP-███-JP-2群中にある大量のメカニト特有の意匠が施されている商王朝時代の祭祀・儀礼用の金属器と、モンゴロイド系の人間の多数の遺骨が発掘されました。発掘した遺骨の放射性炭素年代測定で、死亡時期を紀元前1200-1000年(1σ)という測定結果から、商王朝時代の人の遺骨と断定しました。
SCP-███-JP-1の記述内容と、新たに発掘されたメカニト関連と考えられる発掘品から、SCP-███-JP-1の記述内容が正確であれば、UE-██████-JP内部に人類に対して高脅威の巨大な生物学的実体が存在すると財団は判断しました。このため、UE-██████-JPをSCP-1903-JPに再指定、SCP-███-JP-1とSCP-███-JP-2もSCP-1903-JP-A及びSCP-1903-JP-Bに再指定しました。サーキック関連の異常存在と考えられるため、シトラ=アキュラ合同合意に基づきSCP-1903-JPを財団及び世界オカルト連合(GOC)の共同監視対象に指定しました。
過去の白頭山の噴火や、2002年から2005年頃まで白頭山周辺で群発地震とSCP-1903-JPの再活性化の関連性とSCP-1903-JPが本格的な活性に伴うVEI8クラスの破局噴火によるK-クラスシナリオの発生の懸念されました。このため、2013年█月にSCP-1903-JPに関する情報の統制と実体に対する対策のための、財団及びGOCを中心に当事国の中国と北朝鮮、関係国の日本・韓国・米国・ロシアによる特別秘密協定プロトコル6プラス2を締結しました。また、プロトコル6プラス2に基づき中朝両政府の了承のもと、白頭山周辺に財団・GOC共同のSCP-1903-JP用の監視点を200箇所設置しました。
また同年█月、シトラ=アキュラ合同司令部はSCP-1903-JPのより詳細な状態の監視のため白頭山のマグマ溜まり内に直接監視機器を投入する“マグマダイブ計画”を策定しました。以前の地殻調査結果からSCP-1903-JPと地表の距離が最短の地点、北朝鮮両江リャンガン道三池淵サムジヨン郡の北緯41度██分██.█秒・東経128度██分██.█秒に北朝鮮政府の了承のもと財団・GOC合同超々深度掘削監視施設サイト-216を建設し、2014年█月にサイト-216は完成し、財団とGOCが共同開発した高性能ボーリングマシンを稼働させました。
2016年10月の事案(詳細は事案記録1903-JP-2016を参照)にて北朝鮮がプロトコル6プラス2を脱退と北朝鮮領内のシトラ=アキュラ職員の国外追放と監視点とサイト-216の使用不能により、SCP-1903-JP警戒監視体制は立て直しせざるを得なくなり、残る5カ国と暫定特別秘密協定プロトコル5プラス2を再締結し、中国領内の監視点の増設や中国側にサイト-216同様の施設建設の計画が行われております。
事案記録1903-JP-2016: 北朝鮮政府はSCP-1903-JPが発見される以前の2006年から、白頭山から約120km離れた咸鏡北ハムギョンブク道吉州キルジュ郡豊渓里プンゲリにて地下核実験をしており、SCP-1903-JP発見後も2009年から2016年1月までに3回地下核実験を実行しました。
財団及びGOCは、北朝鮮政府に抗議し、実体と地下核実験場は距離が離れているとはいえ、地下核実験がSCP-1903-JPに想定外の悪影響を与える可能性があるため、核実験実施の無期限凍結の要求が北朝鮮政府に対して3回行われましたが、北朝鮮政府はこれを無視しました。
2016年9月に北朝鮮は4回目の核実験を実施、財団及びGOCは抗議と要求を求めました。これに対し同年10月に北朝鮮政府は、プロトコル6プラス2の脱退と北朝鮮国内にある全ての監視点とサイト-216の接収を一方的に実行し、サイト-216のシトラ=アキュラ職員は朝鮮民主主義人民共和国国家保衛省職員により拘束されたのち国外追放されました。
現在、財団及びGOCは北朝鮮政府に対してSCP-1903-JP警戒監視体制への復帰と核実験実施の無期限凍結を要求していますが、北朝鮮政府はこれを無視する状況が続いております。
事案記録1903-JP-2016補遺: 2016年12月にマレーシアの首都クアラルンプールの財団施設に、北朝鮮国籍の男性が亡命を求めて侵入し、保安要員に拘束される事案が発生しました。男性は尋問と身分証明証等による身元調査の結果、朝鮮民主主義人民共和国保健1局超常1課所属の███博士(以後仮名でP氏と呼称)と判明しました。また、P氏の証言とP氏が所持していた資料(資料1903-JP-2016)にはSCP-1903-JPに関する重要情報があったため、プロジェクト・シトラ=アキュラおける重要参考人として、また北朝鮮当局による暗殺等不慮の事態を防止するため、P氏は財団とGOCの共同による厳重な保護下に置かれています。
インタビュー記録1903-JP-██ - 日付 2017/█/██
対象: P氏
インタビュアー: エージェント・リー
<録音開始>
エージェント・リー: 既に述べられたと思いますが、北朝鮮当局はSCP-1903-JPに関する情報を1970年代から知っていたのは本当ですか?
P氏: その通りです、我々超常1課はSCP-1903-JPの存在についてある程度把握していました。我々の組織は医学系生物学系アノマリーを研究しています。特にサーキック案件はその異常な生物学的技術力からして興味の対象でした。なので我々超常1課は最大の支援元の同じ社会主義国家の同盟国であり、サーキックに関する物品や情報、研究成果が多いソ連のGRU"P"局から資料を取寄せたり、人員を派遣していました。そうしたGRU"P"局との交流の中で我々はSCP-1903-JPの存在に気づいたのです。
エージェント・リー: 超常1課がSCP-1903-JPの存在に気づいた経緯とは?
P氏: 1975年█月に超常1課とGRU"P"局との共同調査という名目で、極東ロシアに存在するプロト・サーキックの集団を強制連行して尋問した際、彼らの口伝伝承の中にそれがありました。
エージェント・リー: 資料1903-JP-2016のことですね。
P氏: はいそうです、我らの娘についての記述には見覚えがありました。第二次世界大戦終結直後に我々が負号部隊から接収した、貴方達が言うSCP-1903-JP-A及びBに関する資料にほぼ同様の内容があったからです。我々は戦慄しました、GRU"P"局からサーキックの脅威について何度も教えてもらっていましたが対岸の火事と思っていたところがありました、それが今そこにある危機に変わったんです。
エージェント・リー: その後、貴方達超常1課としてどう対応しましたか?
P氏: 即時にこの件を党と政府の指導部に報告しました。そして党中央から第105号重大案件としてSCP-1903-JPの存在の確認のため調査せよと命令が下され、超常1課と朝鮮人民軍で白頭山周辺の大規模調査が何度か行われました。なにせ我が祖国にとって白頭山は朝鮮革命の聖地として重要な存在です。その聖なる山の下にとてつもない脅威が存在するというのは、党と国家の一大事です。この件に関して無論どちらかというと、西側に近く異常案件絡みなら内政干渉も辞さない財団に頼めるわけがないので、自国だけで解決しようとしました。
エージェント・リー: それでSCP-1903-JPは自力で発見できたのですか?
P氏: いえ、自国の未熟な調査能力や技術力では発見できず、さらにSCP-1903-JPの存在への懐疑論が出たり最高指導者の死や食糧難など国内の政治的混乱で調査活動は何度も中止と再開を繰り返されましたが、貴方方が知っての通り2009年に日中米の研究チームが発見しました。結局我が国は財団を頼らざる負えなくなりました。
エージェント・リー: なるほど、ところで貴方の国の核実験に対する我ら財団やGOCの再三の抗議を無視し、一方的にサイト-216の接収や人員の追放を行ったことに関してなんらかの情報とか知ってる範囲でいいですから教えてください。
P氏: すみません、その件については私もよく知りません。なにせSCP-1903-JP案件に関しての主導権は2012年に超常1課から朝鮮人民軍総参謀部に移されて、超常1課には最低限の情報しか与えられてません。ただ確実な情報ではないんですが、私が聞いた範囲では最高指導部から第216号作戦命令書が出されていた模様でその命令書の詳細な内容は党や軍のごく限られた人間しか知りません。ですが大まかな内容としてSCP-1903-JPの案件を再び自国の手で解決するということでした。
エージェント・リー: わかりました。では最後の質問ですが、なぜ貴方は亡命を決意したのですか?
P氏: (5秒間沈黙)私は、愛国者です。愛国者として偉大なる首領様のため、党と国家のため、異常物品の研究に邁進してきた人生でした。異常物品の研究のためには手を汚してきました、それこそ貴方方財団のDクラス職員を使った実験がマシに思えるほどの非人道的な人体実験を、完全統制区域の囚人を湯水の如く使って行ったことは幾度もやってきました。しかしこれは研究者としてあるまじき事なんですが、長年のアノマリーの研究者として直感として、本能的にSCP-1903-JPは下手に手を出してはいけないと思ったんです。
エージェント・リー: それが亡命した理由ですか?
P氏: ええ、実は私は海外の報道を密かに手に入れていました、こんなこと祖国では厳禁ですが。それで祖国の実態を知りました。現状でさえ悲惨な状況の祖国なのに、あれに下手に手を出したら祖国が、いや人類が滅亡するかもしれないと私は思うようになり、しかも新しい指導者のこれまでの言動と第216号作戦命令書の話を聞き、いつか確実にSCP-1903-JPに手を出しかねない。これでは祖国が人類が惨劇に見舞われると考え、このことを外部に伝え祖国の暴走を止めないといけないと思いました。そんな時、去年の10月にマレーシアにある超常1課のフロント企業の製薬会社への出向が決まり、チャンスと考え亡命を決意しました。まず出向前に偵察総局職員に賄賂を渡し、マレーシアの各財団施設の情報を入手、出向後に寝泊まりしていたマンションから、監視の隙を見て逃げました。
エージェント・リー: わかりました、それではインタビューを
P氏: あと…
エージェント・リー: あと、なんですか?
P氏: (5秒間沈黙)あと、私唯一後悔してることがあります。祖国に残してきた家族のこと、妻と一人娘のことです。亡命を決意した当時、家族を捨てる覚悟はしてきたはずでしたが、今になって後悔の念が湧いてきたのです。妻と娘がどんなひどい目にあっているのか不安でたまらないのです。これは私の我儘かもしれませんが、どうか財団の力で家族の無事であるか調べてほしい!命を救ってほしいのです!
エージェント・リー: わかりました、ご家族の件について財団は最善のことを尽くします。
P氏: ありがとうございます…本当にありがとうございます…
<録音終了>
終了報告書: P氏の証言に基づき、財団及びGOCの諜報部門は第216号作戦命令書の内容を調査中です。また、P氏の家族の件に関しては、家族が住んでいた平壌市内の超常1課職員用アパートから国家保衛省職員に連行され、その先の足取りは未だ不明です。
資料1903-JP-2016
我らが娘カルキスト・ザァラ(Zaara)は、我らの不滅の父と高貴なる血の救い主たるお母様が産みし娘なり、父からは統率力と聡明さを母からは美貌と勇敢さを授かった
我らの娘は信心深く、親への愛が溢れていた
機械どもが作りし真鍮の巨人の軍勢が、アディトゥムの都を蹂躙し火の海に変えた時、我らの不滅の父はお隠れになり、お母様とは戦火の最中に見失ってしまった我らの娘は東へと生き残った軍勢を引き連れ、逃れた地で再起を図った
東へ向かった我らの娘の軍勢は、東の最果ての地にて新たなるアディトゥムをお作りになったが、そこへ機械どもが攻め入り、3年に亘り戦ったが、我らの娘の軍勢は滅ぼされ、我らの娘は機械どもに八つ裂きにされたうえに、腸はらわたを刳り出された
我らの娘は腸はらわただけになっても機械どもに抗い続けたが、機械どもの檻に閉じ込められうえに白き山の奥底に封じ込められた
だが封じ込まれてもなお、アディトゥムを復活への、そして我らの娘は不滅の父とお母様への熱き想い、煮えたぎる機械どもへの怨讐を抱いて鼓動を刻み続けている
いつか我らの不滅の父が再びこの世に現れ、娘を檻から救い出し、我らの娘は父と母とともに、栄光のアディトゥムの都そして国を復活させるであろう、その時を我らは待っている